【凍結中】その一握の気の迷いが、邪なものを生んだ(旧版)   作:矢柄

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「エステルっ、これ可愛いよ!」

 

「どれです? ふふ、そうですね」

 

「東方風のデザインだね」

 

「透かし彫りが見事ですねー」

 

 

私とエリッサ、ヨシュアはツァイスでティータを拾ってお買い物。

 

中華料理店では悲劇的な事件が起こったが、エリッサも持ち直したので予定通りショッピングを楽しむことにした。東方風の小物やお菓子を売る露店をはしごしながら、私たちは東方人街をねり歩く。

 

エリッサが手にしたのは香木を彫刻した小さな球状の飾りのついた髪飾りだ。複雑な透かし彫りがされていて、とても良い香りがする。紅い糸を束ねた飾りもよいアクセントになっていてお洒落な一品だ。

 

他にも紅耀石をあしらった蝶の形状をしたアクセサリーや、彫刻のなされた木で出来た扇子などが売られている。

 

 

「これはカルバード共和国から?」

 

「いえいえ、リベール王国に移り住んだ職人が作ったもんです。香木は東方から仕入れたもんですがね」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「おひとつどうです美人のお嬢さん方。お安くしておきますよ」

 

「どうしますエリッサ?」

 

「うーん、いいや別に」

 

「そんなぁ、お兄さん、そっちのお嬢さんにプレゼントしませんかね?」

 

「はは、遠慮しておくよ」

 

 

そうして露店を冷かしながら歩いていく。東方人街は独特の香り、独特の雰囲気。Xのいた世界の日本と中華を融合させた不思議な魅力にあふれていた。

 

そういえば八葉一刀流も東方を起源とした剣術だった。そんな事を刃物が並べられている店を見て思い至る。

 

 

「刀剣を見てみましょうか。良い品があればエリッサにプレゼントしますよ?」

 

「本当?」

 

「東方の刀か。僕も少し興味があるかな」

 

「ヨシュアお兄ちゃんは剣が好きなんですか?」

 

「ん、そうだね。少しだけ」

 

「少しとか言っていますが、エルガーさんの武器商会で剣を眺めてたり、ヨシュアも男の子なんですよ」

 

「そうなんですかー」

 

「いや、まあ、あはは」

 

 

ということで、東方人街の一角にある刀剣や包丁を扱う店を覗いてみる。少し薄暗い店内、中には色々な大きさや形の包丁や太刀が並べられている。

 

東方で使う包丁には刀のように波打った刃紋が浮かんでいて、切れ味が良さそうだ。とはいえ刀剣も包丁もそこそこの品が売っているが、業物というにはほど遠いようだ。

 

 

「お客さん、小さいのに剣士ですかい?」

 

「ええ」

 

「って、もしかしてアンタ、武術大会で優勝した…、エステル・ブライト博士じゃねえか!?」

 

「ああ、知っていましたか」

 

「いやあ、去年の大会は直に見ていましてねぇ。やっぱり剣聖殿の娘さんは違うわなぁと。うん、それならそこにあるナマクラなんて見せられねぇなぁ。ちょっと待っててくれや」

 

 

鉢巻をした店主の中年のおじさんは勝手にテンションをあげて店の奥に引っ込んでしまう。私は苦笑いして、それを見送った。ヨシュアは呆れた表情で私を見る。

 

 

「君は去年も大会に出てたのかい?」

 

「すごいのよエステルは。三年間、毎年優勝なんだから!」

 

「去年は私も見に行ったんですよ。お姉ちゃんってすごく強いんですよ!」

 

「まあ、強いのは知ってるけどね。でも、エステルぐらいになると相手になるのはほとんどいないんじゃないかな?」

 

「ん、シード中佐は強かったですよ。お父さんに剣の教えを受けていただけの事はあります」

 

「エステルに武器を斬られなかったヒトってそのシードってヒトを含めても5人もいないよね。私も出てみたいんだけど、エステルから一本とらないと出ちゃダメだって」

 

 

モルガン将軍、リシャール中佐、シード中佐、ユリア少尉。軍ではそのぐらいだろうか。カンパネルラは武器を持っていないし、彼とノバルティス博士の護衛で現れた女騎士とは戦うことはなかった。

 

エリッサはまだまだ未熟で、その剣を斬ろうと思えば斬れる。身体が回復したヨシュアなら本気を出しても斬れるかどうか分からない。

 

そういえば、去年の大会ではものすごく大きな剣を振り回していた赤毛の青年と戦ったのが印象的だった。パワフルで豪快な剣だったが、少し迷いというか、成りきれていない感じの、一歩届かない剣だった。

 

その大剣を斬った後、すごく悔しそうな顔をしていたのを覚えている。どうやら父に関係していたヒトらしいが、どういう関係のヒトなのだろうか。

 

 

