ハイスクールU×F   作:獣耳が大好きな新月

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タイトル詐欺かも?


次期当主達と両儀しき

 織の顔の目の前で剣が振るわれる。

 織はそれをギリギリのところで躱わして手に持った刀を剣を持った男の喉元を突こうとするが、その前に男の振るった剣が織の首元に添えられた。

 

「勝負ありだな」

「〜〜っ!」

 

 織が悔しそうに口を歪める。

 男はそれを見るとふっと笑い、織に「まだまだだな」と言う。

 だが、男はその言葉とは裏腹に織の能力に驚いていた。

 

(途中、何度か危ない場所があった。これが()()()()()()()()()()()()()()()()()な)

 

 死なないように寸止めをするというルールの下で先程まで織と男は模擬戦をしていた。その結果は織の負けだが、男は織に負けたとは思えなかった。

 そもそも、これが本当の殺し合いならば男は織に殺されていたと思えるような場面が何回も何回もあった。

 

(まだ、齢12だぞ?それなのにこの腕前。恐ろしいな)

 

 男がそう思っていると織は「ありがとうございました」と少し不機嫌な様子で言ってーーーーその雰囲気がガラッと変わった事に男は驚いた。

 武人などにも戦場での時とそうでない時の切り替えをする人はいるがそれでも織のように変わることはない。

 これではまるで別人のようだと男は思いながら織の後ろ姿が見えなくなるまで畏怖の目で見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男との模擬戦を終え着物を変えた式は定例の当主達が集まる会談に出ていた。

 参加している人は九人。この会談を見ている神が三人。

 当主達全員が見える場所に座っている神は三人。全員が美男、美女と言えるほど容姿は良いが、その雰囲気だけでも人間ではないとわかる。

 そして、その神に近い場所から二つに分けられて座っている当主達。

 右側の奥から『一之瀬』、『椎名』、『八代』、『九重』。

 左側の奥から『月読』、『秋月』、『浅上』、『桜井』。

 そして、最後に三人の神と向かい合うように座っている両儀。

 日本神話勢力の代表格とも言える9家が集うこの会談は珍しいと式は内心で驚きながらも静かに座る。

 それを確認すると一之瀬家の当主が口を開いた。

 

「それでは、九家会談を始めよう。先ずはお互いの近況報告をーーーー」

 

 全ての当主が近況を報告していく。式も周りに合わせ()()()()()()()()を報告する。

 次、次と滞りもなく報告を進めていき、式がやっと終わると思った時三人の神の一人が口を開いた。

 

「それぞれ、次期当主の育成も順調のようだな。ならば、この依頼を次期当主達と……それから、両儀にやらせようか」

 

 その言葉に式と他の当主達も驚くが誰も口を挟むことはしない。何故ならそれはこの会談では禁忌とされているのだから。

 その後も神は両儀式を同行させる理由についてのべるが、式はその全てを納得しながら聞くが何処か腑に落ちないと思った。

『まだ次期当主組は実戦をしたことがないから付き添いとして同行させる』これは別に式でなくとも他の人を同行させれば良いだけでないか?だが、他の家が過保護になるあまり他の家の次期当主を見殺しにしてしまうかとしれないから納得といえば納得だ。(まぁ、その前提として式が他の家の次期当主を殺さないことが必要だが)

『せっかく各家の次期当主組と両儀家の当主の年齢が近いのだから仲良くさせたい』これが一番、腑に落ちないと式は思った。

 確かに、次期当主組の年齢は一番若くて10歳、一番高くて14歳。歳が近いし仲良くできるのであればした方が後々のためにもなるだろう。

 だからこそ、これが理由として言われたことが式には何かを隠したがっているようにも思えてしまう。

 

「両儀もそれで良いか?」

「……えぇ」

 

 今この時、式には選択肢が『はい』しかない。仮令ここで断ったとしても相手が隠している情報を少し開示して、それが『両儀』を同行()()()()()()()ものであった場合両儀式は両儀家として同行せねばならなくなる。

 故に、式は今回の話を受けなければならない。

 

「ならば、依頼は後ほど使者から皆に伝える。今回の九家会談は以上で解散する」

 

 その言葉と同時に三人の神の姿が消えていく。それと同時に式は立ち上がってこの部屋から外へと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(起きているかしら?)

