二人を家に連れて帰り、気が付けば睡眠時間はたった二時間程度になっていた。
ここまでくると寝るより起きていたほうが楽だと思えるのはきっと俺だけではないはずだ。
「……早めに日課をこなしておくのも悪くないか」
帝都近辺を散策に行く。
最近じゃあ俺が狩りすぎたこともあって土竜も顔を見せなくなっている。
こうも危険種がいないとなると少し狩りすぎたかなという心配はある。
何も絶滅させるまで狩っていたわけではなく、アブソープションである程度能力を奪う程度にしか狩っていなかったが、それが毎日続くとこうなるわけか。
「……たまには普通に生活するか」
土竜の群れがいつかきっと戻ってくることを信じて今日は大人しくしよう。
「……あ、師匠!!」
道場に戻ってみるとセリューとヘカトンケイルと戯れているイエヤス、サヨの姿があった。
「どうした? まだ時間ではないはずだが」
「飲んで帰る日は大体この時間から起きているじゃないですか。待ち伏せしてみました!」
こいつ、さては俺の行動パターンをストーキングしてたな?
……てか、まさか俺自身帰る時間帯がパターン化していたとは。
「……せめて、食は食わせろ」
俺もアブソープション無しでどこまで出来るか丁度気になっていたところだ。
負けはしないだろうが、セリュー相手となると組手が長引きそうだな。
とはいえ腹が減ってはなんとやらだ、プリニー共を起こして飯を作らせるか。
「お前たち、飯は食べたのか? まだならイワシ料理を用意するが」
「……焼いてくれよ?」
何故そんな目で見る?
まるで俺が無理矢理生イワシを食わしているみたいじゃないか。
「うむ、プリニーにそう伝えてこよう」
「ヴァルバトーゼさん、今日も練習メニューの繰り返しですか?」
「早速その話か。今日はそれに加えて組手をする」
「師匠との組手ですか!?」
二人を押しのけセリューが前に出る。
……お前はいつも勝手に組手するだろうがと言いたいのを抑える。
思えば正式な稽古はここ最近したことがなかったか。
「ただし、セリューは時間制限を設ける。任務になれば限られた時間の中で行動する時もあるからな」
戦闘が長引きすぎて敵の援軍が大量に押し寄せてきたというケースも少くはない。
……まあ、エスデスやブドーが相手だと話は別になってくるが。
「プリニー共! 飯の準備をしておけ!!」
「了解ッス!!」
どこからともなく聞こえてくるプリニーの声が響き渡り、厨房が騒がしくなる。
新人二人はどうしているのだろうか?
「今日は箒と雑巾掛け頼むッス」
「わ、分かった、ッス」
うん、娘の方が真面目に働いているようだし良しとしよう。
他のプリニーがサボらないか監視していると、大男のプリニーが朝食を運んでくる。
今日はご飯に味噌汁、イワシの塩焼きといった実に和風仕立てだ。
「いただきます」
お米の炊き方は俺がしっかりと指導しているため、かなりしっかりとした感じに仕上がっている。
しっかり洗って人差し指で水の量を確認し、炊き上げる。
学生時代に自炊しておいてよかっとこの時ほど思ったことはない。
味噌汁は完璧に作り方で詰んでいたため困っていたが、東の国で味噌汁の文化があったのは俺にとって奇跡だった。
東の国の人間を秘密裏に連れ込んできて、味噌汁の作り方と味噌を貰う代わりにこちらの骨董品を差し出した。
それが大層気に入ったのか、今でもこの貿易が続いている。
「……今回の組手はイエヤスとサヨが自身の欠点を見つけ出すことと、セリューの動きを見て盗めるところは盗んでいくことを目的としている」
「技術を盗むなら私より師匠の方がいいのでは?」
「俺から盗むにはまだ早い。実際、セリューも真似ようとして体が追い付いていなかったではないか」
「……そういえばそうでしたね」
失敗した時のことを思い出したのか、少し恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
……まあ組手の理由は建前で、実際は俺がどれだけ相手できるかを試してみたいだけっていうのは内緒の話だ。
今日もしっかりとイワシを噛み締め、稽古場に向かう。
三人は稽古着に着替える中、俺は普段着で待ち構える。
「……順番は任せる。セリューが最後ならな」
「てことは、俺が先かサヨが先かのどっちかだな」
「なら最初はイエヤスに譲るわ。私は一度動きを見てから戦う」
特にじゃんけんとかする様子もなくイエヤスが前に出る。
「そんじゃ、始めるぜ!」
「全力で来い」
俺が構えたのを合図にイエヤスがこちらに向かってくる。
……やはり一人の敵を狙うことに関してはかなり隙がないように感じる。
――だが、
「目の前のことに集中しすぎだ。もっと周囲に気を配ることを覚えておけ」
「なっ……!」
高速で背後に移動し、イエヤスの後ろを取る。
にも関わらず、俺がどこに消えたのか分からずに左右ををキョロキョロとしていた。
