【凍結中】その一握の気の迷いが、邪なものを生んだ(旧版)   作:矢柄

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「そう、ようやく飛んだの…」

 

「はい。これでようやく前進できます」

 

「ふっ、前進ね。今頃リベールの《空の魔女》はどこまで先に進んでいるのやら」

 

 

エレボニア帝国のライフォルト社はリベール王国に遅れること5年、七曜歴1196年に入ってようやく航空機の初飛行に成功した。

 

とはいえ僅か5年、1192年の夏頃から研究を始めたために実質4年という短期間で飛行機を実現したのだから快挙と言っても過言ではない。

 

もちろん、そこに使用されている技術水準はお世辞にも高いモノとは言えないのだが。

 

彼らが回収したリベール王国軍の軍用機を元に航空機を再現することは極めて困難だった。それは破損状態が大きかったことと、飛行機という機械に対して理解のある専門家がほとんどいなかったからだ。

 

それでも研究を積み重ねていったが、1193年から激しさを増した空爆により研究所が破壊されたことでそれも無に帰した。それが単純な複製という作業に3年半という時間がかかった大きな理由だ。

 

巨大な爆弾が帝国中の工場や研究施設を破壊した。多くの研究員や技術者が死傷し、部品の生産も困難になった。

 

それでも優秀な研究者や技師が少なからず生き残り、なんとかここまで漕ぎつけることができたのはラインフォルト者の底力と言うべきだろう。

 

そしてもしそれが、リベール王国軍の初期の軍用機でも完全に再現できていたなら喜ばしいニュースと手を叩いて褒めることも出来ただろう。

 

だが出来上がったのは王国軍のそれとは似ても似つかない布張りの代物。これでは軍も納得はしないだろう。

 

イリーナ・ラインフォルトは出来上がった飛行機の写真を見てため息をつく。

 

それは複葉機であり、スペック上のデータは速度では王国の軍用飛行艇にすら負けかねず、機関銃を乗せて、さらに人間が一人乗れば爆弾など搭載できるかどうか分からない程の貧相なものでしかなかった。

 

 

「なんとか王国から例の旅客機を購入できないのかしら?」

 

「リベール王国とカルバード共和国の間で売買契約が近く成立するようですが、我が国が直接というのは無理があるでしょう。ですが、なんとか政府に掛け合って手に入れるよう打診しております」

 

 

戦役で帝国を苦しめた双発機を旅客機として改修したミランとよばれる機体は世界の注目の的だった。

 

それはZCFが初めて国外に販売する実用的な航空機であり、ゼムリア大陸のほとんどの国がこれの購入を打診している。

 

この機体は旅客機にも関わらずラインフォルトの最新の飛行船の二倍以上の速度を誇る。民生用の旅客機がラインフォルトの技術の粋を集めたモノを上回るのだからもはや笑うしかない。

 

そして当のリベール王国はこれを遥かに上回る速度を誇る四発の旅客機エグレットを就航させており、そして軍用機においては帝国軍を崩壊に導いた急降下爆撃機の新型トネールの配備を行っている。

 

トネールは7200 CE/hという馬鹿げた速度を誇り、対して帝国最速の飛行船が2000CE/h以下の速度なのだから話にもならなかった。

 

 

「それでアベイユに匹敵する機体は作れるのかしら?」

 

「現在、可変ピッチプロペラの研究については最終段階に入っています。エンジンについてもある程度の目星はつきました。しかし、あれだけの完成度のモノはあと数年いただかなければ…」

 

「このラインフォルトが猿真似ばかりとは地に落ちたものだわね」

 

 

今回試作した複葉機についても、情報局が王国経由で手に入れた《空の魔女》エステル・ブライトが試作したという複葉機の模型についての情報が元である。

 

小型高出力導力エンジンが作れないために単葉機の試作が行き詰っていた時に得られたその情報に技術陣は喰らいつき、そしてようやく『飛ぶ』モノを作ることが出来た。

 

出来上がったものは固定ピッチプロペラの複葉機。エンジンは戦車の500馬力級導力エンジンをなんとか小型化して製作した350馬力の導力エンジンを使用。

 

機体は合板を用いて強度を保ちながら出来るだけ軽量化。翼は布張りの複葉。そうして発揮できた速度は2350CE/h。

 

パイロットが乗れば50kgの爆弾を二つ積めるかどうか。飛行船程度の速度で、積載量は雀の涙、運動性は良いが戦争に使えるものとは思えない。

 

一年戦役時初期のフォコン戦闘機相手でも、空で出会えば確実に蹴散らされるだろう。それが軍担当者から下された評価だった。

 

しかしそれは異世界の歴史に照らせば1920年代相当の飛行機であり、モデルがあったとはいえ一からこれを造り上げたことは称賛に値する。

 

もしもこの場所に彼らの言う《空の魔女》がいれば拍手をして彼らを褒め称えたかもしれない。何の慰めにもならないだろうが。

 

 

「まあいいわ、一応の成功ですもの。お父様にはそのように報告しておきます。予算についても予定通り通ることになるでしょう。下がっていいわ」

 

 

そうして技術者は礼をしてイリーナの執務室から出る。そうしてようやく極度の緊張から解放されて肩を落とした。

 

軍の要求も上司の要求も厳しい。導力エンジンの分野ではどうしてもZCFには敵わないし、航空力学なんていう学問も存在しなかったこの国で飛行機を一から作るのには多くの無理があった。

 

技術者はそうしてとぼとぼと設計室に戻り、部下たちといくつかの仕事に関する会話をしたあと、新型飛行機の設計にとりかかる。

 

ジュラルミンを用いた単葉機。モデルはそのままリベールのフォコン戦闘機であるが、この機体には飛行船には無い独特の優美さが備わっていると彼は思っている。

 