(ああ、起きてるよ)

 

 式は部屋から出るとすぐに織に語りかけた。何時ものように夢を見ていると思っていた式は織から返事が来たことに驚いた。

 

(起きていたの?)

(あぁ、あの会談の途中から。なんか、起きなくちゃいけないような気がしたからな)

(そう、それで、貴方はどう思ったの?)

(どうって、あの神様の隠し事についてか?)

(えぇ)

(二つ、考えがあるけど……可能性が高いとすればその依頼は簡単だが、何か裏に有るんだろうな)

(そうね、それが一番高そうね)

(低い方は……その依頼自体が難しいというところだが、流石にこれは無いとオレは踏んでいる)

(なら、高い方だと仮定して動くわ。もしかしたら織、貴方に変わるかもしれないからその時は私の演技をしてね?)

(はいはい)

 

 織は返事を返すとすぐにまた夢を見る。式はそれを察すると急ぎ足でその場から移動すした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三週間後、式は次期当主組との待ち合わせ場所であるホテルに行き、自身に当てられた部屋で荷ほどきをしていた。

 一つ、一つと鞄や段ボールから着物と上着、タオルなどを出して行き最後の段ボールを開けようとしたところで織が式を止めた。

 

(式、一回交代だ)

(……分かったわ)

 

 式は一旦深く息を吸いながら目を閉じる。そして、目を開けるとそこにいたのは式ではなく……織。

 

「式は……眠ってるな。なら、さっさと終わらせるか」

 

 織はそう言うと手際良く段ボールを開けてその中にあった()()を組み立てていく。五分ほどで出来上がったそれは日本刀だった。それを織は満足そうに見ると鞘に入れ、竹刀袋の中にしまった。

 すると、コンコンっとノックが聞こえて来た。

 

「式様、次期当主の皆様がご到着しました」

「……そう」

 

 ノックの音と同時に入れ替わった式は先ほど織が組み立てていた物が入っている竹刀袋をしばらく見てから部屋を出た。

 

 

 

 

 

「こちらです」

「ありがとう、もう良いわ」

 

 式は案内をしてくれた人にそう言うと次期当主達が話している席まで歩いていく。次期当主達は楽しげに話していてまだ、式に気付いた様子はない。

 式がその席の近くまで近づいていくと浅上家の次期当主、浅上葵が式の存在に気づきビクッと肩を震わせた。それに気付いた他の次期当主達も葵の視線を辿っていき、式に気づく。

 

「こんにちは。隣良いかしら?」

 

 式が近くにいた銀髪の少女に聞く。銀髪の少女はそれに「どうぞ」と言って少しだけ椅子を引いた。式は少女にちょっとした違和感を感じたが気にせずに椅子に座る。

 葵の怯えた視線も、他の警戒する視線も全て無視をしてただその場でジッとしている。

 その姿に葵は(人形みたい)だと思ったが口に出さず、ただ、静かに式を見る。

 

「自己紹介から始める?両儀さんは私達の名前を知らないと思うーーーー」

「必要無いわ」

 

 式が少女の声を遮って言う。それに少女が顔をしかめると式は「この場にいる全員の名前は知っている」と言う。

 それに信じられないような顔を葵がすると式は葵の方を見て「浅上家次期当主『浅上葵(あさがみあおい)』」と言い、そこから時計回りにそれぞれの当主の名前を言い当てていく。

 浅上葵の隣に座っている薄ピンク色の髪の色をした少女を見て「一之瀬家次期当主『一之瀬栞(いちのせしおり)』」

 一之瀬栞の隣に座っているポヤッとした雰囲気を持つ少女を見て「椎名家次期当主『椎名日和(しいなひより)』」

 椎名日和の隣に座っている巫女服を着ている少女を見て「八代家次期当主『八代護(やしろまもり)』」

 八代護の隣に座っている茶色の髪の少女を見て「九重家次期当主『九重楓(ここのえかえで)

