102話_School Tripの始まり
「皆、昨日リアスから渡された『フリーパス』は忘れていないかにゃ?」
「言わばパスポートと同じですからね、このパスは」
「勿論だ、黒歌、ロスヴァイセ」
「は、はい!大丈夫です!」
「これが無いと京都に行けませんからね」
「イッセー君との旅行をうっかりで台無しには出来ませんから」
「ああ、問題ない」
「折角の旅行を不意にするヘマはしないさ」
10月上旬のある日、遂に迎えた修学旅行の日。
屋敷から徒歩数分で辿り着いた駅前にて一誠達は黒歌と、急遽(一誠達がいる2年を担当しているので当然と言えば当然だが)引率が決まったロスヴァイセの問いかけに応ずる様にグレモリー家の紋様が描かれたカードらしき物を手にしていた。
言うまでも無いが京都の地は日本神話勢力にとって重要拠点、清水寺や金閣寺、銀閣寺といった有名所を始め、神聖な神社仏閣が多く、朱乃の住居だったこの街の神社みたいに悪魔側への配慮が施された所などある筈もない。
そんな場所に悪魔が乗り込んだら文字通りお陀仏、ハーフ悪魔である為に聖なる物に対する危険度が低いヴァーリとて例外ではない、其処で京都の裏を牛耳る陰陽師や妖怪達が、悪魔でも京都観光を楽しめる様にと発行したのが『フリーパス』である。
勿論他勢力に自らが管理する地へ入る事を許可するのだから相応の信用が無ければならない、増して今は禍の団という存在がネックとなって発行条件が厳しくなっていたのだが、其処はグレモリー家の存在が功を奏した形となった。
尚、学生であり、今日は何時も通り授業があるリアスと朱乃、白音とレイヴェルは此処にはいない。
それ故か4人は屋敷にて既に見送りを済ませていた、その際に案の定と言うべきか、一誠に対して所謂「行ってらっしゃいのキス」をしていたのは余談である。
「よし、皆準備万端ね。無くしたり盗まれたりしたら事だから、ちゃんと保管しとくのにゃ」
「黒歌さん、他の先生方がお呼びです、急ぎましょう」
「分かったにゃ、ロスヴァイセ。じゃあ皆、レッツゴーにゃ!」
「「「はい!」」」
「「「ああ!」」」
------------
「すぅ、すぅ…」
「むにゃむにゃ…」
「2人とも、余程この旅行が楽しみだったと言う事か。今朝も寝不足だった様だし」
「だろうな、私もこの旅行が楽しみ過ぎて、昨日は眠れなかったからね」
「教会での生活は余程禁欲的だったのだろうな。まるで遠足を楽しみにしている小学生だ」
「それはそうだろう。教会で『聖女』として祭り上げられた頃のアーシアは言うまでも無く、私もイリナもエクソシストだった頃は旅行なんてする暇もなかったし、主への信仰故か、そんな事思いつきもしなかったからね」
それから数駅を経て新幹線が発着する東京駅へと辿り着いた一誠達は、予め決められた座席に座り、京都の地へ着く時を今か今かと待っていた中、楽しみな余り眠れなかったらしいアーシアとイリナは、出発から僅か数分で眠ってしまっていた。
一誠達の班が割り振られた座席は車両の一番後ろ、3席ある方の真ん中が一誠、その窓側の隣がイリナ、通路側の隣がアーシアに割り振られ、通路を挟んだ反対側、2席ある方の通路側がゼノヴィア、窓側がヴァーリに割り振られた。
現在一誠は、己の身に寄り添って眠るアーシアとイリナを、ゼノヴィアやヴァーリと共に微笑ましい様子で見守りながら、何時も通り開発作業を進めていた。
(思えば今年になって、2年に進級してから色々な事があった。リアスの眷属悪魔への転生、グリゴリを離反したと思しき堕天使達との戦い、フェニックス家とのレーティング・ゲーム、今の屋敷への引っ越し、北欧神話内のゴタゴタ、そして禍の団…
色んな戦いを経て、俺にとって大事な人が沢山と言って良い位出来た。リアスに朱乃、アーシアに白音、イリナにゼノヴィア、黒歌にレイヴェル、そしてロスヴァイセ。嫁さんが9人も出来るとか、ほんの半年前には考えもしなかったな。他にも木場とギャスパーという兄弟同然の存在、ヴァーリにアーサー、美猴にルフェイという戦友、グレモリー家の皆、そしてバラキエルさん…
そんな大事な人達との日々は、これの完成を切っ掛けに新たなる展開を迎えるだろう。このガシャットは俺の夢の『最後の
今までの、もっと言えば悪魔に転生してから半年の歩みを思い出しながら開発作業を進める一誠、そのタイトル名と思しき項目にはこう書かれていた。
『MAXIMUM MIGHTY X』と…
------------
「はい、ワンツースリーフォー!にゃはは、私の勝ちにゃ!」
「く、黒歌さん、私初心者なんですから少しは手加減するかハンデを下さい!」
その頃、引率教師に割り振られた前列の席に座る黒歌とロスヴァイセはメテオブロッカーで対戦、北欧に居た頃はゲームなど殆どやった事の無かったロスヴァイセ相手にも手加減一切無しの黒歌は怒涛のコンボラッシュで圧倒していた。
何とも大人げない黒歌のプレイングに不満を口にするロスヴァイセだったが、その顔は楽しげだった。
「このまま負けられません、もう一回勝負です!」
「かかって来いにゃ!また返り討ちにしてやるのにゃ!」
心から楽しいと言わんばかりの様子で再戦を要求するロスヴァイセ、その懐から、ガシャットと思しき物体が僅かに顔を出していた事に、黒歌は気づいていなかった。