日常を取り戻したい主人公たちがおくる。一つの世界。   作:空色 輝羅李

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第13話

第二十四話

 

一人の少年と、複数の大人が、張り詰めた空気を醸し出す。少年の後ろには三人の少年少女がいる。

少年は大人を見据え、大人は子供を嘲笑っている。

 

「刻印「心眼」真実の眼。」

 

そう、少年は、唱える。

大人は怯えた。

 

「ばーか、俺に、勝てると思うなよ。」

 

――――――――

 

私は盛大な勘違いを、今理解できた。

龍は恐らく、このことを予想していたんだ。

 

だからあらかじめ、千里に連絡をいれ、守る準備をした。

...なんで。どうして。

恐怖よりも、その疑問しか浮かばない。なぜ私たちに言わなかったのか。別に伝えてくれてもよかったのではないだろうか。

それとも、そんなにも私は、頼りにならないのだろうか。

 

「私だって...オレだって戦えるんだ!」

「...馬鹿。黙って守られてろ。」

 

そ、そんなこと言われたら...いや、でもなぁ...

 

――――――――

 

 

切亜がいくら戦えるとしても...戦力差がすさまじい。

恐らく、切亜が一対一に持ち込めたとしても、勝負はいいところ引き分けだ。

信じてないとかそういうのじゃない。ただ、負ける可能性は排除したい。

だから、今は...

 

「知らない!オレだって戦える!」

「何言ってんだ、相手は管理塔のやつらだ!」

「関係あるか?それ」

 

...まじかー。

考えてみれば関係あるの俺だけか...

 

だが、やはり危険というのに変わりはない。

 

止めようとしたとき、切亜はすでに結界から出ていた。

こうなればもう、止めることはできないか。

 

「任せろ、足手まといにはならないから!精霊「疾走の加護」」

 

切亜のおかげで、足が軽くなる。そのままの意味で、ただただ足が速くなる。

が、切亜の精霊は、練度が違う。そこらの精霊とは加護の強さが違う。

精霊に認められたら使うことができるが、ほとんどの人は認められてるようなものだ。精霊からの信頼度こそが加護の強さになる。つまり最強レベルですね。

 

今この時だけだが、アタランテ―より速い。多分。実際に比べたわけではないから、そう思ってるだけだが。

でも、もともと強化魔法をかけてるし、飛んだらマッハとかの単位でもたりないし、これ以上速度は必要じゃないんだけどね。

 

「子供が一人増えたところで、状況は変わらん。刻印を使えるのも一人。なれば勝てる。おとなしく捕まれ。」

「...嫌だね。()()とも、悪用されるなら、俺は誰にも渡さない。渡してしまったら」

 

渡してしまったら、親父の研究が、完成するかもしれない。

それだけは阻止しなければならない。

原始魔法も原始宇宙も、ただの害である。存在してはならないから消えたのだ。

 

本を読み、確信を得た。刻印は、禁忌ではないが、原始である。

俺は、いい材料だったろう、親父。

俺の体は大体の魔力が馴染む。耐えてしまうから。無属性であるから。

それゆえ。

原始も、馴染むのだ。俺を中心に、原始は再開する。

それだけはいけない。原始の再来は、生命の終了を意味する。

どうすれば...

 

そうか...オーブ。お前を取り込めば、いいんだ。

かつて母さんが、俺にしたように。魔力を体に直接流し込めば。血中に混ぜ込めばいいのだ。

それに龍神は、知っていた。俺の体に流れる原始を。

なら、それを抑えるなり強化するなり、何か仕掛けをするはず。だったら。

 

お前がそれを考えてることを祈るぜ、雷龍。

オーブをストレージから現物に変換する。オーブをみた職員らは目の色を変えてこちらにかかってくるが、

 

「バーカ!今はオレが相手だぜ!展開「神炎」!」

 

俺から数メートル離れた場所で、複数の魔法陣が浮かび、そこから炎が立ち上がる。

少しは足止めにもなるが、何人かは体制を立て直し、突っ込んでいる。

それに構う暇は俺にはない。

 

