その間に、色々とありましたってことで
荒野に倒れている男の姿がある。
水もなく、力も失い、今にも死にそうな姿だ。
「くそっ……」
男は小さく呟き、諦めかけたとき、いきなり頭上に影がさした。
本能で上から何かが落ちてきているのだと感知し、勢いよく飛び起きる。
先ほどの死にそうな姿など、消え去っていた。
「うおあああァあああッ!!なんだ、何だ!?」
見上げた先には、空中に浮く見たこともない黒白のゴゥレムがいた。
言葉を失いう中、そおゴゥレムはゆっくりとと地面に降り立つ。
そして、驚くことにゴゥレムの頭が開き、そこから男が降りてきた。
「お、おい、あんた……!」
「ライガット・アローだな。クリシュナ王国の要請でお前を迎えに来た」
男はヘルメットを脱ぐと、妙ななまりがある言葉で話しかけてきた。
ライガットと同い年くらいだろう、つんつんと尖った銀髪とやけに白い肌が目立つ。
男はライガットを引っ張り、ゴゥレムの手に乗せて、操縦席に戻って行った。
「ホズルから頼まれたのか……?、つかいつの間にゴゥレムは空を飛ぶようになったんだ!? 俺のいない間に技術がどんだけ、進歩してんだよ!」
『しっかりと掴まれ』
しかし先ほどは、違う男の声がしただけだった。
レイトは操縦席に飛び乗ると、いつもの癖でヘルメットをかぶる。
「アイン、あいつで間違いないな?」
『肯定である。ライガット・アロー、25歳。くすんだ金髪に青の瞳、身体情報ともに一致する』
「よし、帰りの最短飛行ルートを割り出せ」
すぐさま、目の前に天気や地形の情報が提示され、瞬く間に計算される。
『確定。現在エネルギー残存値は24%。高高度の飛行は制限されたし』
「ライガットはちゃんと捕まっているか?」
『確認、講義の声を上げている模様。翻訳するされるか。貴官の言語上達及び、コミニケーションに役立つと思われる』
「いや、しなくていい。ちゃんと捕まっているならそれでいい」
レイトはフローターを作動させると、一気に空に浮かぶ。
ライガットが恐怖にひきつる叫び声を上げるのが聞こえる。
「……まあ、大丈夫だろう。我慢してくれ」
操縦席に無理やり詰める方法もあった。
だが、軍規違反でもあるし、何より男二人でこの狭苦しい場所に入るのはごめんだった。
そして、レイトはゆっくりとライガットがひき肉にならない速さで進み始めた。
現在、レイトとアインの立ち位置は、何故か傭兵ということになっていた。
クリシュナ国は、アインが提案した力というものを、武力として協力するとして解釈したのだ。
アインは、レイト中尉は人類銀河同盟の軍属であり、同盟としてクリシュナ王国に一時的な救援を求む、と説明しなおしたが、理解してくれる人間はすくなかった。
そもそも、宇宙から来たというものを真に捉えている者がほとんどいないからだ。
よって、現在もこうしてクリシュナ国の要請を叶え、衣食住と賃金を保証されている立場になってしまっていた。
「アイン、そこのテラスにライガットを下ろすぞ」
クリシュナ国にバイクの三倍の速さで到着すると、ゆっくりと着地した。
迎えに来たバルド将軍に、ライガットを引き渡す。
「ごくろう!」
するとライガットはふらふらと、青い顔をしながら、拳を振り上げてきた。
「おい、てめえ!よくもさんざん人の事、無視しやがったな! 名前を言えよ、この野郎!」
「レイトだ」
「あっ……!」
ライガットが言い返す間も無く、レイトは再び上空に移動した。
「格納来に帰還するぞ」
『了解』
アインが前に破壊した格納庫の天井の穴はそのままになっていた。
その補修した穴から入ると、レイトは決められている位置にアインを入れた。
「久しぶりに飛んだな、機体の状況がどうだ?」
『異常は見当たらず、貴官の腕は落ちていないものと思われる』
「あんだけゆっくり飛んでりゃ、誰がやったって……」
『上空から落下物体』
いきなり、アインを伝って、レイトの肩に飛び乗ってきた人物がある。
「おい、レイト!私も載せろって言ったろ!?」
レイトは困惑した表情で、肩車をする形になった少女を見上げた。
長い赤い髪を左右でくくっていて、人を食ってかかるような笑顔を浮かべている。
まだ未成熟な少女のだが、十分に異性をどぎまぎさせるだけの素質がある。
「またか、ミリア!降りろッ!」
短パンから出る太ももに首を挟まれて、レイトは顔を赤くしてしまう。
無理やり振り下ろしたところで、ミリアは柔軟に体を回転させ、地面に降り立つ。
「飛んでるんだったら、私も乗せろよなー」
「何ども言っているが、だめに決まっている」
「けち、けちー!なら勝負しろよ。私が勝ったら、そのゴゥレムをよこせ!」
『訂正を求む、当機はゴゥレムに非ず、マシンキャリバーと呼称されたし』
ミリアはレイトに向かって唇を尖らせる。
「んなことどうでもいいのー。やっぱ喋ってて面白いし!」
にししと笑うと、ミリアは後ろに手を組み、ゆっくりとレイトに近づく。
レイトは思わず、捕食者に睨まれたようにゆっくりと後ずさってしまう。
(なんなんだ、この女は……、何故俺は恐怖を感じている?)
顔のすぐそばまで近づかれて、にっこりとしたミリアに上目遣いで下から覗かれる。
いつもこの場合、アインからのレイトの異常報告が入るが、今日は別の乱入者がいた。
「ミリア!また部隊の演習を休んだな!」
バルド将軍が怒り顔で格納個へと入ってきた。
ちぇ、邪魔が入ったかと、ミリアは舌打ちをする。
「だってえ、あいつら弱すぎるんだもん、相手にならないっていうかあ、お兄ちゃんだったら違うんだけど……」
ちら、とミリアが伺った言葉にバルド将軍は黙り込んだ。
それにミリアは面白くない顔をして、レイトに手を振ってきた。
「はいはい、今度からちゃんとするって。じゃ、またね。レイト!」
そして、獣じみた動きでアインを足台にして、二階に消えていった。
「すまないな、私の娘が邪魔をして」
「いや、構わない。こちらも任務は完了したところだ」
バルド将軍は疲れたように息を吐く。
「ライガットは、どこに行った?」
「ああ、陛下が二人だけで話がしたいと、石英採掘所に向かった」
レイトはホズルがライガットに何をしようとしているのか察した。
おそらく、レイトが以前聞いた話しをライガットにも聴かせるのだろう。
そして、……それから恐らく、あの男は戦いに赴くか選択しなければならない。
(どう見ても……ただの農民にすぎない男だったが)
だとしても何かしらの役割は、誰でもしなくてはならない……。
そこでバルド将軍が頭を下げてきた。
「頼む、レイト。陛下の力となってくれ」
「俺は……」
『レイト中尉は人類銀河同盟の軍属である。いつかは帰還しなくてはならない』
レイトが口をまごつかせたところで、アインが役目を思い出せとばかり言ってきた。
当然、そのつもりだとレイトは目をつむる。
「バルド将軍。俺は雇われた者だ。それが要請とあれば、衣食住の分ぐらいは働くさ」
「すまない。頼む」
レイトは悩みを吹っ切るように、アインだけを見詰めた。