漂流者 ~異世界転移~   作:ぺこぽん

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第二十話 部隊

倒れた隊長を見て、エレクトは叫ぶ。

 

「この、よくも隊長を!」

 

エレクトはすぐに倒れたゴゥレムに止めをさそうとするも逡巡した。

 

(何故、隊長は撃つなと、おっしゃたのか……)

 

思えば、このゴゥレムは最初の交渉の時にもゼス様の様子がおかしかった……。

エレクトは考えるがすぐに、中断された。

 

「敵部隊接近!」

 

アルガスの声にエレクトは視線を上げた。

平野の北側から敵部隊が押し寄せてきている。

エレクトは倒れ伏したゴゥレムは、このまま放っておくことにした。

それから、

 

「……隊長をこのままにしてはおけん」

 

エレクトは部隊に自分は残り、撤退を指示しようとするが、アルガスがそこに声を掛けた。

 

「私が敵部隊の足止めを行います、その間にエレクト殿は隊長を」

 

そこにリィの声が加わった。

アルガスに解放されたリィは、機体から出るとクレオの方に走り出す。

 

「あたしにも時間を! せめてクレオの生死を確かめさせてください!」

 

「リィ、待て!」

 

エレクトは静止を呼びかけるが、リィは無視をした。

現状、一番の部隊が生き残る手はゼスのみの安否を確かめる事だ。

だが、エレクトは友人を助けに向かうリィを本気で止める事は出来なかった。

 

「しばしの時間で良い、頼んだぞ、アルガス」

 

「了解」

 

アルガスは答えると、敵部隊に向きを変えた。

格納していた盾を取ると、走り出す。

 

(最前列に三機)

 

着実に放った弾丸は最初の一機の脚部を破壊する。

そのままアルガスは直進するが、敵部隊はアルガス目掛けて撃ってくる。

だが、堅実に構えた盾は、なんとかアルガスを守りきり先ほど打ち倒した敵機までたどり着く。

 

(自分の役割は時間を稼ぐことだ)

 

そのまま倒したゴゥレムを抱え替え、生きた人質として盾にした。

その場にいた動けない残り二機も、行軍を辞めざる負えなくなる。

次々にやってくる敵も、人質の前に動けなくなった。

 

「悪いが、これも戦争だ」

 

アルガスは動けずにいる敵の胸を狙い定めて撃った。

だが、突然その射線が横から現れたものによって、躱される。

 

「はい、邪魔ー」

 

胸部を撃たれずに済んだ騎士は、横から現れたゴゥレムに押しのけられる。

そして倒された騎士はそのゴゥレムの鈍い赤色を見て、叫んだ。

 

「ミリア殿!」

 

ミリアはその声を無視して、押しのけた相手からさらに盾を奪った。

自分のプレスガンを放棄し、両手共に盾を掲げる。

アルガスはそれを確認した。

 

「ッ……速い!」

 

一機だけ、ファブニルにあるまじきスピードで迫ってくる。

ほとんど転倒して大破してもおかしくない状態で、絶妙なバランス感覚で走っている。

叩き落とそうと弾丸を放つも、二つに並べられた盾は確実に防ぐ。

 

「くっ、ならば!」

 

一気に近づいたミリアに、アルガスは抱えていた人質を放り投げた。

避けられぬ位置。受け止めるためには最低でも片腕は必要!

それでもミリアは、左手でゴゥレムを支え、右手の盾をアルガスにぶつける。

 

「無駄だ」

 

アルガスは自身の左手の盾で防ぎ、残ったのは、右手に持つプレスガン!

 

「終わりだ!」

 

だが、弾丸はプレスガンが動いたことにより、空に射出された。

 

「残念~」

「くそうッ」

 

アルガスはそこで、動いたのがプレスガンではなく、自身の機体だと気付く。

下に目をやれば、自分の左足の関節部がミリアの出した右足で砕かれている。

 

(こやつ、人質を杖にして、右手と右足を同時にッ!!)

 

アルガスはすぐさま、片足のみでバランスを取ろうとするが、

 

「じゃあね、バイバイ!」

 

新たに構えられ、左側から迫ってきた盾が胴体部を直撃し機体を地面に沈めた。

そのままアルガスは装甲に押しつぶされて死んだ。

 

 

エレクトはアルガスが、やられるのを横目で確認する。

すぐさま視線を降ろし、隊長の安否を見るも目立った外傷はなかった。

あのゴゥレムの突撃を盾で防御した事により、敵の剣の勢いがそがれたのだろう。

エレクトは歓喜に身を震わせ、後はリィとクレオを回収するのみだと考える。

振り向くが、リィは未だクレオの機体のそばでしゃがみ込んだままだった。

 

「リィ!」

 

迎えに行こうとするもすぐ足元に着弾する。

続けて、エレクト目掛けていくつもの弾丸が飛んでくる。

すでにここ一帯は敵の射程距離範囲内。

 

「リィ、クレオ、済まぬ」

 

エレクト苦渋の表情で視線を振り切ると、撤退に移った。

 

 

 

「もう逃げれないか……」

 

エレクトのゴゥレムの背中を見たリィは呟いた。

視線を落とし、ようやく脱出口から引っ張り出したクレオを見下ろす。

こっちは汗だくだというのに、クレオののんびり昼寝でもしているような表情に気が抜ける。

 

「クレオ、あんたがこのまま死んでたらって、今は思うよ……」

 

だが、リィは表情をすぐに一変させ、眉間に皴を寄せた。

そのままクレオの腰から、プレスガンを取り一気に構えた。

狙うはクレオの頭。

 

「ごめんな。……でもこのまま敵に捕まって辱めを受けるくらいなら、あたしに殺されたほうがまだましだろ?……クレオ」

 

最後の別れとばかり呟いたリィは、魔力をプレスガンに伝えようとして

 

―――出来なかった。

 

狙いは定まらず、カタカタとクレオを狙うプレスガンは震える。

 

「っつ……!」

 

リィはクレオから目を反らすが、結局それでも撃つことは出来なかった。

力が抜けたように膝からしゃがみ込み、今度は自分の頭に押し付ける。

 

すぐに一度、自害しようとした時の事を思い出した。

……どうせ、一度は死んだ身……

諦めに似た表情を浮かべる。

だが、

 

「クレオ、どんくさいあんたを置いて一人でいけるわけないじゃないか……」

 

リィは諦めたように苦笑すると、プレスガンを遠くに投げ捨てた。

 

 

その時、ようやくナルヴィ率いる部隊は到着した。

 

「トゥル旗下、参上!」

 

そしてナルヴィは全てが終わっているのを見て、

 

「だ・か・ら、あれほど装備を軽くしようと言ったのに…………なんでだあああ!!」

 

と、叫んだ。

 




う~ん、ライガットが村に帰っちゃうという話もいいなと思ったんですが、
オリジナル展開は考えれそうにないです。
まあ、ライガットなら人を殺してなくても、ホズルとシギュンのために戦いそうですよね……。
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