「途中までは上手く行ったんだけどにゃぁ…
というか薫、私がトドメ刺そうとしたあの時、瞬間移動したみたいだけど、あれどうやったの?風魔みたいに高速移動した様じゃないし、私みたいにワープした様でもないし…」
「ああ、あれ?あれは私の能力の1つだよ。因果の逆転って奴でね、普通なら『過程』を基に『結果』は導き出される物だけど、この能力で『結果』を予め作って置いて、それを基に『過程』を無理やり作り出したって訳さ」
戦いが終わり、変身を解除した煉王――薫と、既に解除されている黒歌。
京都での英雄派との戦いで、一誠のリプログラミングによって手に入れた絶霧を用いての距離と方角を無視した打撃戦を仕掛けて序盤こそ優勢だったが、薫の問い掛けに態々ネタバラシする等調子に乗った結果敗北した黒歌は悔しさを噛み締めつつ、逆転の切っ掛けとなった煉王の奇襲について、薫に聞いていた。
試合は終わった為か素直に答えた薫、だがその内容に黒歌は、
「え、つまりこういう事?私に向けてあの剣を突き出す『過程』からそれがあたる『結果』になるんじゃなくて、私に直撃する『結果』を作り出して、それを基に剣を突き出す構えのまま瞬間移動するなんていう無理矢理な『過程』を生み出したって訳?何にゃのそのチート!?そんなの避けられる訳無いにゃ!」
「似た様な事やったアンタが言うか。ご丁寧に術式まで仕込んでくれてさぁ…」
少し考えた後、その能力の仕組みに、それがかなり強力な物である事に気づいてツッコミを入れるが、直前まで似た様な事をして煉王をボコボコにしていた彼女がツッコむ資格は無い、薫も盛大なブーメランだとツッコミ返していた。
そんなやり取りをしながらもステージを後にした両者、
「第三試合、兵藤一誠、仮面ライダーエグゼイドVS鬼崎陽太郎、仮面ライダー隷汽!」
残ったゲンムは、続いての試合の開始を宣言した。
続いての試合は一誠――エグゼイドと陽太郎――隷汽、これまた其々の陣営において中心と言って良いポジションに位置する者同士の対決となった。
『マイティブラザーズダブルエックス!』
ゲンムの宣言に応じてステージへと上がった両者は、其々のライダーに変身する準備を始めたが其処で、
「あれ、マイティブラザーズXX?マキシマムマイティXは?」
一誠が起動させたガシャットが予想と違ったのか、陽太郎は疑問を口にした。
「先程までの2試合は確りと見させて貰いました。結果から見ても明らかですが、お二方のライダーとしての、お二方自身の実力は、我々とは比べ物にならない物です。恐らくは貴方も然り。そんな貴方を相手に、レベルの高さに物を言わせたごり押しなど通じません。
故に、小賢しい手で行かせて貰います!」
その答えを隠す事無く、一誠は打ち明けた。
確かにマイティブラザーズXXガシャットを用いて変身するダブルアクションゲーマーレベルXは、マキシマムマイティXガシャットを用いて変身するマキシマムゲーマーレベル99とは、レベルは勿論スペックも大きく劣る。
性能面だけで言えば、この選択は舐めプと言われても否定出来ないだろう。
だがダブルアクションゲーマーには、そんな性能差に目をつぶってでも使おうと一誠に思わせる程強力な特殊能力を持っている(マキシマムゲーマーもリプログラミングという特殊能力を持ってはいるが)。
今回の相手である陽太郎――仮面ライダー隷汽には、高い性能でのごり押しよりも、特殊能力を活かした戦法の方が有効であると考えた上での選択なのだ。
「小賢しい手、ね…
なら僕はその小賢しい手を、ずる賢い手で対応させて貰いましょうか」
そんな一誠の回答に、陽太郎は何処か不敵な笑みを浮かべながらそう応じる。
それをどう捉えたかは微動だにしない表情からは見受けられないが、
「だーい…」
「「変身!」」
『ダブル・ガシャット!ガッチャンガッチャンガッチャーン!ダブルアップ!俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』
『PHANTOM FORM』
両者同時に、変身動作を終えた。
何時も通りの手順でダブルアクションゲーマーレベルXとなったエグゼイドに対し、陽太郎は薫の持つ煉王ベルトとよく似た、だがカラーリングが青黒色である等細部に違いがあるベルト――隷汽ベルトを取り出し、腰に勢いよく巻き付ける。
