DS - ダイアグラナル・ストラトス - 作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)
少し(?)派手な風呂敷の畳み方になりました。
なぜか「下」で終わらず増えていく文章量……
「やっぱり、こうなっちゃったか」
『アレはいうなれば
『一夏が状況を打破したのだ。あとはこちらと合流し、こっちの連中に後始末を任せればいいのではないか?』
「そういう問題じゃないんだよ、ちーちゃん……」
この騒動に
ビルト・フルークという時点で嫌な予感はしていたが、モニターに表記されている名は『ビルト・フリッケライ』――DSOでビルト・フルークが
あの機体の前では距離という概念も、数の有利も、地形という状況すら関係ない。あらゆる全ての戦況を単機で
あれを使用する限り、一夏は敗北の二文字とはほぼ無縁の存在となる。DSOならともかく、現実であの
「まったく、アイツは死んでも尚ロクでもないものを」
『死者をそう
千冬が言う通り、このまま何事もなく事態が収束に向かえば日本政府の対暗部やドイツの連中がいろいろ動いてくれるだろう。が、何もかもが中途半端なままこちらに有利に動きつつある今の状況がひっかかる。
「情けない話だけど、事後処理に関してはヴェクターが用意してくれた状況に頼るしかないか。念の為、アメリカの
『デボラとかいう奴か。何を頼んだ?』
「歩兵を管理してたCP。束さんの予想では輸送船とかに偽装したものだと思うんだけど」
『弾も
「魔王の方が先に気づいてたか。事態が収束次第、ドイツや対暗部だけでなく、魔王とも顔合わせする必要がありそうだね」
言いつつ束は
これからの事後処理に束達も巻き込まれるのかと思うと、ため息の一つもつきたくなる。
『まぁ、そう悲観する程でもないでしょう。イチカにとって、アレは“この状況で使える機体の一つ”でしかないのですから』
本来の意味は全くの別モノだという事に気付かないまま、含みのあるラウラの言葉も脳筋的発言に思えて「さすがはちーちゃんの弟子」と束は呆れた。
コンテナ船に偽装したCPは予定通り出港し、1時間足らずで本土から50キロの地点、排他的経済水域にまで移動。コンテナ船としては一般的な速度だ。
海防どころか篠ノ之博士でもこれを見破るのは難しいだろうというのが指揮官の判断で、
「現地部隊、抵抗勢力に無力化されました」
「意外に時間稼ぎはできたか。
「ロシア部隊が情報の精査をする為、現地で展開した織斑千冬と接触。その際、
「チッ、現場の判断を優先させたのが
実際は使い捨てと割り切ったISパイロットをこちらに抱き込まなかったのが原因だが、既に起きた事に文句を言う事なく、指揮官は思考を切り替えて次の策を考える。
「作戦の
「向こうは
「よし、作戦の発動を確認次第、本命を使用。こちらは――」
「レーダーに反応。3時方向にISが1機!」
「ッ!? 全ての出力を通常出力まで落とせ。こちらの存在を気づかせるな!」
指揮官が慌てて指示を飛ばし、クルーは出力を調整して普通の輸送船と同等の出力まで落とす。日本の領海内とはいえ、幾つもの船舶が海上を行き来している。普通の輸送船に偽装してしまえば、この中から
「映像、出ます」
東から飛来するISのシルエットが通常ズームでボンヤリと映し出され、指揮官は相手を見極めようと目を
飛来する機体はかなり
「応急処置を受けたIS、か?」
「データ照合。アメリカの第2世代機『アラクネ』と判明」
「チッ、
ダメージを受けているという事は、
どちらにせよ、こちらにとってかなり不利な状況に
(どうする?)
