吸血鬼が教育する〜帝都教育係と正義の少女〜   作:カナタナ

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ナイトレイドを教育する

「……はぁ、やってしまった」

 

 条件が揃っていてセリューがピンチだったとはいえ、魔奥義を発動してしまうとは。

 発動してからのデメリットはないが、こういうことになるから面倒なんだよなー。

 

 

「見たか、辻斬りの死体?」

「見たけどよ……、あれって絶対人がやった後じゃねえよな」

「やっぱり帝都にいるのかな?」

「噂の吸血鬼?」

 

 どうもあの状態になると喉が渇くというか、血が欲しくなるというか……。

 人の殺し方にならなくなってああなっちゃうんだよなー。

 暴君は燃費が悪いとは聞いていたけど、想像以上だ。

 そのため使用したのはこれで二度目になる。

 

「……ヴァルバトーゼさんって本当に帝具を持っていないの?」

「見て分かっただろ、俺には帝具は必要ない」

 

 セリューとイエヤスは全然動けると言っていたが、緊急時でもないのに怪我人を連れて歩く必要は微塵もないということで休ませている。

 久しぶりの休日を満喫しようかと考えていたが、タツミに会いたいというサヨの希望もあって仕方なく外出することにした。

 

 アジトの場所は分からなくても特に問題は無い。

 地道にあるこうなんて思っていないからな。

 

「ところでサヨ、空を飛んだことはあるか?」

「まさか、飛べるわけないじゃないですか」

 

 となるとサヨは飛んだことがないのか。

 歩くこと数分、徐々に人影が減ってきたところで特殊な笛を使った。

 

「それは?」

「ある危険種を呼ぶための笛だ。きっと気に入るぞ」

 

 その音色に応えるかのように上空からエアマンタがこちらに向かってきた。

 

「これって、まさかエアマンタ?」

「俺が専用に飼い慣らしたものだ。しっかりと言うことは聞くぞ」

 

 まあ飼い慣らしたというよりは眷属にしたというのが正しいけど、言わなくてもいいよな。

 

「エアマンタよ、ナイトレイドのアジトは分かるな?」

 

 エアマンタは反応こそしないものの、飛び上がって方角を確認している。

 ……数人ほど俺を監視しているようだが、追いつけるはずはない。

 

 なんせこのエアマンタは俺専用となっただけあって超強化してあるからな。

 

「俺から離れるなよ」

 

 ……と、言う前からしっかりと掴まっているか。

 その後、エアマンタは猛スピードで空を飛行した。

 途中でサヨが気絶していたため少しスピードを落とそうか迷ったが、気絶してるならまあいっかという気持ちが勝ってしまったからそのまま飛ばした。

 風が気持ちいいのだが、やはり人を選ぶか。

 

 風をもう少し感じていたかったのだが、大きな建物が見えた時点でこの時間が終了したことを告げた。

 

「……サヨが気絶しているとなると、タツミとの再会はもう少し後か」

 

 ナイトレイドのアジトまで接近したところで何者かに警戒されていることに気付く。

 

「まずは軽く手合わせといこうか」

 

 エアマンタに止まれの合図を送り、急ブレーキをかけさせた直後にサヨを連れて一気に飛び移る。

 

「……飛んだ!?」

「遅い、接近されても対処できるように訓練することだな」

 

 例のピンク髪だったことが判明し、アジトに辿り着いた時についでにパンプキンを奪い取る。

 何か叫んでいるのを無視して走り続けると今度はシェーレが現れる。

 

「……そんな!? 貴方は――」

「動揺しすぎだ。戦場では味方が敵になることもありえる」

 

 動きが止まった所を見て所持していたエクスタスを奪って廊下を走る。

 

「敵か!?」

「油断するなよタツミ!」

 

 廊下からタツミと金髪が向かってくる。

 ……よく見るとあの金髪は帝具ライオネルを所持しているな。

 