 九重楓の隣に座っている銀色の髪をツインテールで結んでいる紅い目をした少女を見て「月読家次期当主『月読月夜(つくよみつくよ)』」

 式は自身の左隣に座っているショートカットの少女を見て「秋月家次期当主『秋月千春(あきつきちはる)』」

 秋月千春の隣に座っている黒髪のショートカットの少女を見て「桜井家次期当主『桜井美波(さくらいみなみ)』」と全員の名前を言い当てた。

 それに栞と千春が驚くような声を出し、護と楓、月夜は表面上は先程と変わらないが少しだけ警戒心を強め、日和と美波は目を閉じ、葵は興味深そうに式を見る。

 

「これで、私が名前を知っている証明に……なったはずよ」

「……そうだね。どうやって知ったのかに少しだけ興味があるけど、今はそれよりもこの依頼だよね」

 

 そう言って栞が出したのは二週間前に式たちに届けられた依頼の内容について書かれた紙だった。

 栞はそれをみんなが見やすいようにテーブルの真ん中に置くと全員に向かって話し始める。

 

「今回の依頼は『はぐれ悪魔の討伐と誘拐された子供達の救出』なんだけど……両儀さん一ついいかな?」

「何かしら?」

「過去にはぐれ悪魔が人を誘拐したことってある?」

「えぇ、あるわ。ただし、攫われて生きて帰ってきたと言う話は一回も聞いたことがないけれど」

 

 そう式が言うと周りの空気が重くなるが、栞はそれを聞くと何かに疑問を持ったのか紙をジーッと見始た。

 その姿を見て式は栞の評価を改める。

 確かに、式はさきほど『攫われて生きて帰ってきたと言う話は一回も聞いたことがない』と言った。その言葉を聞いた次期当主達は死んだと思って目を伏せるかその光景を想像して顔を真っ青にするかのどちらかだけだった。

 だから式は疑問に思ったことを言わず、他の人達も見限るつもりだったが栞だけは式の言葉を聞いて紙に書かれた事に疑問を持った。

 その事に対し式は栞の評価を改めると同時に将来的に自分達の最大の敵になるかもしれないと警戒対象として栞を見る事にした。

 

「……でもさ、それなら何であの人達はここに『救出』って書いたのかな?」

 

 その言葉に、他の次期当主達も紙をもう一度見る。式はその光景を退屈そうに見る。

 しばらくすると「確かに」と全員が栞が疑問に思った部分を見つけてどういうことだろうかとそれぞれの考えを言い始める。

 式はその様子を観察しながら自分の中で先程までの会話を聞いていた織と話し始める。

 

(今回の依頼、貴方はどこまで把握しているの?)

(ほぼ全部。ただ、()()()()()()()()だけが分かっていない)

(裏で動いている奴?)

 

 式が聞くと織は少しだけ間をあけてから式に自分の考えを言い始める。それと同時に栞が自身の考えを他の次期当主達に言い始めた。

 

(まずはあの手紙でおかしい場所は二つ。『はぐれ悪魔』と『子供の救出』)

(そうね、私達日本神話勢力に来る依頼のほとんどは『噂』『都市伝説』の調査……みたいに曖昧で不確定な感じになっていた)

(あぁ、だけど今回は『はぐれ悪魔』とそれをやっているのが確定している。そして、確定していて()()()()()()()()()言葉が書かれていた)

(それが『救出』ね)

(はぐれ悪魔だと分かっているのであれば『救出』なんて言葉は使わないのが()()()()だ。何故ならーーーー)

(ーーーー死んでいるのが分かっているから)

(そう。なのに、今回その言葉を使ったのは()()()()()()()()()()()()()から。そして、何故生きているのかと言うとーーーー)

(裏で誰かが糸を引いているから)

 

 はぐれ悪魔の多くは理性を持たず本能のまま動く。子供達をさらっても生きているはずがない。なのにあの紙では救出と書いてあった。

 それこそが織が誰かが裏で手を引いているという考えに至った要因である。

 

(でも、そこまで分かっているなら裏で動いてる人は判明するはずよ)

(あぁ、確かにここまで分かってれば裏にいる奴の名前までは分からなくともそいつの目的は分かる……筈なんだが、今回のこいつは色々とおかしい)

(おかしい?)