指揮官は考える。偽装を解除して全力で逃げるか、アラクネがどこかに行くまでやり過ごすか。
手負いのIS1機、どうとでもなるような装備ぐらいは積んでいるが、あれが
「8時方向よりISがもう1機」
「なに!?」
別ウィンドウで視認された薄紅色を基調としたISは、長い飛行機雲を引きながら、超高速でこちらへやって来て――
「
「外装を爆発させてパージ、同時に煙幕を展開して沈没を装え!」
指示された通り、爆発を使ってコンテナを海上に放り出しつつ、黒い煙幕を炊いて本体は半分海中へ沈めながら、徐々に外装をパージしていく。周囲の船舶には攻撃されて沈没していくように見え、海上に浮かぶパーツはそれを助長させる。
指揮官の予想では、新たに現れたISは
「所属不明のIS、一件
「!? 再度スモークを発射しつつ、周囲の船舶と2機のISに向けてスモークを含めた全てのミサイルを発射しろ!」
クルーは迅速に行動を開始。10秒とかからず二度目のスモークを射出して煙幕の範囲を拡大、海上に
それに気づいたアラクネが慌てて武装を展開。周囲に向かって飛び交うミサイルを撃ち落とそうとするが、的が小さい上にダミーのミサイルはスモーク弾。いやらしい事にスモークは黒だけでなく赤白青とカラフルに咲き乱れ、撃ち落としたミサイルの爆風も
「レポートにあった、あらゆる兵器を無力化する攻撃か」
対峙したものは対人であれ対ISであれ、あらゆる武器・装甲が砂へと変えられる、らしい。大型の装甲車も数台まとめて砂に変えられたという報告もあったが、その攻撃が広範囲なのか単体識別なのか、判断できる情報が少なすぎる。
煙幕が広がっているのは太平洋に相対する東側、対して何も起きてないのは日本本土に向かう西側。バカ正直に煙幕側に逃げたとしても手負いのISだけとは思えず、かといって太平洋に向かって逃げれば即座に発見されて砂に変えられる。
迷う場面ではあったが、指揮官の判断は早かった。
「
機体は南を向けつつ、海中に向けて魚雷のようなものを8基放出。ソレは水深10メートルを越えた所でクルリと反転、異様な速度で北西と西の2方向に4基ずつ扇状に拡がり、プロペラもジェット噴射もなく移動する。
その加速は海上に飛び出す時点でマッハ1を越え、その
偶然か意図的か、その水飛沫と雲海がISのハイパーセンサーを狂わせ、アラクネの脇を通り過ぎようとするソレに狙いを切り替えるが、いかなISとて地表で音速を超える飛翔体を
一方の北西に向かった4機は、同様に雲海を生み出しながら北海道方面を目指して進行していたが、その雲海は途中から消しゴムでもかけられたかのように途切れ、上空から見るとその線は曲線を
機首部分を叩き折られた2機は、自らの加速によって生まれた音速の壁に
(――ここだ!)
所属不明機は北に向かったモノを追いかけ、アラクネも
「発生した大波に乗って最大加速。タイミングを逃すな!」
「了解。――カウント5秒前」
カウントが減っていく間も指揮官はレーダーを注視し、予想通り射出した
「南南西から来る
「IS? しかし出力が……」
「カウントゼロ。離脱します」
「ま――」
待て、という言葉は一歩遅く、指揮官から見ても最高のタイミングで海中から発進。偽装したタンカーから解き放たれたその姿は、巨大な剣を
全長257メートル、幅32メートル、高さ27メートルというソレは、シャトルというには機体高があり、空母というには長すぎる。18基にも及ぶPIC発生器と大小8基のブースターを起動させ、大波をジャンプ台にしてまるでスリングショットのような勢いで空中に飛び出し、収納されていた主翼を展開して更に加速。
海面で
「迎撃、いや退ひ――」
指示を飛ばすより早く、飛翔体と交差したかと思った直後に右翼が消失。何が起きたかを気付く事すらできず、ブリッジ内がしっちゃかめっちゃかに引っかき回され、壁や天井にクルーが叩きつけられる光景を最後に、指揮官の意識は途切れた。
(クソッ、何がどうなってやがる!?)
