DS - ダイアグラナル・ストラトス -   作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)

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序盤の最終戦その2。
少し(?)派手な風呂敷の畳み方になりました。
なぜか「下」で終わらず増えていく文章量……


00-26  Wild Flickerei - 中

「やっぱり、こうなっちゃったか」

『アレはいうなれば()()()DS――いえ、今はISですか。相手が準備をすればするほど相手が不利になる、存在そのものが理不尽な兵装(オーバードウェポン)ですから』

『一夏が状況を打破したのだ。あとはこちらと合流し、こっちの連中に後始末を任せればいいのではないか?』

「そういう問題じゃないんだよ、ちーちゃん……」

 

 この騒動に目処(めど)がつきつつある状況に、ラウラと千冬の思考は後始末の方にシフトしつつあるが、束の方は頭を抱えっぱなしだ。

 ビルト・フルークという時点で嫌な予感はしていたが、モニターに表記されている名は『ビルト・フリッケライ』――DSOでビルト・フルークが形態移行(フォームシフト)し、超高機動型万能機として覚醒した本来の姿。

 DS(アレ)がISとして再現されるのは、束が考えうる中でも最悪を超えて兇悪。

 あの機体の前では距離という概念も、数の有利も、地形という状況すら関係ない。あらゆる全ての戦況を単機で蹂躙(じゅうりん)する、ISの形をした“圧倒的理不尽(アームズフォート)”。遠距離攻撃は通用せず、物量で埋め尽くしても(くつがえ)され、近接は同等の技量を持つ者でなければ無意味。距離を取っても持ち前の超高機動から逃げ切れず、搭載された()()()()()と言われる『錬金箱(トイ・ボックス)』が稼動し続ける限り、エネルギー切れやダメージすらただの演出(ペテン)になり下がる。

 あれを使用する限り、一夏は敗北の二文字とはほぼ無縁の存在となる。DSOならともかく、現実であの巨大兵器(デカブツ)を完膚なきまで叩き潰した以上、一夏は世界唯一の男性ISパイロット以上の価値と脅威(きょうい)を示した事になる。

 

「まったく、アイツは死んでも尚ロクでもないものを」

『死者をそう()(ざま)に言うものでもないだろう。幸い、市街地に主だった被害はないし、こちらが頑張れば何とかなるのではないか?』

 

 千冬が言う通り、このまま何事もなく事態が収束に向かえば日本政府の対暗部やドイツの連中がいろいろ動いてくれるだろう。が、何もかもが中途半端なままこちらに有利に動きつつある今の状況がひっかかる。

 魔王()の方が束をはじめとした大人組よりも一歩も二歩も先を行き、魔王が()きつけた対暗部やドイツは用意された筋書き(シナリオ)に従うだけで状況をひっくり返し、一夏はこうなる事をわかっていたかのような単独行動。状況のせいで後手に回ったとはいえ、それより先んじて動いていた束達など、この場では完全にお荷物(イレギュラー)

 (こちら)が下手に動けば、一夏のみならず千冬も危うい立場になりつつあり、未だそれを理解していない千冬を説得する事に苦労した程で、今更ながら千冬を巻き込んだ事をちょっと後悔している。

 

「情けない話だけど、事後処理に関してはヴェクターが用意してくれた状況に頼るしかないか。念の為、アメリカの(イヌ)ッころにはお遣い頼んだけど」

『デボラとかいう奴か。何を頼んだ?』

「歩兵を管理してたCP。束さんの予想では輸送船とかに偽装したものだと思うんだけど」

『弾もマジェスタ(クロエ)に同じ事を言っていたな。それでマジェスタがこちらを離れて動いているようだが』

「魔王の方が先に気づいてたか。事態が収束次第、ドイツや対暗部だけでなく、魔王とも顔合わせする必要がありそうだね」

 

 言いつつ束は嘆息(たんそく)する。

 これからの事後処理に束達も巻き込まれるのかと思うと、ため息の一つもつきたくなる。

 

『まぁ、そう悲観する程でもないでしょう。イチカにとって、アレは“この状況で使える機体の一つ”でしかないのですから』

 

