ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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8話_少女のSneaking

一誠が手にした有益な情報とは一体何なのか、その答えは、時間を遡って明かす。

一誠と分かれ、この街の教会へと向かっていたシスターの少女とギリル、

 

「そういえば自己紹介していなかったわね。パパとの話を聞いていたなら知っているかもしれないけど、私の名はギリル。貴方は?」

「アーシア・アルジェントと言います。ギリル、さんでいいんですよね?」

「ええ。もしかして変わった名前だと思った?」

「い、いえ!そんな事は!」

「良いのよ。人からビックリされる様な名前だって理解しているから」

 

その道中で互いに自己紹介した際、少女――アーシアは、ギリルの名前に何処か違和感を持った。

それを見抜いたギリルに指摘されて慌てて否定していたが、ギリル自身もそんな反応は理解していて、気に留めてはいなかった。

そんな微妙な雰囲気が漂う中、2人の耳に男の子らしき泣き声が聞こえて来た。

 

「あっ」

 

その声が耳に入るや否やその方へと駆け寄って行くアーシア、ギリルがアーシアの方へと向くと、其処には泣き声をあげていた男の子にアーシアが一言掛けながら、手をかざしている姿があった。

どうやら転ぶか何かして膝を怪我した様だ、アーシアがかざしていた手が淡い光に包まれると、その怪我が瞬く間に治って行った。

 

「…神器、それも回復系の物みたいね。確かあれって『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』だったかしら?」

 

その様子を見たギリルは、今起こった現象が神器による物だと想像がついたらしく、そう呟いた。

それを知ってか知らずか、治療を終えたらしいアーシアがギリルのもとへと戻って来る、その様子は何処か複雑そうだったが、

 

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 

怪我が治った男の子の、心からのお礼の言葉と笑顔で手を振っている様を見て、それも晴れた。

 

「ありがとう、って言っているわ」

「はい。すいません、ついお節介を」

「良いんじゃないかしら?人として素晴らしい事だと、私は思うわ」

「あ、あのギリルさん、聞かないんですか?」

「何か、聞いて欲しかった事でもあるのかしら?」

「…あの力の事です」

 

そんな一幕を経て、再び教会へと歩み始めたギリルとアーシア、その最中に先程起こった事に付いて何も気にしていない感じのギリルが気になったのか、アーシアが訊ねて来た。

 

「ああ、あの神器ね?知っている事を態々問い質すなんて失礼な真似はしないわ。見た感じ、あの神器に対して複雑な感情を抱いているみたいだったし」

「い、いえ、そうでは無いんです!この力は神様から授かった物、この力を授けられた事は私の誇りです。ただ…」

 

ギリルは先程ぽつりとつぶやいた通り、あの光景がどの様に引き起こされるかを知っていた、その後に複雑な表情を浮かべていた事もあってギリルは問い質さなかったのだ。

何も聞かなかった事に対して訊ねて来たアーシアにそう返したギリル、だがアーシアが複雑な想いをしていたのはギリルが思っていたのとは違った様子だった。

 

「成る程、その力に関して誰かに良くない反応をされた訳ね。大丈夫よ、私はそうは思わない。心優しい貴女に似合った、素敵な力だと思うわ」

「あ、ありがとうございます」

 

その様子から、あの複雑な表情にさせる何かがあった事を察したギリルのフォローが入りつつ、2人は教会への歩みを進め、

 

「此処よ」

「良かったぁ!やっと着きました…」

 

数分の後、2人は教会に到着した。

 

(思っていた通りの惨状ね、もう何年も管理されていないという事実が見え見えじゃない。こんな場所に『聖母の微笑』を持ったシスターの少女が赴任するなんて、如何にも何か企んでいるって言っている様な物ね。さてそれが天使陣営による物か、或いは…)

 

目的地である教会の現状を見てそんな感想を抱いたギリル、彼女が思う様に、教会は外壁の所々がひび割れ、至る所に蔦が絡まり、庭には雑草が生い茂る…

そんな如何にも暫く手入れされていませんでしたと言いたげな様相を呈していた。

そんな管理を放棄してもう何年も経った状態の教会に、今更アーシアが赴任したという事実に直面したギリルの警戒心は跳ね上がっていた。

 

「あ、あの、ギリルさん。もし宜しければ、此処まで案内して頂いたお礼をさせて貰いたいのですが…」

 

そんなギリルの様子を知ってか知らずか、そう声をかけて来たアーシア。

 

(彼女の好意を悪用する形で申し訳ないけど、教会内に潜り込める理由が出来たわね。パパからも調べて来る様に頼まれていたし、此処は甘えましょう。それに…)

「お礼なら一先ず保留にして置いて。それよりも、身の回りの部分だけでも掃除して置くわ。年頃の女の子がこんな環境のままで生活していたら駄目よ、アーシア」

「え、良いんですか!?幾ら何でも其処まで…」

「良いのよ。この街で知り合ったのも何かの縁だから」

 

その申し出を渡りに船、と乗る事にしたギリルだったが、今現時点での教会の惨状は流石に見るに堪えない物だった様で、渋るアーシアを他所に清掃を始めた。

 

------------

 

「ふぅ。これで一先ずは大丈夫そうね」

「ありがとうございます、ギリルさん!案内して頂いたばかりか、掃除まで…

あ、お茶をどうぞ」

「ありがとう、アーシア」

 

それから数時間掛けて、一先ずアーシアが生活する場になるであろう部分の掃除を終えたギリルは、アーシアが淹れたお茶を貰い、一服していた。

 

「何から何までやって頂いて、ありがとうございました、ギリルさん。どうお返しすればいいか…」

「其処まで気負う必要は無いわ。案内は元々パパから頼まれた事だし、掃除は私がしたかっただけだし」

 

自らもテーブルに座りつつ、ギリルに礼を言うアーシア、どうすれば良いかと気負った様子のアーシアに気にするなとギリルは返した。

 

「ギリルさん、その『パパ』って、先程私の事を助けて頂いた方ですよね。あの方にも後でお礼を言わないと。ギリルさんとは知り合いの様ですが、どんな…」

「文字通りの意味よ、アーシア。パパ――兵藤一誠は、私の父よ」

「え」

 

その中で出て来た一誠の存在が、転んだ自らを助けてくれた存在であったこともあって気になったアーシアはギリルに一誠との関係性を訊ねたが、返って来たのは(彼女にとって)意外な言葉だった。

アーシアと同じ位の背丈ながら出る所は出ている体躯に、何処かクールで大人びた雰囲気も相まって、とても一誠の娘とは思えなかったからだ。

無論、一誠の『単なる』娘ではないのだが…

 

「その話は今度ね。また会いましょう、アーシア。パパや私へのお礼は、その時までに考えていて」

「わ、分かりました!今日は本当にありがとうございました、ギリルさん!また今度、お会いしましょう!」

 

その事実に驚きを隠せないアーシアの姿に苦笑いを浮かべながらアーシアに別れを告げたギリル、アーシアからの送り迎えを受けながら、教会を後にした。

 

「…何時までこそこそと、後を付けているつもりかしら?」

 

その道中、羽織っていた白衣を瞬時に脱ぎ『肩まで鈍色の装甲で覆われた』両腕で構えを見せながら、背後に向けてそう告げた…

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