数週間後、私は海軍本部にいました。
目の前にはフルボディ元大尉。
「で、何か申し開きは? 私はマリンフォードについたら自室待機と言いましたよね。 それを破った上、裁判に殴り込みとは。」
「ダチを救えたんだ。 後悔はしてねぇ。」
うわ〜ぉ。 清々しいと思えるほどの言い切りっぷりですね。
「で、裁判に殴り込んだ結果、三等兵に降格。 これより下は雑用しか無いわけですが、ミラーボール島でチューリップ海賊団を倒したぶんのボーナスでバラティエへの慰謝料と弁償代のおよそ八割が支払える訳です。 さらにミラーボール島では一人で海賊団を壊滅まで追い込み、その後、海賊ジャンゴと協力して市民への被害ゼロで制圧した、と。」
「はい。」
「そして、元海賊のジャンゴは現在、三等兵として海軍に入ったわけです。」
それに頷くフルボディ三等兵。
「バラティエへの借金の残り二割の返済を早く済まして下さい。 私の降格処分はミラーボール島での功績により、取り消しとします。 以上です。」
そう言ってから席を立ち、部屋の出口に向かいます。
「あ、ありがとうございます!」
「で、今回はどんな厄介事を持ち込んでくれたんですか、ガープさん。」
自分の事務室に戻ったらガープさんが待ってました。
「なに、ちょっと鍛えてやって欲しい奴等がおってのう。」
あ、厄介事って言うのは否定しないんですね。
「そういうのはゼファー先生の所に持っていってくださいよ。」
「先に行ったわ。 そうしたら見事に断られた。」
カラカラと笑うガープさん。
正直、頭が痛いです。
「ゼファーの一番近くにいるお主なら、ゼファー並とは言わんが、それなりに教えるのは上手いじゃろう。」
「いや、普通に仕事があるんですけど。」
何か私が完全に教える感じになってますけど。
「ワシからの任務って事で。 じゃ、後は頼んだぞ。」
「あっ、ちょっ!」
そう言って部屋から出て行ってしまいました。
「…………任務だって言うなら書類の一つくらいは作成して持ってきて下さいよ。」
え? 抗議するのは諦めましたよ。
時間の無駄ですからね。
「ん? 要注意ルーキー?」
何ですかね、コレ。 なんか書類の中に混ざってたんですけど。
「…………超新星含む、各地の大型ルーキー達ですか。」
やっぱりこの頃から頭角を現し始めてたんですね。
「まあ、暫くは放置しておきましょうか。 それより、今はこっち。」
手元の紙にはCP9の文字が。
「急成長している私の勢力にツバ付けておこう、って事ですかね。」
あそこの長官はともかく、構成員は覇気こそ使えないものの、強さは相当なものですからね。
一応、注意しておきましょうか。
「加えて、最近になって現れるようになった謎の会社、バロックワークス。 詳しい事は一切不明ですか。」
クロコダイルさんがリーダーなんですけどね。
しかし、七武海となればそうそう、手を出せるはずもありませんし。
「…………そろそろ革命軍と何らかのパイプを持っておきたいですね。」
協力関係までいかなくとも、情報のギブアンドテイクが出来るくらいにはしておきたいですね。
そうすれば情報網の幅も広がりますし。
「バルティゴの本部に直接行くわけにはいきませんし。」
流石にいきなり本丸に行ったらダメでしょうし。
となると、どうにかして支部を見つけるか、革命軍のメンバーと接触しなくてはダメなわけですけど。
「…………くまさんに聞いてみますかね。」
答えてくれるかどうかは知りませんが。
「もしくは革命候補に入ってそうな国に行ってみるとか。」
調査員の一人や二人くらいはいるでしょうし。
ただ、行くならドレスローザ以外ですね。
ドフラミンゴさんのトコ行くとすぐにバレそうですし、バレたら確実に大事になりますし。
オモチャになるのなんて嫌ですよ、私。
まあ、それは諜報班に任せるとして。
「次は壊した船の請求書と始末書………………………………ガープさぁん!? なに、私の書類にサラッとそっちの書類混ぜてんですか!?」
この後、滅茶苦茶追い掛けっこしました。
さらにその後、真面目に追い掛けずにセンゴクさんの所に行っておけば良かった、と三時間くらい追い掛けっこしてから後悔しました。
「なあ、オキタ。」
「何ですか、ノッブ。」
