実のところ、去年やっと大学に受かって新生活でてんやわんやしていたらこんなに遅くなってしまいました。内容の方ですが、変更したいと思ったので改めて第4話を投稿させて頂きます。
ポツリ、ポツリという音と同時に肩に冷たさを感じる。
「雨か」
誰もいない歩道を歩きながら零は独りで呟いた。
外の世界に比べ飛躍的に進歩した科学技術を以てすれば雨が降る時刻など一分一秒正確に予言することは容易だ。問題はその予言を見るか見ないかであって、この男子高校生は後者に含まれているだけの話である。
五月雨だ、濡れていこう
と記し残した人物は誰であっただろうか、とぼんやり考えながら零は空いていた左手をポケットに突っ込む。
勿論、この男にそのような情趣を感じる感性は無い上に、時節は6月。梅雨である。
「もう、濡れるよ?」
そう言って、零の隣を歩いていた柚紀は傘を広げ上にかざした。
「ああ、すまん」
「いいよ、別に」
柚紀は傘を零に渡すと、ここぞとばかりに隣の人物に体を密着させる。
「柚紀、歩きにくい」
「気にしない、気にしない♪そんなこもよりも零はこのあとどうするの?」
「そうだなぁ、どうせ帰っても一人だし「私と一緒にいてくれるの!?」誰もそんなことは言ってないわ」
零がすかさず反論すると由紀は肩を落とし、分かりやすいぐらいに落ち込んだそぶりをみせる。
「そっか……寂しいな……」
(くっ)
普段の行動はあれだが、由紀は紛れもなく美少女である。血の気の多いこの街でこんな風に美少女を困らせていると、周りから何が飛んでくるかわかったものではない。
「はいはい、好きなだけくっつけば…」
「わーい♡」
はあ、とため息をついて零は折れるのであった。
この日も重福省帆はスタンガンを片手に復讐を決行しようとしていた。自分から彼氏を奪った常盤台中学に自分と同じ苦しみを味わせるために。この少女は常人よりも眉毛が太いために彼氏に振られてしまったのだと確信しており、常盤台の生徒をスタンガンで気絶させ、ペンで眉毛を書き入れて辱めを与えていた。今までにこの復習が他人に見られたことはない。それもそのはず、幻想御手で強化された彼女の能力「視覚障害」は対象者の認識を阻害し、例え目の前にいても湧いての目に映らなくなる、という特性を持っているからだ。
「でさあ…なんだよ…」
「へえ…」
今、彼女は目の前にいる常盤台の生徒とその彼氏と思われる人物を睨みつけている。会話の内容はよく聞こえないものの、彼女の方が彼氏に密着し、失恋中の少女にとってはこれ以上ないぐらいに妬ましい。
(あの子も…私と同じ目に遭わせてやる)
大丈夫、人が一人増えたところでこの能力は破られない、と彼女は自分に言い聞かせ目の前のカップルに向けて音を立てないよう素早く歩き出した。左手に持っていたスタンガンを右手に持ちかえ、常盤台生の首元めがけてその手を伸ばす、あと30センチメートル…
(喰らいなさい!…)
「あのさ、その辺にしとかないとタダではすまなくなるよ」
少女の顔からサッと血の気が引いた。
(バレた?…)
これまで一度もバレたことがなかったのにバレてしまった。その事実は元々、善人であった少女の心を動揺させるには十分だった。加えて少女には周りの空気が酷く冷たく感じた、6月ではありえない程に。
「君、俺たちがノートだって知って近づいてきてるの?」
恐怖心からか、姿を現してしまった重福にはなぜだかこの質問が生死に関わるような気がした。早く否定しなければ、この人気のない路地裏で永遠にさまよってしまう、そんな気がしてならない。
「はやく答えてよ」
「ご、ごめんなさい…そ、そ、その、私…ただイタズラで…」
「ふぅん」
「ね、ね、零、この子はやく殺っちゃおうよ。別に人一人消えたって上がなんとかしてくれるしさ」
隣の彼女は笑顔で恐ろしいことを言っている。こんな人たちを相手にしようと考えていた自分を殴ってやりたい、重福は激しく後悔した。
「本当に知らないの?」
「は、は、はい」
「まあ、いいや。」
許してもらえたのだろうか、少女は顔をあげるのも怖くなり、そのまま後ろを振り返って全速力で逃げた、息の続く限り、ここからできるだけ遠くに…
「相変わらず零は甘いね」
「いいだろ、別に」
「ま、そこが好きなんだけどね」
「はいはい」
「もうつれないんだから」
横で何か言っていいる由紀を流しつつ、零はほくそ笑んだ。
(幻想御手はちゃんと動いているようだな)
春休みに入ったので投稿頻度をあげて行きたいなぁ(遠い目)