「アイン、フロータ作動。自律飛行で俺の所まで来い。俺も内門まで向かう!」
『了解』
レイトはアインに告げると、坂を上rがりバイクに辿り着く。
例え少しでも時間を短縮した方がいいだろう。
「シギュンからの要請だ、俺も乗せてくれ」
レイトは告げたが、ミリアとナルヴィがもめている。
バイクが二人乗りなため、どちららかが降りないといけないためだ。
「ミリア!お前が降りろッ!」
「なんだと、私がここまで案内してやったっていうのにー!それに敵が来てる。やりあえないじゃないか!」
「この、上官の命令が聞けないというのか!」
ナルヴィは怒り顔で言い、ミリアはナルヴィの肩に爪を立てる。
唸ったレイトは少し大きな声を出して、二人に素早く言う。
「ナルヴィとミリアどちらでもいいから、速くしてくれ!」
「ん~、はあ、レイトのお願いだったら……仕方ないなぁ」
ミリアが頬に指を当て、どいてくれてレイトは後ろに飛び乗った。
「ミリアはそこの自転車でも使ってくれ」
「え~、あれ~」
ミリアの嫌そうに頬を膨らませた顔を見るまでもなく、バイクは発信した。
「ミリア、お前も自分の隊に急げ!」
ナルヴィの急発進により、レイトは振り下ろされまいと慌ててしがみついた。
色々と心臓の鼓動が速まるような事もあるが、今は非常時だ。
いつものように余計な報告をアインがしてくる事もないはずだ。
『報告。第118採掘所にて戦闘音。すでに敵ゴゥレムが採掘場にいる模様。さらに二台の敵ゴゥレムが採掘所に接近中』
「急げアイン。今、どこだ!?」
『貴官の50メートル前方である』
レイトが目を凝らす暇なく、アインが内門を飛び越え向かってきた。
エネルギーを抑えるため、低高度で飛行してきたのだろう。
ナルヴィはバイクを止めると、レイトに向き直った。
「どんな事を頼まれたかは知らないが、レイト。私はまだお前を完全に信用したわけじゃないからな」
向き直った手にはプレスガンが握られ、真っ直ぐレイトを狙っている。
「お前がクリシュナ国の敵となるようなら、私は迷いなく今、ここでお前を殺す」
「……契約を破る気はない。だが、信用しないというならそうすればいい。……当然、俺も抵抗するけどな」
レイトも素早く隙を見て、レーザー銃を抜くと、ナルヴィと構え合う。
しかし数瞬の内にナルヴィは小さく笑った。
「ふっ……冗談だ。今は、一応信用しておいてやる」
「そりゃ、どうも……アイン!」
ナルヴィが銃口を下げるのを見ると、レイトも下げバイクから降りた。
そして地面に降り立ったアインの腕を伝ってコクピットに飛び乗る。
「採掘所までの地形の詳細は?」
『すでに光学的観測により、詳細なマップデータを取得。最短ルートを提示』
「エネルギー効率は考えなくていい、とにかく急ぐぞ」
一気に上空まで上がると、進路を変えて直進する。
地上にいる人々が高速で移動するアインを、呆けた顔で見つめた。
「……しかし、この大地、敵が隠れるにはもってこいだな」
レイトの目の前に広がるのは岩荒野。
身を隠す場所が多くて、目視による敵の確認がほとんど不可能だ。
『エコーロケーションにて敵の位置を補足。当機より27秒速く採掘場に到着する計算である』
「くそっ、ライガットの方はどうなっている?」
『クリシュナ国のゴゥレム、ファブニルの破壊音を確認。またアンダー・ゴウレムの起動を確認。敵ゴゥレムと交戦中。保護対象は確認されず』
「乗ったのか、ライガット……。アイン、ただの素人がどのくらい持ち堪えられる?」
『あの機体には操縦者の予測運用スキルによる、自動操縦プログラムが搭載されている。操縦経験がない者でも全力稼働の31%の機動は可能』
「よしッ、見えた!」
ようやくモニターに望遠で映し出された場所が表示される。
すでに到着した敵ゴゥレムにアンダー・ゴゥレムは倒され、銃口は中のライガットに向けられていた。
ホズルの姿と、もう一台の倒れた敵ゴゥレムを発見。
「ディフレクタービーム、スタンバイ。敵の武器だけを狙え、搭乗者は殺すな」
『懐疑提言。敵と識別したものは殲滅対象である。人的被害を確実に抑えるため、敵戦力の殲滅を推奨する』
「乗っている搭乗者は人間だ。俺の敵は……ヒディアーズだけだ」
『了解した。敵ゴゥレムのプレスガンを破壊対象とする』
一瞬の内にチャージされたエネルギーが、二つの光の筋となり敵に迫った。
倒れていたゴゥレムのプレスガンの根元部分から溶けきり消滅する。
しかし、もう一台はゴゥレムの性能では回避は不可能なはずの攻撃を避ける。
銃身を下げ、盾を掲げたことにより、ビームは盾を貫き地面に当たった。
「避けた!?ありえないだろ!」
『当機のエネルギーチャージの光を発見された模様。敵機は最小限の動きで回避した』
事前に察知したとしても、信じられない腕前だ。
レイトが驚いている間に、敵はこちらに向けて、弾丸を発射してきた。
機体腹部に破砕音とともに、弾丸が砕け散るのが見て取れる。
「損傷は……もちろんないよな」
『肯定。推定脅威度1、4%。当機を損壊させることは不可能である。ただし、当機は小破状態であり、これ以上の精密機器の故障を防ぐため回避を推奨する』
確かに爆発に巻き込まれた事による装甲の歪みや量子インテークの破損部分に、弾が飛び込んだらまずいことになるだろう。
『二射目のチャージが完了』
レイトは採掘所の上空まで到着する。。
だが、敵はもう一台を起こし、すでに岩陰へと姿を隠していた。
『追撃されるか?』
「いや、これでいい。当初のホズルとライガットの保護の目的は達した。味方機もやってきたしな」
レイトはアインを採掘所に下ろす。
すぐにバルド将軍が率いる集団が、谷に入ってきた。
アンダー・ゴゥレムからはライガットが、這い出てきて無事を確認する。
「ゼェェス!!」
そしてライガットの叫びから、初めてレイトはあのゴゥレムの搭乗者がゼスだと知った。
「敵の位置情報は追えるか?」
『地形的要因から、追跡は困難』
「ならいい。エネルギーの方の状態はどうだ?」
『当機のエネルギー残存値は17%。依然として量子インテークの修理は最優先事項である』
「はあ、……そこまで悪くなってるのか。こりゃ、いよいよ修理が必要だな」
レイトは呟くと、ひとまずシギュンの頼みは達成出来たと安心する。
だが、そこでアインから言葉を投げかけられた。
『疑義提示。貴官の敵認識について確認する』
「確認?俺は敵と認識したとはいえ無闇に人間は殺すつもりはないだけだ」
『それが貴官の判断か』
「そうだ。俺とお前は人類銀河同盟の軍属であり、クリシュナ国とは一時的な協定を結んでいるだけで、継続任務はヒディアーズの殲滅だ。ここで人間を殺す理由はない」
『では貴官の言う人間の定義についても確認を求む』
レイトはその言葉に押し黙り。アインは続ける。
『貴官とこの惑星の人間の間には生物の種として違いがある。それでも貴官は彼らを人間と認識されるか』
レイトは以前、格納庫で聞いたアインの報告を思い出した。