ガルパン オリジナル学園艦短編   作:京都府の南スラヴ人

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テキーラ女学園2

「こんな所にいたのね」

「レオンか」

 

今日行われた自主管理教育組合との練習試合は実りあるものであった

向こうも向こうで急ごしらえのチームと聞いていたが、互いに互いを撃破し、遂には隊長同士の一騎打ちであった

結果はこちらの敗北であるが、良い試合であったのは間違いないはずだ

 

「…強くなったわ。この試合で」

「あぁ」

「だけど、まだまだいける」

 

練習試合のおかげで、他の2校から新たに練習試合の要請が来た

バーラはそれに二つ返事で了解したと言う

これで良いのだ

 

「お前に聞きたいが、なぜそこまでバーラを英雄に仕立て上げる」

「革命を達成するため! なんて言えば心地よいものだけど、転校した以上はただの隊員では終われないと思っているからよ」

「落ちこぼれの掃き溜めって感じだなぁ。私はあそこから、お前はプラウダから」

「何なら黒森峰とサンダースから引き抜く?」

「これ以上、落ちこぼれを増やしちゃ救いが無いだろ。私たちはこうやって裏方でコソコソしておくのが一番なのさ」

 

バーラが内外から部の代表として扱われるのは、こうした両名の配慮によるものであったと言える

 

「そろそろ公式試合に打って出ても良いんじゃないかしら?」

「それを考えていた。2校から練習試合の申し込みがあるんだろ? そこで『良い試合』をもう一度してからだな」

「なるほど……バーラには作り笑顔をいっぱいしてもらわなきゃね」

「そうだ。バーラはまさにテキーラ女学園戦車道部の顔だ」

 

バーラの権限を以ってすれば彼女たち2人の意見を退けるなど簡単であったであろう

しかし、バーラは優しい女の子だ

この戦車道部『革命』の為に、提案と実行の立役者でもある2人の意見を無下にする事はできなかった

 

「先輩方、そろそろミーティングが始まります。部室までお戻りください」

「おぉ、副隊長。分かったよ」

 

副隊長は一礼をして、先に部室へと向かった

ダイナマイトとレオンもその後に続く

 

「聞きたいことがこっちも一つあった。お前は、この戦車道部の今後をどのようにお考えで?」

「言っては何だけど、あの副隊長がこれからを引っ張る事になるでしょうね。というより、あの子じゃないと困る」

「私達に唯一近く、そして学び取っている。問題は奴の後だが…まぁ、それは鬼が笑うだけだ」

 

副部長の泰然自若とした態度から、2人は何かを読み取っていたが口にする事は無かった

彼女は1年、戦車道の初心者であるが、バーラ、ダイナマイト、レオンの三者三様の特性をうまく呑み込んでいる

バーラは目の前の事でてんてこ舞いだが、それは後継者選びを気にしなくて良いと言う余裕がある故かもしれない

 

「みんな!今日はよく頑張ってくれた!負けたのは事実だが、戦力差を覆せたのも事実だ!また、明日から頑張ろう!」

「「「「「はい!」」」」」

 

部室に入るとちょうどバーラが部員を激励した時であった

ミーティング途中に入ってきた2人に怪訝な目が向けられる

 

「お前らなぁ、時間厳守だぞ」

「大目に見てくれや。試合の後はボーっとしたくなるんだから」

「後輩が見ているんだ。ダイナマイトはともかくとして、レオンまで遅れてもらっては示しがつかん」

「ごめんなさいね」

「まったく。さぁ、気を取り直して! 今日の試合では何と言っても副隊長とレオンのコンビネーションが……」

 

ミーティングでは、バーラやレオンから試合の分析を説明され、副隊長が明日以降のスケジュールを話す形で終了した

その間、ダイナマイトは外を見て上の空になっていた

特に誰も注意しないのは、ダイナマイトの性格を知っているが故であろう

 

「よし! じゃあ今日はこれで解散! 明日は休みにするから各自身体を休めるように!」

 

明日が休みという事もあって、部室を早々と出る者が多い

となると、残ったのはいつもの面子であった

 

「中々、様になってきたな」

「お前たち2人のおかげだよ。まだまだ規模は小さいし、戦車もそろっているというわけではないが……戦車道をしているという実感をようやく持てた」

「それは良かった。まぁ、私がやったのは戦車変えさせて、コメットに乗る用の後輩連れてきたぐらいだけどな」

「それだけでもさ! 吹っ切れることができたのはお前のおかげだし…あぁ、勿論レオンにも感謝しているぞ! 部員集めに、戦略上の指示、どれも私ではできないことばかりだ」

「ありがとう。だけど、謙遜はやめなさい。例え私のおかげだとしても、隊長はあなたなんだから」

 

不意に、部室の扉が開いた

帰った筈の後輩が息切れしている

 

「どうした?何かあったのか?」

「た、隊長! と、とにかくついてきてください!」

「え? あ、お、おい!」

 

後輩の笑顔に気圧されてしまい、腕を引っ張られていくバーラ

ダイナマイトとレオンも、何か示し合わせたかのように視線を合わせ、部室から出た

 

「皆さん! 連れてきましたよ!」

「連れてきたって……一体、何がってうわっ!」

 

練習場の外に連れ出されたと思ったら、唐突にカメラのフラッシュがバーラの視界を覆いつくした

 

「新聞部です! あなたが隊長のバーラさんですね! 先ほどの試合拝見させていただきました! とくに最後の一騎打ちなんかは……」

「バーラさん! さっきの試合すっごいかっこよかったよ!」

「生徒会広報の者です! 今後の試合についてご意見を……」

「え、え、あ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 

バーラは後ろでニヤついてるダイナマイトとレオンに詰め寄った

自分をここまで持ち上げようとするのはこの2人しかいないからだ

 

「お前らの仕業か」

「良い試合だったって事だ」

「弱小クラブが戦車を導入するには、というよりその大義名分を得るには、試合の実績より部員の数を集める方が楽なのよ。イメージ戦略は大事よぉ」

「だからと言って、これはやり過ぎだ! さっきの試合にしても勝ったわけじゃないのに……うわっ!」

 

頭を抱えるバーラを、ダイナマイトがギャラリーの前へと押し出した

 

「それでも良いのさ! なんにせよ、あんた名と顔はこの学校に知れ渡った!」

「お、おい!離せ!恥ずかしいだろう!」

「喜びな! あんたは今やテキーラ女学園の憧れとなった!」

 

ギャラリーがバーラを飲み込み、誰に肩車をされたのか祭り上げられていく

 

「私はそんなつもりで戦車道をしているんじゃない! ただ戦車道がしたいだけなんだ!」

「バーーーーーーーーラーーーーーーーーーー!」

 

ダイナマイトがバーラの名前を叫びあげると、ギャラリーのボルテージが一気に上がった

バーラの葛藤やプレッシャーなど誰も気に留めない

テキーラ女学園の急激な戦車道強化の原因は、この歪さにあると言えるのである

 




誤字脱字、おかしな表現などございましたら、ご指摘していただきたく存じます。

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