オーブに魔力を流す。それに応えるように光があふれる。

周りの魔力はあたり一帯を避けるような流れになり、周りはこいつの魔力であふれる。

...マナより多いのか。

その流れが俺の体に収束していく。若干意識が飛びそうになるが、この程度で酔ってたら将来酒を飲むのをためらうことになる。まだ倒れない。

 

「我が呼び声に、呼応せよ...!」

 

―――――――――――

 

やっぱり龍はすごい。僕は小さいころから彼を見てきたが、その小さいときから、すでに龍は龍だった。

彼は他者を誰よりも、自分より優先した。誰かが困っていれば、手を差し伸べる。間違った道に進めば、そっちじゃないと、元の道へと正す。

切亜も僕も、彼に助けられたからここにいる。

切亜も僕も、彼に助けられてばかり。

...だった、今まで。

 

今ではもう、切亜も誰かを守ることができる。

僕にはない余裕が二人には、ある。

 

この結界...「クロノスガイア」は、自分を守るための僕のイメージだ。これが一番、馴染むと知ったとき、僕はひどく納得した。だって、自分を優先する僕には、ぴったりだ。

一人の時間で、自分さえ守れたらいい。だから、強固な守りになる。

まあ、近くに誰かがいれば、その人も守ることができる。

でも、守りたい人を、守ることができない。

 

だから龍に、ずっと憧れた。守りたい人を守る力が、気概が、その在り方が、そうさせた。

 

「二人とも、すごい...」

 

こうやって、哉痲も、魅了させる。

 

彼に憧れを持つのも、必然か。

 

 

 

遠目に見ていて、気づくことは一つ。龍の魔力の質が、変わった。

厳密には、増えたというべきかもしれない。先ほど、丸い物体を持って、なにかを言っていた。その時にマナの流れが周りから途絶えた。

否。

龍を中心に、避けるような、取り囲むような流れになった。

 

...まだ、強くなれるんだ。

 

 

――――――――――

 

刻印が体に馴染み始める。心眼を完全に扱うにはもう少し時間がかかるかもしれない。ずっと発動状態にしているのに、まだ使えないなんて...

いや、それも当然か。今までの刻印は、体の中にあったんだ、慣れる必要がなかった。

 

「...さて、交代だ切亜。」

「お?もういいのか。なんなら共同戦線でもいいんだぜ?」

 

それもありかもな、と、目を合わせて、息を合わせる。

 

「さぁA,Bクラス。待たせたな。」

「てこずらせるな。我々の目的はお前だけだ、お前の中にある、原始を渡せ!」

 

なるほど。やはり目的は原始か。

研の成果は、いったいどこまで進んでいるのか。原始を扱える俺の体を研究すれば、おそらく原始に近づく。それはつまり、母さんのくれた刻印が混ざる、この血液を渡すことになる。

まぁ、渡さんが。裏切られた母さんのために、俺は...親父を許さない。

 

心眼のおかげか、少し意識を変えるだけで周りの時間の流れが遅くなる。

集中すれば、相手の心が読める。

意識を放てば、マナの流れが読める。

...心眼って、チートかな...まだあるけど、時間がもったいない。

 

「展開「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」」

 

複数いるなら、一掃するのが安定だよな。あくまで逃げたいだけだが。

魔法陣から出てくる剣には、全てさまざまな属性を付与している。今まではできなかったが、魔力をうまく操作できる今、できることをしない選択肢が、ない。

 

「な、ななんだこれは!おいAクラス!何してるんだ!?」

「Bクラスがわめくな!こんなもの扱うやつを初めて見ただけだ。」

 

こんなものってなんだよ...意外と気に入ってんのに。剣がいっぱいあるんだぜ?男のロマンだろうが。

 

「展開模写「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」」

 

...は?