「はは、エリッサが無理なら僕も無理かな」

 

「何言ってるんですか。ヨシュアならいいところまで行くと思いますけど?」

 

 

あの時の戦いでは私が圧勝したが、病み上がりで体力も完全じゃなかった彼でさえ、相当な動きをしていた。あの状態でもユリア少尉と互角だったかもしれない。

 

体力も回復して、怪我の影響もない今ならシード中佐やリシャール中佐を上回る可能性があると睨んでいた。闇に紛れた暗殺という土俵なら彼らですら手も足も出ないかもしれない。

 

そんな風に話していると、店の奥から店主のおじさんが一本の刀を取り出してきた。

 

 

「こいつでさぁ」

 

「古刀ですか。なるほど、500年前ぐらいの、中世の頃のものですね」

 

「分かりますか。さすがですねぇ」

 

「抜いても構いませんか?」

 

「どうぞどうぞ。未来の剣聖様に抜かれるんならコイツも本望でさぁ」

 

 

糸で縛っている封印を解く。手入れはかなりしっかりとなされているらしい。刀を抜き放つと、うっすらとした刃紋を持つ紅色の太刀が光を反射した。

 

どうやら鋼に添加物として僅かな紅耀石を含むようだ。剣の良し悪しは刀身を見て、一振りして、そして氣を通せばだいたい分かる。

 

そして一振り。重心のバランスもいい。飾り気は少ないが、見事な緋色の刀身はそれだけで映えた。氣の通りも悪くない。

 

内部構造から構造も頑丈で、少しばかり荒い扱いにも耐える実戦を意識した良い刀だ。父から受け継いだ《迅羽》ほどではないが、名刀と言える業物である。

 

 

「良い刀ですね。銘は?」

 

「《ホムスビ》と」

 

「長さも丁度いいですし…。ふむ、私が欲しくなってしまいました」

 

 

《迅羽》は刀身が60リジュと少しあって、今の私だと少し扱いにくい。これだと60リジュ弱で、私でも十分に居合が出来る長さだった。とはいえ、約束は約束。エリッサにプレゼントしてあげよう。

 

 

「気に入りました。いくらですか?」

 

「15,000ミラ頂ければ」

 

「安いですね。古刀なので30,000はいくと思ったのですが」

 

「いえいえ、これぐれぇの剣になると、俺としても相手を選んじまうんで」

 

「なるほど。頂きましょう。包んでください」

 

「毎度あり!」

 

 

ここはエリッサに渡すなんてちょっと言えない雰囲気だ。まあ、私が使うなんて言ってもいないのだし、まあいいか。

 

ヨシュアとシニさんがそんな私の内心を察しているのか笑いをこらえている。これでいいのだ。店主はまた良い古刀を手に入れると言って、ご贔屓にと見送ってくれた。少し心苦しい。

 

そうしてしばらく歩いて、振り返り、店から見えない場所まで来た時、私はエリッサに振り返って刀を手渡した。

 

 

「え? エステルが気に入ったんじゃないの?」

 

「はい。ですが、約束ですから。かなり良い剣ですよ。丈夫な造りですから、エリッサにも十分ついて来てくれると思います。ただ、ちょっと重いですかね」

 

「ううんっ、嬉しい! エステル大好き!!」

 

 

エリッサが抱き付いてくる。私は仕方がない子だなと思いながら彼女の頭を撫でた。

 

 

 

 

東方人街を歩いた後、今度は専門店が沢山入っている大型のショッピングモールに足を延ばした。

 

カルバード共和国やエレボニア帝国のブランドを扱う店も軒を連ねていて、華やかでお洒落な場所だ。吹き抜けの二階建てになっている大型の市で、規模ならば西ゼムリアでも類を見ないほどだという。

 

 

「バリアハート産の岩塩を使用した塩アイスクリームですか」

 

「甘さが引き立ってるね」

 

「意外とマッチするんだ」

 

「チョコ味も美味しいですよ」

 

「ティータ、鼻先にアイスクリームが付いてます」

 

「ふえっ?」

 

「ここですよここ」

 

 

私達はアイスクリームなどを食べながらウィンドウショッピング。

 

ティータの可愛い仕草を眺めながら、私たちはいくつもの店を覗き込んだりして、あれが似合うとか、ヨシュアには似合わないとか、カルバード共和国で流行っているというサングラスをかけたりして遊びまわる。

 

 

「見てごらんティータちゃん、大人の女の人はああいうの着けるんだよ」

 

「はぅ、すごくせくしーですね」

 

「女性用下着ですか。そろそろ私たちも付ける年頃ですよね」

 

「え、いや、早いんじゃないかな?」

 

「いえいえ、ヨシュア様それは違います。エステルお嬢様だって年頃の女の子、当然ブラジャーを着けてもおかしくないんです。それにお嬢様方にも少しづつ密やかな膨らみが…」

