海風に舞う桜   作:座右の銘は天衣無縫

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第一話

・・・・?

 

知らない天井ですね。

 

サラリと言ってみたかった言葉を口に出さずに頭の中で言う。

 

えっと、アレから四日目くらいで漸く海軍が来て、助けて貰って、、、、貰って、、どうしたんだっけ?

 

そこから記憶がないです。

 

ベッドで寝てた私はそこまで大きくない部屋を見渡す。

腕には点滴の管が刺されています。

 

あ、『誠』の羽織ありますね。

 

良かった。 コレが無くては色々と締まらない気がするのです。

 

桜セイバーもキチンと直感持ってるので間違いではない、はず。

 

そして羽織の下には二本の刀が立て掛けられています。

 

・・・・・良いんでしょうか、素性の分からない人間に刀とか持たせて。

 

うっかりか、私が刀を持ったところで取り押さえられるくらい強い人が居るのか、どちらでしょうか。

 

直感的には・・・・・・両方?

 

ガチャ、と扉が開き、そちらを見ると白衣を着た女の人。

衛生兵ですかね?

 

「あら、起きたのね。 具合は?」

 

「普通、ですかね。 ここは?」

 

「海軍の軍艦の中よ。」

 

「はあ、そうですか。 それより、刀なんて私に持たせといて良いんですか?」

 

「暴れるつもり?」

 

「いえ。 私はただのか弱い一般人Aですよ。 暴れたところで取り押さえられて終わりですよ。」

 

「そ、なら問題ないわよね。」

 

ぐうぅぅ、と腹の虫が鳴く。

 

おかしいですね、腹ペコキャラになった覚えは無いのですが。

勘違いしないでくださいよ!?

アレから丸四日間、何も食べてませんからね、私!

 

「ふむふむ、胃腸の働きも平気そうね。 それじゃあ、食事取ってきてあげるわ。」

 

「あ、お願いします。 出来ればガッツリとしたもので。」

 

「駄目。 消化に良い物じゃないと。」

 

ですよねー。

うん、知ってました。

 

女の人が出て行き、十数秒後に誰か入ってきました。

てっきり先程の人が落とし物か忘れ物でもしたのかと思いましたが、違いました。

 

入ってきたのは海軍の制服を着た男の人が二人。

肩に付けられた階級章からして相当上の人ですね。

 

「えっと、何方ですか?」

 

「儂はガープ。 こっちは副官のボガードじゃ。」

 

「正確には海軍本部中将かつ、この船の一応の責任者です。」

 

「は、はあ。 何というか、ご苦労さまです?」

 

「君は分かってくれるのか。」

 

ガシッと手を掴まれ握手。

 

色々苦労してそうな人だとは思ったんですが、ここまでとは。

 

「ご用は何でしょうか?」

 

「ウチの船医から目を覚ましたと聞いての。 事情聴取じゃ。 ま、言いたくないことがあったら言わんでも良い。」

 

え、こういうのって普通は諸々を済ましてからじゃ無いんですか?

 

特に私の場合は食事とか、お風呂とか。

 

ちらり、とボガードさんを見ると申し訳なさそうな顔をしています。

 

ああ、はい。 本当にご苦労さまです。

 

「とは言っても、襲われたのが真夜中でしたし、必死に逃げていただけですので、あまり話せるような事は無いかと。」

 

「ふぅむ。 なら、止めるか。」

 

止めちゃうんですか!?

 

「邪魔したの。」

 

え、ちょ、ホントに終了ですか!?

 

それで本当に終わりなのか、部屋から出て行こうとする二人を呼び止めた。

 

「ま、待って下さい!」

 

「うん? なんじゃい?」

 

「私を海軍に入れて下さい。」

 

あまり力の入らない手足を動かして、ベッドから出て頭を下げる。

 

「おい、まだベッドにいないと。」

 

「人並みに戦える力はあるつもりです。 最初は雑用でも構いません。 だから、私を海軍に入れて下さい。」

 

立ち眩み、でしょうか。

段々と視界が暗くなっていきます。

 