後方でバラバラになっていく
CPを見つけたのはいいが、こっちがコレを用意していたのは予想外だ。この作戦が失敗を前提に立てられていると気づいた時、CPは観測者で
とにかく、今はあのミサイルを何らかの形で止めなければならず、必死になって追いかけているが、万全の状態でも追いつけないのに今は手負い。スラスターからヤバい音がしているのも無視して追いかけていくが、どんどん差が拡がっていく。
北に飛んでいった方は謎のISが追いかけていったようだが、こちらが追っている方は爆発範囲が市街地に入りつつある。
「くッ、こちらはデボラ・スールマン。海上でCPを発見したが、ミサイルが――ぇ?」
市街地にいる千冬に連絡するより早く、後方から猛スピードでオータムを追い抜き、ミサイルを捉えたISらしきモノが1機。らしい、というのはハイパーセンサー越しでもその姿をまともに捉えきれなかったからだ。
ソレは慣性の法則すら無視したジグザグな軌道でミサイルに接近し、あっという間に3基のミサイルに追いつき破壊に成功するが、そこは既に沿岸部。3基とも雷管を叩いたのか、大爆発を起こす。
「なッ!? お……ぃ?」
ISの絶対防御を抜けそうな爆風のみならず、発生する衝撃波も、爆発によって派生するミサイルの破片一つ飛び散る事なく、それら全てが
奇妙な光景は10秒ほどでおさまり、爆心地にいたISのシルエットが見えてくるが、それを見て再度オータムは驚愕する。
現れたISは4枚のエネルギーシールドに包まれ無傷だったが、機体を中心にして全ての爆発エネルギーと破片を粒子化して吸収している。それだけでなく、余剰エネルギーをプールしているのか、背部
疑問を抱くより先に、未確認機は背中に形成されたエネルギー球をオータムに射出。無意識に相手を味方だと思っていたオータムは予想外の攻撃に反応が一歩遅れ、回避が間に合わず副椀を盾に防御。
(クソッ、マヌケすぎだ、ろ――?)
自身の間抜けさに
「これは……」
『市街地の方はどうにかなったのか?』
男の声に一瞬フリーズするが、すぐに相手が
「織斑一夏か。君がここにいる、という事は」
『後詰めの部隊ならもう潰してきた』
予想通りといえば予想通りではあるが、ISに触れて1日も経っていない少年がそんな大金星を上げていた事に内心驚きつつも、ちょっとした違和感を感じて現状の情報を共有する。
「市街地の方は日本・ドイツ連合部隊と
オータムがそう
『――コアネットワークで通信するのって、DSOと勝手が違うから』
「私とこうして普通に通信できているだろう?」
『? これってオープンVCじゃないのか?』
「……」
オータムが感じた違和感、それは篠ノ之博士や織斑千冬と連絡を取り合っていないかのような
「……こちらは博士や織斑千冬と連絡が取れる。通信の仕方を教えるから、私の言う通りに操作しろ」
半ば呆れ気味にコアネットワークを使った簡単な通信方法を説明するが、この少年はあまりにもアンバランスすぎる。
戦闘能力に対して通信関連は素人以下、かと思えば戦況の先読みはオータムどころか博士たちの更に先、予知とも思える動きを見せ、状況は収束に向かおうとしてる。まさかとは思うが、この騒動を本当に一人でなんとかしようとするつもりだったのだろうか?
そうこうしている内に博士と連絡が取れたようで、視界に複数のウィンドウが展開して一気に視界が賑やかになる。
『いっくん!? ようやく繋がった!』
『怪我はないか一夏!?』
『無茶をするにも程があるぞ、イチカ!』
繋がった時にはオープンチャネルだったのか、3つのウィンドウが開いて口々に一夏を心配する声があがる。それに対する一夏は少し面倒そうに顔をしかめ、話を進めていく。
『説教と説明は後回しだ。こっちは例の無人機を出してた後詰めと観測してたCPを潰した。そっちの状況は?』
『まったく、
『
『引率としてやってきた
『テロリストのIS実働部隊はどうなった?』
『いっくんとちーちゃんが全滅させた。これで主要戦力は――』
『俺が最初に無力化した二人は?』
矢継ぎ早な質疑応答が止まる。
この騒動のきっかけになったとはいえ、真っ先に無力化されたからか、今の今まで完全にノーマークだったのに気づき、千冬が束に目配せしたのを見て、一夏は全てを察し、小さく舌打ち。
『一夏――!?』
千冬が
光の翼を広げ、背中の
IS
「最後の詰めが甘かったか――
