帝都を腐らせている元凶に関して。
これは全帝都民の共通認識だが、元凶は皇帝ではなくオネスト大臣という男だ。
「なるほど、確かにその腕ならばもう少し鍛えれば隊長クラスも夢ではないな」
だがオネストは様々な噂が流れており、誰も彼に逆らおうとはしない。
「しかし! 約束は約束だ。大人しく諦めてもらう」
そんなオネスト大臣たちに立ち向かうための革命軍が存在する。
中でも気になるのは帝都を震え上がらせている殺し屋集団、
――ナイトレイドだ。
「くそ……、教育係でもこんなに強えのかよ」
「相手が悪かったですね。師匠はこう見えて将軍候補の凄い人なのよ?」
「しょ、将軍候補!?」
今まで相手した中でもそこそこ強かった二人だが、まだまだ甘い。
イエヤスとサヨと言っていたか……?
「私たちじゃ勝てないわけだわ……」
「お前たちの実力も確かに相当なものだった、確かに力だけなら一兵卒以上のクラスにはなれるだろう。……そこで、正規で入隊するよりも近道な方法を教えてやろう」
二人をここで捨てておくには勿体無い。
後々オネスト大臣を再教育するためにも優秀な人材は集めておいて損はない。
「ここで俺の教育プログラムを受けろ! ここでの成績次第では隊長になることも大臣から認められている!」
それに、ここで正式な教育を受ければ少なくとも腐った人間になることだけは避けることが出来るはずだ。
聞いた話だとこの場所はブドー将軍の支援も受けているらしいし、大臣も下手に手を出すこともないだろう。
「そこにいるセリューも教育プログラムを終えた当時は隊長クラスになれる器だったが、自らオーガという男の部隊に所属する道を選んだ」
「…………えぇ、彼からも学べることとかありますのでー」
大して好きでもない企業を褒めなければならない下っ端社員のように棒読みで答える。
それじゃあ二人からの印象が悪く……
「すげぇ! セリューさんって向上心が高いんだな!!」
……はなっていなかった。
イエヤスと呼ばれていた方は意外と扱い易いかもしれない。
「……多少時間は掛かっても、ここが近道な方法なんですよね?」
反対にサヨと呼ばれていた方はセリューには突っ込まず、こちらの話に食いついてきた。
……どうやら、早く出世しなければいけない理由があるようだ。
「約束は守ろう。見事俺の教育プログラムを終えた暁には二人に相応しい職を用意してやる」
「……なら、私はその教育プログラムを受けます!」
『サヨとイエヤスが仲間になった』
「……あれ、俺も?」
「嫌なの?」
「あ、いや、俺も受けるけど……。俺も答えたかったて言うか……」
二人が楽しく話している間に、俺はこの場を後にする。
途中セリューが付いてきたそうにしていたが、二人の面倒を見てほしいと頼むと渋々承諾してくれた。
さて、俺はこうして帝都で教育係ばかりをしているわけではない。
オネストの摂政政治が行われているのは、皇帝の大臣依存が原因だ。
このままこの関係が続けばオネストが死ぬまで横暴がまかり通る国になってしまう。
「皇帝、今日も来てやったぞ」
「おお、ヴァルバトーゼか! 前回の宿題は全て完璧に終わらせたぞ!」
そこで、俺はオネスト不在で自室に篭っている皇帝に学問を教えることにした。
これでも小学校の教職免許に高校の歴史の教職免許を取っていたため、基本的なことなら教えることが出来る。
帝都の歴史や地理は知られていない帝具関連のことも多いためしっかり教えることが出来ないが、ほぼ完璧に覚えている。
「国語と数学ならヴァルバトーゼがいなくても大臣と勉強しているから完璧だ!」
「……だが、歴史は目に見えて間違いが多いな」
歴史に関しては帝国史よりも日本史や世界史を学ばしている。
もちろん俺の手作り教科書だ。
どれを見ても帝国史はいい事ばかり書いているため、どういう政治をすれば国が滅びるかが書かれていない。
つまり、皇帝はこのままでも何ら問題は無いと考えているのだ。
「……帝国のことなら分かるが、何故異国のことまで学ばなくてはいけないのだ?」
「異国では国が滅んでは生まれているというのを繰り返している。学んでいればこういう政治が国を滅ぼすのかということが分かるだろ?」
いつも歴史だけは帝国史だけでいいと駄々をこねるが、その度にこうやって国が滅びる、栄えるといった話をすればなんだかんだで真剣に聞いてくれる。
やはり、子供でも皇帝として国のことを大切に思っているのだろう。
――そんな皇帝を私利私欲のために利用するオネストは、やはり何としてでも再教育しなければならない。
「……ところで、この世界遺産というのは?」
「……俺のオススメ観光地だ。特に気にすることはない」
……つい書いてしまったが、別に知らなくてもいい知識だったな。
今更書き直すのは面倒だが、次新しいのを作る場合は別にいらなさそうなのは省くか。
その後、雑談を交えた俺と皇帝との勉強会は一時間ほど続いた。