 本来の意味は全くの別モノだという事に気付かないまま、含みのあるラウラの言葉も脳筋的発言に思えて「さすがはちーちゃんの弟子」と束は呆れた。

 

 

 

***

 

 

 

 コンテナ船に偽装したCPは予定通り出港し、1時間足らずで本土から50キロの地点、排他的経済水域にまで移動。コンテナ船としては一般的な速度だ。

 海防どころか篠ノ之博士でもこれを見破るのは難しいだろうというのが指揮官の判断で、日本の領海外(200海里)へ抜けた所で外装をパージ。そこで()()()()()()が発動した(のち)、ドサクサに紛れて最大速度で離脱する予定だった。

 

「現地部隊、抵抗勢力に無力化されました」

「意外に時間稼ぎはできたか。織斑千冬(ブリュンヒルデ)はまだ現地に釘付けされているか?」

「ロシア部隊が情報の精査をする為、現地で展開した織斑千冬と接触。その際、例の未確認(イレギュラー)と戦闘し、ほぼ全滅したアメリカの部隊が合流。こちらの影響が及ぶのは不可能なようです」

「チッ、現場の判断を優先させたのが(あだ)となったか」

 

 実際は使い捨てと割り切ったISパイロットをこちらに抱き込まなかったのが原因だが、既に起きた事に文句を言う事なく、指揮官は思考を切り替えて次の策を考える。

 

「作戦の進捗(しんちょく)は?」

「向こうは()()()と接触し最終シークエンスに移行。発動まで残り240秒」

「よし、作戦の発動を確認次第、本命を使用。こちらは――」

「レーダーに反応。3時方向にISが1機!」

「ッ!? 全ての出力を通常出力まで落とせ。こちらの存在を気づかせるな!」

 

 指揮官が慌てて指示を飛ばし、クルーは出力を調整して普通の輸送船と同等の出力まで落とす。日本の領海内とはいえ、幾つもの船舶が海上を行き来している。普通の輸送船に偽装してしまえば、この中から正解(こちら)を見つけるのは難しいはずだ。

 

「映像、出ます」

 

 東から飛来するISのシルエットが通常ズームでボンヤリと映し出され、指揮官は相手を見極めようと目を()らす。

 飛来する機体はかなり(いびつ)で、左右のシルエットは非対称。飛行も安定していないのか微妙にふらついていて、どうやら相手は手負いらしく、その姿が視認できるほどのサイズになるまで近づいてきた。

 

「応急処置を受けたIS、か?」

「データ照合。アメリカの第2世代機『アラクネ』と判明」

「チッ、亡国企業(ファントム・タスク)か」

 

 ダメージを受けているという事は、例の未確認(イレギュラー)と戦闘したドサクサを利用し、アメリカの勢力として篠ノ之博士の元に(くだ)ったか、もしくは応急修理をする代わりに小間使いとして動いているのか。

 どちらにせよ、こちらにとってかなり不利な状況に(おちい)っている事に変わりはない。

 

(どうする?)

 

 指揮官は考える。偽装を解除して全力で逃げるか、アラクネがどこかに行くまでやり過ごすか。

 手負いのIS1機、どうとでもなるような装備ぐらいは積んでいるが、あれが誘い(ワナ)という可能性も捨てきれない。逡巡(しゅんじゅん)してる間に、事態は更に深刻になっていく。

 

「8時方向よりISがもう1機」

「なに!?」

 

 別ウィンドウで視認された薄紅色を基調としたISは、長い飛行機雲を引きながら、超高速でこちらへやって来て――

 

所属不明のIS(アンノウン)、こちらをロック!」

「外装を爆発させてパージ、同時に煙幕を展開して沈没を装え!」

 

 指示された通り、爆発を使ってコンテナを海上に放り出しつつ、黒い煙幕を炊いて本体は半分海中へ沈めながら、徐々に外装をパージしていく。周囲の船舶には攻撃されて沈没していくように見え、海上に浮かぶパーツはそれを助長させる。

