このふざけた世界の真ん中で   作:夏色猫

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episode1 記憶を失くした少女。

…痛い。

いきなり胸部に激痛が走る。

どうやらその激痛の原因は

私を貫いている刃のような物の様だ。

視線を前にやると赤髪の少女が私を貫いていた。

痛い。痛い。

どうしてだ?

私はいつも通り星を見ていただけなのに

どうして、こうなってるんだ…?

「やめて」

と、口を動かそうとするか動かない。

痛い。痛い。痛い。

抵抗しようと必死に動かすが指先がピクピクと動く程度でそれ以上は動かない。

痛い。痛い。痛い。痛い。

胸部に突き刺さった刃が徐々に腹部へと降りていく。

私を切り裂いていく。

一番下まで刃が降りた時私の痛覚は完全に死んでいた。

 

「なんだこいつ…まだ生きてんぞ」

 

槍を持った少年が私を見つめる。

 

「は…?」

 

私を斬った少女がまた近付いてくる。

 

「や、やめ…」

 

最後の力を振り絞って少女に命乞いをする。

 

「…お前…一応私はお前の心臓貫いたはずだぞ…?」

 

「…そ……。」

 

「臓器だってほぼほぼ落ちてんだぞ?痛みだって凄いはずだぞ?なんで生きてんだ…?」

 

少女が足が徐々に近付いてくる。

 

「ん…な……知る…か……」

 

私は少女の足を思いっきり掴んだ。

 

「ちょ…お前なに…」

 

そして自分の方向へ思いっきり引っ張った。

勢いよく少女が後方へ転倒する。

 

「…痛い。」

 

「ざまぁ…」

 

私はそのざまを思いっきり嘲笑ってやった。

すると、後ろで見ていた少年が私の方へ近づいてきて軽々と私を抱えた。

 

「兄さん…?なにやってんだ?」

 

少女は睨みをきかせ少年を睨む。

すると少年は静かに

 

「本邸へ持って帰って手当する。」

 

ー手当…?

 

「は?何言ってんの!?私らはそいつを抹消するように頼まれてここに居てんだぞ!?」

 

少女が声を荒らげて立ち上がった。

 

「あぁなるほど…お前はそう言われてたのか。おけ。納得した」

 

「は…?ちょ…意味わかんないんだけど!!」

 

ー本当にどういうこと…だ?

殺さないのか…?

…でもまぁ…どういう形であれ、助かるならそれでいいや…

 

助かる。

そう思うと安心してしまったのか私は意識が糸のようにプツリと切れるのを感じた。

そして何故か私の意識が一瞬戻った時、少年が凄い急いでたのか知らんがすっごい揺れてたのが何となく分かった。

 

ー明るい…。

 

次、私が意識を取り戻した時真っ先に視界に入ってきたのは明かりだった。

そして目を開けた瞬間とんでもない激痛が身体に走る。

 

「ッ!?!?」

 

ーあっやばい死ぬ。

頭の中に「死」と言う文字が浮かんだ。

そして、私が予想だにしなかった痛みに苦しんでいる(例えるなら中途半端に殺虫剤かけられた死に際のゴキブリみたいな絶妙に気持ち悪い動き)と

 

「おぉー、目が覚めたか…」

 

お前誰と言おうとしたが痛すぎてまともに声を発することが出来ず「あ、」とか「うぅ」と言うもはや声とは呼べない声を発することしか出来なかった。

 

「俺誰かわかる?」

 

普段なら知らんがなって叫びたいところだが声が出ないので取り敢えず首を横にふった。

 

「一応助けたんだけどな。」

 

目の前の少年が早口でそう言うと後ろの襖からトントンとノック音が聞こえた。

 

「兄さん入るぞ」

 

そう言いながら赤髪の少女が部屋に入ってくる。

私はその姿を見て部屋の端っこの方へと転がった。

ー今度こそ殺される…。

すると、私を殺そうとした少女が

 

「大丈夫か?……本当に申し訳なかった。」

 

と凄く泣きそうな表情で謝ってきた。

 

「取り敢えず…事情を説明しようか。マスター」

 

マスター。その名前を何回も聞いたことがある気がする。

少し気持ち悪いなと思っていると少年が私を起こし座椅子に座らせた。

 

「ねぇマスター。自分の名前、何かわかる?」

 

痛みが少し和らいだ気がする。

何とか声を発することが出来た私は自分の名前を彼女に告げた。

 

「東雲…香澄……。」

 

「そう。貴女は東雲香澄。私たちの前ではマスターと言っていた。」

 

…そういえばそんな気がする…。

 

「…ねぇ。マスター。本当になんにも覚えてないの?

あの一件以来貴女はここに帰ってくることは無かった。

あの時何に巻き込まれたの?」

 

彼女が震えた声で私を揺さぶる。

痛い。凄く痛い。

痛すぎて涙が滲み出てきた。

 

「ハルミ…やめとけ…。」

 

少年が静かに少女を引き離した。

ハルミと呼ばれた少女はガタガタを震えて泣いていた。

 

泣きたいのはこっちだ。

天体観測してたらいきなり後から切りつけられて

殺すのかと思ったら殺さないし

最終的にこんな意味わからないところに連れてこられてすごい痛い思いするし…

 

なんで私がこんな目にならないといけないんだろう。

そう思っていると目の前の少年が

 

「マスター。…最終信号-ラストオーダー-。これに心当たりはないか?」

 

最終信号と言う言葉が耳に入るとさっきまでの思考はすべて消えさった。

ー最終信号…。マスター…。

何か大切なことを忘れている気がする。

大切なことのはずなのに思い出せない…。

もう少しで…思い出せる気がするのに…。

…思い出せる気が…思い出せる気が…しない…。

あとひとつ…なにか重要なことを忘れているような気がする…

ー気持ち悪い。

…そう思った瞬間、私の視界はまるで水中で目を開けているかのように歪んだ。

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