DS - ダイアグラナル・ストラトス - 作:飯テロ魔王(罰ゲーム中)
今回は新章の始まりというので色々控えめ。
前回投稿した1週間後に落雷直撃して家ないなった(´;ω;`)
自宅の再築終わるまでアパート暮らしorz
01-01 燻る火種
一夏が
あれから何が起きたのか判断できない。あの少年に一方的にやられた所までは覚えているが、辺りは真っ暗闇で情報がない。とりあえずステータスチェックをすると、現在位置は太平洋のド真ん中。水深400mに位置し、IS自体は無事な様だが巨大兵器の方はボロボロ。
「……そう、私は負けたのね」
全ての武装が破壊され、無人機も全滅したのならそう判断するしかない。ひとまず情報を集めようとジェネレーターを再起動。18基中4基は起動するが、動作が不安定で残りの反応もない。それでも巨大兵器を起動できるだけの電力は確保できたので、機体を稼働させるとウィンドウが展開され、そこに岸が現れた。
『スコール!? ようやく目が覚めたのね』
「あなたも生き残った様ね。他のメンバーは?」
『気を失ったまま――いえ、今起きたみたい』
ウィンドウの向こうでは女性達がよろめきながらも起き上がり、あーでもないこーでもないと騒ぎ始めている。勝手に盛り上がっているのを横目に、コアネットワークを使ってネット上から情報を収集。
やはりスコールは敗北し、IS部隊も全機撃墜。本土で動いていた歩兵部隊もドイツ・アメリカ・ロシアの混合部隊に全員確保、CPも撃墜された。切り札である
(……ここまでね)
とりあえずの義理は果たした。目的も達成されたし、こいつらに従う理由もない。
『とりあえず、ここを離れるわよ――スコール!』
ええ、とスコールが応え、少し間を置いてゴゴンという鈍い音と共に機体に振動。何か当たったのかしらという程度に考えていた岸が、何とはなしに外を見ると、夜の暗さとは違う黒に見える気がする。まさかと思って計器を見ると、高度はどんどん下がっていき、ブリッジだけが海底へと向かっている。
それに気づいた岸が焦り、スコールに振り返った。
『スコール! 一体なにを――』
「報酬分の仕事はしたわ。私の役目はここまで」
『なッ!?』
ここにきての裏切りに、岸達が騒ぎ出す。
『あなた、危ない橋を渡ってまで牢獄から出してあげた恩を仇で返す気!?』
「言ったでしょ、私にも目的があるって。それが
『ッ!? あなた、最初から私達を利用するつもりで――』
「お互い様でしょ。あなた達だって
スコールの指摘に岸達は黙るしかない。いざという時の保険として用意しておいたシナリオが、土壇場になって自分達の立場を悪くする。が、この窮地でも彼女達は愚かだった。
『な、なら取引よ。私達を安全な所まで運んでくれるなら報酬は弾むわ。だから――』
「支払える
『隠し口座があるわ。そこからあなたに報酬を――』
「支払う頃には凍結されてるのに?」
ぐ、と岸が
『な、ならこの巨大兵器に積んである私財を』
「アシがつく財宝なんて、粗大ゴミより邪魔じゃない」
『なッ……!?』
話をしてる間もブリッジは海底に向かって進んでいく。水圧に負けているのか、ミシミシと嫌な音が聞こえ始め、岸の焦りが加速する。
『ちょっ、助けなさい!』
「自分達でやれば? いざという時の為に、ブリッジ部分も独立して操縦できるんだし」
慌ててコンソールにとりつくが、操縦はタッチパネルとキータッチの複合式。マニュアルを探して周りを見るが、そんなものはどこにもない。
何かないかと周りを見回せば、メンバーの中に中国のIS研究機関の元所長がいたのを思い出す。
『あ、あなた、この開発に関わってたんでしょ。こいつの操縦方法とかわからないの?』
『知らないわよ! わたしよりこいつの方が専門よ!』
『こっちに振らないでよ。あたしが知る訳ないでしょ!』
中国の所長が隣にいたイギリスの所長を指差すが、こちらも使えない。どいつもこいつも政治や経済、果ては関連工学の中枢を
ギャーギャー騒ぐだけの連中を尻目に、スコールは海上へ向かって浮上していく。
「じゃあね。もう会う事もないと思うけど、幸運を祈ってるわ」
『スコール!? 戻ってきなさい、スコール!』
岸が叫ぶが、スコールは通信を切断。ブリッジはより深い海底へと向かい、その間も機体の異音は止まらない。明らかに水圧に負けていく音が死を連想させ、偶然目に入った計器が示す深度は1500mを越えた。
『スコォォォル!』
ブリッジはあっという間にペシャンコになり、少し遅れてゴゴンッと潰れた音が伝わってくる。元々ISのシールドバリアありきの強度だからか、この程度の水深でも機体が耐え切れなかったようだ。
