DS - ダイアグラナル・ストラトス - 作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)
まだ月イチだから大丈夫だよね?(震え声
今回は色々まいてたフラグとか暗躍の回収ですが、かなり駆け足気味。
自分的に必要分は回収したつもりですが、穴が見つかったら後日修正するかも知れません。
それぞれの思惑と欲望を原動力に、仮想・現実を問わず、世界は静かに、しかし確実に動いていく。
打算や利害の一致によって手を組む者、漁夫の利を狙って傍観する者――様々な思惑が行き交う中、ジャーナリストの一人である
「こうして見ると、彼って凄いのね」
「僕も一時期は対抗意識を持ってましたけど、あのバケモノっぷりはマネできませんね」
彼女のサポートとして雇われた青年、
彼はかつて、GGOではゼクシードというプレイヤーとして、良くも悪くも名を馳せた人物だ。
GGOが吸収されて以降、DSOではそれまでの偽情報を扱ってのし上がるプレイから一転、
知人の
「こっちが知ってたのは戦績ぐらいで、戦闘時間3480時間。対戦成績は4902勝2352敗。勝率だけなら普通だけど、負けた数は始めた頃のばかりで、今はほぼ負けなし」
この辺の情報はDSOの公式HPに記載されているので簡単に確認できた。戦闘の推移もグラフ形式で見やすく、どれぐらいの頻度でプレイしているのかも見れるというのもDSOの魅力の一つで、
「ランクもかなり上がってますよ。
その情報だけでもメディアがどれだけ盛り上がるか。
彼を取り込んだのは間違いなかったと
「学業成績も全国50位以内にいるとか本当に
彼が所有していた過去の戦闘。それをAR上で縮小展開して再生してもらったが、
機体の性能差なし、ブレード1本という条件での対峙。
ブレード1本で世界最強に至った人物に挑むにはあまりに不利な条件だと思ったが、聞けば千冬がイチカと対峙するにあたり、条件を
その対戦も開始10秒で千冬がブレードを折られ、返す刀で首筋に剣を当てられ
その鮮やかさは、かつてモンド・グロッソで千冬が行った対戦よりもスマートで美しく、何よりお互い無駄な
「あの戦闘を見た後であれば、この戦績も
「対戦以外にも、ストーリーミッションをソロでクリアしたのが8つ、他にマルチミッションのソロクリアが12、
彼個人の戦績を集めてみれば
特にストーリーミッションのソロクリアなど、内容を聞いたら正気を疑うか、手の込んだ自殺にしか見えない。
ストーリーミッションは、SAOでいう所の迷宮区とボス戦の連続で、本来であれば100人規模の大部隊を率いて行うものだ。それをたった一人で攻略するなど、現実に置き換えれば国対個人の戦争と同義。
ソロクリアのレコードプレイヤーは結構いるらしいが、それでも1つか2つが良い所で、8つもクリアしてるイチカはベクトルは違えど、
「でも彼ってアビリティ、だっけ? それを使わないのは何故かしら?」
「アビリティは
クールタイム自体は長くても15秒ぐらいなんですが、イチカはそれら
そこまであからさまに上がらないワケでもないんですけどね、と苦笑する。
「なんでそんな面倒な事を……」
「生活かかってるそうです」
「――なるほど」
納得した。それはもうもの凄く。
誰しも生活に直結するのであれば、色々と手を尽くす。
「それで趣味が高じてまとめサイトと論文ができた、といった所かしら」
「少し違いますね」
言いつつ、茂村は手元のノートPCを操作。装着しているオーグマーを指差すと、翠も首から下げていたオーグマーを装着。空中に幾つかのウィンドゥがAR展開された。
「まとめサイトは当初こそ別の人物が管理していたんですが、当事者が亡くなった為、イチカが引き継ぐ形で運営しています」
「引き継いだ?」
「今でこそイチカの相棒はランクスですが、それ以前に二人をまとめていたプレイヤーがサイトの管理をしてたんです」
それは初耳だ。
こちらの持つ情報では、イチカは基本ソロプレイで活動し、相棒のランクスは機体製作の依頼でコンビを組み、たまに来る依頼で協働する。という話ではあったが、それ以外の協力者がいるなど聞いた事がない。
「ま、そこは今関係ないので割愛しますね。
戦闘に関する論文自体はちょいちょい公開してたんですが、本格的に始めたのは1年半ぐらい前――モンド・グロッソの悲劇に巻き込まれ、退院した頃からです」
