ょぅι゛ょ転生記   作:おーり

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間違えて見つけてしまい嘆く者たちに引っ掛かったなバカめが!と言い捨てるためです


歌うよー

 

 入学式を終えて数日後のこと、俺たちSクラスの面々は副担任のシュトローム先生に連れられて町に居た。

 

 先生曰く、入学後も通学することなく名前だけが残っているクラスメイトが、要するに不登校の生徒がいるらしく、そんな彼女(女子らしい)が無為に時間を潰すことを見過ごすわけにはいかない、と話を聞きに来たらしい。

 一介の生徒を連れ出す権利も先生には無いらしいのだが、それでも教師の間では【番外(アンリミテッド)次席(セカンド)】の二つ名で呼ばれている彼女が在野に下ることを、その才能が埋もれてしまうことを良く思う者はいないと言う。

 

 

「ウォルフォードくんは気になりませんか? 無詠唱のキミの魔法に匹敵する破壊力を伴った、この国のいやこの世界の誰もが未だ知り得ないであろう『詠唱魔法』の使い手が」

 

 

 眼帯を両目にした特異な姿で、先生は溢れる好奇心を隠しきれない口調で、人込みを難なく避けつつ目的地を目指す。

 俺個人としては、そんな先生の動きの方が気になります。

 

 

「いや、それを抜きにしても、合格順位が一つ抜けているのにクラスメイトが既に10人いることは気にはなっていたが……」

「拙者は繰り上がりでござったか……」

 

 

 賢者と称えられているじいちゃんに準えたのか、一応は『無詠唱上位10人』という拘りが学園にはあったとシュトローム先生は教えてくれた。

 結果として、次席として合格した『彼女』を別として上位11位までをSクラスへと無理やり押し込めた采配を学園が取っていたらしい。

 同じクラスに入れないと護衛を辞めさせられるところだった、と嘆いていた11位のユリウスはオーグの言葉に胸を撫で下ろしていた。

 いや、安心しているようだけれど正直ギリギリだよね?

 

 

「それにしても、詠唱魔法でそこまでの威力を出せるなんて聞いたことも無い」

「そうねぇ、ウォルフォードくんが桁外れなのはさておき、無詠唱だって流石に練習場を吹き飛ばすような真似までは出来なかったし」

 

 

 リンとユーリが片や無表情で片やおっとりと、そんな会話を後ろの方で交わす。

 どうでもいいけど、ユーリは何気に俺に対する評価が酷いと思うのだが、

 

 

「あの壁は特別頑丈に出来ているから、『手加減』で罅を入れたウォルフォードが規格外なのは知ってた」

 

 

 リンも同意している辺り、俺の評価は共通認識になっているらしい。

 アレか、最初の実技でみんなの魔法を全員で披露した時のことを言ってるのか。

 みんな無詠唱でみんな凄かったのだからもういいじゃないか。

 

 

「どうやらあそこのようですね」

 

 

 納得のいかない気持ちを抱え内心が淀む俺とは裏腹に、シュトローム先生は一つ先の商店を指さす。

 いや、視えてるんですか?

 

 

「あ、そこのパン屋は行ったことある!」

「ああ、ていうことは、噂の彼女ってあの子なのか」

 

 

 アリスの台詞に続いて、トニーが知ったように呟く。

 なんだよ、知ってる奴なら話は早いな。

 

 不登校、と聞くから引きこもりのやさぐれた相手を失礼ながら想像していたが、ふたりの反応から察するに大きく悪い印象は抱いていない様子。

 幾分か気楽に構えて、俺たちは店の扉を開け、

 

 

「いらっしゃいませぇ~……、――んぇっ?」

 

 

 きらっきらとしたスペシャルスマイルで出迎えてくれた褐色の幼女に、真顔になって言葉に詰まられるという稀有な反応をされてしまった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ――なるほど、これは素晴らしい人材だ。

 

 

 オリバー・シュトロームと言う名で通している学園の非常勤講師は、目の前の幼女を魔力で感知し内心で独り言ちた。

 彼は魔人としての自らの特異な特徴である両の目を隠すために眼帯を嵌めているが、膨大になった魔力とそれを自在に扱う器量で視界を潰した状態でも難なく生活することを可能としている。

 むしろ、感知範囲が彼自身の魔力に伴っているがために性能諸共膨れ上がり、『視なくとも視れる』という矛盾を実際に成立させていた。

 

 そんな彼が『視る』のは、ただの子供ではない。

 

 褐色の肌に桃色の髪に碧い瞳、一見すると王国民とも帝国民とも違う出身だが、そんなことは問題ではない。

 シュトロームが素晴らしいと断じたのは、魔人と同等にまで彼女自身の肉体全体に行き渡っている魔力の密度だ。

 獣や帝国民を使った魔獣化実験で判明したことだが、魔獣化または魔人化とは魔力の飽和による体組織との融合による突然変異だ。

 進化の先駆け、とシュトロームの『先』を逝くモノならば呼ぶかもしれないが、少なくとも現行の人類には魔力と身体細胞の適合は早すぎる。

 事実それはガン細胞に近い変異の仕方を見せており、魔人化した者は肉体が頑強になる代わりに『それ以上』の発展を見込めず、次の世代へと種を残すことが出来なくなっている。

