日常を取り戻したい主人公たちがおくる。一つの世界。 作:空色 輝羅李
第二十四話
一人の少年と、複数の大人が、張り詰めた空気を醸し出す。少年の後ろには三人の少年少女がいる。
少年は大人を見据え、大人は子供を嘲笑っている。
「刻印「心眼」真実の眼。」
そう、少年は、唱える。
大人は怯えた。
「ばーか、俺に、勝てると思うなよ。」
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私は盛大な勘違いを、今理解できた。
龍は恐らく、このことを予想していたんだ。
だからあらかじめ、千里に連絡をいれ、守る準備をした。
...なんで。どうして。
恐怖よりも、その疑問しか浮かばない。なぜ私たちに言わなかったのか。別に伝えてくれてもよかったのではないだろうか。
それとも、そんなにも私は、頼りにならないのだろうか。
「私だって...オレだって戦えるんだ!」
「...馬鹿。黙って守られてろ。」
そ、そんなこと言われたら...いや、でもなぁ...
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切亜がいくら戦えるとしても...戦力差がすさまじい。
恐らく、切亜が一対一に持ち込めたとしても、勝負はいいところ引き分けだ。
信じてないとかそういうのじゃない。ただ、負ける可能性は排除したい。
だから、今は...
「知らない!オレだって戦える!」
「何言ってんだ、相手は管理塔のやつらだ!」
「関係あるか?それ」
...まじかー。
考えてみれば関係あるの俺だけか...
だが、やはり危険というのに変わりはない。
止めようとしたとき、切亜はすでに結界から出ていた。
こうなればもう、止めることはできないか。
「任せろ、足手まといにはならないから!精霊「疾走の加護」」
切亜のおかげで、足が軽くなる。そのままの意味で、ただただ足が速くなる。
が、切亜の精霊は、練度が違う。そこらの精霊とは加護の強さが違う。
精霊に認められたら使うことができるが、ほとんどの人は認められてるようなものだ。精霊からの信頼度こそが加護の強さになる。つまり最強レベルですね。
今この時だけだが、アタランテ―より速い。多分。実際に比べたわけではないから、そう思ってるだけだが。
でも、もともと強化魔法をかけてるし、飛んだらマッハとかの単位でもたりないし、これ以上速度は必要じゃないんだけどね。
「子供が一人増えたところで、状況は変わらん。刻印を使えるのも一人。なれば勝てる。おとなしく捕まれ。」
「...嫌だね。
渡してしまったら、親父の研究が、完成するかもしれない。
それだけは阻止しなければならない。
原始魔法も原始宇宙も、ただの害である。存在してはならないから消えたのだ。
本を読み、確信を得た。刻印は、禁忌ではないが、原始である。
俺は、いい材料だったろう、親父。
俺の体は大体の魔力が馴染む。耐えてしまうから。無属性であるから。
それゆえ。
原始も、馴染むのだ。俺を中心に、原始は再開する。
それだけはいけない。原始の再来は、生命の終了を意味する。
どうすれば...
そうか...オーブ。お前を取り込めば、いいんだ。
かつて母さんが、俺にしたように。魔力を体に直接流し込めば。血中に混ぜ込めばいいのだ。
それに龍神は、知っていた。俺の体に流れる原始を。
なら、それを抑えるなり強化するなり、何か仕掛けをするはず。だったら。
お前がそれを考えてることを祈るぜ、雷龍。
オーブをストレージから現物に変換する。オーブをみた職員らは目の色を変えてこちらにかかってくるが、
「バーカ!今はオレが相手だぜ!展開「神炎」!」
俺から数メートル離れた場所で、複数の魔法陣が浮かび、そこから炎が立ち上がる。
少しは足止めにもなるが、何人かは体制を立て直し、突っ込んでいる。
それに構う暇は俺にはない。
オーブに魔力を流す。それに応えるように光があふれる。
周りの魔力はあたり一帯を避けるような流れになり、周りはこいつの魔力であふれる。
...マナより多いのか。
その流れが俺の体に収束していく。若干意識が飛びそうになるが、この程度で酔ってたら将来酒を飲むのをためらうことになる。まだ倒れない。
「我が呼び声に、呼応せよ...!」
―――――――――――
やっぱり龍はすごい。僕は小さいころから彼を見てきたが、その小さいときから、すでに龍は龍だった。
彼は他者を誰よりも、自分より優先した。誰かが困っていれば、手を差し伸べる。間違った道に進めば、そっちじゃないと、元の道へと正す。
切亜も僕も、彼に助けられたからここにいる。
切亜も僕も、彼に助けられてばかり。
...だった、今まで。
今ではもう、切亜も誰かを守ることができる。
僕にはない余裕が二人には、ある。
この結界...「クロノスガイア」は、自分を守るための僕のイメージだ。これが一番、馴染むと知ったとき、僕はひどく納得した。だって、自分を優先する僕には、ぴったりだ。
一人の時間で、自分さえ守れたらいい。だから、強固な守りになる。
まあ、近くに誰かがいれば、その人も守ることができる。
でも、守りたい人を、守ることができない。
だから龍に、ずっと憧れた。守りたい人を守る力が、気概が、その在り方が、そうさせた。
「二人とも、すごい...」
こうやって、哉痲も、魅了させる。
彼に憧れを持つのも、必然か。
遠目に見ていて、気づくことは一つ。龍の魔力の質が、変わった。
厳密には、増えたというべきかもしれない。先ほど、丸い物体を持って、なにかを言っていた。その時にマナの流れが周りから途絶えた。
否。
龍を中心に、避けるような、取り囲むような流れになった。
...まだ、強くなれるんだ。
――――――――――
刻印が体に馴染み始める。心眼を完全に扱うにはもう少し時間がかかるかもしれない。ずっと発動状態にしているのに、まだ使えないなんて...
