続・ナイトレイドを教育する
ナジェンダ元将軍。
俺を将軍候補として選んだ人物でもあり、帝具パンプキンの元所持者でもある。
俺に帝国を抜けて革命軍に入ろうと言ってきた人間の一人であり、大切な仲間の一人だ。
その実力はあのエスデスも一人の将として認めたほどだ。
「その様子を見るに派手にエスデスにやられたのだな」
「……お陰様でパンプキンも使えなくなったが、なにも失うばかりではなかった」
ナジェンダが周りを見てそう言う。
……これだけ仲間が増えたなら、たしかに失ってばかりではないな。
「もっと鍛錬を積む必要はあるが、いい仲間を持ったな」
そう言うと全員から少しはあった緊張感が消えていく。
やっと警戒が解けてくれたか、嬉しいことだ。
「本当はイエヤスも連れて来たかったのだがザンクとの戦闘で派手にやられてな……、傷を癒すために安静にさせている」
「……そんな強い相手だったんだな、首斬りザンクって」
その場にいなかったのを悔やむように拳を強く握りしめる。
ようやく探し人が見つかったというのに、怪我人だったと言われればそうもなるか。
「教育係の道場に来ればいつでも会える。なんなら、俺が直々に稽古をつけてやってもいいぞ?」
「本当か!? それじゃあ、またその時は頼むよ!」
「約束しよう。……ブラートは顔バレしているから俺が暇な時に組手はしてやる」
「おう!!」
ブラートが凄くやりたそうな目をしていたから暇な時は付き合ってやることにする。
それに、ブラートとの組手となれば俺もかなり力を出せる。
悪魔たるもの常に強く、最凶であり続けなければならないからな。
「……やはりヴァルバトーゼが味方だと考えると頼もしいな」
「それはお前たちが仲間として約束を守るならだ。約束を違えるなら……」
この面子に限ってそれは有り得ないと思うが、念には念を押しておく。
「分かっている。疑い深い奴だなお前は」
「そんなつもりはなかったが……。すまない」
いつもこうだ、俺の方が年上のはずなのに何故かナジェンダと話しているとたまに俺が年下のように感じる。
「それで? まさかタツミとサヨを合わせるために来ただけじゃないだろ?」
「……お前たちにとっての悲報だ。エスデスが帰ってくるぞ」
そこからは俺がザンクを殺してから暴君化を抑えるまでに見た話をした。
ザンクからかなりの血を吸った後、燃費の悪さもあって盗賊狩りついでで軽く近辺を飛び回っていると北でヌマ・セイカが戦っているものだと見てみればとっくに全滅していて拷問の最中だったこと。
まだ帰っていないのはヌマ・セイカがギリギリ壊れていないから拷問をし続けているだけのこと。
それも時間の問題で遅くても数日後には帝都に帰還すること。
「……化物かよ、あいつは」
「北の異民族は一年はかかると思ってたのに、早すぎんだろうが……」
ラバックでも一年程度はかかると考えていたか。
やはり、エスデスは他から見てもワンランク上の化物というわけだな。
「おそらく奴はこれからも成長し続ける。倒すには全員が最低でもブラートレベルになっていないと話にならん」
「……ヴァルバトーゼの言う通りではある。ここにいるのは皆頼もしい仲間だが、それでもエスデスには届かない」
そう、これだけの帝具と人がいてもエスデスを倒せるかと言われるとまだ不可能なのだ。
育てきっていないキャラだけでバールを倒してこいなんて不可能、今の状況はそれだ。
「最低でも全員がブラートやアカメ並の実力がないと今の貴様たちではエスデスに挑んだところで死ぬのがオチだ」
「……そうは言うけど、ヴァルバトーゼはエスデスを倒せるわけ〜?」
ピンク髪が若干挑発するかのように尋ねてきた。
マインだっけか? いつもなら断るのだが、少しだけ態度にムッときたから逆に挑発し返してやるか。
「やるか? 貴様を闇に葬るぐらいはどうということはない」
軽く威圧を放ってやるとマインは潔く後ろに下がった。
「……やめておくわ」
「フッ、そんな怖がらなくても殺すつもりではやらん」
相変わらず殺し屋というのは殺意のプレッシャーには冷静に対応してくるのに覇気になると驚いた表情が顔に出る傾向にあるな。
「……私たちのような暗殺者、エスデスのような強者としてではなく、覇者として相手を圧倒する。それがヴァルバトーゼだ」
……そこまでベタ褒めされると妙に恥ずかしい。
いや、かなり恥ずかしいなこれ。
「……とにかくだ、エスデスが戻ってくるということは警備もこれまで以上に厳しいものになるだろう」
「大臣もエスデスを使って反撃に出ることも予想できる。……だが、それは逆に好機でもある」
そういうと帝具について書かれた文献を取り出した。
「奴等はきっとここぞとばかりに帝具使いを戦力としてこちらに仕向けるはずだ。それはつまり、より多くの帝具を奪取するチャンスでもある」
「帝具を奪い、革命軍の戦力を増強するチャンスってことだな」
俺が確認出来ている中でも帝具使いは七人いたはずだ。
そして、その中には……。
「……帝具使い同士の戦いとなると、クロメと出会う確率も高くなる」
「………その時は、私がクロメを
アカメの言葉には嘘偽りなどない。
……なら俺は、アカメより先にクロメを見つけなければならない。
■ ■
帝都がザンクの死体で噂になる中、一人の男が帝都に辿り着いていた。
その手にあるのは何者かの骸と鎌。
「――この場所に来るのも、久しぶりだな」
骸を砕き、無表情のままその男は闇の中に消えていった。