ガルパン オリジナル学園艦短編   作:京都府の南スラヴ人

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大幅に時間軸を変えました


自主管理教育組合

自主管理教育組合

一見すると、何かしらの市民団体かそれこそ組合だと思ってしまうような名前であるが、れっきとした学校法人であり、学園艦である

 

兵庫は明石市に本拠をもつ同学園艦の経緯は非常に複雑である

そもそもこの学園艦ができたのは1年前であり、統廃合によって生まれて新しくできた……再編された学園艦なのだ

グラード学園、ヴニク女学院、エヴォ塾、ブリャナ高専、五律工業高校、ヴェルギナ高校

これら6つの学園艦が統合されたことによって自主管理教育組合が誕生したのである。

その原因はやはり各学園艦の経済的な事情によるところであった。

この事態を重く見た各学園艦生徒会は共に兵庫県に本拠を持つという点から協議を何度も行い、統廃合へ至る事を決定した。文科省へ申請した際に受付の役員が目を丸くした事は言うまでもない。

2つの学園の統廃合は聞かない話では無かったが、それが6つ同時に申請したという事に文科省は辻廉太なる役人を担当に付け、一連の統廃合の指揮や調整にあたらせる事とした。

 

結果としてそれは成功したと言える。学園艦の売却によって得た収入は新しい学園艦を購入してもお釣りが出る程であったし、一つの学園艦に6つの学園生徒が集まる事で学園内の経済は活発化。予算は初年度にて黒字を出す事となった。

 

辻廉太を統廃合に尽力『した』人物とするならば、現在進行形で尽力『している』人物がもう一人いる

現自主管理教育組合生徒会長、南千歳である。

統廃合当時、ヴニク女学院付属中学校戦車道部部長兼生徒会長であった彼女は統廃合を歓迎しており、各学園艦生徒会に祝意の手紙を送る程であった。

翌年、進級すると同時に、生徒会長選に1年生ながら立候補するという冒険に打って出たが、この冒険はたちまち学園内の興味の的となり知名度を大いに高めた。加えて、彼女の社交的な性格、戦車道で鍛えた声の張り、中学校生徒会長という学園艦経営の一端を担っていた事を評価され、見事自主管理教育組合の初代生徒会長として名を刻んだのである。

 

「それでは定例会議を行いたいと思います」

「「「「「はい」」」」」

 

2年目も生徒会長に当選した事により、南にはどこか風格と貫禄とちょっぴり疲労の気が見せ始めていた

 

「予算についてですが、このままを維持し続けて行けば少なくとも向こう10年は黒字であるというデータが算出されています」

「となると次なる問題は……」

「予算の分配やな」

 

南は生徒会そのものを改革し、学園艦の全てを生徒会により決定するのではなく、各部活動や委員会のトップとの協議によってその意思決定を学校経営に反映させるという内容であった

 

「剣道部としては規定通りの予算で向こう2カ月は大丈夫やで」

「ごめんやけど、ちょっと吹奏楽部に融通してくれへんか?来週でかいイベントあるからバスとか借りやなアカンねん」

 

部長と委員長がそれぞれの要求する額を伝えていき、南は手元にあるノートと電卓を駆使して、予算との兼ね合いを判断している

 

「清掃委員会さんの高圧洗浄機の導入は良しとして、植物委員会さんのはちょっと……」

「あぁ、別にそこまで気にせんでええで。ただこの前舗装した道に街路樹植えよって意見が多少出てたぐらいやし」

「すんません。それと情報システム統括部さんですけど…これ本当にいるんですか?」

「そりゃ要るから言うとるんや。脅すようでアレやけど、このソフト入れんかったらこれから増え続けるであろう生徒と在校生卒業生の情報全部とんでまうで?」

「うーん、分かりました。では、そのようにさせていただきます」

 

予算の分配は恙なく行われていく

学園艦が黒字であるが故にスピーディーに予算決議は終了した

 

「さて、それでは次の議題として、生徒からの目安箱の意見を読んでいきましょう」

 

目安箱にはどっさりとお便りが投稿されており、部長委員長は手近なものから軽く読み始める

 

