DS - ダイアグラナル・ストラトス - 作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)
書いてる内にキャラが暴走してきて『混ぜるな危険』というのを初めて実感したのでこのタイトルに。
今回も誰得14000字オーバー。嵐の前の静けさって、こういうのを言うのでしょうか?
日本で起きたテロ事件から一夜明け、世間は上に下にの大騒ぎだった。
平和の代名詞ともいえる日本で、前代未聞の大規模なISの投入、未知の巨大兵器が投入されるような大規模テロが発生。
この一大スクープをメディアが報道しない理由はなく、マスコミは騒動の
表向き、テロリストが用意したIS部隊と未知の巨大兵器は、テロリストからISを鹵獲した織斑一夏と篠ノ之博士と共に事件にあたった織斑千冬、
市街地で暴れていた歩兵部隊も、これまた
鎮圧後、護送車が遅れているという話を聞き、余力があったロシアの部隊が機転を利かせ、線路上にあった空の貨物列車を使ってドイツの部隊と共に無力化したテロリスト達を東京都庁まで護送。
突如現れた9機ものISと、161名ものテロリストを確保した5つの貨物列車。
そうして聴取が始まったが、まるで映画の様な前例のない大規模テロ。聞けば聞くほど
安全が確保されたスリルは民衆にとって格好の話題となり、世間はパニック寸前のお祭り騒ぎ。それを治める為に警察が動くという、なんとも奇妙な状況が出来上がりつつあった。
このドサクサに紛れ、護衛対象は予定通りドイツ大使館に逃がす事ができ、彼女達の家族も今朝方までに日本政府より先に確保する事もできた。
現在、護衛対象の家族はクラリッサ達ドイツのIS部隊が護衛にあたり、ドイツ大使館で
「――かくして、
「それで一夏が目覚めるまでの時間稼ぎができたワケですか。ありがたいといえばありがたいのですが」
「イマイチ釈然としませんね」
「まぁ、詳しい話を聞けばそれも
「私は弾君達が
更識の説明に千冬が呆れ、弾もラウラに
彼らがいるのは更識が所有するビルの一角。その中にある事務所には、当の更識に誘われたエーリヒとラウラのみならず、事前にいろいろと準備してくれていた弾と数馬、そして当事者の一人である千冬がいる。
今回の騒動、被害がほとんど出ないまま収める事には成功したが、トントン拍子で物事が進んだワケでもない。
この騒動の渦中にあった一夏は、宇宙まで行って
その報告を受けたロシア・アメリカの両部隊は「これ以上は越権行為になる」と言って離脱。
一夏一人でテロリストのIS4機との戦闘をはじめ、立て続けに100機近い無人機の群れと巨大兵器の撃墜。排他的経済水域から本土に来る途中でCPが用意していた切り札も潰し、本土を狙っていたミサイルも撃墜。そこから海上40kmの地点から15秒というタイムで市街地に到着。護衛対象を狙って潜伏していたテロリストの予備部隊に対処しつつ、宇宙まで行くという非常に過酷な行動で本土に被害を出さなかったという実績も作った。
これがISに触れて1日も経っていない少年が為した結果だと言われても、当事者でなければ
箒と鈴はクロエと共に一夏の看病に向かい、蘭も無理矢理ついて行こうとしたが、
「とはいえ、こうしてゆっくり話す事ができる時間ができたんだ。詳しい話を聞かせてくれるんだろうな? 弾」
「そんな
「菊岡君はあと10分ほどで到着するそうだ。弾君達にはクリスハイトという名前の方が馴染み深いかね?」
更識の言葉に千冬とラウラが反応する。
「クリスハイト?」
「
「ああ、更識のオッサンを紹介されてな。今回の騒動に一枚噛んでる一人だ」
「ラースってクランのメンバーで仮想課の職員です。僕らとは別方向から
仮想課と聞いて、今度はエーリヒの
ラースというクランに所属していながら、クランへの勧誘もせず自由気ままに
つかみどころのない、
「かなりのキレ者でな。DSOでも幾らか面識はあったんだが、
「?