飛行機は面白い。本当はリベール王国に亡命してZCFのエステル・ブライト博士に弟子入りしたい気分ではあるが、それは少し無理な希望だった。

 

ため息をつくと仕事に取り掛かる。そうして定時になると彼は家路につくことにした。試作複葉機が成功したのでしばらくは残業から解放される。

 

 

「やあ、いつものをもらえるかな?」

 

「よお、あんちゃん久しぶりだな」

 

「はは、仕事にようやく区切りがついてね。でもまた徹夜続きになるかも」

 

「体壊すなよ」

 

 

そうしてグラスに注がれたビールを受け取る。つまみはソーセージとピクルス。仕事が早く終われば彼はいつもこの酒場で一人で酒を飲むのが習慣だった。

 

家族はいたが、離婚して妻と子供は家にいない。ここ数年仕事場で缶詰だったせいで夫婦仲が悪くなり、その結果だった。

 

そうして先ほど雑貨屋で買った帝国時報を広げる。最初の記事は帝都のバルフレイム宮がようやく再建されたというニュースだった。

 

戦役で木端微塵に破壊されたバルフレイム宮の再建は帝国政府にとっても威信をかけた事業だったようで、多額の税金が投入されて以前と同じ姿の宮殿が再築された。

 

一部ではさらに立派な宮殿に作り変えようという話も出ていたようだが、皇帝自らがそれを止めたらしい。

 

それでも流石に以前よりも小さな宮殿にしようという皇帝の意見は多くの貴族によって拒絶されたということだ。この宮殿だけでもそうとうのミラが使われているはずだった。

 

帝国の再建はなかなか進んでいない。壊されたのは大きな橋梁や生産施設、インフラなどに限られていたが、まず列車やその整備施設が一つ残らず破壊されたのが致命的だった。

 

結果として帝国の物流は停止を余儀なくされ、4年近く経った今でもそれら物流基盤は完全には回復していない。

 

鉱山の復興も遅れ気味だ。ザクセンの鉄鉱山はリベール軍の地震爆弾の直撃を受けて崩壊し、坑道の多くが崩落して鉱山労働者の多くが犠牲になった。

 

機材も多くが土砂に飲み込まれ、当初復旧は絶望的と見られていたが、最近ようやく再稼働を始めている。

 

それでも講和条約における戦略資源の取引枠に関する取り決めで、帝国は多くの鉄鉱石と石炭をリベール王国に輸出しなければならない。

 

そのせいで帝国内で流通する鉄や銅などのベースメタルの量は落ち込んでおり、復興の大きな足枷となっているとされている。

 

工場が破壊されたり、腕のいい技師が失われたりといった理由で、多くの中小の工房が廃業に追い込まれたのもかなりの痛手だ。

 

基本的に工業力は大企業の生産力に依存すると考えられがちだが、実態は中小の工房の職人たちが作る精巧な部品が無ければ成り立たないものが多い。

 

それらが破壊されたことで工業製品の精度に重大な問題が多発し始めている。つまり、いままで使用していた部品や工作機械が使用できなくなったのだ。

 

 

「今の政府に任せていたら俺たちの生活は成り立たなくなる!!」

 

「これ以上税金が上がったら、飢え死にするしかなくなる!」

 

「そうだ! 軍にばかり税金をつぎ込みやがって!」

 

「いや、違う。悪いのは貴族たちだ。領邦軍ばかりが膨れ上がっているってはなしじゃないか!」

 

 

近くの席で威勢のいい若者たちが政治について討論を行っていた。

 

税金が重くなっているのは事実だ。軍事費が増大しているのも事実だ。政府は復興をおざなりにして軍の再建を最優先としているのは周知の事実だった。

 

リベール王国との戦役でエレボニア帝国軍は半壊状態に陥った。多くの士官が、多くのベテラン兵が死んだ。

 

そして戦闘用の車両は余すことなく破壊され、帝国が誇る機甲師団はもはや看板だけを掲げていて実体のないものに成り果ててしまった。

 

それは貴族が擁する領邦軍も同じだった。リベール軍に帝国正規軍と領邦軍の区別なんてないだろうから、それは当然のことであり、多くの施設と装備、人員が失われた。

 

結果、臣民には帝国軍と領邦軍を再建するための税金が二重取りのような感覚で課せられることとなった。

 

帝国は20程度の機甲師団を新たに整備するつもりらしいが、空軍の創設を考えれば荒唐無稽とまでは言わないものの、莫大で無茶な出費にしか見えない。

 

民衆の不満は爆発寸前にまで大きくなっている。増税に次ぐ増税が平民の生活を強く圧迫している。噂では共和主義者という勢力が帝国で台頭してきているらしい。

 

彼らは帝国の身分制度どころか帝政すらも破壊し、カルバード共和国のような自由な民主国家を作ろうとしているそうだ。

 

そしてその筆頭と噂されているのが、

 

 

「《鉄血宰相》ねぇ」

 

 

ギリアス・オズボーン。数々の内政改革を打ち出して民衆に大きな人気を誇っている。彼は軍事費の過剰な増大に反対しており、インフラの復興と拡大を強く主張している。

 

彼がいなければ帝国の復興は遥かに遅々としたものになっていただろう。あるいは賠償金と軍事費の増大で国家財政自体が破綻し、スーパーインフレが起こっていたかもしれない。

 

だが、彼に対する良好な印象も共和主義者ではないかという疑惑によってかげっているようにも思える。

 

保守派の多くはそのことについて彼を槍玉に挙げており、皇帝の厚い信任が無ければ失脚してもおかしくはない状況らしい。

 

一人の民間人とすれば彼の掲げる改革には大いに賛成だが、共和主義には首をひねらざるをえない。少なくとも皇室への支持はまだまだあるし、皇帝陛下に弓を向けるなど考えたこともない。

