漂流者 ~異世界転移~   作:ぺこぽん

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第二十一話 捕虜

クリシュナ王国、会議室。

捕えた二人のアテネスの女性騎士の処遇について議論することになった。

クリシュナ国の軍の重鎮が集まり、ライガットも呼ばれている。

 

「奴らは国土を蹂躙し、我が国の兵の命を奪った。断固としてあの小娘共を拷問にかけるべきである!」

 

断固として主張するのは、集まった両将軍の内トゥル将軍だ。

それにライガットはずっとため息をついた表情を浮かべている。

一番、倒した相手が死んでないと聞いて喜んだのは彼だからだ。

 

「特に名前を明かさぬ短髪の方、手を出せばこちらを噛みそうな勢いだ。生かしておいてもろ碌な事にはならぬであろうな」

 

トゥル将軍はそれだけ言うと、立ち上がって退室していった。

ナルヴィが自分達は、何も功績を上げていないと最初に述べたからだ。

去り際に、ナルヴィはバルド将軍の隣に座る、ミリアに強い視線をぶつけた。

 

「私は、功績あげたしー」

 

ミリアは手を振って別れを告げ、ナルヴィは憎たらしそうに去って行った。

それを見送ってから、シギュンが手を上げる。

 

「あの、両名は親しい友人関係であると思われます。もし片方が死んでしまったとなると、生き残った方は、きっと後を追うでしょう。そうならないよう配慮して、尋問を考えるべきだと考えます」

 

バルド将軍はシギュンの意図を読んで、シギュンの言葉に続けた。

 

「となると、片方を人質しもう片方から情報を入手するという事ですかな。両者を見るに、長髪の少女から情報を聞き出す方が良いでしょう」

 

「はい、ですが強硬な手段に出て、人質としての役割が無くなるのは避けたい事です。……

なので捕虜の尋問は私にまかせてもらえないでしょうか」

 

シギュンはさらに情報を付け加える。

 

「二体の中破した新型ゴゥレムの再利用計画にも関係がある子なのでお願いします」

 

わかりました、とバルド将軍は頷き、最後にライガットの方を向いた。

ライガットはというと、胸元に手を当ててずっと固まっている。

 

「ライガット……君の意見は……」

 

「いや、……まじで良かった。……あやうく人類の至宝のあの胸を殺しちまうところだった」

 

その言葉にシギュンがじっ、とライガットを睨みあげた。

それにライガットは、ゴクっと恐怖にひきつった顔でつばを呑んだ。

 

----------------------------------------------------------

 

捕えられたリィとクレオは別々の牢屋に入れられることとなった。

クリシュナ地下の牢でリィは、牢の両隣に立つ衛兵に怒鳴る。

 

「いいな!クレオに何かしやがったらただじゃ、済まさないからな!」

 

リィは先ほど、目の前を連行されていったクレオを思い出す。

クレオがあれから何をされているかわからない。

拷問をされているかもしれないが、クレオが生きている可能性がある以上、リィは自殺という手段を選べないでいた。

 

「くそッ、絶対に殺してやる!!」

 

怒りをぶつける様に、手錠を牢の格子に叩きつけた。

 

「無意味な事をはやめろ、……リィ」

 

すると左側から声が掛り、ゆっくりと誰かが近づいてきた。

奇妙な服装に、見た事もない髪と目の色の男だ。

 

「ッお前、なんであたしの名前を……!いやそれよりも!」

 

リィはその声と口調から、以前戦った空を飛ぶゴゥレムの搭乗者だと知った。

怒りの形相でリィは、レイトを睨み格子に詰め寄った。

 

「てめえ、あたしのゴゥレムをおしゃかにした奴……!」

 

「ああ、そうだ」

 

レイトは短く答え、警戒のまなざしで見てくる衛兵達に両手を上げ、少し下がった。

先日の一見から、敵の兵を生かすだけでなく逃がすのではないか、と思われている。

 

「なんで、……なんでお前、あたしが死ぬのを邪魔した。それどころかなんで、生かして部隊の所まで連れて行った!?」

 

リィは自分が部隊で、足手まといになった原因について詰め寄る。

せめてあのまま殺しといてくれれば、こんな結末にならずにすんだかもしれないのに、と考える。

 

「大した理由はない。ただ、俺の任務がある人物の護衛で、それに付随する敵部隊の排除だったからだ。そしてその中に、搭乗者の殺害は含まれていなかった、ただそれだけだ」

 

「はあ、ふざけんなッ!おかしいだろ、敵同士なんだぞ……それを任務って」

 

リィは目の前に立つ、青年を疑惑のまなざしで見つめた。

わけがわからない事を言い出す、相手を気持ち悪いものでも見るような目で見る。

 

「あんた……一体、何なんだ……」

 

だが、リィはそれより重要な事を口に出した。

 

「クレオは!……クレオを一体どこにやったッ!!」

 

「さあな、俺には知らされていない」

 

レイトはあっさりと答え、それにリィは喰いつく様に叫んだ。

 

「いいか、もし、クレオに何かしてみろ。あたしは舌を噛み切って死んでやる!」

 

「やればいい、無駄な行為だがな。上手く処置が済んでも、回復したことろにはお前は言葉を失っているだろう」

 

レイトはアインから、表示された情報から読み取る。

 

「なら頭を壁にぶつけてでも!!」

 

そう言ったリィに、レイトは小さく溜息をついた。

 

「やめろ。そうなった場合、クレオの方に捕虜としての役割が集中するだけだ。彼女が大切なら、せいぜい従順にクリシュナ国の要求に従え」

 