「クラン規模ではな。横の繋がりから情報が共有されちゃいたが、ソロやフレンド規模の未所属までは手が回らなかったんだ」
「それをクリスハイトが仮想課からアプローチするだけでなく、鼠のアルゴに依頼して
弾と数馬の説明でラウラは納得する。
現実の方もそうだが、仮想世界の話も内容が相当なものになっているようだ。
「まぁ、こっちの方はメンツが揃いそうだからいいんだが、出来れば一夏本人か、篠ノ之博士の関係者が来てくれれば――」
「それに関してはたった今連絡が来た。束がリモートで顔を出すそうだ。そこで一夏の状況も話してくれるらしいから、場が整ったら私から連絡する」
いきなりのビッグネームにその場がザワつく。てっきりクロエがこちらに来ると思っていたが、一夏の状況も知れるのは嬉しい誤算だ。
そうこうしている内に、事務所に線の細い眼鏡をかけたスーツ姿の男が
「やあやあ皆さんお揃いで」
「菊岡君。予定より早い到着はいいのだが、そちらは――?」
黒縁眼鏡の男が菊岡らしく、男は
「昨日、ちょっとレクトに行く用事がありまして。今後の動きに必要になるかと思い、事情を話して来て頂いた次第で」
「茅場晃彦の代理で来ました。レクトの須郷信之です」
そう言って須郷が一礼するが、いきなりの人物にエーリヒと更識のみならず、弾と数馬は驚きを隠せないでいる。
レクトの須郷といえば、常務取締役――いわゆる副社長の地位にいる人物で、多忙な茅場に代わり現場指揮を一手に
「レクトは先日の
「ゲームのプレイルール内で収まる様な話であれば、こちらも関わる必要はないと考えていたのですが……現実世界でDSOが関係してきた以上、こちらも対策が必要になりましてね」
「――現実で
更識の質問に須郷が
敵味方問わず、この騒動で未確認の機体が海上で暴れていたのはあちこちで認知されている。現状では未確認の新型ISという認識だろうが、ネット上でDSOが話題になるのは時間の問題だ。
「
言って、菊岡が弾を見る。それに対して須郷の眉がピクリと動いたが、何か言う気はないようで、話を促すように首肯。
弾は更識とエーリヒに目配せすると、二人も話の続きが気になるようで、視線で合図する。
「話を進めたいのは解るが、まだ
『呼ばれて飛び出て束さーん! お、今のはちょっと語呂よかったね。皆のアイドル束さんだよぉ~』
弾が言い終えるより早くウィンドウが開き、やたらハイテンションな束が現れた。
突然の奇行に一同は面食らうが、千冬は
「束、久々に人と喋るのにテンション上がるのは
「一夏はまだ会話もまともにできない状態か。後遺症とかは?」
『……キミのような勘のいいガキは嫌いだよ』
弾の冷静な指摘に束がスンッと冷めた顔になるが、ネタを仕込むだけの余裕はあるらしい。弾は肩をすくめて顎先で千冬を指し、詳しい話をしないと彼女が動き出すぞと暗に示した。
『……いっくんの治療自体は終わってる。けどあれだけ暴れたせいで頭まで栄養が回ってないみたいでね、今は箒ちゃんとクーちゃん、リンが交代で看病中。いっくんは短いスパンで食っちゃ寝を繰り返して体力回復させてるけど、ちょっとアレな感じになって甘えんぼさんになってる』
「命を
「あのバカは
束による一夏の現状、千冬による戦果の説明はかなりの劇薬だったようで、エーリヒと更識のみならず、菊岡と須郷も絶句。ラウラも驚きとも呆れともつかない表情のまま固まり、弾と数馬も頭を抱えている。
「一夏のヤツ、引っかき回すにも限度ってのがあるだろ」
「まぁ、お蔭で
「……魔王がいるなら、それも可能――か?」
気負う事ない弾の発言に大人達が呆れる中、DSOで何度も遭遇しているラウラだけはゲンナリしながらも信頼する姿を見せている。こいつは典型的な参謀タイプではなく、単機でも他を圧倒できる指揮官タイプでイチカの上位互換ともいえる、関係者の中でも絶対敵に回したくない