 

それに、カルバード共和国については帝国時報が盛んにその衆愚政治の醜さと非効率性を喧伝していて、実際にあの国は多くの問題を抱えているという話だ。

 

 

「マスター、おかわり」

 

「あいよ」

 

 

技術者はビールを喉に流し込む。不景気な話ばかりだ。何か分かりやすい希望のようなものが欲しいと、彼はそう思った。

 

 

 

 

 

 

「では、エレボニア帝国における世論操作は上手くいっていると」

 

「はい。ギリアス・オズボーン宰相の印象操作はかなりの精度で目標を達成しています」

 

 

快晴の元、まるで水平線の向こう側まで黒いアスファルトで舗装されたようにも思える、そんな場所に麦わら帽子をかぶって立っていた。

 

海からの風が吹き、天候は悪くないが風向きは少し良くない。そんな日より。私の周りには軍服や作業着を着た大人たちがせわしく動き回っている。

 

台形直線翼、後進翼、前進翼、可変翼、ストレーキ付デルタ翼、尾翼付クリップトデルタ翼、クロースドカップルデルタ翼。様々な形の翼を持つ飛行機が並ぶ。

 

王立航空宇宙研究所と呼ばれる、リベール王国南西に突き出た半島の施設の滑走路にそれらは置かれていた。

 

私の隣には情報部の黒い制服を着たリシャール中佐がいる。最近昇進したらしく、同僚のシード少佐に一歩リードした感じだ。

 

まあ、本人はそんな事は興味なさそうだったが。軍情報部は空軍に次ぐ軍の花形として期待されている。そんな情報部において重要な地位を占めるのが彼だった。

 

 

「彼は脅威です。思想、思考、発想のどれもが群を抜いている。おそらく政治という舞台では彼にかなう者など大陸にはいないでしょう」

 

「《鉄血宰相》ですか。私も同意見です。彼を知れば知るほど恐ろしいという気分になる」

 

 

ギリアス・オズボーンは《鉄血宰相》とも呼ばれるエレボニア帝国の政治家だ。

 

平民出身の元軍人にもかかわらず一年戦役の頃から政治の分野において急速に頭角を現し、今では皇帝から厚い信任を得ている。

 

その能力は異様ともいうべきもので、彼に全権が与えられればエレボニア帝国はまたたくまに戦役前を上回る超大国に変貌するだろう。

 

 

「博士、それではX-1Dの飛行試験に入ります」

 

「よろしくお願いします」

 

 

滑走路の上で整備されていた小さな台形の主翼を後部につけた変わった機体から技師たちが駆け足で離れる。

 

プロペラ機からは大きくかけ離れたその外観は、プロペラによって牽引されるのではなく、ロケットエンジンの推力で押し出されて飛ぶのだ。目指すのは音の壁の向こう側。

 

ロケットエンジンが透明な炎を噴き上げて轟音を立てる。導力エンジンにはない、内臓を圧迫する様な空気振動。

 

X-1Dはその莫大な推進力に身を任せるようにして驚くほどの加速力で滑走路を駆け抜ける。そうしてすぐに浮き上がりあっという間に機体は空へと飛びあがった。

 

X-1シリーズが飛ぶのはこれが初めてではない。

 

今年に入ってから何度も飛行実験を繰り返しており、遷音速領域における機体にかかる力の分析、超音速機の翼の形状による飛行特性の変化、エリアルールの適用による音速突破時の抗力の変化、パイロットにかかる負担の分析が繰り返されている。

 

 

「しかし、見事な戦略でした。彼のイメージをここまで悪化させるとは」

 

「お褒めに預かり光栄です博士」

 

 

軍情報部の完成度は既にエレボニア帝国の情報局を出し抜いて世論操作に成功するに至った。帝国内の保守派に共和主義者が胎動しているというありもしない話を吹き込んだのだ。

 

もちろんそれらしい過激派にも接触し、いくつか活動に関するノウハウを教え込んだらしい。

 

帝国には近代化と政治や体制の構造改革を目指す《革新派》と、四大名門とよばれる大貴族を中心とした保守派である貴族勢力の対立が表面化している。

 

予算における税金の取り分についても激しく争っており、彼らの対立の溝が埋まる傾向は全くないと言っていい。

 

ここでリベール王国にとって都合のいい勢力は貴族勢力だ。

 

彼らは自分たちの領邦が安全であれば良く、民衆を虫けらのように扱うような下衆もおり、また保守的で近代的な政治体制の構築に強く反対している。

 

その分、中央集権よりも効率性が低く、国力の増強は緩やかになる。

 

そこに生きる市民の生活を重視して考えない地方分権など最悪の部類だ。それなら暴君が治める中央集権の方がまだ芽がある。

 

リベール王国にとって避けるべきが、《革新派》によってエレボニア帝国が国民国家に生まれ変わることだ。

 

ギリアス・オズボーンのやろうとしている事は私の構想とよく似ており、そして国家の規模から言っても脅威だ。

 

故に彼らには足の引っ張り合いを続けてもらっていた方がこちらとしては助かるのである。が、そのバランスをとるには《鉄血宰相》は傑出しすぎている。

 

かくして情報部の矛先は《革新派》と《鉄血宰相》に定まった。情報部は弱小勢力だった共和主義派という汚名を《革新派》に被せることで、帝国内の彼らのイメージに泥を塗ったのだ。

 

結果としてギリアス・オズボーンは皇帝をないがしろにする奸臣というイメージが保守派からそうでない層にまで定着しようとしている。

 

 

「博士! X-1Dが音速を突破しました! まだ速度が上がります!」

 

「機体は安定していますか?」

 

「問題なし」

 

 

