海風に舞う桜   作:座右の銘は天衣無縫

20 / 36
皆さん、福袋ガチャ引きました?
作者はフォーリナー、アルターエゴ狙いで引いたらメイヴちゃんオンリーでした。

何とも言えねぇ。


第十九話

 

ギリ

 

口元からそんな音が聞こえた。

私の中の何処かが『ああ、怒ってるんですね、私』と認識する。

 

 

 

当たり前でしょう。

目の前で人が惨殺されたのだから。

 

 

 

始まりは何だったか。

 

そう。 確か大名行列よろしく天竜人が先頭でゾロゾロとその後ろを私達、海兵がついて行っていた時だ。

 

ふいに行列の前を一匹の猫が横切った。

たかが猫、されど猫。

銃を取り出したかと思えば、その場で跪いていた市民達の間に消える寸前の猫を撃ち殺したのだ。

 

それが誰にも飼われていない野良猫だったら、どんなに良かったか。

しかし、その猫には首輪が着けられていた。

これが示すのは、この猫が飼い猫であるという事。

 

ペットの不始末は飼い主の責任。

非常に当たり前のことではあるが、この場合、その常識は最悪なものであった。

 

それでも、この猫が現在いるグローブから離れたグローブに住む誰かの飼い猫だったらばまだ良かっただろう。

 

運の悪い事に飼い主がすぐ側にいた。

更に言えばその飼い主はまだ年端のいかない少女だったのだ。

そんな少女が飼っている猫が目の前で殺されるのを見ればどうなるか。

 

簡単な事である。

 

「ミーちゃん!!」

 

我を忘れて行列を横切った。

 

途端に血の気が失せるのが分かった。

まさか、、いや、流石に、でも、

そんな願望と予測が頭の中で混じる。

 

「殺すアマス。」

 

そんな声が聞こえた。

 

「何をモタモタしてるアマス? 獣畜生に妾の前を横切らせ、自分も横切った、この下々民の子供を早く殺すアマス。」

 

淡々と命令する天竜人。

側近の黒服の男達さえも困惑している。

そんな態度にイラついたのか語気を荒げながら命令してくる。

 

「良いから早くするアマス!! この大罪人をさっさと処刑するアマス!!」

 

そう言われて銃を構える黒服の男達。

私達海兵は、何も出来ない。

 

「ま、待って下さい天竜人様!!」

 

そんな所に一人の男性が割り込んできた。

 

「ウチの娘がとんだご無礼を働いて本当に申し訳ございません!!」

 

どうやら、少女の父親のようだ。

 

「罰とあらば私が受けましょう! ですから、どうか娘だけはお見逃し下さい!!」

 

娘を庇って地に頭をつけ、謝る父親。

 

「黙るアマス!! 大罪人の親が軽々しく妾に声をかけるな!! さあ、二人纏めて殺すアマス!!」

 

「まあ、待つぞえ。」

 

急にもう一人の天竜人が声をかけ、止めた。

 

「おい下々民、面を上げろ。」

 

土下座していた父親の顔を上げさせ、その目を見ながら話す。

 

「その方の心意気に免じて、チャンスをやろうではないか。」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、本当だとも。 今から貴様を死なない程度に痛め付ける。 それを声一つ出さずに耐えてみせるぞえ。 そうすれば無罪放免、としてやろうではないか。 やるか、やらないか、さあ選ぶぞえ。」

 

このような天竜人もいるのだな、と不覚にも思ってしまいましたよ。

 

この親は剣を手足に刺され、傷口を抉られ踏み躙られても声一つ上げませんでした。

ですが、拷問は終わらず、そして

 

「気に入らんぞえ。」

 

パァン!!

 

血飛沫が上がった。

撃たれたのは胸。 心臓の位置でした。

 

「な、何故……」

 

「フン、このような大罪人、始めから無罪放免にする訳がないぞえ。 早く声を上げれば良かった物を。 下々民の癖に生意気ぞえ。 まあ、約束は約束。 そっちの下々民の小娘は手を出さないでおいてやるぞえ。 感謝するがいいぞえ。」

 

「フフフ、アッハハハハハハハ!! 流石アマス。 良いものを見れた。 ホラ、お前達、行くアマス。 そこの大罪人の親を踏みながら、な。」

 

命令通り父親の体を踏み、天竜人の乗る籠を持ちながら進み出す奴隷達。

 

「このっ、下衆が……!」

 