 

「そ、そういう話はいいから!」

 

「しかし下着を選ぶ上では男の子の意見も参考にしませんとね」

 

 

女性用下着の専門店の前でヨシュアをからかうシニさんに私も乗っかる。たぶん今、私はものすごく悪い顔をしているだろう。

 

でも仕方がないのです。だって、悪い事したい年頃なんですから。ヨシュアは顔を真っ赤にしている。楽しい。こういうので男の子をからかうの楽しい。

 

 

「見てごらんティータちゃん、ああいう男の人をムッツリスケベって言うんだよ」

 

「ほぇ?」

 

「エリッサ! 君は小さな子に何を教えているんだ!?」

 

「ヨシュア、見たいんですか?」

 

「見たくないよ!」

 

「ふふ、嘘はいけません。ヨシュアもそろそろ色気づいてもおかしくない年頃のはず」

 

「ふふふ、ヨシュア様。ここは素直になるのがよろしいかと。エステルお嬢様の艶姿を拝めるかもしれませんよ」

 

「くっ、ここには敵しかいないのか!?」

 

「女四人、男一人のハーレム集団の中に男の味方がいると? まさかそんな幻想抱いてませんよね?」

 

「神はいないのか!?」

 

「安心してください。神様も女性です」

 

「くっ、ここはいったん退くしか!」

 

「逃がしません♪」

 

 

シニさんがヨシュアを羽交い絞めにする。ここまでくるとエリッサも乗って来て、ティータは苦笑いしながら私たちに追随する。

 

彼に味方など最初からいなかったのだ。そうして彼は私たちの手で女性下着専門店へと連行されていくことになった。

 

 

「いぃぃやぁぁだぁぁぁぁ!!」

 

「観念しなさいよヨシュア。可愛い下着つけてあげるから」

 

「男の娘ですか。新しい世界が開けますね。わたし、気になります」

 

「すばらしいアイデアですエリッサお嬢様」

 

「えへへ、ヨシュアお兄ちゃん、ごめんね」

 

 

 

 

ヨシュアに少し大人な黒いショーツとかを目の前に突き付けたり、ピンクと淡いグリーンのブラジャーのどっちがいい? などの質問を繰り返して一通り苛めた後、私たちは大型デパートへと足を向けた。

 

こちらには高級ブランド店が集まっていて、エレボニア帝国の貴族たちが愛用している品なども販売されている。

 

 

「腕時計ですか。この分野だとZCFが一番だと思うのですがね」

 

「でもカルバード共和国のブランドもポップで可愛いかも」

 

「デザインはカルバード共和国の方が斬新だよね。リベール王国製とエレボニア帝国製のデザインは保守的かな」

 

「帝国のものは男性用が重厚で、女性用が華美ですねぇ。金とか宝石好きなのでしょうか」

 

「やっぱり貴族が多いからね。リベール王国のものは機能美というか、シンプルだね。軍人や猟兵なんかは壊れにくくて狂いにくいZCF製を愛用するみたいだけど」

 

「ん、デザインから言えばカルバード共和国のブランドかなぁ。帝国のは好きじゃないよ」

 

「わ、私はやっぱりZCFがイチバンだと思いますっ」

 

「シニさんはどれが好みですか?」

 

「私のような仕事をする立場から言わせてもらえばZCF製が良いですね。少し高級ですが、それに見合う価値はありますし。でも、ふふ、デザインは確かにカルバード共和国のものが可愛らしいので、好いた方と会う時はこちらにしたいと思うかもしれません」

 

「はう、大人な意見です」

 

「ふふ、私にはまだ縁遠い話ですが、やっぱり共和国製の方が女の子っぽいですね」

 

 

デザインはやはり重要な要素の一つと言えるだろう。機能や性能が限界に達すれば、少しばかりの性能の差よりもデザインの勝負になる可能性が高い。

 

そういう意味でこの分野の研究はリベール王国の産業にとっても重要な価値を持つ可能性がある。ZCFでも少し意見を出しておこうか。工科大学で工業デザイン分野の学部や学科を設立するのも良いかもしれない。

 

そうして私たちは衣服や宝石、化粧品などを見て歩く。

 

化粧品や香水などは大衆消費文化が発達したカルバード共和国の物が安価で多種多様な製品があり、貴族相手の商売をするエレボニア帝国の物は高価で品質の良いものが多い。

 

リベール王国製は種類が少ないものの、王室御用達のブランドがあり、純粋な品質では帝国にも負けてはいないが価格が高くて輸入品に押され気味だ。

 

ただし化粧品の類で一番人気なのはレミフェリア公国製だったりする。

 

医療先進国というのは伊達ではなく、肌に触れさせる製品においてレミフェリア公国製のスキンケア商品の品質は他の追随を許さない領域にあるらしい。

 