「……あの
おそらくは、と言いつつ、別ウィンドゥを複数AR展開。時系列にあわせてイチカが作成した論文が展開されていく。
「モンド・グロッソの悲劇に
その他にも市街地などで起きるコラテラル・ダメージ、つまりは巻き添え被害や
その分野に手を出すだけでも
人質救出などの分野は軍事・刑事の分野に思われがちだが、実際は心理学に分類され、古代ギリシャの頃から人類は研究を重ねている。
そこに手を出せば必然的に生理学や神経科学にも手が伸び、社会学や人工知能にも視野が広がる為、自然とメカトロニクス技術にも明るくなる。
その知識があるからこそ、DSの機体製作の依頼が来るようになったのか。
「……私、彼の強さの根幹を
彼がDSOで強いのは、単純にゲームで勝つ為に研究しているのではなく、DSOを通じて『戦闘』や『闘争』という
そして、だからこそ彼の戦闘内容が理解できる。
アビリティを使わないのは現実の延長と仮定し、一対多数の戦闘は孤立無援からの脱出、もしくは戦場そのものを単騎で終了させる方法を模索していると考えれば説明がつく。
同時に、千冬が彼に負けたのも理解できる。
彼女はあくまで『試合』の延長であり、彼は対戦ではなく『戦闘』と認識していたから負けた。だから早期に相手の武装を破壊して無力化し、降参させるように仕向けた。
これらの
もしくは、あの事件がトラウマになっていて、DSO内でそれを
「もし彼がISを理解し、選手だけでなく、機体製作も出来るようになったらどうなるのかしらね」
想像するだけでもその結果が全く見えない。
戦闘の技量もそうだが、最も恐ろしいのは『闘争』というものを理解できる下地がある事だ。
旬の話題と思って探ってみれば、とんでもない爆弾を見つけた気分だ。探れば探る程、一介の中学生では納まらない功績が出てくる。
そこまで考えてハッとする。
これだけの結果を出しておいて、第三者が目をつけないなどあり得ない。
「ねぇ、彼はプログラムとか、そういうものでも結果を出してない?」
「出してますよ。さっき見せた戦闘記録のAR展開、基本プログラムはイチカの作品ですから」
あっさりと出された答えに愕然とする。
「それは彼個人が作成したもの?」
「バイトで作成したって聞いた事がありますけど……どうしたんです?」
茂村からしてみれば、このプログラムは放送のタイムシフト機能の様な認識だろうが、応用次第では事故現場のAR検証や仮想実験の確認など、様々な可能性を秘めている。
それをバイトで作った、などと言われて驚くなという方が無理だ。
「彼のやって来たバイトの記録とか調べられない?」
「やってやれない事はないと思いますが、どれを?」
「調べられる限り全部よ!」
「は、はい!」
翠の剣幕に押され、茂村はノートPCを必死に操作する。
全てが明らかになるのは、もはや時間の問題だった。
「今回の件、本当に感謝するぞ。
「ま、来るだろうとは思ってたからね」
とあるビジネスホテルの一室で、ローラことラウラ・ボーデヴィッヒ、エクエスこと御手洗 数馬が現実で邂逅していた。
数馬は紺のジャケットと同色のスラックス、白のワイシャツにチョーカーを当て、パッと見ホストかクールビズのビジネスマン風に仕上げ、ラウラは長い銀髪を翠のリボンで緩くまとめ、白をベースにしたノースリーブのセーラーに翡翠色のスカーフ、白のホットパンツと、涼しげな中に幼い色気がある。
街中で見かければ、男はまず放っておかないだろう。
「本国でやってしまうと足がついてしまってな」
「それは正解だと思うよ。どうにも最近、お客さん多いから」
宿泊先のビジネスホテルは数馬が手配したものだ。
ドイツの方で手配してもよかったが、それだと他国の方に警戒される。それ故、ラウラはDSOの方でエクエスに連絡を取り、数馬の名前でホテルを押さえてもらった。
ラウラの来日は表向きは夏休みの観光という名目で、実際はイチカの周りがキナ臭くなってきたのを察しての護衛が目的だ。
「お姫様が来た、って事は、やっぱりあの噂は――」
「真実だ。残念ながらな」
一夏が表に出て10日。DSOでエクエス達が動いてからあまり日を置かずに来日したので、実際それだけ大変だったのだろう。それに気づいた数馬も深いため息を
「一夏がそれだけ凄い事をしてたのを驚けばいいのか、呆れればいいのか」