それをハイパーセンサー越しに見ていたスコールは小さくため息をつく。
(機体の強度にも問題あり、か)
あの少年に一方的に蹂躙された時から薄々感じてはいたが、この巨大兵器は強度の方に不安がある。いくら外装部分が
反面、IS本体の強度はデタラメに硬いようだが、これがあの少年にどこまで通用するのか。
「……ISコアも全部使い切ったし、
CPも撃墜されたようだし、残骸も回収されていると予想していたが、破壊された巨大兵器が海上に浮いているのを発見。まさかと思って近付いてみると、向こうから通信が入った。
『スコールか?』
「あら、貴方達も生き残ったの?」
『向こうが殺人に慣れていないかったのが幸いした。兵装に関する部分は破壊されたが、肝心な部分は無事だよ』
所詮は日本の中学生。いくら強くても、最後の一線を越えるのは
これが甘さとなるか後々の問題になるのか、今のスコールには判断がつかない。
『あの女達は?』
「本体とブリッジ部を切り離したみたい。気が付いた時にはいなくなってたわ」
『チッ――土壇場で裏切ったか』
いけしゃあしゃあとスコールは言い放ち、指揮官が毒づく。真実はこうして
『これからどうする?』
「まずは貴方達を回収して潜伏ね。ドッキングポイントはまだ生きてる?」
『ああ。そちらも問題ないか?』
スコールは「ええ」と答え、主要ユニット以外をパージしてCPのユニット部に接続しステータスチェック。向こうのジェネレーターは全基無事だったのが幸いし、出力が安定する。対
シールドバリアを再形成し、PICによる姿勢制御を取り戻すと、機首を東へ向けた。
『どこへ向かう気だ?』
「ライン諸島。そこの無人島にドックを用意してあるわ」
それだけ言って、スコールは移動を開始。文句なしにズタボロにされたが、
これから世界はいなくなった連中を探し回る事になる。その間に
(ダイアグラナル・ストラトス・オンライン、か)
たかがオンラインゲームと
あの理性を狂気で組み上げた様な判断力と胆力。それを自信にしてきたと思える立ち回りは、
「……調べる必要があるわね」
織斑一夏だけが特別なのか、それとも
場合によっては、次のプランを練り直さなくてはならない。
織斑一夏が日本から亡命した。
このニュースは瞬く間に世界中に
あまりのクズっぷりに
『もしかして、モンド・グロッソの悲劇で集まった
SNSでポツリと
今まで表沙汰にならなかったのも、その義捐金を流用し、モンド・グロッソの中止によって企業や政府関連事業部が損失した資金の
当然、それだけの不祥事を起こした為政者や経営者を支援しようという物好きはおらず、この事件に関わっている可能性があったとされる者達の後援会からは次々と支援者が脱退。支持率もあってないようなものになり、グレーな噂や黒い噂のある議員らは、任期が終わる前に人生が終わりそうな所まで追い詰められ、関与を疑われた企業経営者は
以前の意趣返しか、マスコミ達も首謀者とされる最重要人物を追いかけていくが、騒動が明るみになる前に雲隠れしていたり、なんらかの事件に巻き込まれて死亡しているのが判明し、それを聞いた陰謀論者は諸手を挙げて喜ぶような状況が出来上がっていき、世は再びカオスな状況になりつつあった。
そこを狙ったかのように始まるMMOトゥデイの配信は、かねてより予定していたDSOの新規イベントの発表。織斑一夏がテロリストと対峙した軌跡を再現するエクストラミッションの説明だが、それはインパクトのあるゲストの登場と共に始まった。
なにせイベントの説明に現れたのは、レクトより茅場と須郷のツートップ、そして篠ノ之博士と、彼女に連れられて来たイチカ。話題の渦中にある英雄達の登場に、SNSだけでなくミラー配信をしていたチャンネルも大騒ぎ。当然、MMOトゥデイの配信同接数もサーバーが落ちそうな勢いで伸びに伸び、コメントも拾えないぐらい流れまくる中でイベント説明が始まったが、話を聞けば聞くほど新規ユーザーは困惑し、古参勢が戦慄するものだった。
・エクストラミッション『巨大兵器討伐』は、前回説明した通り事件に現れた巨大兵器と無人機を撃墜するまでのタイムアタックで、規定時間内に対象を
・参加できる人数は
・ネタがタイムリーな事もあり、新規勢がいきなり挑戦する可能性も
・織斑一夏が搭乗した『ビルト・フルーク・プッペ』並びに『ビルト・フリッケライ』は、ゲーム内の資金を支払えばゲスト権限で使用可能。IS
・織斑一夏が経験した状況も
・イベント期間は一ヶ月だが、要望があれば延長。延長の声が続くようなら常設ミッションに
1時間程度の配信でざっくり紹介された内容はこんなもので、新規にDSOをプレイしようと考える者にはとっつき易いイベントに見え、ISの研究資料にしようと考える者達には宝の山に見えた。が、訓練された――否、染まりに染まったヘビーユーザー達はその裏にある罠と、その意図に気付いた。