いや、それも当然か。今までの刻印は、体の中にあったんだ、慣れる必要がなかった。
「...さて、交代だ切亜。」
「お?もういいのか。なんなら共同戦線でもいいんだぜ?」
それもありかもな、と、目を合わせて、息を合わせる。
「さぁA,Bクラス。待たせたな。」
「てこずらせるな。我々の目的はお前だけだ、お前の中にある、原始を渡せ!」
なるほど。やはり目的は原始か。
研の成果は、いったいどこまで進んでいるのか。原始を扱える俺の体を研究すれば、おそらく原始に近づく。それはつまり、母さんのくれた刻印が混ざる、この血液を渡すことになる。
まぁ、渡さんが。裏切られた母さんのために、俺は...親父を許さない。
心眼のおかげか、少し意識を変えるだけで周りの時間の流れが遅くなる。
集中すれば、相手の心が読める。
意識を放てば、マナの流れが読める。
...心眼って、チートかな...まだあるけど、時間がもったいない。
「展開「
複数いるなら、一掃するのが安定だよな。あくまで逃げたいだけだが。
魔法陣から出てくる剣には、全てさまざまな属性を付与している。今まではできなかったが、魔力をうまく操作できる今、できることをしない選択肢が、ない。
「な、ななんだこれは!おいAクラス!何してるんだ!?」
「Bクラスがわめくな!こんなもの扱うやつを初めて見ただけだ。」
こんなものってなんだよ...意外と気に入ってんのに。剣がいっぱいあるんだぜ?男のロマンだろうが。
「展開模写「
...は?
待て待つんだブルータス落ち着け待ったブルータスはいない。
なるほど。術式を全て読み込んだわけではないが、それでも、属性付与以外は読めたのか。
...そんなすぐにまねをしちゃうのかぁ、Aクラス...
ルーンでも使うかな...ルーンを使える人はあまりいない。なぜかって?
複雑なんだよね。原始魔法の一番最初の派生魔法が、ルーンだから、知ってる人も少ないし、使えるひとはもっと少ない。だから、術式を隠しやすい。隠匿の魔術豊富だしな...
でも、それじゃあ、あまりにも卑怯か。あくまで対等にやりあって逃げる。そうしよう。
幸い、所詮まねごとの魔法であれば弾道...剣道は全く同じところで、剣同士がぶつかり合う。属性付与してるこちらの方が残って向こうへ飛んでいる。
逃げるなら今か。
「千里!」
「わかった!「閃光」」
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なぜ、名前を呼んだだけで、連携を取れたのか、僕には不思議であった。
そもそも、神立さんと柊君が、アイコンタクトだけで連携を取れていたのにも、不思議に思う。テレパシーで会話でもしているのか...?
僕には、わからなかった。この三人が、まるで一人の人間のように動けた理由が。
あの、変な人たちに向かって閃光で、目くらましして逃げる時、周りが見えないはずなのに、彼らは手を取り合っていた。そんなの、普通に考えて不可能だ。不可視の空間で、どうやって互いを見つけるのか。
...それだけ、信じているのかな、お互いを。
「ねえ、柊君。」
どうした?と。僕の前で三人並ぶうち、真ん中の影が。僕らの上に結界で天井を作り、夕立から守る少年が。振り返り、尋ねる。
「僕と、と...友達になって、くれる...かな?」
少年は不思議そうな表情を浮かべる。両隣に目配せをし、三人は笑う。
もう一度こちらを向いて、彼が一言。
「もうそうだろ?那斗。」
と。
さも当然のように、僕に微笑む、三つの影。
当たり前のことを言うように、僕にとってあたりまえでないことを伝えた。
これほどまでに安心する出来事が、過去にはなかった。
それが、嬉しかった。そして、安心できる場所が、僕にもできたことを、夕立がやみ、キレイな虹が教えてくれた。
――――――――――
ただいま。お帰り。このやり取りをなぜ雷花とするのか...
あとから姉さんと紗那がお帰りという。
家の前で千里と那斗とは別れた。流石に時間も時間だもんな。親御さんが心配している。帰るべきだよね!
ご飯を作ろうと、献立について考えていたら、
「もう作っといたよ。温かいうちに食べてね。」
やるじゃないか雷花。俺がいない間に全員分の料理を作るなんて。
それが茶色のものばかりでなければよかったのにな。
雷花は頬を膨らませながら仕方ないじゃんと言う。なぜ仕方ないのか問いただせば
「私、あまり食べ物食べること無かったもん!」
と、答えられた。
つまり、今まで食事をまともにしていなかったのか?龍神の使いだからいらなかったのかもな...魔力で必要な栄養を補っていたのかもしれない。
ちなみに、魔力で腹を満たすには、まずはマナがわからなければならない。
マナというのは、大気中に存在する魔力だ。地球自身が保有し、放出、作成をしている。だが、普通ならマナすら扱うことが、今の生命にはできない。魔力を扱うための器官が退化しているから、体内に取り込むことができない。無論、体内の魔力も、最低限しか保有されていない。
何故退化したか、については、完全に話が変わるからやめておこうか。
つまり、雷花はそんなマナを使って、栄養補給をしていた。
...魔力でできているという線も考えられるか。
「なんでわかるの?」
なんで心読むの?
...魔力で構成されてるとか、真正の使い魔じゃねえか。
もういいや、歯を磨こう。
風呂に入ろう。
そして寝よう。
また明日、物事を整理するか...