「学食のバリエーションを増やしてほしい、やと」

「学園艦内の移動をより早く効率的にする為にエスカレーターや交通機関の新設の声も多数あがってんなぁ。学食よりこっちのほうが急務ちゃうか?」

「学食は真っ先にコストカットの対象やったからなぁ」

「とはいえ、カレーと牛丼だけっていうのはちょっとなぁ。男子はともかく女子には重いメニューなんやろ? 現に学食要求の性別欄は殆ど女子やで」

「図書館の拡張もあるなぁ。一つの本に10の予約が必ずついてる状況になってるみたいや」

「風紀委員が厳しすぎるとかもあるで」

「当然の職務を遂行しているまでだ。遅刻や服装の乱れを許認しては、何のために風紀の二文字を冠しているというのだ」

 

部長委員長の会議に対して南が口を挟む事はまずない

彼女の仕事は会議によってまとめられた各提案に対して、予算を提示した上で是非を判断するのみであって会議そのものへの発言は、生徒会の権限の強化であると考えていた。統合して間もない自主管理教育組合の不満を一手に引き受ける事はハイリスクであったからだ。

それならば、会議から提案までを部長委員長に任せた方が、不満を分散させるという意味では効果的であった

 

「学食のバリエーションは現時点の予算とそして学園艦の状況から鑑みて、重要な事案ではないと考えます。しかし、学園艦内の移動手段の拡充と図書館の拡充は早急に着手すべきものであります。そして風紀委員会の皆々様がたは、今後より一層の働きを期待している次第でございます」

 

この決定に異議を唱える者は一人もいなかった

学食面のコストカットは南が生徒会長選において常に掲げていた事であり、多くの生徒はそれも含めて支持していたのだ。それに学食への要望は何も強いものではなく、あくまでできる事ならしてほしい程度のものである事を部長委員長は感じ取っていた

 

「それではこれで定例会議を終わらせていただきま」

「入るぞ、千歳」

 

ドアを勢いよく開けて入ってきた人物

軽井照子。かつて南千歳と共にヴニク女学院附属ネクタイ女子中学校戦車道部に所属し、街中野原を駆け巡った仲だ

生徒会に所属しているという訳では無いが、南と友人である事から頻繁に出入りしており、周囲からは事実上の生徒会役員であると見なされている

 

「照子。会議中は入ってくんなって言ったはずやろ」

「さっき教職員組合の方から連絡があってな。伝えに来た」

「教職員組合から?」

 

自主管理教育組合の運営や会議において、教職員組合は委任状を出すという形でそれに応えてきた

日頃の職務が忙しく、参加する程の余裕が無かったからだ

 

「それで、どんな?」

「まぁ、これを見ればわかる」

「ふむ……」

 

書類の最初3文字はこうであった。戦車道

その文字に彼女の体に震えが走った

南千歳自身、元戦車道部部長であったという事もあって、毎年行われる戦車道大会は生徒会長として多忙に追われていた時の数少ない娯楽であった

特に決勝戦はその多忙から無理矢理時間を作ってでも見に行ったほどだ

 

「教職員組合からの『提案』や」

「………………」

「自主管理教育組合戦車道部の創設」

 

その言葉に会議室がどよめいた

戦車道

その響きは聞きなれた物ではあるが、この学園艦には無い存在であった

 

「そして、その初代部長には経験者である南千歳の就任を望む」

「………………」

「なぁ、どうや」

 

部長委員長が互いに顔を見合わせて、小声で話を始める

 

―確かに南生徒会長なら―

―だけど、別に何かの大会に出たって訳ちゃうんやろ?―

―いや、それはネクタイ女子中学校の戦車道部が小規模過ぎたってだけで、個人としての腕は相当なモノやって聞いたで―

 

「皆さん、静かにしてください」

 

その言葉で静かにはなったものの、南を見る目は明らかに今までのそれとは違う

 

「何にせよ会議は終わりです。解散、各部員各委員に予算の結果を通知、広報委員会は一般生徒に伝えるように」

 

南はそう告げて、足早に去っていった

 

 

 

 

「(まったく…無用な事を)」

 

帰り道、南はさっきの事を思いだし……いや、頭から離れられずにいた

戦車道部の創設、初代部長就任

何とも……嬉しいお話である

 

「あ!会長!こんにちは!」

「おぉ、君らは……1年生か。こんにちは」

 

会長も2年目にさしかかるという事もあって、南千歳の名前と顔は広く知れ渡っており、そのフレンドリーな『表面』からこうして声をかけられる事は珍しい事ではない

 

「あ、あの!噂で聞いたんですけど!あの噂って本当ですか!」

「あの噂……?」

「戦車道部の創設と、会長が部長を兼任するって噂です!」

「誰から聞いた?」

「だ、誰って、もう艦内中で噂になってますよ!」

 