最大100人まで参加可能な
機体に制限がないという事は、逆を言えば結構な時間をかけて装備を整えないとクリア自体難しいという事。新規勢を沼らせる気満々な運営の姿勢に気付いたユーザー達は
一夏が使用した機体が使用可能というのは、一見すると装備もままならない新規勢への温情措置にも見えるが、
つまり、これはあの事件を風化させないように作られたイベントであり、織斑一夏が利用されない土台をつくる為の布石。同時に、DSOの価値を高め、やり込みプレイヤーや実力あるプレイヤーが世に認知されやすくなるチャンスでもある。
それに気づいた承認欲求のあるユーザーがアップを始め、新たなビジネスチャンスに企業はプロゲーマーの新規チーム結成の為の人材探しを開始。政府関係者は世間の目がDSOに集まるのに任せ、動きを潜めて騒ぎの収束を待つが、それが魔王と愉快な仲間達が仕掛けた“毒”とも知らず、人々がDSOに注目し、イベントが白熱すればするほど為政者と企業の不祥事が話題に上がり、
世の動きは、ヴェクターが予想していた通りになり、ここからはランクスが用意したシナリオの始まりだった。
DSOでイベントが始まって4日が経過し、アクセス数は毎時10万を切ることがなく、新規勢は手早く装備を整えるため課金し、そんなひよッ子を育てようと古参は様々なアドバイスや戦い方を教え、それらを
「ここまでの影響とは予想外です。たった3日で初期目標利益に到達しました」
「ネットプレイヤーというのは嫉妬と対抗心の
それは競争心と言ってもいい。人より優位に立ちたいという気持ちはネガ・ポジ問わず誰でも持っている心理だ。茅場はこの心理を刺激するシステムをDSOで構築し、須郷もそれに
「現在のクリアレートは
「
「第三者から
報告を受けつつ、ARウィンドウに表示された
「……これは、なんの冗談だ?」
「
DSOにおける一般的な部隊規模での対巨大兵器の戦闘時間は平均して30分から40分。それを基準に
一夏が現実で行った戦闘時間は17分24秒と異様に短いが、これはファストクラスというぶっ飛んだ技術レベルが生んだ例外的なものだと思っていたが、アルメリアというプレイヤーは自前のDSで挑んで25分40秒、ヴェクターとクリスハイトは
「彼を持ち上げる意図が見え見えだな」
「これは意図してクリアタイムを狙ったのか、それとも偶然か。判断に困りますね」
「惑わせるのも込みの
今回のイベントで用意された報酬。通常の報酬とは別にクリア特典で一夏の戦闘データをリプレイとして
茅場は難色を示したが『ソロモードでゲスト機を使用し、20分以内で初見クリアする』という無理難題なクリア条件を聞き、半ばネタとして許可したが、ファストクラスとはいえその条件を満たせるプレイヤーが現れるとは思いもしなかった。
「博士が意図したものとはいえ、仮想課は――いえ、
「むしろ状況を利用して
「僕達に? ……ああ、そういう事ですか」
一度は狂気に触れたからこそわかる。この男は
一般的には「くだらない」と評されるものに価値を見出し、自分もその渦中で踊り狂える狂人。近いと評したのは似て非なる部分が多いからだが、それが吉と出るか凶と出るか。
ランクス・デュノアがレクトにコンタクトをとってきたタイミング、それにあわせるかの様にやって来た菊岡。その裏で動いていた更識はドイツと繋がりを持ち、それぞれに指示を出していたという
(この状況を利用するつもりか? いや――)
利用するだけなら
「何にせよ、彼が動き出すのはまだ早いか」
「次は織斑一夏とランクス・デュノアの行動次第、ですか?」
「どうかな。もしかすると
そう言って、茅場はARによって展開されたレポートに目を通し、収支結果に話を戻す。脱線はここまでという事らしい。
須郷は続いて中国支部、欧州支部の動向を説明しつつ、既にユーザー間からイベントの続行の声が上がっている事も説明。既にこうなる事を予測していた為、茅場はすぐにイベントの期間を一ヶ月から三ヶ月に延長を決定し、発表はイベントの折り返しになる二週間後。
おそらくそれでも熱が下がる可能性は低いので、念の為常設イベントへ移行する準備も同時進行で進めておくようにも指示。
燃え残った火種が、新たな厄災に変わりつつある。
新章の始まりなのでちょっと短め。
日本で起きたテロとDSOのイベントによってずっと擦られ続ける不祥事の数々。これはもう少し引っ張りますが、これを越えるネタは用意してあるので、今後の展開をお待ちください。
次回は砂糖と笑いを少し投入しますw