(子供をさらったということは何らかの目的があるはずだ。だが、その目的が見えない)

 

 確かにそうだと式は思った。目的が無ければこんなことはおそらくしないだろう。

 

(目的が見えないと言った理由は大きく分けて二つ。

 一つ目は何故はぐれ悪魔を操る必要があるのかということだ。別にはぐれ悪魔じゃなくても今回のような形を作ることは可能だ。

 二つ目は攫われたのは子供だけであるということ。もし裏にいる人が神器(セイクリッド・ギア)を狙っているのであれば子供だけではなく大人もさらうはずだ。

 それらを踏まえた上でオレが考える相手の目的は)

(私たち日本神話勢力の力を測ること)

(だろうな。子供だけを攫ったのは実力を測る時に邪魔をされないように操るのが簡単であるため……っていうのが妥当だろうな)

 

 式は織の推測になるほどと思うが、それを言っていた織は何処か納得いかないような感じだ。

 それに疑問を抱き、織に聞こうとすると先程まで栞のところに行き色々なことを聞いていた美波が式を呼びに来た。

 

「両儀さん。一之瀬さんが今日の夜に子供たちを助けに行くので準備をしておいてくださいと」

「そう、随分と早いのね」

「『子供たちが心配だから』だそうです」

 

 式はその言葉を聞くと「ありがとう」と美波に伝え自身に当てられた部屋に素早く移動する。

 その後ろ姿を美波はただ真っ直ぐと姿が見えなくなるまで見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が落ち始めた。式は先程まで読んでいた本を閉じると近くに置いてあったナイフと短刀、小太刀、竹刀袋を取り部屋を出る。

 すると、式を呼びに来たのか美波が式の部屋の前にいた。

 

「あら、集合場所はロビーではなかったかしら?」

「はい、ですが集合時間まではまだ時間があるので両儀さんとお話をしたいと思ったのでお部屋の前で待機させてもらいました」

「そう、大体何分ぐらい待ったのかしら?」

「大体3分ぐらいです」

 

「そう」と式は言うとスタスタと美波をスルーして歩き始める。美波はその式の後の大体三歩ぐらい後ろを静かに()()()()()()()歩く。

 それを式は少しだけ驚きながらその驚きを顔に出さずにロビーに向かって歩く。

 

(あいつ、凄いな。特殊な歩き方とかを意識してない。身体に染み付くまでやったんだろうな)

 

 織が美波を観察しながら式に言うが式はそんな織を無視しながら無言で歩く。美波もそんな式にどうすれば良いのか分からず無言でその後をついて行く。

 そして、ロビーに二人とも無言のままたどり着くと美波は式から離れ先に来ていた栞たちの元へと走っていった。

 

「あら、集合時間まではまだ余裕があると思うのだけれど?」

「子供たちが心配だからね。みんな早めに来てたんだ」

「そう」

 

 式は興味なさげに返事をすると「移動手段はどうするの?」と栞に聞いた。栞はそれに、「車で近くまで行く」と言った。

 式はそれを聞くと静かに「そう」と言い他の人達よりも一歩後ろへ下がり、移動を始めた栞たちの後を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 式たちがはぐれ悪魔がいる場所に着いた頃には完全に夜になっていた。三日月の月が空に登り、星が瞬いている。

 その中、式たちははぐれ悪魔がいる場所ーーーー三週間後に撤去が行われる廃ビルの中へと入りーーーー空気が変わったのを感じた。

 式たちが入ると同時にビルの天井や壁、柱を赤黒い線が通って行き、線が通っていった場所は赤色の世界に塗り変わって行く。

 そして、それがビル全体を覆ったのだろうか。その線は消え、ガシャンッと鍵がかかったような音が式たちの耳に届いた。

 

「閉じ込められたみたいだね」

 