私やエリッサが使っているのもレミフェリア公国製だったりする。

 

手に取ったり、試供品の香りを楽しんだり、私たちはデパートでの買い物を楽しむ。その途中で書店を見つけて、目に入った雑誌を手に取った。

 

 

「…表紙飾ってますね。シェラさんも教えてくれたらいいのに」

 

「あ、シェラザードさんだ。なんで雑誌に?」

 

「へぇ、期待の新人正遊撃士シェラザードか。ちょっとした芸能人扱いだよね」

 

「最近はこういうゴシップというか、大衆文化が人気みたいですから。美人の遊撃士は話題になりやすいですし」

 

「き、綺麗なお姉さんですね」

 

 

雑誌の表紙を水着姿のシェラさんのグラビア写真が飾っていて、数ページに渡りシェラさんのグラビア写真が載せられていた。

 

褐色美人でスタイルの良いシェラさんだと、こういうグラビア写真は良く映える。ティータなどは興味津々で写真に見入っていた。気にしなくても大きくなるから心配しなくてもいいのに。

 

そしてふと自らを省みる。

 

 

「おっきくなりますかね…」

 

「エステルが不安なら、私が揉んで…、あ痛っ!?」

 

「どさくさに紛れて胸を揉もうとしないでください」

 

 

私の背後から手を伸ばしてきたエリッサを叩き落とす。なんだろう、もう漫才の領域に入ってきたような気がする。

 

 

「ふむ、買って帰りましょう。そしてシェラさんをからかいましょう」

 

「いいね!」

 

「あはは、ほどほどにね」

 

「ヨシュア様、個人用にお一つ控えをお持ちいたしましょうか?」

 

「いらないから」

 

「んんー、流石シニさん。出来るメイドは気が利きますね」

 

「余計な気をまわされてるだけだよ」

 

「ヨシュアも健全な男の子ですからね。そういうのには私、理解ある方ですので。ベッドのマットレスの裏に何かを隠していても、決して私は探したりしないので」

 

「見てごらんティータちゃん、ああいう男の人をムッツリスケベって言うんだよ」

 

「ほぇ?」

 

「君たちね…」

 

 

そんな風にヨシュアをからかいながらも、和やかな時間が過ぎていく。そうして再び街に出て、今度は人通りが多いメインストリートのトラット大通りなどを歩いてみる。

 

広い石畳の歩道とちょっとお洒落な街灯と手入れされた街路樹。小奇麗なガラス張りの店舗が軒を連ね、大きな目抜き通りはそれだけで迫力がある。

 

この辺りは人通りも多いが、最近では導力自動車の走行も多い。リベール発祥というか、私がアイデアを出した導力バイクも普及し始めている。

 

特に山道での走破性が高く、手ごろな価格の導力バイクは遊撃士に人気があるらしい。軍でも偵察用に納入されていると聞いている。

 

 

「ん?」

 

 

歩行者用の信号はもうすぐ赤に変わる。それなのにキョロキョロと周りを見回して注意を散漫にしている一人の女の子が信号を渡ろうとしていた。

 

そうしてフラリと車道に少女が出てしまい、車道の信号は青に変わり、歩行者用の信号はもう赤だ。大きなトラックが彼女に向けて突き進む。少女はそれに気付かない。

 

私は瞬時に足に力を入れて、一気に跳びこんだ。

 

 

「エステル!?」

 

「ちょっ、お嬢様!?」

 

 

速度計算は間違ってはいない。私の走る速度、彼女を抱えて離脱する速度。大通りを行き交おうとする車の速度。それらを全て込みで考えて、最適なルートを直感のごとく算出し、一気に駆け抜けて少女を抱き上げ、中央分離帯に足を付けた。

 

腕の中の少女は目を白黒として状況が理解できていない。

 

抱きかかえているのは銀色の髪の、ペリドットを思わせる黄色みがかった緑の瞳の少女。ちょうど私と同い年ぐらいで、身長は私が少し高いが、身体の女性特有の成長は私よりも少し先をいっている。

 

上品で綺麗な顔をしていて、服もとても良い生地を使った清楚なすみれ色のワンピース。

 

 

「大丈夫ですか? いきなり飛び出したら危ないですよ」

 

「え? あ、車が…。あのっ、ありがとうございますっ」

 

「いえ、信号が青になるまで動けませんね。降ろしてもいいですか?」

 

「っ!! お、お願いします!」

 

 

そうして照れて頬を紅くした彼女を隣に降ろす。車が行き交う大通りの中央分離帯。少し冷や冷やするが、まあ余程運が悪くない限り安全だろう。

 

しかし、事故にならなくて本当によかった。目の前で可愛らしい女の子が交通事故に巻き込まれるなんて見たくはない。

 

 

「恥ずかしがらないでください。うつむいていたら美人さんが台無しですよ」

 

「び、美人だなんて…。あの、本当にありがとうございました」

 