その先端がバックルに装着されると共に、ディープブルーカラーのボタンをプッシュすると流れ出す汽笛らしき待機音声、それをBGMに定期入れらしきアイテムをバックル部に接触させると、バックル部がディープブルーに輝いたと同時に結晶に似たエネルギーらしき物が放出、それが陽太郎を包むと黒のベースカラーに電車を模した装甲、下半身を覆う黒いローブを有するライダースーツが装着され、周囲に人魂の様な青黒い炎が出現、それらの一部はディープブルーの装甲と化して胸部や両肩、または籠手と化して左腕に、また一部は電車のレールらしき真っ白なマフラーと化して首に装着され、最後に頭部後ろから頭蓋骨を模した装甲が火花を散らしながら眼前まで走り、其処で形状を整えて仮面となった。
「仮面ライダー隷汽、鬼崎陽太郎。渾沌の夢に沈もう」
「仮面ライダーエグゼイド、兵藤一誠!」
「同じく仮面ライダーエグゼイド、ゲノムス!」
「「超協力プレーで、クリアして見せる!」」
一連の流れの末に変身した陽太郎――仮面ライダー隷汽・ファントムフォームは名乗りを上げ、2人のエグゼイドもまた応じた、ゲノムスが変身している水色の方は右腕を、一誠が変身しているオレンジ色の方は
「それでは…試合、開始!」
3人の名乗りを受けて、ゲンムが開始を宣言した事で、第三試合は始まった…!
「今日は俺が行く。ゲノムス、援護は頼むぞ」
『ガシャコンブレイカー!』
「了解、ファザー!」
『ガシャコンキースラッシャー!』
何時もなら水色のエグゼイドが前陣でガシャコンブレイカーを振るい、オレンジ色のエグゼイドが後方でガシャコンキースラッシャーによる銃撃を行うのが定石なのだが、今回はその逆、オレンジ色のエグゼイドが前陣でガシャコンブレイカーを振るう事となった。
「頼むぞ、ドライグ!」
『WelshDragonBalanceBreaker!』
『任せろ、相棒!赤に染まったエグゼイドの出力は3倍だ!』
「いや赤く染まっただけで出力は3倍になりませんから、何処の赤い彗星ですか」
『角も生やした方が良いか』
「いやだから角を生やしただけでも出力は3倍になりませんから!何なんだこの世界のドライグは…」
赤く染まった左腕――赤龍帝の籠手が宿った腕の力を解放、全身を赤に染め、後方からの水色のエグゼイドによる援護射撃を受けて突撃するオレンジ色のエグゼイド、その際にエグゼイドの呼びかけに対してネタ発言全開で応じた
「だけど言った筈ですよ、ずる賢い手で対応させて貰います、と!」
「わっと!?」
だがその進撃は、足元からの思わぬ衝撃に阻まれた。
その衝撃に思わず足元を向くと其処には、
「べ、ベイブレイカー!?何故これが…」
一誠達の世界、その人間界で流行となっている、独楽タイプの対戦玩具――ベイブレイカーがあった。
「ゴー、シュート!」
まさかの存在に意識を向けてしまったオレンジ色のエグゼイド、その隙を突いて隷汽は再び仕掛ける。
何かを射出するらしい装置を手に、何か号令らしき物を叫びながら何かを発射した隷汽、それは案の定と言うべきか何個かのベイブレイカーだった。
「あ、それ壊さないで下さいよ?人間界から取り寄せる為の送料とかが掛かっている所為で決して安くないんだから」
「武器として使っといてナニイテンダアンタ!?」
挙げ句それをガンモードにしたガシャコンキースラッシャーで撃ち落とそうとした水色のエグゼイドに対し、壊れる前提で使っていながら壊すなという隷汽の無茶苦茶な発言には当然と言うべきか、水色のエグゼイドは突っ込んでいた。
今更だが読者の皆はこの手の玩具を人に向けて発射しては行けない、例えそれが仮面ライダー相手であっても。
「呆気ない結末ではあるけど、損失無く終われるに越した事はないからね」
『FULL CHARGE』
フィールドを飛び交って直撃し、或いは地雷の如く足元でバラバラに飛び散る(ベイブレイカーその物の仕様で、壊れた訳ではない)等のベイブレイカーの攻撃に赤いエグゼイドが中々進撃出来ない中、勝負を決めると言わんばかりに隷汽は更に動く。