 指揮官の予想では、新たに現れたISは亡国企業のIS(アラクネ)とは面識がないか、もしくはどこかの場面で邂逅(かいこう)していたとしても信用・信頼関係には至っていないだろうという読みだ。これでどちらが攻撃したのかと疑心暗鬼(ぎしんあんき)になり、その(すき)を利用してこの海域から離脱する算段だった。が、相手が悪すぎた。

 

「所属不明のIS、一件該当(ヒット)。数日前から非合法組織を潰していた例の機体です!」

「!? 再度スモークを発射しつつ、周囲の船舶と2機のISに向けてスモークを含めた全てのミサイルを発射しろ!」

 

 クルーは迅速に行動を開始。10秒とかからず二度目のスモークを射出して煙幕の範囲を拡大、海上に(ただよ)うコンテナは煙幕で隠れるが、その中から数百発のマイクロミサイルが半分以上ロックオンもしないで四方八方に射出。

 それに気づいたアラクネが慌てて武装を展開。周囲に向かって飛び交うミサイルを撃ち落とそうとするが、的が小さい上にダミーのミサイルはスモーク弾。いやらしい事にスモークは黒だけでなく赤白青とカラフルに咲き乱れ、撃ち落としたミサイルの爆風も相俟(あいま)って爆煙が東北に向かって広がっていくが、広がるのは一方向だけ。南西は不気味とすら思えるほど何も起きていない。

 

「レポートにあった、あらゆる兵器を無力化する攻撃か」

 

 対峙したものは対人であれ対ISであれ、あらゆる武器・装甲が砂へと変えられる、らしい。大型の装甲車も数台まとめて砂に変えられたという報告もあったが、その攻撃が広範囲なのか単体識別なのか、判断できる情報が少なすぎる。

 煙幕が広がっているのは太平洋に相対する東側、対して何も起きてないのは日本本土に向かう西側。バカ正直に煙幕側に逃げたとしても手負いのISだけとは思えず、かといって太平洋に向かって逃げれば即座に発見されて砂に変えられる。

 迷う場面ではあったが、指揮官の判断は早かった。

 

()()を北西と本土(西)に向けて射出。同時に機体を6時方向へ!」

 

 機体は南を向けつつ、海中に向けて魚雷のようなものを8基放出。ソレは水深10メートルを越えた所でクルリと反転、異様な速度で北西と西の2方向に4基ずつ扇状に拡がり、プロペラもジェット噴射もなく移動する。

 その加速は海上に飛び出す時点でマッハ1を越え、その全貌(ぜんぼう)が明らかになった所で外殻(カウル)をパージ。主翼と尾翼が展開し、小型の戦闘機に変形して更に加速。海上から3メートルという超低空飛行で時速3000キロ(マッハ2.5)に到達し、盛大な水飛沫(みずしぶき)を立てつつ、地表で雲海(うんかい)を発生させていく。

 偶然か意図的か、その水飛沫と雲海がISのハイパーセンサーを狂わせ、アラクネの脇を通り過ぎようとするソレに狙いを切り替えるが、いかなISとて地表で音速を超える飛翔体を(とら)えるのは不可能だったか、銃弾はその陰を追う事すらできずに4基全てが本土に向かって突き進んでいく。

 一方の北西に向かった4機は、同様に雲海を生み出しながら北海道方面を目指して進行していたが、その雲海は途中から消しゴムでもかけられたかのように途切れ、上空から見るとその線は曲線を(えが)き、扇状に展開する2機に命中。

 機首部分を叩き折られた2機は、自らの加速によって生まれた音速の壁に()(すべ)もなく、回転しながら粉砕されていき、予想通り所属不明のISは残る2機を追いかけ、アラクネも飛翔体がなにかヤバい代物(シロモノ)だと判断したか、不安定な動きながらも現状の最大速度を出して追いかけつつ攻撃をしていくが、その攻撃が偶然にも1機に命中。銃弾は胴体を撃ち抜くが、雷管を打ち抜いたのか大爆発を起こす。

 長距離弾道ミサイル(ICBM)を連想させる程の爆発に、アラクネのハイパーセンサーが爆発範囲を予測。情報ではICBMよりも爆発熱量が低く、衝撃波(ソニックブーム)も広範囲ながら圧力が低いなどの情報から、アンホ爆薬(※1)を応用したミサイルと判断。それでもたった1機の爆発で海面に100メートル以上の大穴が()き、大穴が戻ろうとする反動で大波が発生する。

 

(――ここだ!)