「いいですよもう。ところで、ボーっとしていたようですが、何か困りごとでも?」

 

「えっと、その、ちょっとジョアンナと、メイドとはぐれてしまいまして」

 

「なるほど。もしかして、ツァイスに住んではいないのですか?」

 

 

メイドとはぐれたぐらいで、これぐらい礼儀正しくてしっかりしている女の子が動揺して道に飛び出すとは思えない。もしかしたら観光客なのかもしれなかった。

 

慣れない街で一人はぐれた。まだローティーンの少女には心細い状況かもしれない。

 

 

「はい。クロスベル自治州の出身なんです」

 

「クロスベルですか。IBCで有名な」

 

「あ、そうです。良く知っておられますね」

 

「有名な銀行ですから。良ければメイドさんと再会するまでお付き合いしましょうか?」

 

「え、でも、そんな、悪いです」

 

「ふふ、また危ない目にあってしまうかもと思うと私も安心できませんから」

 

「あっ…、もう、意地悪ですね」

 

 

少女は少しだけはにかむ。笑うだけの余裕は出来たようだ。しかし、見事な銀色の長い髪だ。良く手入れが行き届いていて、上流階級のお嬢様という印象を受ける。

 

まあ、メイドを連れて歩いているのだから上流階級には違いないのだろうが。お嬢様というのもその通りなのだろう。

 

 

「エステル・ブライトです。少しの間ですが、よろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ。私はエリィ・マクダエルです。…って、あれ? エステル・ブライト…、どこかで聞いたような気が…」

 

 

歩行者用の信号が青になる。するとヨシュアたちが駆け寄ってきた。三人はすごく怒っていて、無茶をするなとか叱られてしまった。

 

うん、でもまあ後悔はしていない。不可能なことはやっていないのだから。謝っても反省が足りないと釘を刺されてしまった。解せぬ。

 

その後、ヨシュアたちも自己紹介をして、メイドのジョアンナさん探しのミッションが開始された。

 

赤紫色の髪をしたメイド服の女性らしく、まあ、エリィの行動範囲を探し回っているはずであり、メイド服で歩く女性も数は多くないので、発見はそこまで難しくないと思われる。

 

 

「じゃあ、30分後、このトラットスクエアに集まりましょう。私とシニさんはエリィと一緒に回りますので、エリッサとティータは二人で、そしてヨシュアは別働隊で動いて下さい」

 

「分かった」

 

「まあ、しょうがないかなー」

 

「がんばりますっ」

 

 

探し回る区域を決めて、時間を区切る。

 

私単独というのは流石にシニさんが許してくれなかったので、エリィとシニさんと三人の組に、まだ9歳にもなっていないティータを一人には出来ないのでエリッサとの組に、ヨシュアは一人でなんとでもなる。

 

私の組はエリィとメイドさんが回った場所を再確認するために戻って聞き込みを行う。ヨシュアは少し治安の悪い南、エリッサとティータは治安の良い北をメインに探してもらう。

 

ちなみに南の治安が少し悪いのは、夜の街なのでそういうお店が多いからだ。

 

 

「さて、ではまずはこのデパートですね」

 

 

ツァイス最大の高級ブランド店が集まるデパート、エーデル百貨店ツァイス店だ。

 

7階建ての建物の中にドレスやスーツなどのフォーマルな衣装から、アウトドア用のブランド品までが揃っていて、先ほど私たちが時計を見ていたのもこのデパートだった。

 

 

「受付でジョアンナさんが来ていないか確認しましょう」

 

「はい」

 

 

一階のサービスカウンターには上品なワンピース系の黄色い制服姿の女性店員が店の案内をしている。迷子などの情報も取り扱っているはずなので、メイドさんが確認に訪れている可能性は高そうだった。

 

 

「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

 

「赤紫色の髪をしたメイド服のジョアンナさんという女性が、こちらのエリィを探しに尋ねて来ませんでしたか?」

 

「…ああっ、はい、20分ほど前に一度来られました。ええ、銀色の髪のちょうどこちらのようなお嬢さんをお探しになっていて」

 

「今はどこに?」

 

「申し訳ございませんが、今どこにおられるかまでは分かりかねます。ただ、東方人街に向かってみるとだけ」

 

「そうですか。ありがとうございました」

 

 

そうして私たちは東方人街に聞き込みに行く。

 

東方人街の表は観光客やツァイス市民が沢山いて表向きは治安も良いが、スリなどの犯罪も少なくなく、入り組んだ裏路地に入ってしまうと胡乱気な雰囲気へと変わってしまう。

 

禁止薬物や盗品の取引や売春など、ちょっとした良くない噂だってあるらしい。

 

 

「東方人街には来たのですか?」

 

「ええ、ここでお昼を頂いたの」

 

「ああ、私もです。となると、一度そのお店に行ってみた方がいいですね」

 

