漂流者 ~異世界転移~   作:ぺこぽん

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第十六話 撤退

撤退を果たしたゼス達は、渓谷に姿を隠している

 

「リィ、遅いな……」

 

呟いたクレオは、見張りについていた。

他の三人は集まり、報告を交わす。

 

「そうか……」

 

「はい。自分は退却の時に……リィがその、信じられない物に」

 

アルガスの表情は、どう報告しようとするか苦渋している。

それをゼスはどこか、押し殺す様な表情で睨んだ。

 

「俺の判断ミスだ……」

 

エレクトはゼスを擁護しようとするも、ゼスは手で止める。

 

(俺が撤退の時間を早めるべきだった。……焦ってリィを失ったのは俺の責任だ)

 

拳を握るゼスにアルガスは、質問を投げかける。

 

「あの、その空を飛ぶゴゥレムの事なのですが……あれは、一体?」

 

だが アルガスの質問には答え自体が飛来してきた。

 

「な!何か来ますーッ!!」

 

クレオの何の報告にもならない警告。

エレクトはそれを注意する暇もなく、三人は瞬時にゴゥレムに飛び乗る。

周囲を警戒、そしてやって来たものを捉えた。

 

「あれが……!」

 

エレクトが驚愕の声を上げる。

頭上に飛来してきたのは、球体を頭に浮かべるゴゥレム。

夕日を反射する光沢を持つ機体は、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

「隠れても無駄だ。お前達の居場所は補足している。出てこい」

 

拡大された音声が、頭上から岩陰に潜む三人に掛けられた。

ゼスの合図を待つが、それよりも全員敵が両手に抱えられた物に注意がいく。

 

「リィ……」

 

ゴゥレムの四肢は欠損しているが胴体部は潰れていない。

中にはまだ生きているリィがいる可能性が……。

人質のつもりか!、とゼスは表情を険しくする。

 

「俺は話し合いに来ただけだ。こちらの少女を人質にするつもりはない」

 

ところが、相手はそんな事を言いゆっくりと敵地に降下して来た。

振動もなく降り立った途端、頭上に浮かぶ球体は消え静寂が戻る。

 

「リィ!!」

 

「馬鹿者!出るでない!!」

 

いきなりそこにクレオが飛び出してきた。

見張りをしてたのでゴゥレムに乗れなかったため、岩陰に身を隠していたのだ。

 

「いやいい、アルガスはそのまま。俺とエレクトは出るぞ」

 

隊長の判断を疑いたくなるも、エレクトは従った。

目の前では敵がゆっくりと、リィのゴゥレムを地面に降ろしている。

 

クレオは恐怖など抱かずとにかく、リィの元にと近寄った。

半円の石英板の向こうではリィが眠る様な表情を浮かべている。

クレオは、キッと震えながら頭上を睨む。

 

「安心しろ。気絶しているだけだ。後数時間ほどで目が覚める」

 

だが、思いのほか優しげな声が返ってきた。

 

「話し合いに応じよう」

 

そこでゼスが声を上げた。

クレオが後ろを振り向くと、ゼスとエレクトの機体が近づいてきている。

ゼスはプレスガンを降ろし、敵の目の前に立った。

エレクトはゆっくりと警戒しながら近づき、胴体部を持ち上げた。

そのままクレオを連れ、後ろに退避する。

 

残ったゼスとレイトは真っ直ぐ向き合う。

 

「お前がゼスだな」

 

最初に声を掛けたのはレイト。

ゼスはそれには返答せず、じっと沈黙を保つ。

 

(搭乗者は……まだ若いな、俺と同じくらいか?……それも訛りがある。オーランドの者か?)

 

弾丸を弾く堅牢な装甲。

砲門を持たない光線の様な兵器……

少しでも情報を拾おうと思考を回した。

 

「お前の事はホズルにシギュン。ライガットから聞いた。アッサムでの同級生。そして三人の旧友であると」

 

ライガットと言い、コイツといい一体、クリシュナ国で何が行われている?

オーランドが戦争を引き起こした理由と関係があるのか?

 

ゼスは沈黙を辞めた。

目の前のコイツは何であれ、動かす人間が存在するはずだ。

なら……ゼスは操縦席の扉を開けると、頭の横から出る。

 

「隊長ッ!!」

 

エレクトの声があがるが、ゼスは無視する。

……どうせこいつの前では何の盾も役に立はしない。

 

「そうだ、俺がゼスだ。……話し合いというならお前も姿を見せろ」

 

ゆっくりと相手に見えない様にゼスは、プレスガンを後ろ手に隠した。

搭乗者が姿を現したらすぐに、撃つつもりで。

何と言われようが……ここでこいつは殺さなければならない!