「美味しくいただけ!」

 

 流石に帝具盗りは不可能と察し、代わりにイワシをそれぞれの口に突っ込んだ。

 

「……い、いわひ!?」

「っ、イワシってまさか……!!」

 

 そうして広間のような場所が見えたからそこに走っていくと……。

 

「――遊びがすぎるぞ」

「今度は三対一だ、さすがのヴァルバトーゼも三人の帝具使いを相手にするのは厳しいだろ?」

「ったく、ただ暴れてるように見えて御丁寧に糸を回避しやがって」

 

 アカメ、ブラート、ラバックの包囲によってさすがに足を止めてしまう。

 ……まあエアマンタの時点でバレてはいたか。

 

「ふっ、あのエアマンタの時点でアカメにはバレていたか」

「タツミがサヨやイエヤスと会いたいと言っていたからいつかは会うだろうと思っていたが、まさかここに来るとはな」

 

 俺は潔く盗った帝具を地面に置き、両手をあげた。

 

「安心しろ、油断するなとかいって攻撃はしない」

「約束だぞ?」

「……そうきたか」

 

 実はちょっとだけやってやろうと思っていたが、約束となるとそうはいかない。

 完全にナイトレイド侵攻は終了してしまった。

 

「……あー! やっぱりヴァルバトーゼね!」

「ほんっと、ヴァルバトーゼさんが将軍候補っていうのもよく分かるよ」

「……少し俺のことを視線で追いかけようと出来ていたのは褒めてやるぞタツミ」

 

 サヨとイエヤスもそうだが、タツミはあの二人よりも成長するだろうな。

 今はまだでもいつかはエスデスと肩を並べられるんじゃないだろうか。

 

「……素質十分。いい人材を手に入れたな、ナジェンダ」

 

 三人の包囲から解き放たれると、奥にはよく見知った顔がいた。

 眼帯で片腕が妙だが間違いない。

 

「最後に会ったのは私が将軍時代の時か」

「貴様がリーダーにしてはあまり教育が出来ていないのではないか?」

 

 相変わらずクールで大人びいているが、まだ若いんだよなこいつ。

 こんな時代でもなけりゃ口説いていたかもしれない。

 

「お前のおかげで皆ももっと訓練に励むだろうな。なにせそれぐらいの動きをエスデスもやってくるからな」

 

 エスデスか、たしかにあいつならこれぐらいやるだろうな。

 ……しかし、俺を皆の訓練催促のために利用するとはナジェンダらしいな。

 

「土産だ、東の国で獲れた新鮮なイワシだぞ」

 

 わざわざ手土産で新鮮なイワシを用意したのだ。

 これで喜ばないわけがない。

 俺なら凄く喜んで美味しく頂く。

 

「……生か?」

「生に決まっているだろ?」

 

 そこから俺とナジェンダの口喧嘩が始まった。

 結果は焼いて食べるとなったのだが、なぜか俺がおかしいという話に収拾がついた。

 

 ………何故だ?




次回予告

ナジェ「ナイトレイドのアジトがただの隠れ家だと思ったら大間違い! ここにはある機能が搭載されていた!」

アカ「そうだったのか!?」

ナジェ「敵を迎え撃て! 全包囲砲撃可能なパンプキンスプラッシュ!!」

ヴァル「ほう、迎撃手段はあったのか」

ナジェ「巨大ロボ発進だ!! 皆の力を一つに、悪鬼纏身インクルシオ!!」

レオ「ボスあれ買うどころか巨大ロボにしてるーー!?」

ナジェ「これだけの力が恐れるものなんてあんまりない!」

ナジェ「次回、超次元要塞ナイトレイド第八話「バイバイ・ラバック」」

ラバ「ナジェンダさん!?」

ナジェ「素晴らしいものだな! 出番があるというのは!」

ヴァル「ナジェンダ、ゴキブリ」


ナジェ「キャアアアア!!!」

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