「でも、ツァイスは大きな都市ね。クロスベルの東方人街もここまで大きくはなかったし」

 

「東方人街自体の歴史はクロスベルの方が長いんですけどね。純粋な産業と人口の大きさの差でしょう」

 

「…それだけじゃないわ。クロスベルでは工業のような産業が興せないから、どうしてもサービス業だけに偏ってしまうのよ」

 

「エリィは経済に興味があるのですか?」

 

「ううん、どちらかというと政治かしら。私はいつか政治家になりたいの」

 

「クロスベルで政治家として夢を見るのは茨の道に見えてしまいます」

 

「ふふ、エステルさんだって政治に詳しいじゃないですか」

 

 

クロスベル自治州はエレボニア帝国とカルバード共和国が互いに自国領であることを主張する係争地だ。二大国の衝突の最前線と言っても良い。

 

64年前、七耀歴1134年に両国の妥協によって自治州として成立したものの、自治権など無いにも等しく、宗主国である二大国の意向に常に左右される脆弱な政治基盤の上に成り立っている。

 

本来自治州の多くは七耀教会の本山であるアルテリア法国を宗主国として仰ぐことで自治を保っているが、クロスベルの宗主国は対立しあうエレボニア帝国とカルバード共和国だ。

 

自治州議会の議員たちも二大国の意向を代弁するだけの存在でしかなく、クロスベル自治州のために動く政治家などヘンリー・マクダエル市長ぐらいだろう。

 

ん?

 

 

「詳しくなりたかったわけじゃないんですけどね。どうしてエリィは政治家に? 難しい場所なのは分かっているようですが」

 

「ええ、でも、だからこそかしら。お父様の理想が間違っていたとは思いたくないの」

 

「なるほど。エリィのお父さんは政治家だったんですね」

 

「失脚して、失望して、カルバード共和国に去ってしまったけれど」

 

「お祖父さんは頑張っているみたいですけどね」

 

「…バレちゃったみたいね」

 

「ヘンリー・マクダエル市長の孫娘さんでしたか。政治に関わってしまうのも無理はないですね」

 

 

クロスベルを良くするために理想に燃えた彼女の父親は、共和国派、帝国派という両大国の利益の代弁者である大半の議員たちによって潰されてしまった。

 

本当なら政治家という因果な商売に忌避感を持ってもおかしくない環境だが、彼女はそういう意味では不屈というか、意外に反骨心の強い性格なのかもしれない。

 

 

「エステルさんの噂もたくさん聞いてるわ。航空機の生みの親。天才、神童。リベール王国を勝利に導いた、女神に祝福された娘」

 

「恥ずかしい二つ名です」

 

「リベール王国の躍進の原動力だっていう噂も聞いているけれど、本当なの?」

 

「さあ? 大人たちの勝手な想像じゃないですかね。ヒトというものは何かしら理由を探してしまうものなので」

 

 

私の政治活動というか、リベール王国重工業化のための五か年計画の発案者が私であることは伏せられていた。

 

これは安全保障上の理由という側面が強く、というか私にこれ以上の注目を集めさせないため、そしてこれ以上名声を高めさせたくないという大人たちの都合もあった。

 

まあ、知っているヒトは知っているし、私自身はあまり多くの責任なんて負いたくないし、名誉とか名声なんて既に最高位の勲章を受勲している時点で必要も無いので、正直どうでもいいのだけれど。

 

ただし、人の口に戸は立てられぬと言うように、王国のあまり質の良くない有力者から私についての情報が漏れているのも確かだ。

 

カルバード共和国やエレボニア帝国の工作員に買収された王国議員や軍人も少なくない。彼らの私への悪口や不満の表明そのものが、私という存在の情報を他国に漏らす情報源となっているらしい。

 

情報部は神経を尖らせているが、悪口だけでは立件できない。そういえば、王国上層部の腐敗も酷くなってきているらしい。

 

ここのところ、王国議員や軍人、一部の高級官僚などの収賄や横領、脱税が酷く目立ってきているようで、企業や小売店の活動に対して許可や優遇などを餌に賄賂を要求するなどタガが緩んでいるとのこと。

 

リシャール中佐などは老害と蔑んでいた。

 

一応、ZCFや軍の技術情報については完全に情報部がガードしており、彼ら『老害』には触れる事が出来ないようにはなっている。

 

特許の管理なども情報部が牛耳っているようで、重要な個所については女王派というか、帝国で言う革新派が握っている。

 

しかし、『老害』たちは自分の権益を脅かすような企業や個人に対して圧力をかけるなどの行為は常に行っていて、その度に賄賂を要求している。

 

情報を外国の大使相手に漏らしてしまうなど失態も多い。まあ、目に余る場合は見せしめとして情報部を中心として検挙も行われる。が、そういった検挙が行われるたびに裏で政治的取引が行われる。