 

「無理だ。隠したプレスガンで撃たれたくないんでな」

「なっ」

 

どうやってこいつは、隠れて見えないはずのものを……!

ゼスは顔をゆがめると、プレスガンを投げ捨てる。

後、残されたのは後ろのアルガスの狙撃のみ。

 

「どうしても顔が見たいと言うなら、これでどうだ?」

 

だがいきなり目の前に、石英に映しだされた映像の様なものが浮かぶ。

一体、どんな技術で!?

驚いて身を低くしながらも、それはヘルメット被った自分達と同じ人間だという事に気づく。

 

「お前は……一体、何なんだ……?」

 

ゼスは口の中が乾きながらも、質問する。

しかし、有効な質問ではないと否定し言い直す。

 

「いや……質問には質問で答えてもらう。お前はどこの国の人間で、何の目的でここに来た」

 

「俺はクリシュナ国と協力関係にある傭兵だ。それ以上は答える気はない。ここに来たのはライガットが言い残した言葉を伝えるためだ」

 

「ライガットが……?」

 

「アテネスからクリシュナに勧告された降伏条件の事だ」

 

ゼスはライガットが何かを言いかけていたのを思い出す。

 

「貴族制度の廃止。それに……クリシュナ王家の抹殺だ。

そしてそれにはシギュンも含まれる」

 

思わずゼスは言葉を無くした。

だからこそホズルが降伏しなかった理由がわかった。

……兄上……あなたは。

 

「……その表情を見るところ知らなかったみたいだな」

 

当然といえば当然だ。

ただの末席の兵士に詳しい戦略の事まで伝えられるがない。

 

「さて、ここからは俺の勧告だ。述べる。すぐさまクリシュナ領内から立ち去れ」

 

ゼスは目の前に浮かぶ映像を睨んだ。

 

「そこの少女を殺さず引き渡したのはただの俺個人の考えだ。だが、クリシュナからの要請があれば今すぐにでもお前達を殺すことは可能だ」

 

いきなり相手が腕を上げた。

反応する間も無く押し寄せる熱。

敵の腕から放たれた光線が巨大な岩に命中していた。

当たった場所はその部分だけが焼けただれ穴が空いている

 

「即刻引き返し上に上申しろ。クリシュナと停戦協定を結ぶようにな。クリシュナの脅威を伝えろ。敵はいつでもアテネスの首都を陥落させる事が可能だと」

 

ゼスは何も言い返せず、睨むことしか出来ない。

 

「25の若造のいう事なんて言うなよ」

「クっ」

 

どうしてこいつはライガットに言った言葉を知っている!?

 

「忘れるな。次に来る時は命はないと思え」

 

敵は告げると球体を頭に出現させた。

ゼスは揺れて機体に捕まり、あれが飛行を可能とする技術だと知る。

そして敵は来た時と同様にあっという間に去って行った。

 

言葉はない。

エレクトは始めてゼスが浮かべる表情を見る。

当然、誰であれあんなものを見れば同じ事だろう。

 

「……ゼス様ッ!リィは生きています!」

 

そこに空気を読まない、クレオの嬉しい声が上がる。

エレクトはそれに少し息をつく。

 

「エレクト、アルガス、クレオ。お前達はリィを連れて.

本隊と合流しろ」

 

そこに掛けられたゼスの言葉は、落ち着いたものだった。

 

「はっ、いやしかし隊長は……」

 

「俺は残る」

 

「そんなわけにはいきませぬ!」

 

エレクトはゼスが暴挙に走ろうとしているのではないかと疑う。

先ほど敵が言った降伏条件といい、今の隊長は正しい判断が出来ていない。

 

「お前達部隊を率いたのは、大義とは別に俺個人の思惑あっての事だ。命令だ、帰還しろ」

 

誰も言い返せない中、クレオが叫んだ。

 

「やめましょう、ゼス様っ! 私はリィが生きていてくれて本当に嬉しかったです。ゼス様にしんで欲しくありません!!」

 

純粋な言葉に思わず笑みをゼスは浮かべた。

 

「クレオ、これは戦争なんだ」

 

諭すような自分の言葉にゼスは、はっとした表情を浮かべる。

それから憑き物が落ちたような表情で、すまなかったと言う。

 

「訂正だ。これよりワルキレウス部隊は全員で撤退する」

 

ゼスはそう告げた。

 




そういやあの世界って馬とか牛とかいましたっけ?
いたら農作業とか楽そうなのに。

『今回、当機は一言も話さなかったのである』

「しょうがないだろアイン。いきなりおっさんの声が会話に混じってきても相手が混乱するだけだろうが」

『マシンキャリバーI-4825アインは、操縦席レイト中尉に声質の変更を求める』

「断る!」

『ならばせめて女口調に変更することを……』

「断固、断る!」
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