その言葉にリィは、怪訝な顔をしてレイトを睨んだ。

こいつは、一体何をしにここに来たのか疑問が浮かぶ。

クリシュナ国の代表ではないし、拷問官というのもありえない。

どちらかと言えば、こちらを気遣い、懐柔しようとするようだ。

 

「あんた、一体、何しに来たんだ……」

 

すると相手は初めて、無表情だった視線を彷徨わせた。

 

「……いや、ただ、俺は一度助けた相手が無意味に死ぬのは、それこそ意味がないと考えた……だけだ」

 

「あんたが勝手に助けたんだろ!」

 

「だとしても、……その、惜しい。生きていればこそ役割がある……命だ」

 

「はあ?」

 

リィは、とことん呆れた表情を浮かべたが、相手はすでに背中を向けていた。

 

レイトはゆっくりと地下の牢を後にして、歩いていく。

その肩は下がり、眉間に皴が寄っている

 

「俺、何やってんだ……」

 

思わず声に出た通り、レイトは自分が結局何を伝えたかったのかを見失っていた。

自分が倒したからこそ、捕虜となってしまった相手だ。

だからこそ、同じように自害しようとしているなら、止めたかったのだろうか……。

それともただ、人間が無意味に死ぬのは人類にとっての損だからだろうか。

 

「わからん」

 

レイトは考えるのをやめ、格納庫まで戻ってきた。

すると、

 

『警告。格納庫にて敵捕虜が脱走中』

 

「なに!?詳細場所は?」

 

すぐに矢印が現れ、レイトを現場に案内する。

 

『現在、プレスガンを所持しシギュン殿を人質に、要求を告げている』

 

「なんて言っている!?」

 

だいたい逃げ出した少女の狙いは予想がつくが、レイトは尋ねた。

 

『リィと自身。捕虜、両名の解放である。敵捕虜の抹殺により、事態の収拾を図るか』

 

ようやく格納庫の二階に上がり、右横の通路にシギュンとそれにライガットの姿が見えてくる。続いて、斜め下にわずかに機動したアインの姿が見えた。

アインの手が光り、ビームがいつでもクレオ目掛けて放てることを示している。

 

「却下だ。最後まで待機しろ」

 

レイトは告げると、一気に通路を飛び、ライガットにプレスガンを構えるクレオの前に飛び出した。レーザガンを構え、向き合う形となった。

 

「レイト、やめて!」

 

シギュンが叫ぶが、レイトも元より殺すつもりはない。

ただ、このままだとライガットの命が危ない。

両名の命を天秤に掛ける場面に、レイトの鼓動が不規則に乱れ始める。

いつもの発作の様な表情が現れ始めた。

 

「どいてください!私はリィに会いたいんです!会わせてくださいッ!」

 

クレオは叫び、レイトはそれでも選択しようとして……気が付いた。

シギュンの表情と後ろから感じる数名の気配。

 

「なら、こんな手はやめろ」

 

レイトは、すっとレーザーガンを下げて、クレオに語りかけた。

 

「まともな捕虜の扱いを受けたいのなら、両名が生き残れる手を考えろ。それもリィも望んでいる」

 

そこでクレオは茫然とした表情で、レイトを見つめた。

以前、投影超しに会った時はヘルメットをかぶっていたが、クレオもレイトの正体に気づく。

 

「あなたは……あの時の、リィを返してくれた人?」

 

思わずクレオもプレスガンを持った手が下がるが、気丈に持ち直した。

 

「そうだ。生きてもう一度、彼女に会いたいと望むなら考え直せ」

 

レイトはゆっくりと手を差し出すと、クレオは恐る恐るプレスガンを差し出した。

一度、親友の命を助けてくれた相手だからこそ、言葉を聞く気になった。

すぐさま、そのまわりを隠れていた衛兵達が取り囲む。

 

「本当は、それ弾は入ってないのよ」

 

シギュンがクレオに近づいて言った。

 

「もし新型ゴゥレムの修復に協力してくれるというのなら、捕虜同士の面会も考えます」

 

それにクレオはぎゅっと、頷いた。

 

「……ありがとう」

 

去り際にレイトに礼を告げ、クレオはそのまま連行されていった。

するとレイトはその場で、肩を落として深呼吸する。

それにライガットが気が付いた。

 

「おい、レイト!大丈夫か?すごい汗だぞ」

 

「ああ、平気だ。ちょっと、走ったから疲れただけだ」

 

ライガットは感謝の念を伝えながら、レイトの肩に手をやった。

だが、シギュンはじっと、レイトを見つめていつもと様子がおかしい事に気がついていた。

そして、その手が震えていたことも。

 

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そして、しばらくして王都の地下の牢から、新たに人が出された。

格納庫に連れてこられた人物は、二体のエルテーミスが並ぶ場所に連れて来られる。

 

「こいつを一週間で乗りこなせか……」

 

「中破した二体のエルテーミスを捕虜の情報を元に修復したものです。ミリア殿ですら、一度無茶をして、足を潰したじゃじゃ馬です。ナルヴィ殿と同等と言われるミリア殿がむずかしいとなると、他に搭乗者が見つからず……」

 

「貴方の妹殿が、自分以外乗れるとしたら、自分の兄しかいないと……」

 

「へえ、……でもまたイライラして味方、殺しちゃうかもよ」

 

バルド将軍の息子、ジルグはそういうと笑った。

 




ミリアが一度足をつぶしたというのは、設定的な性格から一度、限界まで無茶しそだからです。
それと、中破って意味をよく理解してないのですが、リィの機体大破、アルガス、クレオの機体中破、ゼスの機体はリィの中身を突っ込めば治りそうですが、部品調べのために潰されたと考えてます。
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