 

そうして女王陛下、王立政治経済研究所のようなシンクタンクが発案した政策や予算案を議会や軍が承認する代わりに、不正を行った議員や軍人の釈放という事が繰り返されている。

 

善良な議員や軍人も多いのだけれど、100年以上の歴史を持つリベール王国議会には厄介な派閥が形成されていたり、歴史だけは古い元貴族の古狸のような魑魅魍魎が跋扈しているようで、一筋縄でいかないのが難しい所だ。

 

王権の強さと情報部への恐怖が酷い売国行為を抑制していて、一線は守っているようだが。

 

 

「我が国はアリシア女王陛下の政治センスが優れているのと、何よりも他国に従わなくて済む力がありますからね。そういう意味ではクロスベルよりもはるかに恵まれています」

 

「…クロスベルは難しいわ。だから色々な国を見て、勉強したいと思っているの。特にリベール王国は6年前までクロスベルに似た環境だったし」

 

「独立国家とそうじゃないのでは大きな差がありますが。まあ、まずは議長と市長の意見を一致させる必要がありますね」

 

「そんなことまで…、詳しいのね」

 

「詳しくなりたくてなったわけじゃないんですがね」

 

 

クロスベルの権力のトップには二人の人物が座っている。一人はヘンリー・マクダエル市長、もう一人がハルトマン議長だ。

 

まともな政治家であるマクダエル市長であるが、彼の良識的な改革案もエレボニア帝国の権益を代弁するハルトマン議長に何度も阻まれている。

 

最高権力者が二人であることで、クロスベルの改革は遅々として進まない。

 

船頭多くして船山に上ると言うが、リーダーは普通二人もいらないのだ。にも拘らず、クロスベルにはリーダーが二人いて、何をするにも二人の意見を擦り合わさなければならない。

 

そういった状況で政治がスムーズに進むわけはなく、特に二人が互いに異なる政治派閥に属しているなら混乱は必至とも言っていい。

 

 

「情報を制することですよ。民主政治は妥協の産物ですから、いかにして根回しを成功させて、多数派を握るかにかかっていますし。彼らの飼い主である帝国や共和国の有力者たちが何を考えているのかを正確に把握して、パワーバランスを利用したり、利益で釣ったり、弱みにつけこんだり、妥協させたりして準備をしないと。まあ、それでもクロスベルの政治基盤だとあっという間にひっくり返されてしまうんですが」

 

「情報ね…、この国の軍情報部とか、帝国の情報局みたいなものかしら?」

 

「情報は大事ですよ。特に共和国議員は脇が甘い所がありますから。まあ狸もいっぱい潜んでいるんですけどね。でも、彼らだって一枚岩じゃないんですよね。帝国は革新派と貴族派の対立が激化していますし、共和国は移民政策で議会が真っ二つです。そのあたりにつけこんでいくと、ある程度道が見えるかもしれません」

 

 

そうして東方人街のちょっとした高級レストランで聞き込みを行う。どうやらまた入れ違いになったようだ。

 

とはいえ、この近くにまだいそうなので、私たちは露店の人たちに聞き込みをしていく。メイドさんがオロオロとしている姿は目立っていたらしく、その行先は絞られていく。

 

 

「地下鉄に乗った!? なんでそんな事に…」

 

「いやあ、何やらあのメイドさん、ガラの悪い連中に目をつけられたみたいでよ。ありゃあ、多分、サウスヴォルフの連中だぜ」

 

「…その後どうなったのです?」

 

「ああ、何やら話し込んだ後、連中にのこのこついていったな」

 

「あまり良い状態ではないですね」

 

「サウスヴォルフ? エステルさん、それってどこ?」

 

「トラット平原には6つの区画がありますが、サウスヴォルフはどの区画にも属さない地域なんです。簡単に言うとスラム街ですね。密入国者たちが勝手に占拠した場所で、急斜面に沢山のバラックが立てられている無法地帯です」

 

 

密入国した労働者の多くは戸籍が与えられておらず、情報部の通達と監視により主要産業に就職することは出来ない。

 

移民局の局員による管理もあり、保証人がおらず、身分証明が出来ないため通常のアパートなどの住居を得る事が出来ない。そうして彼らは勝手に各地に粗末な小屋を建てて住み始めたのだ。

 

とはいえ、こういったモノは都市開発が進むとともに土地収用によって排除されていた。移民局も逮捕など対応をしていたが、数が多くて対応しきれない。

 

そして流石に暴力に訴えて排除することは人道上難しい部分がある。そうして開発から取り残されたヴォルフ要塞の南部の丘陵地帯が空白として彼らの住処になった。

 

不法移民は法で保護されないが故に、極めて安い賃金で労働させる事が出来た。発覚しない悪事は犯罪ではないのだ。

 