いざという時の為、保険として用意しておいた自室のPC。あれにはDSOのログやこれまで作り上げてきたレポート等の他、バイトの成果や報酬履歴も入っていた。
このドサクサに紛れ、連中は証拠隠滅と情報回収の為に織斑家を家探しして回収すると踏んで罠を仕掛けていたが、状況的に回収担当が先のIS強襲部隊である可能性が高い。それは証拠隠滅や情報回収の為ではなく、
織斑家の近辺で人の流れに乗りつつも避難経路から外れている二人組――その条件で人の流れを探してみるが、該当する人物が見当たらない。既に手遅れかと焦り始めたが、住宅地の外れに弾と数馬がいて、近くに人が倒れているのを発見。何かあったのかと思ってそちらへ向かうが、倒れていたのは探していたIS実働部隊の二人。
弾達は飛んできた
連中の切り札は、こうしてあっけなく無力化された。
「よっ。随分派手に暴れてきた様だな」
「弾、数馬も。鈴達は――」
「あっちには千冬さんがいる。連中の
そう言った数馬の手には、一夏の家にあったはずのノートPCとナーヴギアのローカルメモリー。予想通り
二人とも状勢を理解しているので言葉も連携もなく話を進められる上、お互い足りない部分をフォローしあえる。これはDSOプレイヤーだからこそで、相手を出し抜く事しか考えていない大人達では到底成しえない。
一夏も弾も数馬も、友人とはいっても仲間ではなく、ライバルに位置する関係を知らなかったのがこの計画が失敗した最大の誤算であり、一夏達の強み。この関係に
「これで連中の用意した策は全部潰せたか?」
「こっちもドイツの連中が動き出すタイミングに合わせて、政府関係者けしかけて歩兵部隊無力化したし、
「残ってんのは政治関連の情報戦と、マスコミへのたぃ、おぅ……」
そこまで言って、弾も数馬も、一夏まで固まる。どうやら皆知らず知らず脳筋に染まってたらしい。
「一夏!」
数馬の声に一夏は行動で
マスコミ関連の中にテロリスト、ないしはその黒幕か漁夫の利を狙う別勢力が潜伏している可能性。連日一夏関連の話題を報道していたのに、なぜ最後の最後にこれを見落としたのか。
「やべェ、完全に見落としてた!」
「あくまで可能性の話だけど、
「とにかく今は鈴達と合流するぞ!」
この騒動には、まだ終わりが見えそうにない。
というわけで、逃げようとしていたCPも破壊し、残るは合流するだけ――と思っていたら、もうちょっとハードル上げられそうなので蛇足的オーバータイム。
いっくんはマストダイからダイハードにルート変更w
【今回の設定】
※1 アンホ爆薬
採掘からゲリラ戦まで幅広く愛用され、一時期は特撮にも使われた事がある便利アイテム。
どこの家庭にもあるもので精製可能な為、日本でもこじらせた高校生がコレを作って建物の一部と自分を吹っ飛ばした事もある厄介モノ。
異常なほどコストが安い上にアシがつきにくく、派生の幅もとんでもなく広い為、一部の国では軍用として使用されてたりもする。
第7世代IS『ビルト・フリッケライ』
回復系OWを搭載した、超高速白兵戦を得意とするビルト・フルーク・プッペの本来の姿。DSOではビルト・フルークが
一見すると最強に見えるが、無視できない問題を複数抱えているだけでなく、存在そのものがアラスカ条約に真っ向からケンカ売ってる仕様。
一夏の専用機となるかは未定で、今回の戦闘だけのゲスト参戦。ぶっちゃけ今後の展開をスムーズに進める為だけに出したぶっ壊れ機体。
モチーフ(というか元ネタ?)となったのはGセルフPPとアストラナガン。ビルガーやファルケンをモチーフにしなかったのは単純な火力不足と、良くも悪くも主人公機に思えない機能を探していた所、結構エグい機能持ったガンダムを発見し、そこにスパロボ脳とフロム脳が悪さをしてこの形に。
※ オーバードウェポン【
稼働するとフルブロック・光学兵器吸収が発動し、撃墜した敵のパーツやドロップアイテムを粒子化して取り込み、撃墜数と敵のレアリティに応じて稼働時間が延長できる他、撃墜した敵パーツや
余剰エネルギーをプールする事も可能だったが、ISになったお陰か、紅椿の絢爛舞踏みたいな能力も有している。
これから出すモノの中では比較的大人しい部類。これよりももっともっともっともっとエグい物も思いついているので、遅筆な以外は大丈夫……な、はず。
そして来週も続きを投稿する予定。というか今書いてます。間に合え!