「わし、帰ってい「ダメです。」 ですよね〜。 知ってた。 CP9との顔合わせとか厄ネタの気配しかしないんじゃが。」
目の前はCP9含むサイファーポールの本部、エニエス・ロビーの司法の塔。
そして見聞色で感じる中に入ってすぐの場所に待ち構える二つの強い気配。
「同感です。 まったく、手荒い歓迎ですね。 まあ、歓迎にはそれ相応の挨拶をするのが礼儀ですしね。」
「うむ。 取り敢えず中に入るかの。」
門を開けて貰い、中に入ると、
「「『嵐脚』!!」」
と、同時に両斜め前から聞こえたので、上に跳んで回避し、『月歩』と『剃』を使って相手の背後に一瞬で周り、刀を突き付け、殺気をぶつけます。
もう一人の方はノッブが銃を突き付けています。
フクロウさんとジャブラさんですか。
「出会い頭に『嵐脚』とは、CP9は随分と野蛮な組織なんですね。」
「チャパパパパ、誤解だ。 襲ったのはお前達の道力を測るため。 長官に命令されてやった。 長官は「海軍の少将の実力がどの位で、脅すのと下手に出るのとどっちが正解か決めるため」って言っていた。」
「…………そうですか。」
「帰ったら上に報告しとくかの。」
「ハッ、しまった! 言ってしまった〜。」
「その何でも口にしちまうクセ治せって何回も言ってんのによォ。」
「……確か道力を測るには、測れる人間に攻撃すればいいんでしたね。 ノッブ、そっちはもう良いですよ。」
「ん。 攻撃すればいいんじゃな?」
「ええ。 準備は良いですね、丸い人。」
「チャパ、フクロウだ。」
「アンタ……良い奴なんだな。」
「まあ、お人好しとはよく言われますけど、ねっ!」
左足を軸に後ろ回し蹴りでフクロウさんをノッブの方に飛ばします。
飛ばされ向かってきたフクロウさんを蹴り上げるノッブ。
「チャパパパパパパパ!!??」
「お、おい、どうした!?」
「そ、そちらの桜髪のお嬢さん、道力42300、こっちの黒髪のお嬢さんは40500。」
「ハァッ!? 何かの間違いじゃねーのか!?」
まあ、これでも新世界でもある程度通用するくらいまでには鍛えてますしね。
能力を含めれば道力は跳ね上がりますし、実際のところは80000近く行っててもおかしくは無いんじゃないですかね?
「まあ、それは置いといてそろそろ案内してくれんかの?」
「お、おう。 こっちだ。」
ジャブラさんとフクロウさんの後ろに付いていき、階段を上がっていきます。
雑談を交えつつ進んでいくと、目的の部屋の前へと到着しました。
その中に入ると、ウォーターセブンで潜入調査をしているメンバー以外の全員が集まっていました。
「これはこれは、ようこそ少将殿に准将殿。 お待ちしておりました。」
と、かなり腰の低い状態で挨拶してきたCR9長官のスパンダムさん。
ちらりとジャブラさんの方に目配せすると、ジャブラさんは肩を竦めて首を横に振りました。
「ええ、初めましてですね、スパンダム長官。 いきなりですが、今回はどのようなご用件でしょうか?」
「いえ、ちょっとした顔合わせの様なものですよ。 コチラとしても海軍とはそれなりの繋がりを持っておきたいので。」
「はぁ、なるほど。 で、実際のところは?」
「…………ハハハ、流石に話が早い。 一億ベリー。 それでセンゴク元帥に口利きして貰いたい。」
「……ノッブ、帰りましょう。」
「そうじゃな。 とっとと帰るとするかの。」
「なっ!? なら三億、っ!?」
思い切り殺気をスパンダムに向ける。
「余りナメたマネをしないで下さい。 今回の事は水に流しますが、二度目はありませんよ? ……って、聞いてませんか。」
泡吹いて気絶してますね。
「彼が起きたなら今の言葉、伝えておいて下さい。 ああ、それと、この人抜きで今度飲みに行きません?」
「よよいっ、その言付けェ、しかと承った。 一語一句間違えずにィ、伝えておくとォ、男クマドリ、ここに約束する。」
「ウチの長官が悪かったな、少将サン。 コレ、俺の個人用電伝虫の番号だからよ、飲みに誘うときにはここにかけてくれ。」
「ええ、分かりました。 あ、これ私の電伝虫の番号です。」
「おう、んじゃまた近い内に会おうや。」
「はい、では失礼します。」
そして、私はエニエス・ロビーを後にしました。