クチャッ、クチャッと何かを食べる音が廃墟の中から聞こえてきた。それに気づいた二人の子供は何だろう?と思いその廃墟の中へと足を進める。
子供のうちの一人が入り口から中を覗くが何も見えず首をかしげる。もう一度中を見ようと覗くが、やはり何もない。
気の所為かと子供は思い、後ろにいる子供に声をかけようとして……後ろの子供がいないことに気づいた。
先に帰ったのだろうと子供は勝手に思い、廃墟の中へと入っていく。
すると、辺りの景色が一変した。
空は真っ赤に染まり、それと同時に再びクチャックチャッと何かを食べる音が聞こえてきた。
子供はその音の聞こえる場所を見るが、そこには何も無かった。だが、音はずっと聞こえてきている。
それを不思議に思いながら周りを見ると、子供の後ろからベチャッと何かが落ちてきた。
子供が恐る恐るそれを見て……叫んだ。
落ちてきたものはこの廃墟に入る前までいたもう一人の子供の顔だったものだ。
頬は噛みちぎられ、目玉はくり抜かれ、舌は引き抜かれている。それでも、子どもがそれを判別できたのは子供の顔と共に落ちてきたお守りのお陰だった。
「……あァー、美味しかっタァァ。次の子も……美味しいのかナァァ?」
天井から何かが子供の前に降りてきた。それを子供は呆然と見た。
大きな鎌を持った蜘蛛と百足、蟷螂が合わさったような異形。口元からは涎のように赤い血を垂らしている。
「抵抗しないのカァ?なら食べちゃうゾ〜」
異形が子供を食べようと鎌で子供を捕まえようとする。子供はそれをただ、見ているだけ。抵抗することも、逃げることも、泣くこともしないで、ただ、虚空を見つめていた。
グチャッという音が廃墟に響き、鮮血が舞った。
「これで、5人目ですか」
何処かの山の奥にある大きな屋敷。その一室にいた女性は先ほど狐から渡された紙を読んで言う。
女性はしばらく何かを考えると、立ち上がりその部屋から出て、別の場所へと歩き出した。
それと同時刻、その屋敷のはずれにある道場のような場所で一人の子供が正座をして黙祷していた。
歳は7歳ぐらいだろか。
サラサラと風に揺られる綺麗な黒い髪、細い手足、そして、整った中性的な顔立ち。服装は白色の着物で、一見すると着物を着ている普通の子供に見えるが、その落ち着いた雰囲気は歳不相応とも言える。
そんな子供のところに、一人の女性が来た。
月の光を集めたかのように綺麗な銀髪と赤い目、そして整った顔立ちに巫女服を着た綺麗な女性だ。
まるで、この世のものとは思えないほど整った容姿の女性は綺麗な声で子供に声をかけた。
「……織。起きていますか?」
「こんなところにあんたが来るなんて、なんかあったのか?」
織と呼ばれた子供の言葉に女性はその綺麗な顔を少しだけ歪めて、頷く。織はそれを見ると正座をやめて立ち上がって目を開ける。
まるで、この世の全てを見透かしているかのような黒色の瞳が女性を捉える。女性は少しだけ目を伏せて、織に言った。
「……二週間前から次々と人が消えていく噂を聞いたことがありますか?」
「あぁ、あの噂か。確か『変な音が聞こえた場所に行くと帰ってこれなくなる』……だっけ?」
「はい……。そして、先ほど5人目の被害者が出ました」
「5人目……確か同じ場所で起こってるんだっけ?それで、あんたはオレにその噂を調べて来いって言いに来たのか?」
「いいえ、織。あなたにはこの噂のもとに行ってこれを起こしているものを討伐してきて欲しいのです」
その言葉を聞くと、織は嬉しそうに外へ出ようと出入り口の方に歩いて行く。
女性はそれに少しだけ悲しそうな顔をするとそれに気付いたのか織が振り向いて女性に言った。
「そんな悲しそうな顔をするなよ。元々、
「……それでも、まだ7歳のあなたにこんな事をさせるのは少しですが抵抗がーーーー」
「ーーーー良いんだよ」
女性の声を遮って織が言う。
「あんたも知ってるだろ?……オレは異常者だ。あんたが幾らオレに『普通の生活』を送らせようとしてもオレはそこに馴染めずに、こっち側に来ちまう」
「…………」
「あんたがオレと『式』にそう言ってくれるのは嬉しいと素直に思うぜ。でもさ、オレも『式』も『今』に満足してるんだ。
それに、『式』はともかく、オレは『普通の生活』を……いや、『
織がそう言うと女性は何も言わずにそのまま上着を着始める。
上着を着終わると織は何も言わずに近くに置いてあったナイフと小太刀を持って外に出ようと歩き始める。
「……後さ、その言葉はオレじゃなくて他の奴と……『式』に言ってくれよ
「……っ」
そう織は言うと外へ出て行った。
後に残ったのは声を殺して涙を流す女性……ツクヨミだけだった。
グチャッ、グチャッと異形が新たに捕まえた
自身の貼った人避けと探知の結界に入ってきたことに異形はニヤリと笑みを浮かべる。
何時ものようにエサがやって来たと、今度はどんな奴が来たのかと異形は考えながら何時ものように廃墟の天井に張り付いて
1秒、5秒、10秒、20秒、40秒、1分、2分。
「…………?」
可笑しいと異形は思った。何時もならば、20秒ほどで下には辿り着くはずなのに今日は2分以上も待っているのに自分の見える位置には誰も来ていない。
それに疑問を抱きながら異形は静かに天井を移動して行く。
そして、ようやく見つけた。
白い着物の上に赤色の上着を羽織った少女だ。とても、とても美味しそうだ。
異形はユックリ、ユックリと少女の後ろに回り込み両腕の鎌で少女の首を掻き切ろうとしてーーーーズルっと天井から落ちた。
「……ハァ?」
異形がつい声を上げてしまう。それもそうだろう。少女の首を掻き切る予定だった鎌は自分の後方に切り飛ばされ、自身の身体はいつの間にか地面に引き摺り落とされていたのだから。
異形は何とかして体勢を整えようとするが、その前に全ての足が切断されていた。
「グッギャァァァァァァァァァァァァッ!」
異形が叫び暴れる。尻尾が床や壁、天井を傷つけていく。
少女はそれを静かに見ながら歩き出す。
異形はそれを見ると尻尾を使って距離を開けようとするが、少女はナイフを投げてそれを妨害する。
「お前はナンダ!