「むう。 お前さんの熱意は伝わった。 けどの、入る理由はなんじゃ? 海賊への復讐がしたいなら、悪いが入れるわけにはいかん。」

 

「ちゅ、中将!?」

 

「復讐なんてする気はありません。 ただ、私みたいに悲しむ人を、家族や皆みたいに命を落とす人を一人でも多く救いたいんです。」

 

もう、手足は痺れるように重く、視界も目は開いてるはずなのに何も見えない。

けど、伝えたいことはまだ残っている。

 

「何より、誰も助けられなかった自分が悔しいんです。」

 

「「・・・・・・・」」

 

「分かった。 入隊を許可しよう。」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は崩れ落ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ガープ

 

「ま、待って下さい!」

 

儂が部屋から出ようとすると、今回の襲撃の唯一の生き残りの嬢ちゃんに呼び止められた。

 

「うん? なんじゃい?」

 

はて、何かやったかのう?

 

「私を海軍に入れて下さい。」

 

なるほど、そういうことかの。

 

「おい、まだベッドにいないと。」

 

「人並みに戦える力はあるつもりです。 最初は雑用でも構いません。 だから、私を海軍に入れて下さい。」

 

急に立ち上がったせいじゃろう。

元々白かった肌がどんどん青白くなってっとる。

 

「むう。 お前さんの熱意は伝わった。 けどの、入る理由はなんじゃ? 海賊への復讐がしたいなら、悪いが入れるわけにはいかん。」

 

復讐で海軍に入っても碌な目にはあわん。

 

「ちゅ、中将!?」

 

ボガードが心配しとるのはこの嬢ちゃんじゃな。

さっきよりも顔色は悪くなり、足もガクガク震えとる。

 

「復讐なんてする気はありません。 ただ、私みたいに悲しむ人を、家族や皆みたいに命を落とす人を一人でも多く救いたいんです。」

 

それでも、まだ倒れん。

見聞色で探る限りは気力だけで立っとるような状態じゃ。

 

「何より、、誰も助けられなかった自分が悔しいんです。」

 

「「・・・・・・・」」

 

なるほど、それが理由か。

ならば拒む必要は無いの。

 

「分かった。 入隊を許可しよう。」

 

儂がそう告げると同時に、気が緩んだのか一気に崩れ落ちた。

それを抱き抱えてベッドに戻す。

 

「大した娘っ子じゃ。 これは将来が楽しみじゃの!」

 

そう言って儂が笑えば、ボガードに頭を叩かれた。

仮にも上官に向かって、頭を叩くとはどういうことか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 沖田

 

「ん、ぅん、・・・・・?」

 

知ってる天井ですね。

あ、また点滴されてますね。

 

「あ、起きたの。 言いたいことは山ほどあるけど、まずは食事ね。」

 

さっきの女の船医さんが居ます。

そして差し出されたのは雑炊。

 

雑炊ですかぁ。 鍋の後に作るのは格別ですよねぇ。

食材からダシが出てて、そこにご飯と卵を入れて塩で味付けするだけで美味しいんですよね。

 

「いただきます。」

 

自分で茶碗によそって、まずは一口。

 

「んん〜〜〜〜〜〜♪」

 

美味しいです。

少し味は薄めですが、その分ダシがきいててものすごく美味しいです。

 

一口、また一口と夢中になって食べ続けていると、何時の間にか食べ終わりました。

 

「ご馳走様でした。」

 

「お粗末さまでした。 本当に美味しそうに食べてたわね。 見てるこっちも食べたくなってきたわ。」

 

「そうでしょうか?」

 

「ええ。 それはそうと、」

 

そう言って船医さんはこちらに向かってゆっくりと歩いて来て、

 

「中将から聞いたわよ? 幾ら何でも無茶しすぎ。」

 

「ふ、ふみまへん。」

 

ほっぺを摘んで至近距離で笑顔で説教を始めました。

声と目が笑ってないからメチャクチャ怖いです。

 

その後、船医さんの話を聞くと、

 

元々、低血糖状態だったのに急に動いたせいで極度の貧血状態になったそうです。

この点滴はそれに対しての治療、と言ってました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところでお風呂とか入っても、あ、ダメですか。


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