それとここからは少し駆け足で話が進んで行きます。
一年が過ぎ、私は少尉となってクザンさんのところに来ました。
まあ、来てからの八割近くはクザンさんとの鬼ごっこ(鬼役限定)をやってる訳なんですが。
そんなある日、外洋遠征に行くことになりました。
当日発表で。
クザンさんは「あ、忘れてたけどお前ら、今日から遠征な。」とそれだけ言って自分は既に整理を終わらせた荷物を持って船に乗りました。
他の方はこれが当たり前なのか、ある程度、常日頃から荷物の整理をしていたようで、私が一番最後まで時間がかかり、皆さんを待たせてしまいました。
取り敢えずクザンさんの夕食は嫌がらせで辛いものばかりにしてやりましょう。
確か辛いもの苦手とか言ってた筈ですし。
そんな航海中、私はある事に気がつきました。
「クザンさん?」
「んん? どうしたオキタちゃん。」
「オキタちゃんは止めてください。 それより、、進路、わざと海賊が通らないような所を縫って通ってないですか?」
「気づいた?」
「マリンフォードを出てから数週間ですよ。 嫌でも気付きます。 まったく、サボりたいからってこんな事までしなくても。」
「そいつぁ、違ぇよ。 海賊が通らないような航路を取る海賊は厄介なのが多いんだぜ?」
「そうなんですか?」
「そうそう。 俺ぁこれでも海兵よ? ちょっとは信用してくれても良いんじゃないの?」
「普段の自分の行動をしっかりと思い出してから言って下さい。」
「ちょっとは信用してくれても良いんじゃないの?」
「・・・・・ハァ」
真面目なのか不真面目なのか。
気分屋、なんですかね?
違う気がします。
その日の夜。
「クザン大将! 前方に船です!」
乗組員の一人が立ったままアイマスクを付けて寝ているクザンさんに話しかけます。
「んん? 旗は? 海賊旗だったりする?」
「海賊旗は出ていません。 しかし只の商船や客船にしては装備が整いすぎています。」
「そうか。 ならぁ、、、、接近。 一応戦闘配置に付かせとけ。 静かにな。 電伝虫がかかって来ても出んなよ?」
「了解です。」
プルプルプルプルプル、プルプルプルプルプル、
「言った傍からかかって来ましたね。」
「出んなよ? 後ろめたい事がなけりゃあ、このまま近付いても何もして来ないハズだからな。」
プルプルプルプ、プツッ。
電伝虫が切れて数秒後。
ドォン! ドンドンドォン!!
「お、撃ってきた。 んじゃ、迎撃よろ。」
「ハァ、だと思いました。」
その場で跳び上がり、横薙に刀を振るって斬撃を飛ばし、飛んできた砲弾を切ります。
「月歩使える奴はどんどん行けー。 まずは甲板制圧な。 あと、火薬室の場所、判明させておけよー。」
クザンさんの気の抜けるような命令で多くの海兵達が動き出します。
私も月歩で空を跳び、敵船へと乗り込みます。
「まずは、甲板制圧ですか。 ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう。」
ものの数分で甲板上は制圧し終わり、捉えた人達は甲板の真ん中に縛って纏められました。
「火薬室の場所、確認しました! 船尾部です!」
「分かった。 クザン大将に連絡を。 火薬室の場所を報告しろ。」
「了解!」
一人の海兵がクザンさんに火薬庫の位置を報告し、それと同時に私達は船内に入る扉の前に集合しました。
「これより、船内の制圧を開始する。 クザン大将が火薬室を含む船尾全体を凍らせたら突入。 少なくともツーマンセルで行動しろ。 無理をせず、人命を優先。 以上だ。」
数瞬後、一気に気温が下がり、船諸共海まで凍りました。
「突入!!」
私たちは船の中になだれ込み、徐々に船内を制圧していきました。
凍らせたのが船尾だけでなく、船の側面も凍らせていたので、そのお陰で発射するはずだった弾が氷の壁に阻まれ、船内で爆発、周囲にいた人達を巻き込んだお陰で、相手の戦力は大幅にダウン。
気付けば誰一人大きな怪我をすることも無く、制圧を終えていました。
その後の調査によって、この船が密輸船だと判明。
大量の麻薬、毒薬、武器などが押収され、さらに顧客リストも見つかり、芋づる式に多くの裏組織がお縄につきました。