悪魔の問い掛けに少女は答えずに小太刀を取り出して異形に向かって走り出す。
異形はそれを見て返り討ちにしようと切られた腕を前に出す。すると、異形の腕の断面がボコボコと泡立ち新たな鎌が現れる。
そして、少女のスピードに合わせて異形が鎌を振るった。この時、異形は少女が死ぬことを信じて疑わなかった。
だが、現実は異形の信じた
鎌は再び根もとから切断され、続く第二、第三の斬撃が異形の身体を削ぎ落としていく。
その度に異形は痛みに叫び、もがくが少女は手を一切止めず異形の身体を切っていく。
異形の命を刈り取ろうと少女が小太刀を振り下ろそうとした直前、異形の足元と少女の周囲に赤色に輝く魔法陣が現れ、爆発する。
「……ハッ、ハハは。ははははははははハハハハハハハハハハ!ヤッタ、死んダ!あの子供は丸焼きダッ!」
確実に仕留めたと異形は笑いながら思う。至近距離で爆発を喰らえばどんな奴でも無傷では済まない。それに、異形の見立てではあの少女は人間、しかも子供。普通ならば生きていない。そう、
「誰が……丸焼きだって?」
「…………ッ!?」
爆炎の中から声が聞こえた。それと同時に水が何処からか現れ炎を消していく。
その光景を見ていた異形は怯えた様子で少女から逃げようと身体を引きずる。
「……ウソダウソダ!ナンデ、オレのヨウナコモノニ、
『日本神話勢力』その名の通り、
そして、その日本神話勢力の四大柱とも言うべき四つの家。
古くから神の力を借りる事の出来る『月見家』
古くから特異な能力を持つ異端『浅上家』
かつて妖怪と混じり度々先祖返りが産まれる『八代家』
四家の代表とも言える『一之瀬家』
「クソッ、日本神話勢力が関わっているならココからハヤク!」
「させるかよ」
少女がそういうと同時に異形の身体が吹き飛ばされ壁にぶつかる。それに、苦しそうに異形がうめくと少女はうるさいなと思いながら異形の上半身を切り落とす。さらに、異形が叫ぶがすぐに少女が喉を潰すことでその声は途切れた。
(コイツ、日本神話勢力の四家の奴らジャナイ。マサカ……ッ!?)
「オマ……エ、両儀……家の……ヤツ……カ……」
その言葉に少女は何も言わない。そして、それと同時に異形はこの少女が両儀家の者だと確信する。
『両儀家』とは日本神話勢力の中の一つで、その情報はほとんどない。だが、一つだけ言えるのは両儀家は危険だということだけ。
どう危険なのかは不明で、遭遇した者は殺されるという噂だけが
その両儀家が今、自分の目の前にいることに異形は無意識の内に歯をカタカタと鳴らす。
「……お前、はぐれ悪魔だったのか。どうりで蝙蝠みたいな羽根があるなと思ったぜ」
そして、少女もまた異形の正体に気付いていた。
『はぐれ悪魔』とは転生により下僕悪魔となったが、強力な力に溺れて主を殺し、お尋ね者となった悪魔で契約の有無とは無関係に人間を襲う、極めて危険な存在であると知らされている。
「……オマエノヨウナ、子供のオンナが、両儀家のモノだとは……ナ」
その言葉を聞くと少女は躊躇いもなく異形……はぐれ悪魔の首を切り落とした。
「あぁ、言っておくけどオレは男だ。まっ、もう聞こえてないと思うけどな」
少女……いや、少年はそう言うと廃墟から出て行った。
『ハイスクールU×F 次回予告』
「今日は次期党首同士の顔合わせみたいな会ですから」
日本神話勢力、4家の次期党首が集まる会。
「私は出来るだけみんなで仲良くしたいなぁ〜って」
「仲良くする必要はあるの?」
そしてーーー。
「あなたは転生者……ですよね?」
次回 『対極』
※サブタイトルは変更されるかもしれません。