私はそう小声で言って刀に手を伸ばした。

だが、ガッシリと手をストロベリー中将に掴まれ、刀を鞘から抜くことが出来ません。

 

「何故、何故です、ストロベリー中将。 何故、あの人でなしを斬ってはいけないのですか……!?」

 

「気持ちは分かるが自分の階級を弁えろオキタ大佐。 佐官が手を出せば、多くの海兵達に影響が出る。 勿論、お前の恩師にもだ。」

 

「!! ……………………分かり……ました。」

 

「お前もだ、オダ。」

 

「………………」

 

刀から手を放し、力一杯握り締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は何事も無く、護衛が終わり、私達は今回の特別給料を貰って解散となりました。

助かった子供は既に母親が死去しており、海軍で預かる事になりました。

 

「何が、何が特別給料ですか。 こんなの、タダの口止め料でしょう。」

 

相当な厚さの茶封筒を握りしめ、地面に叩き付ける。

 

「……どこに行くんじゃ、オキタ。」

 

「………………適当にそこら辺を歩いてきます。 明日の出港の時までには帰ってくるのでお構いなく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖田が去った後

 

「何がお構いなく、じゃ。 どう考えても『ついて来るな』って意味じゃろうに。 それに、」

 

オキタの周りだけ風が妙に吹いてたし、と頭の中で続ける。

 

「よっしゃ、お前たち! この金、ドブに捨てるかの如く居酒屋か何処かで散財するとしよう! やりたい奴はわしについてくるのじゃ!!」

 

沖田は普段の人付き合いは良いが、如何せんああやって嫌な事が我慢値を吹き飛ばすと態度に現れるからのう。

その時はわしがこうやって代わりに人望を集めてやっている。

 

ま、親友の為じゃもんね。 是非もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない一桁台のグローブへと歩いて行く。

本来なら賞金稼ぎや海賊達のたまり場である筈のそのグローブも私の殺気を感じたのか小動物一匹すら居ない。

 

ええ、いい判断です。

今の私なら賞金稼ぎならまだしも海賊を見れば問答無用で斬り掛かりますから。

 

私の周りでは風が吹き荒れています。

恐らく、これが現在の私の心の荒れ。

 

「情けないですね。 こういう事を無くしたいが為に海軍に入ったのに、それを黙認するなんて。」

 

視界が滲む。

 

「嗚呼、本当に情けない。 貴方もそう思いませんか?」

 

「さて、な。 私には何の事だか分からないのだから、何とも言えないのだが。」

 

そこに居たのは冥王シルバーズ・レイリー。

以前、魚人島に行く時にシャボンコーティングを頼んだので顔見知りだ。

 

「やれやれ、何やら物騒な気配を感じたので来てみればオキタ君だったとは。」

 

「ええ。 大変申し訳無いのですが、少々付き合って頂けませんか?」

 

そう言って刀を手に取る。

 

「君のような美人からのお誘いだ。 喜んで。」

 

「ありがとうございます。 ではっ……!!」

 

その場から飛び出し、レイリーさんへと斬り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中

 

明かり一つ無いシャボンディ諸島のとあるグローブでは未だに沖田とレイリーの剣のぶつかり合う音が聞こえていた。

 

「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

沖田はとっくのとうに息が上がっており、それでも雄叫びを上げてレイリーに斬り掛かる。

 

「そうだ。 そうやって溜まったものを全て吐き出してしまうといい。」

 

対してレイリーは息一つ乱さず、諭すように沖田に話しかける。

 

「ハァッ、ハァッ。  そろそろ、終わりにしましょう。 本気で行きますので、どうか死なないで下さいね。」

 

一旦、息を整え、剣を構える。

 

「秘剣………………『燕返し』」

 

「む。」

 

剣によって一つ、鎌鼬によって二つ。

合計して三つの太刀筋が生まれ、その全てが同時にレイリーの首へと迫る。

 

「なるほど、中々に厄介な技だ。 だが、」

 

一閃。

たった一閃で疑似『燕返し』は破られた。

二つの鎌鼬は切り裂かれ、刀は弾かれた。

 

「威力が足りない。 それで、どうかな? 少しは落ち着いたかね?」

 

「ええ、取り敢えずは。」

 

「そうか。 なら良かった。 さて、落ち着いたなら君の掌の手当てをしなければな。」

 

「掌? あっ、」

 

掌を見てみれば、爪が食い込んでいたのか血が流れていました。

 

「シャクヤクの所で手当するとしようか。 こっちだ、ついて来なさい。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。