ソニックブームの爆発音が遅れて耳に響く。リシャール中佐は何事かと周囲を見回すが、周りの人間たちが全く動じていない事を知ると咳払いをした。

 

 

「今の音は?」

 

「ソニックブームです。音は空気の振動で、波の性質を持っています。我々の日常の世界では音の速度は地上では1秒間に340アージュの速度で、音の波は前方に放射されます。しかし超音速になる瞬間、物体と音の速度は等しくなり、音の波が圧縮されて壁のようなモノを生み出す…と想像してください。これが莫大な圧力を生み出して、爆発音のような音を生じるのです」

 

「音の壁ですか」

 

「人間の手でも作ることは出来ますよ。鞭を全力で振るったときに出る炸裂音は超音速によるソニックブームと考えられています」

 

 

ソニックブームというのは厄介で、二万メートル、この世界では200セルジュを超えた場所にも伝播してしまう。

 

これが騒音公害になるため、下手に市街地近くの上空では音速突破は出来ない。超音速旅客機がXのいた世界で主流になれなかったのはこれが一つの原因である。

 

 

「18,000 CE/hを突破!」

 

「速いですね」

 

「あの形状の翼は遷音速領域には向いていませんが、超音速ではむしろ安定性が増すんです」

 

 

Xの世界における傑作機F-104スターファイターに見られる特殊な直線翼は超音速での安定性に優れた能力を示す。

 

F-5フリーダムファイターや有人機最速のX-15にも見られるこの翼だが、最終的には速度よりもアビオニクスやマルチロールが重視されるようになると廃れてしまった。

 

 

「第2超音速突破、さらに速度上がります」

 

 

これらの機体は金属水素(混合時は液体水素)と液体酸素による2液式液体ロケットエンジンを搭載し、有人の航空機による音速突破を狙う超音速有人飛行機実験のために用意されたものだ。

 

肝心のジェットエンジンについては、一応試作品が作られているものの、問題が発生していて、実用にはまだ少し届かない感じである。

 

そういうわけで、先に機体の形状についての研究が先行する形となってしまった。未知の領域での試験飛行であるが故にパイロットは命がけであるが、最新の飛行機に乗れるというので士気は高い。

 

だがそれだけにベテランパイロットを失いたくない。

 

 

「25,000 CE/hを突破!!」

 

「減速してください。これ以上の速度は危険です」

 

「わかりました。X-1D減速しろ。これ以上の加速は機体が持たない」

 

 

第2超音速というのはマッハ数のことだ。この世界にはエルンスト・マッハなんていう物理学者はいないので、私が勝手にそう呼んでいるだけである。

 

そうしたらみんなそう呼び出したので、まあ放置している。ブライト3とか言われてもしっくりこないのです。

 

機体はアルミ合金製なのでマッハ3の領域に突入することは出来ない。断熱圧縮による空力加熱で機体の温度がアルミニウム合金の融点を超えるからだ。

 

キャノピーだってもたないし、最悪機体が制御を失って墜落するだろう。基本的に有人機の速度限界を決定するのは推力ではなく機体強度であることが多い。

 

 

「それでリシャール中佐、頼んでいた件についてはどうなっています?」

 

「IBC(クロスベル国際銀行)の内偵ですが、多額の使途不明金が存在するようです。各国の主要銀行においてそういった資金の流れが確認できていますが、IBCの規模は他の群を抜いているようですね。引き続き資金の流れを追跡させましょう」

 

「お願いします」

 

「それでは私はここで」

 

 

リシャール中佐が去っていく。私はそれを見送ると、X-1Dの飛行データの検証に改めて参加した。

 

この飛行試験を通して耐Gスーツの最適な設計も行われている。

 

Gがかかることで血液が上半身から下半身に集中し、脳が虚血状態に陥ってパイロットが失神する事故は一年戦役でも起きており、これに対して下半身を圧迫するだけの耐Gスーツは完成しているものの、超音速機には対応できないと考えられている。

 

並行して導力装置による重力制御によって慣性を殺すようなシステムも並行して開発が進められている。

 

機内の気圧や温度の制御など導力器に頼る部分は大きくなっているが、それだけではなく航空機の機体制御にまで導力器が応用されようとしている。

 

例えば機体周囲の気体の流れを制御して、渦の形成を上手く制御することで負圧を生み出しエルロンや昇降舵、方向舵、尾翼無しでの機体制御が考案されていた。

 

また大型機にはすでに主翼と後部に反重力発生機関が搭載されており、短距離離着陸機が戦役前から実用化されている。

 

反重力発生機関は機体の制御にも応用可能と見られており、垂直離着陸機の実現だけではなく、推力偏向ノズルを用いずに超音速における高度な運動性獲得すら視野に入っている。

 

他にも導力冷却機構によって極超音速における空力加熱を軽減する研究や、ステルス性の概念についても理論レベルであるが研究が行われていた。

 

エリカさんの協力もあって導力波や電磁波を反射しないで吸収してしまう膜状結晶回路を機体表面に張り付ける研究がなされている。

 

これが実用化してしまうと機体形状に関わらずステルス性を獲得してしまうというとんでもないモノが作られる可能性があった。

 

と、唐突に技師たちが慌ただしくなる。オペレーターが血相を変えて声を張り上げた。

 

 

「どうしたX-1D!? 何!?」

 

「何が起こりました?」

 

「制御不能に陥ったようです! おい、X-1D! 機体を立て直せ! くそっ」

 

「観測班っ、何が起こっている!?」

 

「き、機体がピッチ方向に回転しています!!」

 

「イ、 イナーシャカップリング現象か!? 対策は嫌というほどやっただろう!」

 

「アイツ、独断で連続宙返りやりやがったんだ!」

 

「そんな…、この速度域じゃベイルアウトも出来ないじゃないですか!」

 

「X-1Dからの応答がありません!」

 