 栞が悔しそうに言う。他の人達も何時的が襲って来ても良いようにそれぞれ得物を構えようとしたその時、上の階から子供の声が聞こえた。

 

「今のって……」

「声……だよね?」

 

 その言葉に少しだけ次期当主達の緊張感が抜ける……と同時に式が美波を突き飛ばした。

 その行動にその場にいた全員が式に何かを言おうとしてーーーー何処からか現れた斧が先程まで美波がいた場所を()()()

 

「「……っ!?」」

 

 次期当主達が息をのむと同時に式が小太刀を取り出して斧の持ち手の部分を攻撃するがその前に斧は消え、式はその場から目にも留まらぬ速さで離脱する。

 

『クケケケケケ、獲物が一杯だ』

 

 何処からか声が聞こえて来た。次期当主達はお互いを守りあうように陣を組み、式は小太刀を右手で構え空いた左手で懐から三枚の札を取り出す。

 そして、再び斧が式達を襲う。右、左、上、下とありとあらゆるところから式達の命を奪おうと斧が振るわれる。それを式は小太刀で防ぎ、次期当主達の方は美波の展開したと思われる障壁で防ぐ。

 そして、攻撃が一旦止まったところを狙って式が小太刀で斧の持ち手の部分を攻撃するが、まるで霧のように斧ごと消えてしまう。

 再び攻撃を警戒して全員が構えると、上の方から子供の泣き声が聞こえて来た。

 すると、その声を聞いた次期当主達は上の階へと階段を使って進んで行く。それを式は無言で見送って柱や床に手を当てて、何かに納得したように頷いてから次期当主達の後を追った。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、流石にこれは想定外ね」

 

 上の階に上がった式はそこにあった光景を見てつい声を漏らした。

 一階のように赤色の世界だが、下の階よりもより一層と濃く息苦しい空気が充満している。

 

「さて、あの子達は何処にいったのかしら?」

 

 気配を探りながら二階を歩いて行く。()()見た限りこのビルは八階建てで部屋の数はそれほど多くはなかったはずだが、どういうわけか外で見たビルの大きさと中の広さが合っていない。

 式はそれである仮説の信憑性が増したと思った時、近くから声が聞こえて来た。

 

 「誰……助……て……」

 

 そこからの動きは速かった。先程よりも速く動きその声の場所にたどり着く。

 

「いや……来ないで……っ!」

 

 そこでは一人の少女が()()()()()()()()()()()()に飲み込まれようとしていた。

 式はそれを見るとすぐに、地面を蹴り少女を肩で担ぎ地面や天井、壁を使った三次元的な動きでその場を離脱する。

 

『クケケケケケ』

 

 気味の悪い笑い声をあげながら口が()()()()()()()()()()

 それを見ながら式は少女を担いで、逸れた次期当主達を探すために走る。

 何処にいるのかは分からないが、()()()()()()気配を頼りに次期当主達がいると思われる三階へと移動しようとしてーーーー何かに気付いたのか天井を見ながら先程使おうとして使わなかった札を取り出した。

 

 

 

 式と逸れた次期当主達は、三階の奥にある部屋に五人の子供達といた。本来ならば、子供達と一緒に外へ出るべきなのだろうが、次期当主達がこの部屋に入るのと同時にこの部屋の扉が消え、外に出られなくなってしまった。

 今は子供達を安心させながら周囲を警戒している。

 

「……美波ちゃん大丈夫?」

「はい、まだ大丈夫ですが……この状況が長く続くと少し……」

「そう……だよね」

 

 今のところ、はぐれ悪魔の攻撃が来ていないことに栞は違和感を感じるが、それよりも美波の方が気になるらしく時折チラッチラッと美波の方を見ている。

 

『クケケケケケ』

 

 何処からか笑い声が聞こえた。

 それに美波はさらに障壁の強度を上げる。だが、次の瞬間、栞達は驚愕した。

 栞達がいた場所の床が歪み大きな口が障壁ごと栞達を食べようとしているのだ。驚いて動けなくなる栞達。口は天井スレスレまで伸びると少しずつ少しずつ閉じて行く。

 障壁に牙が到達する。最初は拮抗していたがギリギリと音を立てて少しずつ障壁が削れていく。

 栞達が死を覚悟した時、下から炎が飛び出して大きな口を攻撃した、

 

