吸血鬼が教育する〜帝都教育係と正義の少女〜   作:カナタナ

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首斬りを斬る(1)

 あいも変わらずナイトレイドが動きを強めているのを見て俺も動きやすくなってきたなと思う今日この頃、帝都ではある事件が話題になっていた。

 

『連続殺人事件』

 

 噂程度だが、犯人は首斬りザンクなのではという声がちらほらとある。

 中々にすばしっこい奴で帝具持ちの危険性があるため、ここは一つナイトレイドと共闘した方がいいかと考える。

 三人が相手する前に倒されるかもしれないが、場合によってはこれが最初の帝具持ちとの戦闘になるかもしれない。

 

 今日も何事もなく普通に俺の部屋で食事をとる三人に一枚の紙を渡した。

 

「……やはり帝都を騒がしていたのは首斬りザンクでしたか」

「ヴァルバトーゼさん、これは?」

 

 サヨが頭にハテナを浮かべて質問してきた。

 ……ザンクの手配書見ても知らないってかなり田舎の方から来たんだな。

 

「……かつては帝国最大の監獄で働く首斬り役人だったのだ」

 

 ――俺自身も見たことはないが、大臣の命令で毎日毎日首を斬り続けているうちにクセになってしまったらしくてな。

 ついには辻斬りになってしまった哀れな男だ。

 

「その悪党は一時姿を消していたのだけれど、まさか帝都に出て来るなんて……」

「セリューよ、一刻も早く仕留めたい気持ちは分かるが相手は帝具使いだ」

 

 帝具使い同士が争い合えば必ずどちらかが死ぬ。

 いくらセリューが強いとはいえ、アカメの村雨のようなかすっただけで即死なものが他にないとは言い切れない。

 

「でも、私にだってコロがいます!」

「ヘカトンケイルは書物にも載っている帝具だ。対して奴のはもしかするとどこにも記載がない帝具の可能性だってある」

 

 ザンクは元監獄の首斬り役人。

 かなりの実力と知識を身に付けているはずだ。

 ヘカトンケイルが珍しい生物型の帝具とはいえ、対策法を知っていれば攻略されることもある。

 

「そこで、殺しのプロを呼ぼうと考えている」

「殺しのプロ……まさかナイトレイドを!?」

 

 驚く理由も分かるがご飯粒を飛ばすな、ご飯粒を。

 

「……以前見た時にはその大半が帝具使いだった。彼等と共闘することで改めて帝具使いの恐ろしさを身を以て体験することが出来るだろう」

「で、でもよ、いくらなんでも表じゃ悪党なんて言われてる組織を手を組むのはマズイんじゃねえのか?」

「イエヤスの言う通りです。もし大臣たちに見つかれば……」

 

 ……まあそんな反応をするのは大体分かっていた。

 正直こうは考えていたものの、後々のことを考えるとこの手を使うのは極力避けたいのも事実だ。

 

「……なら、俺とセリューがリーダーの二チームでそれぞれ捜索を行い、見つければセリューならヘカトンケイルの雄叫びを、俺なら上空にコウモリを羽ばたかせる」

 

 普通の敵ならこれでもオーバーキルだと思うのだが、帝具使いとなると能力不明の帝具に関しては慎重に動いておきたいというのが俺の考えだった。

 セリューはともかく、サヨやイエヤスまで反対そうな顔をするとは。

 

「……ヴァルバトーゼさんは少し心配しすぎです。それに、いつかは私たちもその帝具使いと何度も戦うことになるんですよね?」

 

 サヨが不満そうにこちらを見る。

 ……まあ、三人ともそれだけ意志が強いならこいつらの意見を尊重してやるか。

 

「……フッ、それもそうだな。ならばこれだけは言っておく」

 

 

 

「――必ず奴を討て!!」

 

 標的は教育係が戦う中では今までの誰よりも強敵になる。

 俺も、アブソープションの恩恵を受けていないためステータスは基本値しかない。

 

 ……久しぶりに技を使うかもしれないな。

 

 いつ来るかも分からない奴を倒すため、俺たちは昼の間にしっかりと体を温めた。

 

 

 そして、恐ろしい夜がやってくる。

 

 

「……サヨ、変な気配はないな?」

「今のところ問題はない……と思います」

 

 今夜は警備隊もしっかりと働いているため、万全の大勢で挑んでいる。

 ……それでも焼け石に水程度の戦力だ。

 ここの警備隊では首斬りザンクにはおそらく勝てない。

 

「……む」

 

 今、一瞬だが人の気配がした。

 こんな夜中にまだ出歩く人がいるのか?

 まさか……。

 

「どうかしましたか?」

「……なにかが近くにいる」

 

 気配のした方に近付こうとした時だった。

 

「……その声、サヨか?」

 

 やはり予想は的中しており、中からあの時の男が現れる。

 ……そういえば、今サヨと言ったか?

 

「た、タツミ!?」

「サヨ!! 無事だったんだな!」

 

 タツミと呼ばれたほうもサヨも涙を流して抱き合う。

 そういえばサヨとイエヤスはここに来る途中はぐれた仲間がいるとも話していたことがあったな。

 ……そうか、こいつだったのか。

 

「タツミ、そいつが探していた仲間か?」

「おう! ……てことは、イエヤスも?」

「そう、今はヴァルバトーゼさんのところで鍛え直してもらってる」

 

 ……にしても、ナイトレイドが動いてるとはな。

 やっぱ相手が帝具使いってこともあって早めに始末しに来たか。

 

「話はまた今度にしておけ。今は首斬りザンクが優先だ」

「ヴァルバトーゼの言う通りだ。今はザンクを葬ることを考えろ」

「そ、そうだったな」

 

 お互いに気を引き締め直し、また別行動に移った。

 ……サヨの表情が一層引き締まる。

 

「……気合十分だな」

「はい! タツミに強くなったところを見せます……!」

 

 そうして再び俺たちは街を探索した。

 

 

「――愉快愉快」

 

 ……そして、

 

「今日は誰を殺そうかな?」

 

 その戦いの時は刻一刻と迫っていた。

 

 




アカディス劇場

ラバ「ぜぇ、ぜぇ……。魔界ってこんな恐ろしい所だったのか」

フロ「大丈夫ですか?」

ラバ「あー、なんとか……」

フロ「魔界ってとても大変な場所ですけど、お互い頑張っていきましょうね」

ラバ「は、はい!(天使だ……ここに天使がいた……!!)」

フロ「あ、それでですね! 今からラハールさんやプリニーさんたちに愛について語ろうと思っているのですが、お手伝いお願いできますか?」

ラバ「お、おう! フロンちゃんのためなら俺、頑張れるぜ!!」

フロ「ありがとうございます!! たーのしーたーのしーみなさーんへーのー愛の宣伝師〜!!」


『その後のラバックを知るものは指で数える程だが、皆口を揃えて証言するのは「話す相手が悪かった」とのことである』

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