「失神したか…、馬鹿野郎が! 遠隔操作で機体を立て直すぞ!」

 

 

悲鳴のような声が上がる。おそらくパイロットは激しい回転運動による遠心力に伴うGに耐え切れずに失神してしまったようだ。

 

上空を飛ぶエグレットを改修した大型機から遠隔操作による機体の復元が試みられるが、激しい縦回転に見舞われた機体はほどなく空中で分解してしまう。

 

外部からの無線信号で強制ベイルアウトやパラシュートの操作などができるようにはなっており、私は祈るような気持ちで報告を待つ。そうしてしばらくすると、救助担当者が戻ってきた。

 

 

「パイロットは?」

 

「強制ベイルアウトに成功しました。ですが、あの怪我では予断は許さないでしょう」

 

 

息を吐いた。怪我は酷いらしく、首の骨を折るなどの重体で、今日の夜が山場だという。事故は起こらない様に設計をしていても、こういった事故は完全には防ぐことが出来ない。

 

技師たちや他のテストパイロットたちも表情は暗く、整備担当者が私に必死に謝ってきた。違う。貴方は悪くないと言って下がらせる。

 

テストパイロットたちには予め遺書を書かせているが、実際に大怪我が出るとダメージは大きく、動揺してしまう。

 

親族の人には頭を下げに行かなければならないなと思いつつ、頭の中に設計図を再現して何が悪かったのかを検証し始める。

 

航空機は速くなれば速くなるほど、縦揺れや横揺れが酷くなり不安定になる。

 

特にジェット戦闘機では後方に重いジェットエンジン、前方に大量の電子機器を積み込むためにヨー(横)方向とピッチ(縦)方向の揺れにおいて勢いがついてしまい、制御不能になることがある。

 

これがイナーシャカップリングだ。

 

解決策としては主翼や尾翼の面積を大きくすることで、F-15などの垂直尾翼が2枚あるのは面積を稼ぐためでもある。

 

しかし超音速機はマッハコーンの円錐の中に納まる様に主翼を配置する必要から、主翼の面積は限られてしまう。

 

 

「もっと安定性の高い機体設計の方がいいのでしょうか…」

 

「ですがX-1Dの加速性能は魅力的ですよ」

 

「超音速機での周辺国との競争が無い今はパイロットの安全を優先したいんですけどね。あの翼では低速域での運動性が良くないですし」

 

 

パイロットは病院での手術が成功してなんとか命を取り留める。それでも、怪我が原因で後遺症が残り、飛行機パイロットには復帰できないだろうという話だ。

 

それでも、生きてくれただけで良かったと思う。そうしている間にも試験飛行は継続する。

 

次世代戦闘機のモデルについての議論が行われる。リベール王国にはどこぞの世界の超大国のように用途によって機種を揃える余力はまだ無い。

 

前回の戦訓により次世代戦闘機には爆撃をこなせる戦闘機を期待されていたが、戦術爆撃には飛行船、制空戦闘には航空機という割り切りをしてもよかった。

 

 

 

 

 

 

「てぇい!」

 

「遅い!」

 

 

金色のウェーブ髪を広げて襲い来るクリスタさんの大剣の腹に刀をそえてその軌道をそらす。そのまま体当たりをして彼女のバランスを崩し、追撃に入ろうとすると、とっさに害意を感じて後ろに飛ぶ。

 

先ほどまでいた場所の大気を弾丸が切り裂いた。

 

 

「今のをよけてしまいますか」

 

「いくよエステル!!」

 

 

銀色の髪の長身の女性、シニさんの放った弾丸を避けると入れ替わりにエリッサが切り込んでくる。掛け声は余計だと何度も言っているのだけれど。

 

八葉一刀流の剣技《紅葉切り》。驚くべき踏み込みの速度は流石というべきか。しかし、剣筋は読みやすい。私は既に鞘に納刀をしておりこれを迎え撃つ。純粋な速さならこちらが最速だ。

 

 

「ふっ」

 

「うぁ!?」

 

 

八葉一刀流・五の型《残月》。私の最速の剣であり、一撃のもとにエリッサの腕に剣の峰を叩き込む。追撃は導力魔法(アーツ)発動の気配に阻まれた。時空を揺さぶる振動波の群れ。

 

シニさんの放った時属性の魔法ソウルブラーが私の脇を掠める。そして迫りくるクリスタさんの大剣を使った強烈な突進攻撃。

 

 

「え?」

 

「てい」

 

 

その大剣の上に私はトンと跳び乗って、彼女の顎を蹴り上げた。しかし不完全な一撃になったので意識を奪うには少し足りない。

 

理由はロリメイドのメイユイさんが放ったチェーン付きの分銅だ。なんとか上体をそらして避けたが、相変わらず嫌なタイミングで仕掛けてくる。

 

メイユイさんとシニさんが同時に接近してくる。シニさんはガンブレードという特殊な武器で接近戦もこなせる。メイユイさんはどこからか取り出した短剣を手にしていた。

 

二人同時に相手にするのは良くないので、相手にしやすいシニさんに向かう。ガンブレードは銃撃にも用いる事が出来るが、その分重くて剣としては取回しにくい。

 

 

「流石ですお嬢様!」

 

「それはどうも!」

 

 

シニさんとメイユイさん、そして私の剣舞が始まる。私の剣をガンブレードで受けたシニさんは防戦一方になるが、メイユイさんの投げナイフにより私は攻勢を削がれる。

 

そのままメイユイさんが短剣を横に薙いでくるが、私はそれを刀で受けた。蹴りが飛んでくる。避ける。足を狙う。至近距離の銃撃。刀で弾丸をそらす。

 

 

「行けクリスタ!!」

 

 

