「――峻厳の御柱、流れ
風が吹く。
彼女が詠唱を始めたそのとき、室内の空気がはっきりと変わった。
「我が守護、
これまでに聞いたことのない、まるで何が出てくるのかが窺い知れない比喩的な詠唱。
しかし、彼女の小さな手のひらが掲げた先には、これまでの生徒たち以上の『何か』が局地的に集中しているのがはっきりとわかる。
底知れぬ威圧感を伴う、まるで小さなその身体が恐ろしい何かに変貌したかのような錯覚が、その部屋の者たち総てに圧し掛かってくる。
「ギメル ベド バウ レシュ ヘー……」
前世を知るこの物語の主人公、シン・ウォルフォードならばこう例えているだろう。
『まるで巨大な大砲が今にも発射しようとしているようだ』と。
「
決定的な言葉と共に、暴風が雷と劫火を伴って一直線に突き進む。
しかしその速度は人間の知覚領域を大幅に超過しており、誰しもが気付いた時にはその破壊の爪痕を目の当たりにしたという後付けの恐怖だけが彼らへと訪れていた。
的を大破しただけに飽き足らず、建物に大穴を開けて練兵場を蹂躙し、偶然通りかかっていたカートとかいう学生を余波だけで半殺しにし以降寝ても覚めてもまるでドラゴンに捕食されかけたかのように怯え続けるトラウマを植え付けた副次被害を齎して、『彼女の魔法』は学園の者たち総ての心に風穴を開けた。
それは、後々にとある主人公が大気を圧縮して解き放つ魔法の、威力の数倍から数十倍ほどの破壊力を伴っていたのだが、その事実に気付いたものはついぞ現れることは無かった。
そんな破壊を見せつけた彼女、ウヴァル・オーウェンは呆然とする試験官に対して言い放つ。
まるで決め台詞のように、照れながら。
「あの……私、なにかやっちゃいました?」
☆
賢者の孫というシュール系ギャグマンガに転生したらしい。
え、知らない?
まあ私も原作は買ってないけどね、漫画は作画崩壊が凄くて面白いよ!
作中で無詠唱にばかり拘る主人公が、詠唱組のことを中二病発表会とか宣っていたけど。
やるなら此処までやってガチモノだ。
馬鹿にするならば本物を知ってからにしてもらおうか。
まあ、私は見事『詠唱魔法』で入学試験を突破したから、主人公くんと関わることなんて無いのだろうからご安心ゲフンゲフン残念だけど。
是非も無いよね!
魔法は大体イメージで賄えるから、出てくる結果を知っていれば実はこんな詠唱でも使えるんだよなー。
ロクデナシ魔術師のいっそ逆の現象証明とでも呼ぶべきか。
無論、生活に転用するので無詠唱も出来るっちゃ出来るが、先生は「自分の出来る最大の魔法を放て」とか言ってたから仕方がない。
耐えきれなかった的が悪い。
さて、とりあえず入学は決まっただろうし、早めに帰ってパン屋のお手伝いに勤しまなきゃ!
待ってろ商店街! ロリータ看板娘が今からいくぜー!
☆
――後日。
Sクラスになりました。
主人公くんと同じクラスです。
………………解せぬ!
この頃の詠唱ってホントカッコいいですよねぇ(白目