変身にも用いた定期入れ風のアイテムを再びバックル部に接触、エネルギーを溜める事を示す音声と共に、ディープブルーカラーの電流みたいなエネルギーが、ベイブレイカーの射出装置に流入、それを受けてか射出装置に装填されていたベイブレイカーが黄金に輝いた。
「ガチで行かせて貰います!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
こうしてエネルギーが溜まり切ったベイブレイカーを発射、それは怒涛の勢いで赤いエグゼイドへと突撃、直撃する寸前に何千ものベイブレイカーに分裂し、それらは全て赤いエグゼイドに直撃した。
何千ものベイブレイカーによる四方八方からの攻撃に翻弄される赤いエグゼイド、その衝撃にフィールドに敷き詰められた石畳も耐えられず、削られた粉塵がまき散らされた。
これでエグゼイドは戦闘不能となり隷汽の勝利は決まった、今の光景を見た誰もがそう思うだろう、実際に煉獄義姉弟サイドで観戦している薫、一輝、夏煉はそう思っていた、が、
「ぐっ!やはり、そう上手くは行かないk、かはっ!」
「言った筈ですよ、小賢しい手で行かせて貰います、と!」
粉塵が舞う中で聞こえた打撃音と銃撃音、それらが響き渡った後に粉塵が晴れると其処には、隷汽の右腕に腕挫十字固めをすべく組み付く赤いエグゼイドとそれを振りほどこうとする隷汽、そしてその隷汽に銃撃をする水色のエグゼイドがいた。
「え、エグゼイドが何とも無いといわんばかりにピンピンしている!?」
「陽太義兄さんの必殺技はあの赤い方のエグゼイドに直撃した筈…!」
「一体何故…!?」
隷汽の必殺技が直撃したにも関わらず平然と組み付いている赤いエグゼイドに信じられないといった様子の薫達、朱乃達もその訳を聞いていたとは言え実際に見るのは初めてだった為か驚いた様子を見せる中、
「あれこそ今回の試合でイッセー君がマキシマムマイティXガシャットではなくマイティブラザーズXXガシャットを選んだ最大の理由、イッセー君が言っていた『小賢しい手』を体現したシステム。名付けて『SMS』です」
1人だけ訳を見知っていた祐斗はその訳を説明した。
「SMS?それは一体…」
「SMS、それは新世紀エヴァンジェリオンに登場した第七使徒の力にヒントを得たイッセー君が組み込んだシステムで、オレンジ、今は赤か、そのエグゼイドと水色のエグゼイド、互いの身体のあらゆる部分を常時比較し、良い状態の方を選んでそれをコピペするシステム。そのタイムラグは1ナノ秒、10億分の1秒。その極わずかなタイムラグに間に合う様に、同じ部分に攻撃するしか、ダブルアクションゲーマーにダメージを与える事は出来ないという事ですよ」
その説明に信じられないといった様子を見せる薫達、そうこうしている内にも試合は続いていたが、ある意味膠着状態と言うしかない状態だった。
赤いエグゼイドによる腕挫十字固めを振りほどこうと抵抗していた隷汽だったがそれも空しく両腕を固められ、攻勢に出られなくなってしまった一方、ならば盾にしてしまえと言わんばかりに水色のエグゼイドからの攻撃を赤いエグゼイドでブロックする、と、互いに有効打を与えられない状態に陥っていた(盾にされた赤いエグゼイドはSMSの恩恵もあってノーダメージ)。
「膠着状態、か。どうです、この試合、ドローにしませんか?」
「ドロー、ですか」
そんな状況が変わる事は無いと感じた隷汽は、そんな提案をした。
「ええ。さっきから攻撃を仕掛けている、ゲノムス、でしたか?彼の様子からして、この状況を打開出来る手は無いと見ました。一方で僕も、両腕を固められている状態では手を打てません。さっきからゲノムスによる攻撃を利用して振りほどこうとしているが、貴方の拘束は固すぎて振りほどける気がしません。つまり、互いに勝てないし、負ける事も無い。ドローとするのが妥当な結末だと思うのですが」
「そうですね。ゲノムス、お前はどう思う?」
「僕もそれが良いかな、打つ手無いのは事実だし」
「なら、決まりですね」
お互いに打つ手は無く勝ちもしなければ負けもしない、ならばドローとすべきという隷汽の提案に応じたエグゼイドは拘束を解除、両者同時に変身を解除した。
「この試合、ドロー!」
それを受けてゲンムも、ドローを宣言した。