 

 所属不明機は北に向かったモノを追いかけ、アラクネも本土(西)に向かっている。このタイミングが好機と判断し、クルーに指示を飛ばす。

 

「発生した大波に乗って最大加速。タイミングを逃すな!」

「了解。――カウント5秒前」

 

 カウントが減っていく間も指揮官はレーダーを注視し、予想通り射出した機体(モノ)を追いかけて2機のISがこの海域から離れていくのを確認。同時にやって来る大波と抜けていった衝撃波の影響もモニター。加速した先に衝撃波があれば、それ自体が音速の壁となって減速(足枷)するのを防ぐためだが、そこで意外なものを発見する。

 

「南南西から来る飛翔体(モノ)はなんだ?」

「IS? しかし出力が……」

「カウントゼロ。離脱します」

「ま――」

 

 待て、という言葉は一歩遅く、指揮官から見ても最高のタイミングで海中から発進。偽装したタンカーから解き放たれたその姿は、巨大な剣を彷彿(ほうふつ)とさせるシルエットだった。

 全長257メートル、幅32メートル、高さ27メートルというソレは、シャトルというには機体高があり、空母というには長すぎる。18基にも及ぶPIC発生器と大小8基のブースターを起動させ、大波をジャンプ台にしてまるでスリングショットのような勢いで空中に飛び出し、収納されていた主翼を展開して更に加速。

 海面で時速4760キロ(マッハ4)の速度で高波と勘違いするような水飛沫を上げて一直線に南を目指すが、謎の飛翔体が軌道を変更し、こちらに向かって来た。

 

「迎撃、いや退ひ――」

 

 指示を飛ばすより早く、飛翔体と交差したかと思った直後に右翼が消失。何が起きたかを気付く事すらできず、ブリッジ内がしっちゃかめっちゃかに引っかき回され、壁や天井にクルーが叩きつけられる光景を最後に、指揮官の意識は途切れた。

 

 

 

***

 

 

 

(クソッ、何がどうなってやがる!?)

 

 後方でバラバラになっていく移動拠点(CP)をハイパーセンサーで確認しつつ、デボラ(オータム)は本土に向かって飛んでいくミサイルを追いかける。

 CPを見つけたのはいいが、こっちがコレを用意していたのは予想外だ。この作戦が失敗を前提に立てられていると気づいた時、CPは観測者で()()()殲滅(せんめつ)役だと思っていたが、連中はどこが失敗しても強制終了させるつもりのようだ。

 とにかく、今はあのミサイルを何らかの形で止めなければならず、必死になって追いかけているが、万全の状態でも追いつけないのに今は手負い。スラスターからヤバい音がしているのも無視して追いかけていくが、どんどん差が拡がっていく。

 北に飛んでいった方は謎のISが追いかけていったようだが、こちらが追っている方は爆発範囲が市街地に入りつつある。

 

「くッ、こちらはデボラ・スールマン。海上でCPを発見したが、ミサイルが――ぇ?」

 

 市街地にいる千冬に連絡するより早く、後方から猛スピードでオータムを追い抜き、ミサイルを捉えたISらしきモノが1機。らしい、というのはハイパーセンサー越しでもその姿をまともに捉えきれなかったからだ。

 ソレは慣性の法則すら無視したジグザグな軌道でミサイルに接近し、あっという間に3基のミサイルに追いつき破壊に成功するが、そこは既に沿岸部。3基とも雷管を叩いたのか、大爆発を起こす。

 

「なッ!? お……ぃ?」

 