待て待つんだブルータス落ち着け待ったブルータスはいない。

 

なるほど。術式を全て読み込んだわけではないが、それでも、属性付与以外は読めたのか。

...そんなすぐにまねをしちゃうのかぁ、Aクラス...

 

ルーンでも使うかな...ルーンを使える人はあまりいない。なぜかって?

複雑なんだよね。原始魔法の一番最初の派生魔法が、ルーンだから、知ってる人も少ないし、使えるひとはもっと少ない。だから、術式を隠しやすい。隠匿の魔術豊富だしな...

 

でも、それじゃあ、あまりにも卑怯か。あくまで対等にやりあって逃げる。そうしよう。

 

幸い、所詮まねごとの魔法であれば弾道...剣道は全く同じところで、剣同士がぶつかり合う。属性付与してるこちらの方が残って向こうへ飛んでいる。

 

逃げるなら今か。

 

「千里!」

「わかった!「閃光」」

 

――――――――――――――

 

 

なぜ、名前を呼んだだけで、連携を取れたのか、僕には不思議であった。

そもそも、神立さんと柊君が、アイコンタクトだけで連携を取れていたのにも、不思議に思う。テレパシーで会話でもしているのか...?

 

僕には、わからなかった。この三人が、まるで一人の人間のように動けた理由が。

 

あの、変な人たちに向かって閃光で、目くらましして逃げる時、周りが見えないはずなのに、彼らは手を取り合っていた。そんなの、普通に考えて不可能だ。不可視の空間で、どうやって互いを見つけるのか。

 

...それだけ、信じているのかな、お互いを。

 

「ねえ、柊君。」

 

どうした?と。僕の前で三人並ぶうち、真ん中の影が。僕らの上に結界で天井を作り、夕立から守る少年が。振り返り、尋ねる。

 

「僕と、と...友達になって、くれる...かな?」

 

少年は不思議そうな表情を浮かべる。両隣に目配せをし、三人は笑う。

もう一度こちらを向いて、彼が一言。

 

「もうそうだろ?那斗。」

 

と。

 

さも当然のように、僕に微笑む、三つの影。

当たり前のことを言うように、僕にとってあたりまえでないことを伝えた。

 

これほどまでに安心する出来事が、過去にはなかった。

それが、嬉しかった。そして、安心できる場所が、僕にもできたことを、夕立がやみ、キレイな虹が教えてくれた。

 

 

――――――――――

 

 

ただいま。お帰り。このやり取りをなぜ雷花とするのか...

あとから姉さんと紗那がお帰りという。

 

家の前で千里と那斗とは別れた。流石に時間も時間だもんな。親御さんが心配している。帰るべきだよね!

ご飯を作ろうと、献立について考えていたら、

 

「もう作っといたよ。温かいうちに食べてね。」

 

やるじゃないか雷花。俺がいない間に全員分の料理を作るなんて。

それが茶色のものばかりでなければよかったのにな。

雷花は頬を膨らませながら仕方ないじゃんと言う。なぜ仕方ないのか問いただせば

 

「私、あまり食べ物食べること無かったもん!」

 

と、答えられた。

つまり、今まで食事をまともにしていなかったのか?龍神の使いだからいらなかったのかもな...魔力で必要な栄養を補っていたのかもしれない。

ちなみに、魔力で腹を満たすには、まずはマナがわからなければならない。

マナというのは、大気中に存在する魔力だ。地球自身が保有し、放出、作成をしている。だが、普通ならマナすら扱うことが、今の生命にはできない。魔力を扱うための器官が退化しているから、体内に取り込むことができない。無論、体内の魔力も、最低限しか保有されていない。

何故退化したか、については、完全に話が変わるからやめておこうか。

つまり、雷花はそんなマナを使って、栄養補給をしていた。

...魔力でできているという線も考えられるか。

 

「なんでわかるの?」

 

なんで心読むの?

...魔力で構成されてるとか、真正の使い魔じゃねえか。

 

もういいや、歯を磨こう。

風呂に入ろう。

そして寝よう。

また明日、物事を整理するか...

 

 

 

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