「その両方だろう。そのお蔭で各国に潜んでいた膿が大慌てだからな」
隠す事なく悪態をつく。
お互い、イチカがDSOを介してプログラム関連のバイトをやっているのは知ってるし、DSの機体や武装の製作を依頼したのは一度や二度ではなく、その技術の高さも嫌という程理解はしていた。
その下地があるからこそ、DSOで中堅クランのゾルダートが
正直、一夏の功績は善悪の判断がつかない微妙な所だ。
「一夏はバイトでメカトロニクス関連のバイトをしてたけど、噂通りその報酬が酷かったのがバレた、と?」
「ことはそう単純じゃない」
言いつつ、手元のカバンから旧式のタブレットを取り出す。
AR展開しないのは、それだけヤバい話なのだろうかと思いつつ、差し出されたタブレットに目を通す。
「話はイチカがISを起動して二日ほど経過した頃だ。バイトを依頼してた連中がネット上で集まり、イチカの功績を確認した。そこで見つかったのが、ISに関する新技術」
「あー、なんとなく話が見えてきた」
「見つかったのは第3世代以降の特殊兵装とそれに付随する各種基礎理論。更には第4世代にも言及する論文などが見つかった」
出てきた話にゲンナリする。相当な技術が見つかるとは覚悟していたが、まさか最新のIS技術、その更に上をいくものが出てくれば、そりゃ大騒ぎにもなる。
「それだけでなく、一部の技術は既に各国のIS研究機関で自国の技術として登録され、既に実装テストに入っているモノすらあった」
「カモネギどころか、鍋道具一式セットで背負ってる様に見えてくるだろうね。向こうとしては」
「カモネギ?」
意味が解らずラウラがキョトンとすると「スープの具材がまとめて手に入る事だよ」と言われ、状況の言わんとしている事を理解する。
「まぁともかく、それだけの技術を作ったはいいが、
言いつつ、タブレットをスクロール。そこに報酬が書かれていたが、その額は数万円程度。素人目で見ても、その額はあまりにフザけた値段だ。
「それで一夏の暗殺とか計画された?」
「いいや、この機を利用して自国のコゲ付きもまとめて始末する算段に出たらしい。
これら技術の依頼元は被害者を
更にスクロール。そこには2年前に起きたモンド・グロッソの悲劇と、一連の救助活動が記載されている。
「モンド・グロッソの悲劇が起きた際、支援会が設立されたのは?」
「知ってる。どこだったかの女性権利者が中心になって設立されて、各国政府も協力して
ラウラが首肯。タブレットを操作すると、毅然とした女性が現れる。
「リピア・ザンケール。イタリアの共和国元老院の議員だ。彼女が中心となって支援会が設立され、多数の命が救われた。
彼女はこの功績をもって民政議員から終身議員に
彼女はそれ以外にも、イチカの技術を各国に切り売りしている」
「それ以外にも、マフィアやいくつかのPMCにも顔がきいて、DSOのクランにも幾つかコネがある、と」
意外な繋がりに「知っていたのか」と驚きの声を上げる。
「あの日から、DSOの方でヴェクター率いるディビジョンと連携しててね。ランクスも一枚噛んでる。
そのつながりで彼女の名前を耳にした」
「ランクスのヤツ、私の方にも連絡していたぞ?」
幾らデュノアの御曹司と言えど、先読みの深さが尋常じゃない。現実と仮想でどこまで動いているのか。
あちらもあちらで探せば色々出てきそうだが、今はそれを気にしている余裕もない。
「その辺は長くなるから、とりあえず一夏達と合流してから説明するよ。今話すと二度手間になっちゃうし」
「わかった。しかし今のイチカと会えるのか?」
「その辺は大丈夫。昨日の内に遊びに行く旨を伝えてあるから。ヴェクターも来る手筈になってる」
助かる、と言った所でラウラの携帯端末にメールが来た。
それをARマップにリンクさせ、数馬にも情報を共有させると、合流する相手が誰なのかわかった。
「クラリスも来たんだ」
「彼女は日本文化にも詳しいし、何よりイチカとも面識があるからな。いろいろ助けになっているぞ?」
その知識が問題っぽいんだけどな、とは思うが口には出さない。それはラウラ自身も理解しているだろうし。
「ところで、護衛と言っても、準備はあるの?」
「ちゃんと用意してある」
右手首にある、赤を基調とした2本のブレスレットを見せる。待機状態のISだ。
「第2世代の、
