漂流者 ~異世界転移~   作:ぺこぽん

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第五話 歩み寄り

クリシュナ王室で会議が開かれている頃、レイトはアインの下に座っていた。

手持ちのパックから水分を補給して、汗を拭う。

レイトは嫌そうな表情で太陽を見つめた。

 

『貴官の行動に論理性を見い出せない。膠着状態を維持する理由を問う』

 

「仕方ないだろ、アイン。歩み寄ろうにも、向こうの上層部が引っ込んじまたんだから」

 

レイトは視線を上に向け、そびえ立つ城を眺める。

それからこちらに向けて、武器を構える人々に視線をやった。

 

「それよりもここの状態を少しでも解析出来たか?」

 

レイトは次々に質問をする。

 

「ここの部隊の最高責任者は?兵器の詳細は?何故、未発見の惑星にこれほどまでに人類の眷属が繁栄している?」

 

『1、人々の服装や行動から先ほど階段の下にいた、褐色の男性を最高責任者と推測。また、会議による決議を行っていることから、先ほどの最高責任者を王とし、それに続く権力者、そして最下層を民とする君主制の国家であると推察』

 

「そんな組織でよくもつな、トップになるのは人間だぞ。頭が足りない奴がなったらどうするんだ?」

 

『権力を一点に集中させるという点では非常に優秀な形態である。しかし歴史上から見て、その多くは権力の闘争や他国の侵略にさらされ、組織の脆弱さを露呈し、淘汰されてきた』

 

「なるほどな……次はこいつらが持っている武装について教えろ」

 

レイトは隣のテラスの上に立つ、石で出来た人型の機械をちらと見る。

 

『2、先ほどの解析情報から、石英で造られた二足歩行の兵器である。搭乗者は確認されるが、動力源は感知されず』

 

「何!?それでどうやって動かしているんだ?武器は?」

 

『武器については空気を圧縮させ、ピストンの動力源として石英を削って造られた弾丸を射出する模様。しかし、依然として武器、及び本体の出力を操作する動力源は不明である』

 

レイトは、不服そうに頬を掻いた。

未知なる技術には興味がそそられるが、アインにすら解析できないのに疑問を浮かべる。ヒディアーズに対峙した時のような、未知なるものに対する恐怖を少し感じた。

 

「じゃあ、何故これほどまでの人間が人類銀河同盟に発見されず、ヒディアーズにも滅ぼされていない?ここは人類が発祥した、地球でもないんだろ?」

 

『肯定。ここは未発見の未知の惑星である。貴官の疑問については情報不足であり、推論の意味をなさないものである』

 

そうか、とレイトは呟くと小さく、ため息を吐いた。

 

「ここの連中から情報を聞き出すまでわからないか……」

 

そこでアインが顔面部のカメラを明滅させながら、レイトに提言してきた。

 

『現在、当機は先の戦いによる損傷により、現状の打破に十分な兵装を有してはいないのである』

 

「偉そうに言えるセリフか……!」

 

『訂正。貴官の無謀な行動による損傷により、当機は現状の打破に十分な兵装を有してはいないのである』

 

レイトは唇を引きつらせ、上を見上げたが、アインは黙々と言葉を続ける。

 

『同盟への救難発信を続けているが応答がないため、このまま単独での作戦行動を続ければ必要な兵站を得られず、貴官の新陳代謝に支障をきたす。よってここの国と協力関係を結ぶのを推奨する』

 

「そのつもりだ。それとお前の回復率はどうだ?飛べるくらいには回復したか?」

 

『否定。先ほどのビームの使用により、再びエネルギー値は低下。依然として約1%である』

 

「なら温存して、回復を最優先にしろ。お前をここじゃ再起動できないだろうからな」

 

それからレイトは、ゆっくりと手を伸ばして、太陽の光に触る。

頬を撫でる風を感じ、髪を掻き上げた。

 

「……生きている惑星、居住可能な惑星は同盟の悲願。……俺にとってもそうだったよな。これほど豊富な大気に大地。ここはアヴァロンに代わる新たな拠点に出来る」

 

『提言。貴官の職域を超えた判断だと推察する』

 

「まあな、だけど開拓部隊にいた頃に任務を皮肉にも今、達成出来たんだ。少しは嬉しくも感じる。お前はどうだ?」

 

『当機は貴官がより多くの成果を獲得することで存在意義を達成する。しかし貴官の現在の任務は本隊に合流することであり、惑星発見の任を有してはいない。よって、貴官は遭難状態であるといえる』

 

「はいはい、全くお前はいつもいつも……」

 

と、そこでレイトの言葉を打ち消すようにブザーが鳴った。

 

『接近警報』

 

レイトはレーザー銃を上に向けて構えると、立ち上がった。

そして目を丸くすることになる。

近づいてくる男は、先ほどアインが述べたこの国の最高責任者、王と呼ばれる人物だったからだ。

 

男は、周りの兵士の制止を振り切り、笑顔でこちらに近づいてきた。

レイトはアインの翻訳を見る。

 

「やあ、俺ほホズルという。このクリシュナ国の王をやっている」

 