 デボラ(オータム)が慌てるが、様子がおかしい。

 ISの絶対防御を抜けそうな爆風のみならず、発生する衝撃波も、爆発によって派生するミサイルの破片一つ飛び散る事なく、それら全てが()()()()()()()()()()()()

 奇妙な光景は10秒ほどでおさまり、爆心地にいたISのシルエットが見えてくるが、それを見て再度オータムは驚愕する。

 現れたISは4枚のエネルギーシールドに包まれ無傷だったが、機体を中心にして全ての爆発エネルギーと破片を粒子化して吸収している。それだけでなく、余剰エネルギーをプールしているのか、背部非固定部位(アンロック・ユニット)の翼から発生しているエネルギー翼が肥大化し、それでも回収したエネルギーが収まりきらなかったのか、背面にもエネルギー球が形成されていく。

 疑問を抱くより先に、未確認機は背中に形成されたエネルギー球をオータムに射出。無意識に相手を味方だと思っていたオータムは予想外の攻撃に反応が一歩遅れ、回避が間に合わず副椀を盾に防御。

 

(クソッ、マヌケすぎだ、ろ――?)

 

 自身の間抜けさに苛立(いらだ)ったが、その思考に到れる事に違和感を覚え目を開けると、盾にした副椀のダメージ箇所がない。驚いて機体を確認すれば応急処置がされた部分は全て修復が完了しているだけでなく、ステータスも2割ほど上昇――というより、余計な部分が修正され新品以上の性能に生まれ変わっている。

 

「これは……」

『市街地の方はどうにかなったのか?』

 

 男の声に一瞬フリーズするが、すぐに相手が例の少年(一夏)と知ってさらに驚く。さっきまで搭乗していた機体(ビルト・フルーク・プッペ)と違うのだから当然といえば当然だ。

 

「織斑一夏か。君がここにいる、という事は」

『後詰めの部隊ならもう潰してきた』

 

 予想通りといえば予想通りではあるが、ISに触れて1日も経っていない少年がそんな大金星を上げていた事に内心驚きつつも、ちょっとした違和感を感じて現状の情報を共有する。

 

「市街地の方は日本・ドイツ連合部隊と織斑千冬(ブリュンヒルデ)、それに騒ぎを聞きつけたロシアのIS特務部隊が現地に展開していた部隊を制圧している。博士や織斑千冬と情報共有していないのか?」

 

 オータムがそう(たず)ねると、一夏はバツが悪そうに顔をそらし

 

『――コアネットワークで通信するのって、DSOと勝手が違うから』

「私とこうして普通に通信できているだろう?」

『? これってオープンVCじゃないのか?』

「……」

 

 オータムが感じた違和感、それは篠ノ之博士や織斑千冬と連絡を取り合っていないかのような()き方。ゲームの戦闘能力が反映されているという部分ばかり目がいっていたが、コアネットワークを使った通信という部分は素人以下という、予想以上のこじらせ具合に絶句する。

 

「……こちらは博士や織斑千冬と連絡が取れる。通信の仕方を教えるから、私の言う通りに操作しろ」

 

 半ば呆れ気味にコアネットワークを使った簡単な通信方法を説明するが、この少年はあまりにもアンバランスすぎる。

 戦闘能力に対して通信関連は素人以下、かと思えば戦況の先読みはオータムどころか博士たちの更に先、予知とも思える動きを見せ、状況は収束に向かおうとしてる。まさかとは思うが、この騒動を本当に一人でなんとかしようとするつもりだったのだろうか?

 そうこうしている内に博士と連絡が取れたようで、視界に複数のウィンドウが展開して一気に視界が賑やかになる。

 

『いっくん!? ようやく繋がった!』

『怪我はないか一夏!?』

『無茶をするにも程があるぞ、イチカ!』

 

 繋がった時にはオープンチャネルだったのか、3つのウィンドウが開いて口々に一夏を心配する声があがる。それに対する一夏は少し面倒そうに顔をしかめ、話を進めていく。

 

