魔法少女リリカルなのは スターダストメモリー 作:秘密だ
旅行先から帰る為に空港に来た時の事だ。
其処は、一言で言い表すなら【戦場】たろうか?
手榴弾やロケットランチャー、時限爆弾などの爆発音やバラバラッと銃撃音。
硝煙の臭いが辺りに立ち込めて、怒号や悲鳴が空港中に響き渡る。
正しく小さな戦場と化した空港のロビーで、少女が血に塗れて倒れ臥す男に、縋り付いて泣いていた。
少女はこの国の子なのだろうか? 綺麗な金髪に碧い瞳に白い肌……イギリスで一般的に見られる容貌をした可愛らしい娘だ。
傍にもう1人の少女。
金髪をポニーテールにしている少女もまた、泣いている。
死んだ男に縋り、パパと呼んでいる事から親子なのだろう。
武装をしている事から、男も裏に纏わる人間。
しかし、娘にとっては関係無い。
何故泣いているのか?
怖いから? 痛いから?
それとも、倒れた男を悼んで泣いているのだろうか?
どちらにしても、少女達は戦場のど真ん中で泣いていたのだ。
誰かが言っていた。
この世に偶然は無く、全ては定まった必然であると。
ならこの出逢いもまた必然であり、在るべき歴史の一つと云う事なのだろう。
少女を護る黒服と、少女を泣かせる黒服……
泣いている少女と、少女を泣かせる連中。
どちらにも言い分があるのだろうが、少女を狙う銃弾に言い訳がある筈も無い。
ふと少女が顔を上げると、誤射かそれとも狙ってかはともかく、銃弾が迫る。
白い障壁が銃弾から少女の身を護っていた。
白い障壁と少女の間には、青年が右腕を突き出して立っている。まるで、障壁を張っているのが自分だと云わんばかりに。
否、障壁を張っているのは間違いなく青年だ。
青年は忌々しそうに口を開くと……
『莫迦野郎共が……っ! こんな小さな娘を泣かせて何をドンパチしてる?』
そう宣った。
もちろん、英語で……
小さな……まだほんの12歳と10歳の少女が見たのは鮮烈なる“白”だった。
白い障壁で銃弾を防ぐ白い髪の毛の青年。
『何だ、貴様は?』
突然、武器を取り出した青年に小銃を向けてくる黒服Aは、叫びながらトリガーを引いた。
青年は逆刃刀を回転させて弾を払い落とすと、ダッシュで黒服Aに近付いて………………
ガインッ!
殴った。
『訊いたんなら、こっちがせめて名乗ってから撃てよな!』
……………………
『あれ?』
勢いよく殴り過ぎて、黒服Aは完全に気絶していた。
辺りで見ていた敵味方含めた全員、一様に思う。
『(お前が言うな!)』
取り敢えず、失敗はスルーして戦闘を開始。
少女と倒れた男には、障壁を張っておいたから多少の攻撃ならびくともしない。
青年は安心して刃を振るう事が出来た。
とはいえ、倒れていた男の出血はかなりのもので、長々と放置しておけば確実に息絶える。
銃弾を躱しながら、戦闘のプランを練り上げていく。
『女の子達にこれ以上の血は見せたくないから、殺さないでおいてやる!』
英語でそう叫びながら、次々と銃や手榴弾で攻撃してくる黒服を倒していった。
青年が加わった事で、少女を護るSP側が俄然有利になっていた。
そして、完全に圧し切る事に成功。
後に残るのは、転がる黒服達。
青年は直ぐに少女の所へと駆け付ける。
結界を展開して、一時的に周りの目を逸らしておく。
青年は少女に優しく、丁寧に話し掛けた。
『大丈夫か?』
『私は無いけど……ヒック……士郎が、士郎が……』
泣きながら答える少女。
青年は男の容態を診るが、どうやら爆発を身体で受けたらしく、酷い有様だ。
ショック症状による意識のシャットアウト、裂傷による出血。
これ以上の放置は、決して有ってはならないくらいのダメージだった。
『士郎、私の事庇って……それで、それで!」
ちぐはぐだけど要約すれば“爆発から少女を庇って死にかけている”らしい。
成る程、背中にダメージが多いのは少女を庇った為に負ったからだ。
「(駄目だ、これはもう……助からないな)」
男は、時を置かずに息絶える筈だ。
そうなれば、少女のシコリとなって残るだろう。
ソレはトラウマになって、ずっと後に引く。
外傷とは違い、普通にしていれば周りも気付かない。
その癖、ジクジクと癒えない傷を抱え続ける。
青年は被りを振ると、少女に話し掛けた。
『彼を救けたいか?』
涙に濡れた顔を上げると、コクリと頷く。
『士郎を救けて、お願い!』
『名前は?』
『フィアッセ……フィアッセ・クリステラ!』
『判った……リザレクション』
淡い光が、周りを輝き出した。
『これで大丈夫だ』
『あ……! 士郎、良かった……本当に……良かったよ!』
今度は完全な嬉し涙で碧い瞳を潤ませる。
『お願い、パパを……パパを救けて!』
『わかった』
そう言って、何処からか、武器を取り出した。
『それは?』
『天生牙と言うんだ』
そう答えて、天生牙を振るった。
『これで大丈夫だ』
聞けば、爆発物を持ち込んだのは彼女らしい。
熊のぬいぐるみに偽装されていた為、彼女も爆弾だと思わなかったのだ。
『(悪辣な……っ!)』
聡一は内心怒りが込み上げてくるのを抑える。
涙ぐむ少女を撫でて、少しでも心の痛みを和らげてやれればと思う。
それから少し時間が経つ。
漸く落ち着いた少女に再び話し掛けた。
『そういえば君の名前は?』
『私……エリス。エリス・マクガーレン』
エリスはそう名乗った。
後はSPに任せれば何とかなるだろう……青年はそう考え立ち上がり、去ろうとするとフィアッセが『あ……』小さく声を上げる。
青年が振り向くと、淋しそうにしながら青年を見つめてきていた。
『ん? どうした、フィアッセ……』
『あ、あの……もう行っちゃうの?』
淋しさ、心細さ……
フィアッセの心は、不安感でいっぱいなのだろう。
現状で一番心許せる相手、それは倒れている男。
次は……恐らく自分と男を救けてくれた青年だろう。
男が倒れている今、青年が一番心許せる相手だ。
仕方がない……乗り掛かった舟だと、青年は付き添ってやる事にした。
男が救急車に乗せられて、フィアッセも一緒に乗って行くので青年も付き添う。
救急車の中で、一つ忘れていた事に気が付いて……
『フィアッセ、それと……エリス。まだ名乗ってなかったな?』
『う、うん……!』
フィアッセとエリスに話し掛ける。
『僕の名前は……聡一。
聡一・綾瀬。宜しく、フィアッセ・クリステラ。
エリス・マクガーレン』
手を差し出して、フィアッセとエリスの小さな手を握ると、自分の名前を名乗るのだった。
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