それからホズルは、右手にもった杯に左手の瓶から液体を注ぐ。

自分が口をつけてから、レイトに差し出した。

 

「レイトっていったか。お近づきに一杯どうだ?俺は、お前達の事を知りたい」

 

「なんだこれは……?」

 

『穀物である麦を発酵させ、醸造したものである』

 

「つまり、酒か……!漂流部族でも飲んだことはあるが……」

 

レイトは昔を思いだし、青い顔になった。

思わずすがるような声でアインに話しかけてしまう。

 

「飲まなきゃ……駄目か?」

 

『友愛の儀式と推察される。判断は貴官に委ねる』

 

レイトは意を決したように、唇を結び、ホズルから酒を受け取った。

一気に口に含み、ふらつきながらもなんとか飲み干した。

ホズルは朗らかな笑顔を浮かべうと、アインにペタペタと触ってきた。

 

「ほお、これはすごいゴゥレムだな。金属で出来たいるとは」

 

『否定。当機はゴゥレムに非ず、マシンキャリバーと呼称されたし』

 

「おお、やはり人は乗っていないのか?ではどのようにして話しているのだ」

 

向こうから一気に近づいてきてくれたのなら、これ幸いと思い、

レイトはアインに軍規に触れない範囲の事を話させた。

 

しばらくすると、大勢の人々がテラスに近づいてきた。

シギュンや偉そうな服を着た男達だ。

 

「陛下、お下がりください!!」

 

黒いサングラスを掛けた男が、レイトとホズルの間に立つ。

それから先ほどの褐色の女が、ゆっくりと銃を構え、レイトに近づいてきた。

 

「ナルヴィ!そのままそやつを捕えろ!!」

 

後ろで小太りの男が叫び、これにはレイトもレーザ銃をナルヴィに向けて、構える。

協力関係は結びたいが、それは一方的ではなく対等な関係でありたい。

だが、ナルヴィのプレスガンを止めた手があった。

 

「将軍、ちょっと待ってください」

 

「シギュン様!?」

 

レイトはシギュンが近づいてきたことにより再び銃を頭上に向けた。

 

「答えて、あなたはどこからきたの?アッサム、アテネス、オーランド?」

 

シギュン自身も考えを否定しながら、確認のために国の名前をはっきりとレイトに聞く。

1000年前の地層から掘り起こしたゴゥレムだがどう考えても、レイトはこのゴゥレムの搭乗者だ。

レイトはゆっくりと首を振ると、人差し指を頭上に向けた。

 

「空……?」

 

『否定、その上』

 

アインの言葉にシギュンは息を飲み、思い当たった。

 

「宇宙から……!?」

 

レイトはそこで話しを切り出すことにした。

幸いにもこの場には、この国の上層の人間が集まっている。

 

「アイン、この国に逗留する許可を求めろ。交換条件として、こちらの手持ちの情報を与えろ」

 

『人類銀河同盟にいおて、漂流部族及び同盟に順しない者には情報の一切の開示を禁じられている』

 

「あ~、別にお前の解析技術でも何でも当たり障りのないものをだ。この国と一時的に同盟関係を結ぶ」

 

『了解。現場の最高階級者に従う』

 

レイトはレーザー銃をしまい、ホズルの方に向いた。

 

『この場所に住むのを、望む。代わりに力、貸す』

 

「この国と協力関係を結ぶと言うことか?」

 

ホズルは周り人と顔を見合わせた。

シギュンに目をやると、彼女はゆっくりと頷いた。

この場には国の上層のメンバーが集まっているが、決断するには色々と問題が出てくるだろう。

しかし、これ以上騒ぎを続けるわけにもいかない。

ホズルはレイトに向かって、笑顔を浮かべた。

 

「受けよう。お前たちをクリシュナ国の客人として迎える」

 

賛成と反対の声が同時に上がり、ホズルは苦笑する。

だが、一度王が述べた事を覆すことは出来ない。

 

「お前もそのつもりだったよな……シギュン」

 

「あなたがそう思うというなら……そうです」

 

シギュンは視線を逸らすと、レイトとアインを見つめた。

宇宙からの来訪者。

謎は深まるばかりだが、これから彼らと話をしていけばおのずとわかるだろう。

 

『貴官と当機を客人として迎え入れるという承諾を得た』

 

「本当か!?また余計な一言を言ってないだろうな」

 

レイトはアインの報告に一一先ず、力を抜いた。

こうも速く、協力関係が結べたというのは前回の教訓が生きているのかもしれない。

レイトは少し、苦笑すると、ふと昔の事を思い出した。

脳裏に浮かぶのは、強気な表情を浮かべた車椅子の少女。

教訓といえば、彼女によく言われた事を思い出した。

 

「アイン、この国で初めて会う人には、なんて挨拶する?」

 

レイトはホズルに近づいていくと、周囲の警戒の中、手を伸ばした。

それからアインが教えてくれた言葉を出来るだけ丁寧に言う。

 

「ヨロシ、く」

 

その手をホズルはしっかりと握った。

 

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