『説教と説明は後回しだ。こっちは例の無人機を出してた後詰めと観測してたCPを潰した。そっちの状況は?』

『まったく、DSO(ゲーム)でもないのにこんな無茶を――こちらは既に歩兵部隊はすべて拘束。潜伏している残党もいるかも知れんが、そちらに関してはようやく重い腰を上げた日本の警察と自衛隊が対処するらしい』

弾と数馬(あいつら)がいるから大丈夫だと思うが、鈴達は?』

『引率としてやってきたドイツ(こちら)の年長者を指揮官とし、彼の指示で日本政府関係者の庇護下にある。護衛として、ドイツのISが3機ついているから、テロリストだけでなく政府関係者も手出しするのは難しいだろうな』

『テロリストのIS実働部隊はどうなった?』

『いっくんとちーちゃんが全滅させた。これで主要戦力は――』

『俺が最初に無力化した二人は?』

 

 矢継ぎ早な質疑応答が止まる。

 この騒動のきっかけになったとはいえ、真っ先に無力化されたからか、今の今まで完全にノーマークだったのに気づき、千冬が束に目配せしたのを見て、一夏は全てを察し、小さく舌打ち。

 

『一夏――!?』

 

 千冬が(たず)ねるより先に、一夏が行動を起こした。

 

 

 

***

 

 

 

 光の翼を広げ、背中の非固定部位(アンロック・ユニット)を展開してスラスターとブースターを展開。更には腰部(ようぶ)非固定部位と脹脛(ふくらはぎ)部のスラスターも展開して瞬時加速(イグニッション・ブースト)からの最大出力。

 IS界隈(かいわい)では滅多に見る事のない零一(ゼロイチ)加速。コンマ数秒で時速9500キロ(マッハ8)を叩き出した一夏は、海上40キロの地点から15秒というタイムで市街地に到着し、ハイパーセンサーを使って目的の相手を探す。

 

「最後の詰めが甘かったか――()に喰いついててくれよ」

 

 いざという時の為、保険として用意しておいた自室のPC。あれにはDSOのログやこれまで作り上げてきたレポート等の他、バイトの成果や報酬履歴も入っていた。

 このドサクサに紛れ、連中は証拠隠滅と情報回収の為に織斑家を家探しして回収すると踏んで罠を仕掛けていたが、状況的に回収担当が先のIS強襲部隊である可能性が高い。それは証拠隠滅や情報回収の為ではなく、()()()()に使う為。

 織斑家の近辺で人の流れに乗りつつも避難経路から外れている二人組――その条件で人の流れを探してみるが、該当する人物が見当たらない。既に手遅れかと焦り始めたが、住宅地の外れに弾と数馬がいて、近くに人が倒れているのを発見。何かあったのかと思ってそちらへ向かうが、倒れていたのは探していたIS実働部隊の二人。

 弾達は飛んできたIS(一夏)に気付くと、全身のバネを使って上空へ何かを投げた。反射的に一夏はそれをハイパーセンサーでスキャンすると、それは小さなバックパック。それはバルーンに偽装していたようで、中にワイヤーロープとヘリウムガスと共に爆弾がセットされていたが、一夏はそれを斬り捨て、爆発すらさせず粒子化して吸収する。

 連中の切り札は、こうしてあっけなく無力化された。

 

「よっ。随分派手に暴れてきた様だな」

「弾、数馬も。鈴達は――」

「あっちには千冬さんがいる。連中の()()()()()()()も教えてきた。ついでにコレもね」

 

 そう言った数馬の手には、一夏の家にあったはずのノートPCとナーヴギアのローカルメモリー。予想通り証拠隠滅(しょういんめつ)と更なる技術を求めて罠にかかってくれたようで、それに気づいた弾達が先回りしてこいつらを倒しておいてくれたというワケだ。

 二人とも状勢を理解しているので言葉も連携もなく話を進められる上、お互い足りない部分をフォローしあえる。これはDSOプレイヤーだからこそで、相手を出し抜く事しか考えていない大人達では到底成しえない。