 それは細胞そのものが魔力を取り込むことで強化され、外的な細胞侵食を引き起こさなくなる代わりに遺伝交配が利かなくなるために引き起こされる生殖機能の廃化だ。

 ゆえに、彼らは一代限りのミュータントにしか成り得ない。

 尤も『進化したからと言って生き残れるか』というと異論もあるのだが、その点は今は伏せておこう。

 ちなみに、生殖機能の損失云々に関してはシュトロームも実験結果として把握する事情だが、それも後々になっての話だ。

 具体的に言うならば、彼の出身であるブルースフィア帝国に復讐を果たし、人類への憎悪という感情を推進していた根源的な問題を片付けてしまい、次に何をやろうかと目的を見失った後の話なので問題はない。

 お願い負けないで帝国! あなたが負けたら人類の未来はどうなってしまうの!? シュトロームだけじゃない、この世界にはシン・ウォルフォードっていう英雄だって潜んでいるんだから! 次回、帝国死す! デュエルスタンバイ!

 ざっと粗筋を説明するとこんな感じか。嘘予告が嘘にならなさそうな辺り帝国は見事に詰んでいるが、それも自分たちの仕出かしてきた行動の結果なので大体因果応報だから問題は無かった。ショッギョムッジョ。

 

 話を戻すと、魔法を扱うだけではなく大元の魔力を取り込むことで魔法の扱いも向上するが、やり過ぎると理性を失いつつ暴走します。というのがシュトロームが検めて把握した研究結果であり、賢者や導師率いる王国の共通認識となっているわけだ。

 

 

 ――それが、目の前のウヴァル・オーウェンという少女はどうでしょう。

 

 

 魔人と同等に魔力を全身に行き渡らせている。

 それはつまり彼女もまた魔人だという証明にもなるが、そうなると聊か早計に過ぎる。

 

 彼女は理性を失っているようには見えないし、何より魔獣化などに見られる身体的な変異特徴が顕わとなっていない。

 それに、いくらシュトロームが人類を憎悪しているからと言っても、いい歳を過ぎた成人ならばいざ知らず、女子供にまで魔人化実験の手を伸ばそうとするほどの外道に成り下がったつもりも無かった。

 要するに、彼が一方で手掛けていた『実験犠牲者』の逃亡者という線も消える。

 

 

 ――つまりは天然でこうし(魔人化に似)た性質を備えている、ということですね。カートくんの【変異失敗】の後片付け程度の認識で非常勤講師として潜り込ませていただきましたが、こうした希少な実例を目の当たりに出来たのですから結果オーライといったところでしょう。

 

 

 シュトロームは以前から魔人化の実験のために王国に潜んでいた。

 それは帝国に棲むこと自体に嫌気が差したことも理由に含まれているが、王国郊外に魔獣を増やすことで王国の練度を溜めさせることと共に、帝国に実戦経験を遠ざけさせ実力を削ぐことも目的に添えられる。

 いずれは戦争を帝国自らに引き起こさせ、自身で首を絞めるように滅亡してもらうための布石でもある。

 決定打を与えることが出来ればそれでも良し。

 同時に人工的な魔人化の完成度を知ることも計算されてはいたが、そこは『出来れば』程度の意気込みだったので、カート少年に仕込んでいた催眠暗示が解消されたことも痛手には至らない。

 シュトロームからすればエビで鯛を釣り上げたような、そんな快挙を拾い上げてくれたカート少年に僅かな感謝も抱いていたくらいだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 いや、まて。

 これ同年代に見えないんだけど、本当にクラスメイトなのか?

 アリスもロリだが、ウヴァル・オーウェンとかいう目の前の幼女はそれを遥かに凌いで、ひとケタなんじゃないかと思わせんばかりの幼女っぷりだ。

 そんな彼女の働いているパン屋は盛況で、こんな大人数で押しかけたら邪魔になるかなと思いきや、中は意外にも広々としていてビックリする。

 店を知っていたアリスやトニーも止めないはずだ。

 

 

「ウヴァル、合格してたのか……?」

「お、親方……」

 

 

 店の主人と思しき筋骨隆々の厳つい親父さんが驚いた顔で幼女を見下ろす。

 彼女は俺が内心で幼女と判断した通りにチビっこく、目測だが130も無いだろう低身長だ。

 比べて親父さんは2メートルはありそうな巨漢なので、前世で見た隣の森の妖精の映画を思いだしてしまう。舞台は所沢だっただろうか。

 ……いや、むしろ黒猫を連れた魔女っ子の映画だな。

 

 