突然のメイユイさんの号令。シニさんとメイユイさん二人が同時にバックへと跳んで退いた。同時にコンコンコンという何か金属の缶が跳ねる音。それはクリスタさんが投げ込んだ手榴弾だった。

 

もちろん中身はスタングレネードだが、そんなことは何の救いにもならない。ならば、

 

 

「せぇい!」

 

「「「「なぁ!?」」」」

 

 

私は回転しながら上空へ跳びあがった。同時に強烈な螺旋の気流が発生する。八葉一刀流の技の一つ、《独楽舞踏》。生み出された強烈な負圧が周囲のモノを螺旋の中心へと引き寄せる。

 

それは人間も例外ではなく、周囲にいたエリッサやクリスタさん、シニさんとメイユイさんまでをも巻き込んだ。そしてその中心にはスタングレネード。

 

そして轟音と共に閃光が放たれた。

 

四人が壁となってスタングレネードの威力が半減し、私への影響は限定的なものになった。だが、スタングレネードの直撃を受けた四人は半ば棒立ち状態になっている。

 

このまま《疾風》あたりで仕留めてしまってもいいが、せっかくの模擬戦だ。あれを使おう。

 

 

「我が剣は無にして螺旋」

 

 

氣を練りこむ。最大最強の一撃を。

 

 

「いきます」

 

 

私は一気に後方へと跳ぶと、すぐさま加速して螺旋の動きで跳躍する。莫大な氣を丹田より汲み上げて、螺旋の加速で収束し、急速に増大させる。

 

圧倒的なエネルギーを剣に伝導させると、氣は私の最強のイメージであるドラゴンを形作る。そして私はそのまま四人のいる場所へと突入した。

 

 

「奥義≪竜王烈波≫」

 

 

巨大なドラゴンが大地にダイヴする。強烈な爆音が鳴り響き、エネルギーが瞬時に解放されて大地が揺さぶられる。閃光が広がり、その後土煙がきのこ雲を生み出した。

 

そうして煙が無くなると、大地にはクレーターが穿たれ、そこから螺旋状に竜が爪で地面を抉ったような深い傷痕が刻まれていた。

 

 

「四人とも、大丈夫ですか?」

 

「きゅ~~」

 

 

メイユイさんも含めて四人とも気絶してしまっている。わざと四人から離れた場所に突入したので大きな怪我はなさそうだが、一応怪我の状況を確認しに行く。

 

そうして息がある事を確認すると、私は導力魔法で四人の怪我を治癒する。すると模擬戦を見ていたユン先生が近づいてきた。

 

 

「どうでしたでしょうか?」

 

「まあ、こんなものじゃろう。剣気の練りがまだ甘いがの」

 

「そうですか…」

 

「極めれば竜も殺せるようになるじゃろうて。まあ良い合格じゃ。免許皆伝を授けよう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

授けられた奥義は≪竜王烈波≫ともう一つ、居合の奥義である。実戦レベルでこれらを使うことは出来るものの、≪竜王烈波≫についてはいまだ隙が大きく奇襲といった要素を組み入れる必要があった。

 

とはいえ、念願の免許皆伝である。そしてそれは別れをも意味していた。

 

 

「これでわしのこの地での役割は終わりじゃの」

 

「残念です」

 

「お主は剣でなく空への道を極めるのじゃろう。わしとは生きる場所が違うじゃろうて」

 

「そうですが、別れというモノはそう簡単に割り切れるものではありません」

 

「ふむ、まあ生きていればまた会える。それに孫娘にも時折顔を見せなければならんからの」

 

 

私より二つ上のユン先生の孫娘のアネラスさんはリベール王国にいて、私が仕事の忙しいときなどはそちらの方の面倒を見に行っているらしい。

 

私と同じく剣を先生に師事しているらしく、純粋な剣の才能ではエリッサよりも上という話だ。私に負けないようにと日々頑張っているらしい。

 

 

「北方に行かれる予定とか」

 

「ひとまずはノルド高原に向かおうと思っておる。まあ、予定じゃがの」

 

「エレボニア帝国とカルバード共和国の係争地だとか」

 

「風光明媚と聞いておる。土産話を期待しておくといい」

 

 

ノルド高原は大陸北部にあるアイゼンガルド連峰を越えた峻嶮な高原地帯で、自然環境の厳しい高原地帯と聞いている。

 

草原が広がり、良馬の産地とも知られ、そこに住む原住民はモンゴルの草原に生きる遊牧民のような生活を営んでいると本で読んだことがある。

 

そうして数日後、ユン・カーファイの旅立ちの日がやってきた。

 

 

 

 

「ユン先生、お身体にお気を付けて」

 

「うむ、お主も精進を忘れぬように。《迅羽》をなまくらにするでないぞ」

 

「はい」

 

 

ユン・カーファイは再び旅に出ることになった。大きな荷物を肩に担ぎ、二本の刀を腰に差した姿はこの家にやって来た時と変わらない姿だ。

 

ロレントの飛行船乗り場で私たちは総出で彼の旅立ちを見送る。彼はこのままボースへと向かい、そこから帝国領へと入るらしい。

 

《迅羽》は父から正式に受け継いだ太刀だ。まだ私が扱うには刃が長すぎて上手く使えないが、いずれは使いこなしたいと思っている。その時は、ユン先生から一本ぐらいはとれるようになりたい。

 

 

「ユンぜんぜぇ、い゛ままであ゛りがどう」

 

「エリッサ、お主には奥義は伝えられんかったが、エステルの指導を受けるが良い。お主ならいずれ奥義にも至れるじゃろう」

 

 

ユン先生がエリッサの頭を撫でる。エリッサは人見知りの強い子になってしまっていたが、ユン先生には深い信頼を寄せてすっかり懐いていた。

 