「その大きな隙は自身を殺すぞ。実際、これが殺し合いなら貴様は死んでいた」
俺の声で後ろを振り返ろうとするが、その動きを利用してイエヤスを地面に叩きつけた。
……まあ、まだこんなものか。
「さ、最初に戦った時より速い……」
「次はサヨだ」
少し大人気なさすぎたか、足が震えている。
……が、イエヤスと違ってサヨは周りが見えているな。
「……ならこれはどうかな?」
少し威圧を放って前に出る。
それに気圧されてしまったのか足が止まっている。
「危ないと思って逃げるならそれも一つの戦い方だ。だが、足を止めてしまうようではイエヤス同様その大きな隙で死んでしまうぞ」
ハッとして後ろに下がろうとするが、それを許すはずもなく足を引っ掛けて転す。
追い打ちをかけるように木刀を目前まで近付けてサヨも終了だ。
「警備隊ならここまではしないが、軍に入るなら敵が将軍クラスの相手と戦うこともある。そんな時に死なないための訓練を今後付けてやるつもりだ」
……とはいえ、そもそも基礎から完全にやり直さなければいけない二人ではない。
しっかりと力を身につけていけばいつか化けると思わせる素質を持っている。
「……最後にセリューだが、呼ぶ必要もなさそうだな」
「はい! いつでも戦う準備は出来ていますよ!!」
体を動かしてまだかまだかといった目をしている。
あれか、欲しかったおもちゃを手にして興奮している子供かこいつは。
「制限時間は五分程度だ。いくぞ」
まずは威圧を放ち前に出る。
瞬時に危ないと察知したか、今いる位置から放れて俺の攻撃をかわした。
「時間が限られている……なら!!」
俺が攻撃を行った直後を見計らい、猛攻撃を仕掛ける。
……だが、一発一発防いでいる時間が勿体無い。
「俺も攻撃をさせてもらうか」
右のパンチを受け止め、すかさず右脚で蹴りを入れる。
「それはこちらも読み通り!」
セリューも左脚で蹴りをいれ、お互いに未だダメージが入っていない。
……なんて考えをしていた時だった。
「そして、空中にいるからこそできる動きもありますよ!!」
体を大きく仰け反り余っていたもう片方の脚がこちらを狙う。
「ふっ、それを喰らうほど俺も甘くは……!」
そこで気付く。
構えていたのが脚だけでないことに。
いつもは空中に飛ばすと蹴りの攻撃が多くなるためそれに気を取られすぎていた。
「はぁぁぁ!!!」
「――ぐっ!」
急いで投げ飛ばそうとするが、それよりも速くセリューの左からの拳を受けてしまった。
「や、やった……」
「……まだまだ届かないと俺も甘く見ていたか。流石だ」
そのままセリューを投げるついでに蹴りをいれて軽く飛ばす。
……にしても、まさか攻撃を喰らってしまうとは。
土竜で能力上げとか言って怠けていたのは俺の方だったな。
強くなったとはいえ、多分レベルで言うなら四千程度だと思っている。
ディスガイアなら普通にサボっていると言われても仕方がないものだ。
「うむ、いい攻撃だ。それで次は……」
セリューが動く気配がない。
……何事かと思ってよく見ると、目をグルグルさせて気絶していた。
……アブソープションで強化されていないから少し強めにしても問題ないと思っていたけど、そうでもなかったか。
いつまでもここにいさせるわけにもいかなかったので、取り敢えず休憩所に運んでやった。
暫くするとまた道場に来て、
「あの感覚をもう一度覚えておきたいのでもう一回お願いします!!」
なんて言ってきた。
……強くなるのはいいことだけど、一応卒業した身ってこと忘れてないよな? こいつ。
次回予告
ラバ「ラバックと!」
エト「エトナの!」
エト・ラバ「「魔界テレフォンショッピング!!」」
ラバ「……ところで、誰?」
エト「さあさあ! 本日紹介するのはこの千変万化クローステールよ!」
ラバ「ちょ、俺の帝具!?」
エト「なんと! 武器でありながら装備すると飛行タイプになって加速装置と同様の効果までついてくる優れものよ!!」
ラバ「……まあ、その代わり持ち主次第で能力が変わってくるけどな」
エト「更に更に!! 奥の手であるかい――」
ラバ「ストップストーップエトナさん!! それは言っちゃダメだから!?」
エト「………ちっ。まあそれはそれとして、今なら修羅版クローステールまで付いちゃってお値段なんとたったの二十九万八千HL! 二十九万八千HLよ!!」
エト「さあ! 今すぐお電話ください!」
ラバ「だーかーらー! エトナさん!? 勝手に出てきたと思えば勝手にこのコーナーを――」
エト「あぁ? 元々このコーナー私のなんだけど? 文句あるの?」
ラバ「いや、だってこれアカ斬るとディスガイア4の……」
エト「でも次回予告なんだから私が出るのは当たり前でしょ? ちょっとあんた魔界来なさいよ。大丈夫だって、死んでも魔界病院で生き返るから」
ラバ「え、ちょ、まって……い、い……」
ラバ「いやだーーーー!!!!?」