状況を的確に把握し、打開策を秒で見出すだけでなく、時間さえあれば切り札は量産するし、場を引っ掻き回す手段も尽きない。敵に回せば反撃の手段も思いつかない
『たった一人で過剰戦力』という言葉を体現したようなファストクラスに情報を与えたら――否、ここに最高の頭脳と政治と企業という手札が揃っている以上、敵は可哀想な事になる程度で済めば御の字。下手な動きをしていれば悲惨な末路だってありえる。
「って事で博士、一夏の戦闘ログは回収してんだろ?」
『モチロン! それであの
別ウィンドウで一夏の戦闘シーンが再生され、追い詰められたフリをしている部分から映し出され、千冬をはじめとした大人達は絶句したが、弾と数馬は平然とし、ラウラに至っては別の意味でドン引きする。
「イチカのヤツ、足止めの為とはいえココまでするか!?」
「ギリギリまで手札を隠していた連中だし、確実に動きを止めるなら妥当だと思うけど」
「どういう事だ?」
「ダメージコントロールだよ。意図的にダメージを受けて追い詰められているフリをして、勝てそうと思わせる事で足止めしてんだ」
弾の説明を聞いても納得できない。どう見ても追い詰められているのは一夏の方だ。
こんな状態からどうやって一夏が逆転まで持っていったのかも疑問だったが、そうこうしている内に巨大兵器からの通信と、乗り込んでいた
「なッ、
「IS特務部門のトップが後ろにいたとは、なかなかのスキャンダルですね」
「隣にいるのは如月技研の前会長です。レクトの主要株主の一人でもあり、数日前から連絡が取れなかったのですが」
「後ろにいる二人は、中国とイギリスのIS研究所の元所長ですな。ここ数日のドタバタで姿が見えなくなったというのは
「なるほど。自分達の
「それだけじゃない。これを出したって事は、おそらくテロリストが用意したISと
『頭の回転が速いヤツがいると話が早くてイイね。テロリストが用意したISのコア、束さんとは違うルートで生産された新規コアでね。一部の無人機にも同様のモノが搭載されてた』
再度、場が騒然となる。ISコアは篠ノ之博士以外に生産不可能な筈だったのに、ここにきて新勢力の存在が浮上するのは刺激が強すぎる。
「……で、その他にもIS委員会が関係するモノも見つけたと」
「何故そう思うのだ?」
「これだけ
数馬の言葉に千冬が疑問を持つが、ラウラはさも当然といった態度で答える。DSOで似た様な経験をしてきたのか、それとも映画や漫画からの聞きかじりか。しかしその考察は正しかったらしく、束は満面の笑みを浮かべて『正解!』と答えた。
『無人機に搭載されたコアに、IS委員会が所有する未分配のコアもあった。新規コアがテロリストの分も含めて20、対して未分配コアは35。これは委員会が所有するコアと同数』
「……やっぱり博士と情報を共有して正解だな。連中の描いていた
そうして弾と数馬が話し始めた内容は
「今回のテロ、というか
「そういえば、アメリカのデボラ中尉も『この作戦は失敗が前提』と言っていたな。軍事利用の布石がどうとか」
「本当の目的は、平和と言われる日本で一夏を狙ったテロが起きたってのを口実に、対抗策でISを軍事利用できる大義名分が欲しかったのと、日本政府の対応を
「そして狙い通り、日本は
弾の機転で更識と縁を
一見すると弾が更識を利用して対抗できる戦力を整えた様に聞こえるが、逆を言えば中学生の意見を聞いてなければ対抗できるだけの状況を作れなかったという事。それに気づいた千冬は横目で更識と菊岡を見ると、当の二人はそっと視線をそらすだけ。
それはともかく、気になる部分が出てきた。
「黒幕が未分配コアを投入した理由は、背後にIS委員会がいるという事を匂わせる為、で合ってるか?」
「一部はな。残りは自身の地位とか見つかるとヤバい証拠なんかを盾にして、世界中がこの事件に関わっているという
『その通り。束さんじゃただ公開するぐらいしか思いつかなかったけど、魔王様ならイイ感じに使ってくれるんじゃないかなーと思って』