「なんで言わなかったんだ。ウチの手伝いをしてる場合じゃなかったろう」

「い、いえ……、わたし、やっぱり元は帝国民ですし、商店街のひとたちは良くしてくださるけれど、こんなわたしがいきなりSクラスなんかに入れたなんて、王国の人たちからすれば良く思われないんじゃないかな、って……」

「あまりアールスハイドを舐めるなよ、ウヴァル・オーウェン」

 

 

 口を出したのはオーグだ。

 以前に聞いていたようなブルースフィアの国民っぽくはないおどおどとした様子の彼女に、王子としての態度で佇む。

 店に居た他の客はそれぞれが興味ありげな様子で俺たちを眺めていたが、オーグが前に出ることでより驚いた顔を見せている。

 

 

「お、王子!」

「……王子?」

 

「この国は貴賤の差を鼻にかけるような懐の浅いモノ等居ない。それはお前がこのパン屋で暮らしていて、一番良くわかったことじゃないのか」

「そ、それはそうですけど」

 

 

 驚きと共にオーグのことを認識した彼女が、詰め寄るように語るオーグに怯えたように縮こまる。

 しかし俺が思うに、オーグが思わせたいのはそんな畏まった感情じゃないはずだ。

 

 

「魔法学院だってそうだ。少なくとも実力を認められたんだ、登校してきてみろ。俺たちだって、待ってるぞ」

「……あ」

 

 

 顔を上げるウヴァル。

 俺たちがクラスメイトだって気付いたのかも知れない。

 笑いかけてやると、何処か泣きそうな顔で、彼女は笑った。

 

 

「……っ、はい!」

 

 

 その笑顔を見て、なんだか感極まってみんなが思わず微笑みを浮かべる。

 思い思いに笑い合う俺たち。

 良い話だったなー。

 

 その余韻の中、ウヴァルは店の客へ頭を下げていた。

 

 

「あ、あのっ、わたし明日から魔法学院へ通います! あまりお店のお手伝いは出来なくなりますけど、どうかこれからもよろしくおねがいします!」

 

「がんばれよウヴァルちゃん!」

「応援してるぞー!」

「ウヴァルちゃんがいなくたって来るさ! 親方のパンはアールスハイド1だからな!」

 

 

 おお、ホントにこの国の人たちは良い人たちばっかりだなぁ。

 あまり関係ないのに、俺までなんだか心が温かくなる空気が出来上がっている。

 

 

「ありがとうございます! それじゃあ、わたし、この気持ちを込めて歌います!」

 

 

 ――なんて? ……なんで?

 

 疑問を問う間も無く、何処からか流れ出すBGM。

 不自然に店の中央にあったステージ状のカウンターに乗っかって、幼女は声を張り上げた。

 

 

「『射手座、午後九時 Don't be late』! わたしの唄を聴けぇー!!」

 

「良いぞォー!!」

「待ってましたァ!!」

「くぎゅうううううううう!!!」

 

 

 おい待てお前ら。

 なんか訓練され過ぎじゃね!?

 

 

「~~っじゅうにj」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ……なんでシュトロームさんが居るん!?

 

 いやまて落ち着けウヴァル・オーウェン。

 私の正体は気付いていないはずだ。

 

 世界が原作通りに行くなんて基本的には幻想だ。

 運命なんてモノはご都合主義の申し子でしかないし、なにか別の因果が挟まれるだけで物語の様相は大きく変わる。

 いわゆるバタフライエフェクト。

 歴史の流れも正史と言うモノが本来は無いように、時間遡行の結果で通過点が変更されるなんて言うのも良くある話だ。

 ……じゃあ変わったのって私が原因じゃん!?

 

 と、とにかく、あんな風に先生役で登場して和気藹々としているってことは敵対しているわけじゃないのだから、私が無駄に警戒しても不和を生むだけだ。

 たとえ私自身に彼との確執と因果があろうとも、直接こちらを完全に把握できていると決まったわけじゃない。

 何しろ私は今幼女だからな! ばれるまでは隠し通す!

 

 賢者の孫、という『作品』を知っている身からすると前世がウォルフォードくんとは別枠っぽいから、こうした前世ネタで動いても恐らくは不自然さはないはずだし、気付かれる恐れもないだろう。

 ……というか、この国で棲み易くするために色々と歌ったり踊ったりして気を遣っていたら、いつの間にやらこんな形で『発表会』を度々挟むことになってしまっていた。

 親方も止めないし、お客さんもノリノリで辞められるはずもない。

 今の私は、プリズマ☆イリヤのクロエの外見に釘●理恵のcvという第六天魔王もびっくりのハイスペック!

 そんなんが歌って踊る! 初見のお客さんでもノッリノリにアンコールぶちかましてくるのも是非も無いよね!

 

 ――結局このあとむちゃくちゃ歌い倒した。

 

 

 




今年いちばん良い話を書いたわー
こころあったまるわー
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