故に、一部の工場や建設会社などは彼らを日雇いで使うことでコストの圧縮を図り、経営者の一部が議員と結託してサウスヴォルフ一掃のための強制執行を頑なに拒んだ。

 

結果としてこの地域に数万~十数万という人口規模を持つ巨大スラム街が形成されてしまった。

 

ヴォルフ要塞の軍による定期的な見回りがなされて周辺行政地区での犯罪防止はなされているものの、サウスヴォルフの迷路のようなスラム街に装甲車は侵入することが出来ず、結果として有刺鉄線やフェンスで覆いこれ以上の拡大を防ぐという次善策で対応しているのが現状だという。

 

 

「急激に拡大したツァイスという都市、リベール王国の闇です。この地域の遊撃士が請け負うトラブルの多くもこの地域に関係するらしいですね」

 

「そんな場所があるのね…。リベールは綺麗な国だと思っていたけれど」

 

「どこにも闇はあります。…そうですね、ここは遊撃士を頼りましょうか」

 

「遊撃士…」

 

 

何やら考えるエリィをよそに、私は後ろに目を向けて、そしてどこにでもいそうな私服の男性に近づき、挨拶をする。

 

 

「ご苦労様です。状況は理解していただけていますか?」

 

「博士、あまりみだりに我々に話しかけないでください。それで、何をすれば?」

 

「トラットスクエアで落ち合う予定のヨシュアとエリッサたちに私たちの事を伝えてください。私はこれからセントラルトラットの遊撃士協会に行かなければなりませんので」

 

「我々が動きましょうか?」

 

「いえ、あまり事を荒立てるのもあれなんで。しかし、念のためヴォルフ要塞から飛行艇を一隻飛ばしてもらってください」

 

 

そう言い残すと、私は別れを告げてエリィたちのいる場所に戻る。

 

 

「えっと、誰なのあの人?」

 

「護衛です。まあ、こういう身の上なので」

 

「はぁ」

 

 

少し気の抜けたような表情。まあ、普通の人間からすれば護衛がこんな形でついているというのは現実離れしているのかもしれない。

 

シニさんは私に付き従うタイプの護衛でメイドでもあるが、彼らは情報部から派遣されたセキュリティーポリスという奴だ。

 

視野を広く持って私に近づく怪しい人間の動向や、狙撃手の存在がいないかを確認したりする。トラブルが起きれば即座に私に近寄って、シニさんの支援を行なったり、文字通りの肉の壁となったりする。

 

純粋な護衛任務なら護衛対象を取り囲む形で行うのが理想的だが、プライベートでそれをされると少しストレスがたまる。

 

ということで、普段は私の行動の邪魔にならないように市民に紛れて活動を行うのが通例になっていた。

 

一人一人の練度は高く戦闘能力も対テロ知識も豊富であるので、下手な遊撃士よりも高い戦力になるのだが、いかんせん流石に《結社》の連中といった規格外相手には分が悪い。

 

それでも、数の力というのは役に立つ。目の数が違えば、それだけ危険を察知する確率も上がり、それなりの実力の人間が集まれば、達人でもそれなりの時間をかけないと排除できない。

 

中級の猟兵ぐらいの実力はあるようなので、一撃で倒されるなんていう失態は滅多に起さない。

 

 

「そういうことなので、ヨシュアたちには連絡してもらうことにしました。私たちは遊撃士協会に行きましょう」

 

 

そうして私たちはツァイスに二つある遊撃士協会の支部の一つ、セントラルトラット支部へと地下鉄に乗って向かうことにした。

 

 

 





巨乳婦警さんの若かりし頃です。リベール王国にも留学していたらしいので、登場させてみました。今回はナンパしてない…よね?

21話でした。

リベール王国の発展の光と影みたいな。急速な成長には歪みが生まれるのが当然と言うか、まあ、スラム街が成立しない大都市など全世界を見渡しても存在しないわけで。昔は東京にもありましたし。

一度できてしまったスラム街を無くすには安定した職場、職業訓練と新しい住居を用意する必要があります。

しかし、数が膨大になると、なんでこんな奴らのために莫大な予算投入しなきゃいけないのか、なんていう意見も出るわけで。

かといって、強制執行で排除しようとしたら人権団体とかそれらに影響された議員、この世界では七耀教会の抵抗もあってなかなか上手くいかないとか。

強制執行したところで、人間はいなくならないので管理がむしろ大変になるとか。カルバード共和国に強制送還しようとしても知らんふりされるとか。対策側も収賄とかで買収されて動かないとか。

でも放っておいたら治安は悪化するし、衛生状態も良くないから伝染病の温床になる可能性もある。他国の工作員の隠れ家とか、マフィアが蔓延ったりとか。

それにスラム街の人間は日雇い労働者として重用されていたり、必ずしも犯罪者と同一視できない部分が問題を厄介にするとか。



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