「一夏もそれが狙いだったろうし、手札さえ揃えばなんとでもするさ。ランクスもそれが狙いなんだろうし」
「ランクス? 一夏の相棒が何故ここで出てくるんだ?」
「千冬さんでも気づかなかったのか? きっかけは俺達がDSOでおおっぴらに動いたのに
「は? ランクスが動いてたのはイチカを守る為では――」
「守る為じゃなくて助けになる為。
「ぅ、た、確かに初動は問題視する必要がない、とは言われたし、それに対する布石も既に打っているとも言われたが……」
「初動は僕達で、布石はラウラ。ランクスが動いたのは敵味方問わず状況が動き出したのを知らしめる為。連中が準備もままならない状態で現状出せる戦力を全部吐き出す事態になれば、しばらくはどこも大人しくしてるでしょう?」
数馬の言葉に千冬もラウラも絶句する横で、エーリヒが小さく「あのクソババァ……」と呟いたが、弾達はスルー。一歩間違えれば大惨事になりかねない綱渡りの行動を
「僕達は仲間であっても仲良しこよしじゃない。打算ありきで動いてても、それを利用し合う立場です。僕だって状況を加速させる為、一夏のレポートをドイツに流すようラウラに助言しましたし」
「なッ!? お前、自分が何を言って――」
「元々俺達が見ていたのは、黒幕の傀儡になっているテロリストだけだった。それだけならローラと日本の戦力だけでどうとでもなると踏んでたからな。黒幕気取りの存在は俺も盲点だったが、一夏はそいつらの目的に気づいて先に動くしかなかったんだよ」
ジロリと千冬と束を
「しかし、イチカはどうやってランクスと連絡を取り合っていたんだ? 私達でさえ『テロリストが動くかも知れない』という不確定な情報でしか動けなかったんだぞ?」
「連絡なんざ取ってねェよ。
弾の指摘に、ラウラは何度絶句したのかわからない。
ファストクラスという人外は、状況とヒントだけで最適解を導き出すような変態だが、そんな不確定なヒントで動くとは思いもしなかった。
「だが、なぜ一夏は黒幕気取りを――いや、もしかしてこの黒幕気取りが自作自演でテロリストを相手取ろうと?」
「ハズレ。このババァ共はテロリストだけでなく、千冬さんを含めた協力者もまとめて始末するつもりだったんだ」
『……黒幕気取りの後ろにいるヤツの希望を叶える為、かな。テロリストとは違う第3勢力の存在を匂わせ、ISの軍事利用を加速させる下地を作ろうとしていたのを誰も気づかず、いっくんが潰すしかないから動いた』
「正確には
「なッ!?」
次々と出てくる衝撃的な内容に、さすがの千冬も絶句したが、束の方は顔を青ざめさせる。
『まさか、黒幕気取りとテロリストの目的は……』
「状況を整理する為に、順を追って話そうか。テロリストはIS部隊を
「っ!? まさか、
「当たり前だ。その為に数馬に言って、わざとホテルを複数とってそれぞれ距離のある所をチョイスしてもらったんだ」
「距離ができたのは偶然もあるけど、合流に手間取る事で双方のファーストアタックを未然に防ぐ為です。人数が人数だけに、意図的に距離をとったと思わせ、向こうに警戒させる意味もありました。気づいてなかったかも知れませんが、予約したホテルの近辺にテロリストが潜伏してたし、全ての部屋がその潜伏先を監視できる所をとっていたんです」
普通であれば、部隊を分けて予約したホテルに距離があるなら各個撃破されそうなものだが、そんな伏線を仕込まれていれば警戒もする。というかテロリストの潜伏先の情報をどこで入手したのかが気になったが、視界の端に不敵に笑う更識を見つけ、こいつらが情報を流したのかと察する。
「本来ならドイツが現地入りした時点で行動を起こすはずが、動きを察知されたと勘違いしたテロリストは作戦を変更。織斑家周辺を