顔をぐしゃぐしゃにしてユン先生に泣きながら抱き付く姿は、どこか祖父と孫のような関係にも見えて微笑ましい。

 

メイユイさんたちメイドさん達も少し涙ぐんでいる。執事のラファイエットさんが代表して私たちがそれぞれ選んだ餞別を袋に入れたものをユン先生に手渡す。

 

 

「高名な《剣仙》ユン・カーファイ殿に出会えたこと、至上の喜びでした」

 

「ふっ、お主とは一度手合わせをしたかったがの」

 

「お戯れを。私では相手にもなりません」

 

 

そう言って笑いあう。この二人は歳も近いというのもあって仲が良かった。時折、父とメイユイさんとユン先生を合わせた4人で酒を飲んでいる場面を何度か見かけたことがある。

 

 

「今までありがとうございました。私のようなものにも剣の指導をして下さったこと、誇りに思いますわ」

 

「良い。お主もなかなか見込みがあったからな」

 

 

クリスタさんは剣士として名を馳せるユン先生に憧れに近い感情を抱いていたらしい。時々、雇い主のブライト家の人間よりもユン先生に敬意を払っているような節があったりして、見ていて面白かった。

 

彼女も時折剣の指導を受けていたらしく、北の猟兵出身ということで軍用の剣技を身に着けていたが、ユン先生の指導のおかげで少し剣を振るうバランスが良くなったように思える。

 

 

「あ、あの、ありがとうごじゃいましたっ」

 

「ふふ、そう身構えるでない」

 

 

逆にクリスタさんの妹のエレンさんはユン先生を怖がっていた。独特の戦士としての雰囲気が少し苦手だったのだろう。最近はだいぶんそれも改善されていたが、まだ苦手意識は残っているらしい。

 

 

「あんまり無理しないで下さいよ。もう歳なんですから」

 

「お主も言うほど若くはないじゃろう」

 

「酷いですね。まあ、またどこかで会いましょう」

 

 

笑って挨拶するのはメイユイさんだ。この人はユン先生とフランクに付き合っていて、敬語中心にメイド然と付き従う私への対応と少し違う。

 

理由を聞くと、遥か東方の島国アキハバーラに伝わるメイド道の心得らしい。そんな島は聞いたことが無い。

 

 

「いままで大変お世話になりました。ユン様の剣捌きの美しさを拝見できなくなるのは残念ですわ」

 

「うむ、お主も達者でな」

 

 

シニさんはそれほど先生との絡みを見たことが無い。それでも先生曰く侮れない娘との評価をいただいていたようだ。そして最後にユン先生は父と向かい合った。

 

 

「ユン先生、またしばらくの別れですね」

 

「カシウス、もはや多くは語らぬが、お主の魂に剣はいまだ宿っておると信じている」

 

「勿体ない言葉です」

 

「遊撃士という職はお主には合っているじゃろう。これからもエステルを良き方向に導くといい。アレはわしの後継者たりうる娘じゃからな」

 

「はい。先生もご達者で」

 

 

そうして《剣仙》は飛行船に乗り込んだ。私は彼から多くの技を受け継いだ。剣を握る覚悟も教えられた。私は昨年、父から受け継いだ利剣《迅羽》を握りしめる。剣は私の一部となった。

 

次会う時は、先生も驚くような剣士になろう。私はそう決めた。

 

 

 





おじいちゃん剣士去る。この軌跡シリーズはダンディズム溢れる男性が沢山活躍します。英雄伝説とか言ってますが、英雄はこのおっちゃんどもです。『閃の軌跡』に登場するかなぁ?


15話でした。


皆さん、『閃の軌跡』は買いましたか? 作者は予約特典付きで買いましたよ。ふははは、徹夜だ! 徹夜でプレイだ! SSの更新? そんなものは後だ後。

そういえば閃の軌跡はグラフィックに問題があるようですね。まあ、細かい事です。欲しいのは世界観と音楽とキャラクターの雰囲気ですし。

『閃の軌跡』はエレボニア帝国が舞台ですね。このSSでは酷い目にあってばかりの帝国ですが、頑張ってもらわないと困りますね。

クロスベルに向ける列車砲が一つになったり、口径が80から60とかに減ったりするかもしれませんが。列車砲を作るのは帝国クオリティーなので仕方がないですけど。

ちなみに帝国がここまで苦しんでいる理由の一つは戦役においてZCFの接収が出来なかったという要素が大きく響いています。

原作での百日戦役ではツァイス占領においてZCFが帝国軍の管理下に置かれました。この時に最先端導力技術のかなりが帝国に持ち去られていたことは容易にうかがえます。

ですがこのSSではそれが出来なかったため、特に基礎技術においてラインフォルトは大きく苦しめられることになります。…あれ?

これって戦術オーブメント開発にも影響でるんじゃね? ARCUS作れんのかラインフォルト。特科クラス《Ⅶ組》どうなんの? 『閃の軌跡』始まらねぇぞこれどうすんだよ。


今回のエステルさんの技
・残月
攻撃クラフト、CP20、単体、威力125、基本ディレイ値1000、確率50%[戦闘不能]・必中
八葉一刀流・五の型「残月」。目にもとまらぬ神速の抜刀術。通常攻撃の三分の一の硬直時間が強烈な技。相手が次に行動する前に三連続でターンが回ってくるという設定。タマネギ大佐を上回るダメージディーラーに。

・独楽舞踏
補助クラフト、CP30、大円(自分中心)、基本ディレイ値3000、吸引
螺旋の生み出す強烈な陰圧により敵を引き寄せる。3rdでは役立たずとか言われたけど、チェインクラフトメインだったら使えるよ!