何ともよろしくない事になっていた

不正確な噂、それも自身に関わる事となればなお悪い

 

「私、会長が部長になったら必ず入部しますから!」

「応援してます!」

「あ、おい!」

 

1年生を呼び止めるも、彼女たちはキャッキャッと声を挙げながら走り去っていった

 

「良くない、良くないぞ」

 

本当は嬉しいのだ

かつては自分も所属した戦車道

その思いは今も変わっていない

だが、だが、だが

 

「(私はもう生徒会長だ)」

 

中学時代とは違い、学園艦の運営の一端ではなく全体を担わなければならない立場である以上、2足の草鞋を履いて、果たして実現できるものなのだろうか

彼女は自嘲する。私はここまで臆病になったのか、と

日頃の会議や選挙演説での居丈高な態度とは裏腹に、南は自身の事を疎かにするようになったといえる

今、彼女が戦車道に関わる術があるとすれば、戦車道連盟のホームページを見たり、動画サイトで数々の戦いを見て、心を慰める程度だ

 

「(ダメだダメだ。私は予算の分配と、各部各委員会に指示を出す事が仕事なのだ)」

 

そう思う心中に、彼女の意気地の無さが表れていた

戦車道と言う言葉さえ聞かなければ彼女はこう思う事も無かったのである

『是非、やらせてください』

 

 

 

 

 

 

次の日、いつも通りに授業を受け、生徒会室にて書類作成を行っていると乗り込んできたのは部長と委員長たちであった

 

「今日は会議の予定は一切無いはずだが」

「生徒会長!どうか戦車道の件引き受けてください!」

 

単刀直入に言われたその言葉に、南は無表情で見つめざるを得なかった

 

「確かに現在戦車道は流行りを見せてはいるが、ブームだけで人を集めても……」

「流行りで言っているわけではありません!」

「今後の、この自主管理教育組合に必要だからです!」

 

部長と委員長たちが訴えた内容はこうであった

 

・自主管理教育組合が性急な統廃合によって生まれたものは事実であり、一般生徒並びに各部各委員会の内部では出身学園艦によっての対立が少なからず存在している事

・自分たち部長委員長は出身学園艦がバラバラであるが南千歳によって、共に会議する事ができている。しかし、自身の部や委員会ではその対立を収めきれてはいない事

・南千歳が出身学園艦による混成の戦車道部を作り上げ、何かしらの実績をあげる事ができれば自主管理教育組合の対立解消に影響を及ぼす事

 

以上の3点である

 

「お願いです!生徒会長!」

「私どもの不徳による部分が多いのは事実です! しかし、このままでは自主管理教育組合がまたも分裂してしまいます!」

「………………」

 

請願と嘆願を簡単に切り捨てられるほど、南千歳は非情では無かった

しかし、では簡単に引き受けたとして戦車道と生徒会長が両立できるのか

彼女が昨日の教育組合の提案に即答できなかった理由の一つがこれであった

 

「しかし、私は生徒会長としての仕事が………」

「か、会長! 生徒会のお仕事は私たちが今以上に頑張ります!」

「会長が戦車道時代のお話をされている時、すっごい楽しそうでした……」

「会長だって生徒です!全ての生徒が笑顔の思い出を残せる自主管理教育組合!それがスローガンじゃないですか!」

 

生徒会の面々の言葉は何より南千歳の心を抉った

自身のスローガンが、まさか自身に帰って来るとは思わなかったからである

 

「なぁ、千歳。もっかいやろうや」

「照子……」

 

悪友の言葉に千歳は更に考え込む

だが、その顔はどこか冴えている。部長委員長生徒会役員はその顔を見て喚くのをやめた

軽井はそれを柔和な笑顔で見守っている。付き合いが長い故であろうか

おもむろに南は立ち上がり、眼下の自主管理教育組合の風景を一望する

 

「私は確かに戦車道の経験があります。しかし、それは1年も前の事。ブランクは勿論、勘も鈍り、この2年で結果を出す事は必ずしも容易な事ではありません。加えて、生徒会という役目そのものを放棄するわけにも参りません」

「会長……」

 

 

「条件がいくつかあります。部長はそこの軽井照子が就任する事。私は戦車道そのものの指揮を執る事」

「では、会長……!」

「戦車道の件、形を変えてお受けいたします」

 

自主管理教育組合戦車道部の創設はこのような経緯の下に生まれたのである

 

 

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