「そうして現地に残ったのはIS2機と歩兵部隊。それで騒ぎを起こそうとしたけど、黒幕気取りが余計なチャチャを入れたお陰で次の展開も狂い始めた。別勢力が参戦してきたと思ったテロリストはそちらの対応にも追われ、更識も動き出してこっちの動向は監視に留めるぐらいが関の山。その間に僕らは
「……我々が観光を
エーリヒの意見に弾は首肯。先読みの的確さにドン引きするが、弾は構わず話を続けていく。
「そうしてCPは作戦が狂ったのを知って、次の
『やっぱり。黒幕気取りの狙いは最初はこっちか――いっくんがいい仕事をしすぎたから狙いを変更せざるを得なくなった?』
流れはわかったが、話が繋がらない。一夏を回収して束の所に向かったのを見ていたのであれば、そのまま
「一夏君を優先した事で黒幕気取りは織斑女史に興味をなくし、搭乗していた
「……そうか。問題の巨大兵器がなくてもテロリストごと消し去る兵器が既に動いている以上、未曾有の敵という存在を世界に知らしめる準備は出来ている。その後どうなろうと彼女らの今後に支障はないから次のプランに移行しようと」
「本当に悪知恵が働くものですね。敵の敵を利用するとは」
今までダンマリを決め込んでいた菊岡と更識、須郷も考察に参加し、自身の推論を展開するが、それでも千冬は納得いかない所がある。
「一夏が巨大兵器を追った理由はわかった。だがその役目は私でもよかったのではないか?」
「千冬さんは市街地から海に向かう以上、その途中でCPに足止めくらうのは目に見えてる。だから一夏は自分が動くしかなかった。あの時点でもテロリスト側は今後の為にも
「なぜだ? 引退した私を狙ったところで――」
「
逆に現状無名に近い一夏が向かえば、失敗しても賞賛こそあれ責任は問われない反面、成功すれば巨大兵器は素人にも負ける欠陥兵器として世に認知される。あいつはそこまで考えて動いたんだ」
『……CPが潰されても、黒幕気取りが逃げ切れれば火種は残り、後々も延焼し続ける。それを防ぐ為にもいっくんが動くしかなかったのか』
テロリストとIS部隊を無力化すれば一件落着――そう考えていた千冬は、どれだけ自分が楽観的な考えでいたのか、対して一夏達が何十手先まで見ていた先見の目に舌を巻くと同時、あの時弾が『一夏を世界の敵にしたくないなら動くな』と言っていたのが今になってわかった。
「――あの時、弾が止めてくれなければ、私はすぐさま海上のCPや巨大兵器を潰そうと動いていただろうな。もしそこで私が失敗すれば、一夏の立場はおろか、弾や鈴達の立場も危うかったのか」
「ああ。俺の予想じゃ千冬さんは8割方負けると思ったから止めた。DSOでもこんな状況を
言われてみると、
「まぁ、反省会は後で自分でやってくれ。こうして一夏が活躍してくれたお陰でこっちは大した被害もなく、テロ鎮圧という偉業も達成。協力してくれたアメリカとロシアに功績の一部をくれてやった事で
「……DSOというのは相当な魔境なのかね? そんなポンポン対策が思いつかれると、
エーリヒはそう言うのが精一杯だった。
ただの日本の中学生が、武力含めた政治情勢にまで視野が明るく、それを踏まえた算段をつけておくとか、エーリヒには考えがつかない。
何気なく更識の方に目をやれば、あちらも同じだったのか、すっごい顔でドン引きしている。そして同時に菊岡と須郷の方に目をやると、ドヤ顔でこちらを見ていてイラっとするが、お構いなしに弾が束に水を向ける。
「ま、なんだかんだいって、
『ついでにいっくんの周りに手を出せばタダじゃ済まないっていう注意喚起をしつつ、馬鹿どもが大人しくなるような状況を作れればベストって所かな。必要とあれば束さんが表に出て説明するのも構わない』
それだけ聞くと、弾は顎に手を当て長考。ブツブツと呟きながら時折こちらを見たりするが、それを見ているラウラは気が気じゃない。
「な、なぁヴェ、じゃなくて弾。あまり派手な事は――」
「わかってる。今回は注意喚起程度に抑えるさ」