・奥義≪竜王烈波≫ 
攻撃Sクラフト、CP100~、全体、威力400、基本ディレイ値3500
無の境地から生じる凄まじい竜気を螺旋の回転により増幅させて叩き付ける、圧倒的な破壊力を持つ最終奥義。Sクラフト登場です。威力高すぎ? 気にするな。お話が続けばこれで弟系草食男子を装った喰いまくりのリア充野郎を粉砕する予定。



今回は原作に登場する導力器メーカーについて。

導力革命以降、産業の発達によって様々な導力器メーカーが隆盛を極めました。その代表格がエレボニア帝国のラインフォルト社、そしてカルバード共和国のヴェルヌ社です。

また先進性の高いメーカーとしてはエプスタイン財団とZCFがあり、高価ながらも質の高い製品を製造しているようです。


<エプスタイン財団>
七耀歴1154に死んだC.エプスタイン博士の業績を受け継ぎ、博士の死の翌年に設立された導力器開発研究機関。

レマン自治州に本部を置き、導力技術の開発と普及を目的として活動しています。導力研究では最先端の技術を有しており、特に戦術オーブメントについては大陸でこの機関しか製造を行っていません。

実は七耀教会とは密接な関係にあるらしく、戦術オーブメントの発動する導力魔法については七耀教会において継承されてきた法術を元にしていることが言及されています。

この見返りとして、財団は教会に極秘に特殊な導力装置を提供するなど、その関係は非常に密なものといえるでしょう。

遊撃士協会のスポンサーを務めていることも作中で言及されていて、その見返りとして遊撃士が導力技術の普及に協力している点においても原作においては重要な機関といえるでしょう。


<ZCF(ツァイス中央工房)>
アルバート・ラッセル博士が故郷であるリベール王国のツァイス時計師組合と協同で設立した『ツァイス技術工房』を前身とする工房です。

その技術力はエプスタイン財団に並ぶとされており、おそらくは導力革命の一翼を担った研究機関と言えるかもしれません。

その技術力とラッセル博士の才覚により、世界で初めて導力飛行船の開発に成功しており、現在でも飛行船開発と導力エンジン、導力演算器の分野ではトップランナーとして認知されています。

エレボニア帝国とカルバード共和国に導力技術を供与したのもZCFであり、事実上、西ゼムリア大陸において導力革命を主導した立場にあると考えてよいでしょう。

初期は時計を、次には大型の導力可動式の跳ね橋《ラングランド大橋》を作成しており、近年では導力自動車の分野にも進出しています。

原作ではZCFの製品は割高ではあるが、無駄のないシンプルなデザインと故障の少ない耐久性を特徴としています。なんとなく、作れるから作った的なハイエンドな際物を作ってそう。

このSSにおいてはリベール王国の重工業化と技術開発の中心であり、航空機開発のメッカとして理不尽な活躍をしています。

まあ二週間で二足歩行ロボットを製作してみたり、超古代文明のアーティファクトを分析してその対抗策を作ってみたりとやりたい放題なので、予算さえあればこの程度の潜在能力はあると見てよいでしょう。


<ラインフォルト社>
正式名はラインフォルト・インダストリー・グループ。エレボニア帝国最大にして、大陸でも一二を争う最大規模の総合重工業メーカー。

ZCFから導力技術の供与を受ける前は、火薬式の大砲や銃火器を製造していた工房であったようで、今でもラインフォルト社の火薬式の銃火器には一定の顧客がいるとか。

導力革命後は導力銃や導力戦車だけでなく、導力鉄道や飛行船の分野にも進出しており、これらの技術を応用した導力自動車も開発している。

ラインフォルト社の導力自動車は頑丈さが売りで、リムジンや運搬車のような車種に定評があるらしい。まあなんとドイツっぽいこと。

ラインフォルト社の製品は貴族主義の国の風土を反映してか、華美な装飾を施したデザインを特徴としており、軍事国家としての側面からか大容量・大出力を売りにしているとのこと。

大きくて、硬くて、強くて、立派なものが好き。なかなかの逸材と言えます。

このSSではエレボニア帝国によるZCFの接収に失敗したため、基礎技術の面で不安が残ります。

特に導力エンジンと飛行船技術については原作よりも立ち遅れる事が必至で…って、山猫号ってこのSSじゃ作られるのかな?

軍関係者の無茶な要求に頭を悩ませる技術者たちの苦悩が思い浮かぶ。逸材です。

きっとドイツみたいにエレファント重駆逐戦車とか超重戦車マウスとか、ドルニエDo335プファイルとかハウニブみたいな超カッコいい奴を作ってくれるに違いない。間違いなく逸材。


<ヴェルヌ社>
カルバード共和国に本社を置く巨大総合技術メーカー。ラインフォルト社と双璧をなす重工業メーカーです。

ZCFから導力技術の供与を受ける前からラインフォルト社のライバルとして火薬式の大砲や銃火器を製造していた。この世界の工業メーカーは全部軍需関連なのだろうか?

導力革命後は各種導力器の研究開発に力を入れ、特に導力自動車の分野では老舗中の老舗である。自家用車からバス、トラックから軍用車両、特殊車両まで幅広いラインナップを誇る。

ハタラククルマ。この関係なのか、共和国で採用されている戦車は装輪式だったりするらしい。

飛行船開発では遅れており、カルバード共和国の空軍は張子の虎なのだとか。製品の特長はポップなデザインと、多機能で手ごろな価格が売り。どことなくアメリカンな雰囲気。

なんとなく経済性を優先させたつまらないものを作っているイメージ。英国面に落ちればいいのに。


<ストレガー社> 
番外。1153年創業のスニーカーを製作するメーカー。ストレガーブランドのスニーカーは皆の憧れの的。

ストレガー社が総力を挙げると、アーティファクトにも匹敵する超絶高性能なスニーカーが生まれる。防御力だって200も上がり、MOVは8も上昇。星杯騎士も愛用しているとか。



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