 一夏も弾も数馬も、友人とはいっても仲間ではなく、ライバルに位置する関係を知らなかったのがこの計画が失敗した最大の誤算であり、一夏達の強み。この関係に(ほころ)びを生み出そうと画策(かくさく)するのも、利用しようとする事すら()()み済みで動いてきた。

 

「これで連中の用意した策は全部潰せたか?」

「こっちもドイツの連中が動き出すタイミングに合わせて、政府関係者けしかけて歩兵部隊無力化したし、一夏(そっち)が後詰めとCP潰してきたんだし、ほぼ終わったんじゃない?」

「残ってんのは政治関連の情報戦と、マスコミへのたぃ、おぅ……」

 

 そこまで言って、弾も数馬も、一夏まで固まる。どうやら皆知らず知らず脳筋に染まってたらしい。

 

「一夏!」

 

 数馬の声に一夏は行動で(こた)え、二人を抱えて飛翔。

 マスコミ関連の中にテロリスト、ないしはその黒幕か漁夫の利を狙う別勢力が潜伏している可能性。連日一夏関連の話題を報道していたのに、なぜ最後の最後にこれを見落としたのか。

 

「やべェ、完全に見落としてた!」

「あくまで可能性の話だけど、(ヴェクター)と同レベルのブレーンがいる事になるね」

「とにかく今は鈴達と合流するぞ!」

 

 この騒動には、まだ終わりが見えそうにない。




というわけで、逃げようとしていたCPも破壊し、残るは合流するだけ――と思っていたら、もうちょっとハードル上げられそうなので蛇足的オーバータイム。
いっくんはマストダイからダイハードにルート変更w

【今回の設定】

※1 アンホ爆薬
採掘からゲリラ戦まで幅広く愛用され、一時期は特撮にも使われた事がある便利アイテム。
どこの家庭にもあるもので精製可能な為、日本でもこじらせた高校生がコレを作って建物の一部と自分を吹っ飛ばした事もある厄介モノ。
異常なほどコストが安い上にアシがつきにくく、派生の幅もとんでもなく広い為、一部の国では軍用として使用されてたりもする。


第7世代IS『ビルト・フリッケライ』
回復系OWを搭載した、超高速白兵戦を得意とするビルト・フルーク・プッペの本来の姿。DSOではビルト・フルークが形態移行(フォームシフト)したもの。一対多数を得意とする実戦型で、試合で使えば完全オーバーキル。というか現行の機体が真正面から相対しても勝てる要素が全くない。
一見すると最強に見えるが、無視できない問題を複数抱えているだけでなく、存在そのものがアラスカ条約に真っ向からケンカ売ってる仕様。
一夏の専用機となるかは未定で、今回の戦闘だけのゲスト参戦。ぶっちゃけ今後の展開をスムーズに進める為だけに出したぶっ壊れ機体。
モチーフ(というか元ネタ?)となったのはGセルフPPとアストラナガン。ビルガーやファルケンをモチーフにしなかったのは単純な火力不足と、良くも悪くも主人公機に思えない機能を探していた所、結構エグい機能持ったガンダムを発見し、そこにスパロボ脳とフロム脳が悪さをしてこの形に。


※ オーバードウェポン【錬金箱(トイボックス)
無限工房(ファクトリー)の下位互換ともいえる、生産職のプレイヤーが生み出した人工OWで、簡単に説明すると撃墜ボーナスをOW化したもので、主人公機がラスボスにジョブチェンジするくらいの理不尽兵装。
稼働するとフルブロック・光学兵器吸収が発動し、撃墜した敵のパーツやドロップアイテムを粒子化して取り込み、撃墜数と敵のレアリティに応じて稼働時間が延長できる他、撃墜した敵パーツや瓦礫(がれき)を再構築する事でAP・EN・弾薬を回復させる事が可能。
余剰エネルギーをプールする事も可能だったが、ISになったお陰か、紅椿の絢爛舞踏みたいな能力も有している。

これから出すモノの中では比較的大人しい部類。これよりももっともっともっともっとエグい物も思いついているので、遅筆な以外は大丈夫……な、はず。
そして来週も続きを投稿する予定。というか今書いてます。間に合え!
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