そう応える弾にラウラの頬がひきつる。何故そこまで警戒するのか、エーリヒも更識も、千冬すらわからない。
「なぁ、ラウラ。弾は一体――」
「博士、一夏の戦闘ログは全部回収してるのか?」
『
「ISコアは全部回収済み?」
『戦闘中に破壊されたのもあるし、修復不可能なモノも幾つかあるよ』
「テロリストが使ってたISは残ってないかな?」
『クーちゃんがいっくんから預かってたのがひとつ残ってて、何もいじってないデフォルトのままだけど?』
矢継ぎ早に情報をやり取りする二人に周りは取り残されているが、お構いなしに次々と情報をやり取りしていく内に、弾の中でシナリオが出来上がっていく。
「
『DSOでってこと? それなら2時間もあればできるけど』
「
「
「更識のおっさん、協力してくれるのはどこまでだ?」
「日本が不利にならない限り、可能な限り協力する事は約束しよう」
「レクトはどういう落とし
「最低限、経営に悪影響が出ないようにしたいのが本音です。先日デュノアと技術提携をしたばかりですし」
「相手はランクスか?」
「ご存知でしたか。もしかして、君がヴェクターというプレイヤーで?」
「ああ。もしかして、何か伝言が?」
「ええ。手加減はしても手心は加えなくていい、と」
須郷の言葉がトドメとなったか、弾の顔が悪どいものへと変わっていく。それを見ているラウラの顔色は青から土気色に変わっていき、今にも吐きそうな顔をして引いている。
「た、頼むから世界大戦が始まるようなマネだけは!」
「ンなつまんないマネするかよ。ピンポイントで黒幕にお仕置きしつつ、世界には注意喚起程度で済ませるさ。とりあえず、策は練り上がった」
そうして、弾の口から語られた内容に、エーリヒはおろか千冬までもがドン引きし、更識は頬をひきつらせ、束に至っては大爆笑してノリノリでよりデンジャラスな提案をしていく中、菊岡と須郷は揃ってメガネを光らせ、その計画に加わっていく。
一方は利権の匂いに、もう一方はカネの匂いを嗅ぎつけヤル気十分。絶対ロクな事にならない予感しかない。
それを見ていたラウラと数馬はお互い顔を見合わせ、連中が
「世界大戦は起こすな、とは言ったが――」
「まだ戦争になってた方がマシなんじゃないかな、コレ……」
ようやく主要メンバーと更識パッパ、菊岡と須郷(レクト)が合流。悪党どもへの反撃(というか報復?)はこれからが本番。魔王サマは一体どんな計画を立てたんでしょうね?
こうして見ると、ほぼ一夏だけが危険な役回りを先行し、弾の知恵を借りて千冬やラウラ達がとりこぼしを処理した形になっていますが、本来であれば原作キャラ(SAO側含む)のモブが後遺症の残る大怪我をする予定でした。が、半端な展開は無駄なヘイトを買うからやめろと言われ、ならいっそ突き抜けるかと開き直り、役割作って適材適所で魔王サマは今回参謀&策謀役に徹して世界をひっかき回す仕事にしたのですが……正直悪党どもは地雷原でタップダンスしてる方が生存率高いかも。知り合いに先行でプロット見せたら「真綿で亀甲縛りするような展開」と言われました。
自分で書いててアレだけど、こいつら本当に日本の中学生か?w
無能な上層部と悪役共は心を折るどころかすり潰した所からのスタートが確定。フロムゲーはだいたいこっからスタートだから問題ナイナイw
プロローグは残す所あと1話、次回はざまぁ&始末回。
読者に『スカッとした』と言われたいので、なるべく手加減しつつも手心加えないような話でいきます。
余談ですが、話の途中にある『先見の目』は誤字ではなく、ちゃんとこういう言葉があります。
意味は「物事が起こる前にそれを見抜く見識」ですが、明と目では見る範囲が違い、目の方がより遠くを見据えていることを指します。もっとわかりやすく言えば、千冬が見ていたのが『先見の明』で、弾が見ていたのが『先見の目』。明かりが届く範囲しか見てなかったか、もっと遠くまで見ていたかの違い。