「ああ。イチカの分を含め3機用意した。
確かに、あらゆる意味で最終手段である事には違いない。それだけ難しい状況に陥る可能性はあるとはいえ、
最悪、モンド・グロッソの悲劇が
「ホント、ランクスの言う通りだ。
丸く収まりそうもないや」
ラウラが来日したのと同じ頃、オータムもまた来日していた。
先に潜伏していたエージェントが借りているアパートに陣取り、渡された資料に目を通している。
「ったく、ガキのする事じゃねェな」
見れば見るほど織斑一夏の功績はヤバい。
第3世代ISの技術のみならず、第4世代、ともすれば第5世代に準ずるモノさえある。それらの技術に目を付けた技術者達は先見の目があると言えるだろうが、その扱いが
「おい、なんで事件が起きる前から
「当初は
その後、技術力の高さから、彼を取り込む際に人質として使える様、凰 鈴音もターゲットに」
「なるほどな」
かのブリュンヒルデの
凰鈴音は
「で、作戦内容は?」
「マスコミの方に潜伏しているエージェントが明日の朝刊で織斑一夏の功績を公開。その混乱に乗じて動くであろう各国のエージェントを牽制しつつ、織斑一夏、篠ノ之 箒、凰 鈴音の3名を護衛しつつ、国外へ移送。
その後、織斑一夏は希望する国へ移送し、篠ノ之 箒、凰 鈴音の2名は希望があれば元の生活に戻し、我々は引き続き護衛と監視を」
現時点で織斑一夏の拉致は、何かとまずい。
逆に護衛して貸しを作り、それを理由に後々協力させるのが賢明だ。
篠ノ之 箒、凰 鈴音も手を出せば何かとまずい。前者は篠ノ之博士が、後者は織斑一夏に悪印象を持たれてしまう。篠ノ之博士を表社会に引っ張り出すのに、こちらをマークされるのは悪手だ。
「OK、動くタイミングは二日後ぐらいか」
「はい。それまでオータムは私達の友人、という事で潜伏してもらいます。それと、これを」
差し出されたのはどこかの企業のID。ご丁寧にスコールの写真も添付されている。
「IS装備開発企業『みつるぎ』の
先日、本人がこちらの周りを嗅ぎまわっていた所を処分し、IDを手に」
都合よくいい獲物が来てくれたものだ。運が向いてきている気がする。
男が見れば釘付けになるであろう笑みを浮かべ、スコールはそのIDを手に取った。
「口調は――これでいいかしら?」
口調と共に、動きすら洗練された女性のものへと変わる。
それまでの粗野な女性の姿はどこにもなく、ともすればモデルと言われても違和感はなく、一瞬で化けるオータムに、エージェントは少し面食らってしまう。
「驚く程の事でもないわ。これぐらいは少し練習すればできるから」
「……そうですか」
女は化けるとはよく言うが、これはもはや別人格というレベル。それでいて元のスコールがそこかしこに残っているのだから、エージェントとしては“そういうもの”として納得するしかない。
「では、時間も頃合ですし、晩ご飯にしましょうか。今夜は私が
ようやく序章の折り返し地点。暗躍パートさん達の話はここで区切り。色々妄想してもらえれば幸い。先読みできない展開であればもっといいw
次回は一夏側に戻るのですが、時系列的にはちょっと戻ります。
具体的には00-07の続きとなり、『その頃のいっくん達』になる予定。修羅場になるのか、それともピンク案件になるのかは謎。
というか、いつになればいっくんがIS装着する所までいけるのやら(^^ゞ
ついでに補足
桐ケ谷 翠:言わずと知れたスグのママ。今後ちょこちょこ出てくる予定。
もう一度言いますが、桐ケ谷 和人はいませんよ?
茂村 保:GGOで真っ先に殺されたゼクシードの本名。
GGOなくなったんでニートではなく、泣く泣くバイトしてる設定。意外な人物とコネあります。
ロート:ドイツの第2世代IS、独自設定で登場。
原作だと第3世代は出てるけど、第2世代見つかってないので、そこを利用して救援機に。
クラリス:DSOクラン『ゾルダート』のメンバー。
いったい何リッサなんだ……
リピア・ザンケール:SAOアリシゼーションに登場する女性暗黒騎士。ここでは名前だけ拝借した全くの別人。
多分、最後の最後まで名前だけ出て終わる人。
あまり需要はないかも知れませんが、後日、活動報告で各キャラの衣装のイメージブランドを紹介する予定。
他の人はやっぱり原作衣装優先なんだろうか? それともそこまで気を回さない??