『ギャァァァァァァッ』

 

 悲鳴をあげ、元の床に戻っていく口。それが完全に床になると次期当主達はそれぞれが息を吐き、先程までの恐怖を落ち着かせようとする。

 

「あら、生きていたのね」

 

 息が少し落ち着いたところで式が声をかけた。

 その声には何も感情がこもっておらずまるで、自分達が死んでもどうでもいいと言っているような気が栞達にはした。

 

「そこは……『生きていて良かった』と言うべきところなのでは?」

「そうなのね。でも、貴女達が生きていても死んでいても私には何の関係もないわ」

 

 その言葉を聞いた美波は(こういう人なのか)と思うと同時に先程とは()()()()()()に何とも言えない違和感を感じた。

 その違和感について考えようとした時、栞が式と美波を呼んだ。

 式達はその声に従って栞達のもとへと行く。

 そこでは栞達がはぐれ悪魔を倒すための作戦を練っていた。

 

「誰かが囮になってはぐれ悪魔を引きずり出すのはーーーー」

「でもそれだとーーーー」

「でも、流石にああいうことをされるのは想定外でしたから」

「このまま、ここにいても意味ないしね」

「でも、今の状況は不味いと思います」

 

 式は黙ってその作戦の内容などを聞いていたが、途中からはもはや聞く意味はないと判断したのか小太刀をしまってナイフを取り出して周りを見渡していた。

 

「両儀さんは何か意見がある?」

 

 適当に式が時間を潰していると栞が声をかけて来た。おそらく、この場で唯一何も言ってこない式を何とかして話し合いに参加させたいから聞いたのだろう。

 

「そうね。私の意見はーーーー私が一人ではぐれ悪魔を殺すって意見ね」

「……それって、私達が足手まといって言いたいのかな?」

 

 栞が少しだけムッとしたような声で式に聞く。

 式はその声を聞くと栞達の目を見ながらその答えを言う。

 

「そうね。はっきり言って今の貴女達は足手まといでしかないわね」

「そんなこと……っ!」

「あるわ。現に、彼処で私が助けなかったら貴女達ーーーー死んでたわよ?」

 

 その言葉に栞は何も言えなくなった。さっきのアレは式が助けに入らなかったら自分達は確実に死んでいたと誰よりも栞は理解していた。

 

「そう言うことだから、子供達は貴女に任せるわ」

 

 そう言うと式はいつの間にか寝ていた子供を栞達に預け先程開けた穴から出て行った。

 その姿を呆然と栞達は見送り、いちはやく立ち直った美波が栞達を連れて一階を目指して移動を始めた。

 

 

 

「〜〜〜♪」

 

 機嫌良さげに鼻歌を歌う。

 一歩一歩、()()へ行くたびに式の雰囲気が変わって行く。

 やがて、四階の真ん中に来た時、式は完全に織と交代していた。

 そして、式が織と変わった瞬間、織を喰おうと大きな口が開き、織を飲み込もうとした瞬間ーーーー全ての牙が折れ、口が切り開かれた。

 

『グギャァァァァァ』

 

 はぐれ悪魔の声が響く。だが、織はそれを鬱陶しいと思ったのか近くにあった柱にある()()()()()()()()()をナイフで削り取った。

 それと同時に四階が赤色の世界から()()()()に変わる。織はそれを見ると「面倒だ」と呟くと右手をスッと前に出してーーーーパチンと指を鳴らした。

 その瞬間、一階と二階、三階から爆発音が聞こえ、()()()()()()()()()()()()()()が織の眼の前に現れた。

 

「醜いな。それがお前の本当の姿か」

『ミニクイと言ったな、コロス。コロシテヤル!』

 

 所々が爛れている人型のはぐれ悪魔は醜いと言う言葉に反応したのかその瞳は織の姿だけを捉えている。

 織はそんなはぐれ悪魔の姿を見ながら構える。

 右足を前に出し、まるで空気に座っているかの様に腰を落とす。ナイフを持った手を後ろに何も持っていない方の手を前に出す。

 一方ではぐれ悪魔の方は斧を両手で持つだけ。

 

「…………」

『…………』

 

 お互いが一言も喋らずにお互いを見る。

 本来ならば、はぐれ悪魔は考えることをしないはずだが、このはぐれ悪魔はどうやら知性があるらしくーーーー織はまるで人間に近いそのはぐれ悪魔を見てより笑みを深める。

 風が吹く。先程織が爆破した場所から空気が入って来たのだろうか。それに織がほんの少しだけ意識をそらした瞬間ーーーー織を百を超える斧とはぐれ悪魔が襲った。

 それに織が反応する。その様子を見てはぐれ悪魔は自身の勝ちを疑わずに笑みを浮かべた。

 

『ワタシノ……勝ちダァァァァァァッ!』

 

 織の首と体をいくつかの斧が貫くのをはぐれ悪魔は信じて疑わなかった。

 だがーーーーダンッという音と共に自身の身体が傾いた。

 

『……ハッ?』

 

 はぐれ悪魔から声が漏れる。何故、如何してなど疑問がはぐれ悪魔に絶えず浮かび上がる。

 だが、再びダンッという音が聞こえると同時にはぐれ悪魔はその命を落とした。

 

「へぇ、お前見た目は醜いのに……綺麗な血の色をしてるんだな」

 

 織ははぐれ悪魔の身体から流れ出る血を見ながら言う。

 ナイフについた血を指で少しだけすくいまるで口紅のように自分の唇に塗る。

 

(やめて、織)

 

 式の声が聞こえて来た。

 織はため息を一回だけ吐くと懐から取り出した札で唇をふく。

 だが、その間も織は一切警戒を解いていない。

 

「そろそろでて来たらどうだ?」

「ほう、(オレ)に気づくか」

 

 織が後ろに向かって言うと、帽子を外した金髪の少年があらわれた。その少年の後ろには黄金の波紋があらわれていて、チラチラと武器の先っぽが出ていた。

 織はそれらを見るとナイフをしまい竹刀袋から刀を取り出した。

 

「驚いたな。そんな力、初めて見た。それに、お前の見せてるそれ雰囲気だけでわかる。どれも()()()だ」

「ほう、それも分かるか。なるほど、お前はあそこにいる凡夫とは違うようだな」

 

 偉そうな言葉だなと織は思いながら少年を注視する。

 少年はそんな織を見るとさらに笑みを深め、織に近づいていく。

 

「我はお前と同じ転生者だ」

 

 コツコツと一歩一歩織に近づいていく。

 

「そして、我はこの世界が嫌いだ」

 

 黄金の波紋が消えていく。

 織はそれと同時に構えを解き、話だけは聞こうと少年の瞳を見る。

 

「両儀『織』、我の仲間にならないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、こっちだから」

「そっかぁ、じゃあバイバイ」

 

 車から降りた式は何か言いたげな栞達の視線を無視して道を歩きながら昨日のことを思い出していた。

 昨日、金髪の少年が現れた所から式の記憶は途切れた。それは織が意図的に式の意識を眠らせたからなのを式は知っているが、それを聞くことはしない。

 聞いたところで織はノラリクラリとかわすだろう。

 だからこそ、式はいつものように織に向かって言う。

 

「何時か、私に教えてね織」

 

 返ってくる言葉はーーーー何もなかった。





次回予告

両儀家に来た依頼、それは月読月夜の護衛。
だが、月夜が通っている学校は小中一貫の『女子校』で。

「両儀式。趣味も特技も特にないわ」
「よろしくね、両儀『さん』」

現れる謎の雰囲気を持つ少女。
その少女は何故か『式』と『織』を知っていてーーーー。

「オレはお前を知らない」
「そうね。確かに貴方は私を知らない。私が一方的に知っているだけだもの」

次回ハイスクールU×F 『『しき』を知る者」

※次回予告詐欺をするかもしれません。
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