「さて、イッセー。昨日転生してから直ぐで悪いけど、今日から貴方には契約を取りに行って貰うわ」
一誠がアーシアと接触していた事に関して色々と動きがあってから数時間が経過した真夜中のオカルト研究部の部室、其処でリアスは一誠にある事を指示した。
此処で、悪魔がどうやって生計を立てているかを説明しよう。
今でこそ、人間界で行われている様なビジネスを展開している悪魔も少なくないが、基本的に悪魔は人間等の願いを叶える代わりに魂を対価として奪っていく存在である。
その手にした魂、言い換えるなら寿命を糧としているのが悪魔という種族なのだ。
といっても今は、魂の代わりに金品を代価とするケースも少なくないが。
「うふふ、流石はイッセー君と言うべきでしょうか?眷属になって直ぐに契約を取りに行けるなんて。本来なら眷属になって暫くはチラシ配りとかの下積みをするのですけれど」
「そうね、朱乃。本来はそうして貰うつもりだったんだけど、エグゼイドとして、バグスター達の生みの親として人知れずこの街を守ってくれたイッセーには、そういう下積みは要らないと考えたの」
「ありがとうございます、部長。精一杯、頑張らせて頂きます!」
それはともかく、昨日眷属となったばかりの身で契約を取りに行くというのはかなり異例らしく、それだけ一誠の実力を、実績を買っている事の現れと言えよう。
「それでは、依頼者の元へ転送する為の術式をイッセー君に記しておきますわね。さあイッセー君、お手をお借りしますわ」
「はい、朱乃先輩。どうぞ」
その期待に応えたいという意気込みに満ちた返事をした一誠、其処に筆らしき物を持った朱乃が歩み寄り、一誠が差し出した左手の甲に何かしらの図式を書き込んでいた。
「これでOKですわ。これで依頼者からの呼び出しによって転移、依頼者の元へと一瞬で行けますわ」
「さあ、魔法陣に立って。其処から依頼者の元へと転移するわ」
「分かりました。では行ってきます!」
程無く図式は書き終わり、2人に送られて一誠は魔法陣の中央に立ち、転移、
「…ん?」
「あ、あれ?」
出来なかった。
「おかしいわね、転移術式は発動された筈。後は僅かな魔力さえあれば転移は出来る筈なのに…」
「リアス、考えたくはないのですが、イッセー君には転移に必要な魔力すら足りていない、とか…」
「ゑ?」
想定外の事態に困惑しているリアスと一誠、其処に朱乃が、この事態の原因に思い当たった。
「つまり、俺は自分の足で依頼者の元へ行くしかない、という事ですか…?」
「という事になるわね、イッセーの実力からして、考えたくはないけど…」
転移に必要な『僅かな』魔力すら持っていない事が判明した一誠、つまり自分の足で依頼者の元へと出向かなければならず、このままでは依頼者を大いに待たせてしまう事になり、結果として依頼者の心象に悪影響が及び、契約が難しくなってしまう。
「俺の到着を待っている依頼者がいる以上、やむを得ないか。頼むぞ、モータス!」
『バクソウバイク!』
だが一誠には『辛うじて』足があった。
「よっと!どうした、オトン?」
ふと外に出た一誠が懐から取り出した黄色いライダーガシャット、それを起動すると、一誠の背後に『BAKUSOU BIKE』の文字と荒野をバイクで駆け抜けるライダーがデカデカと映ったスクリーンが出現、其処からバイクの駆動音と共に何者かの影が飛び出し、一誠の眼前でターンを決めた。
一誠がモータスと呼んだ影の正体は、背中から
「す、スクリーンから出て来た!?一誠、まさかその、彼?もバグスターかしら?」
「おうよ!アンタがオトンの主人だそうだな。俺様の名はモータス、バクソウバイクに出て来るレーサー、モータスをベースとしたバグスターだ!以後、夜露死苦ゥ!」
「ば、バクソウバイクのモータスを基にしたバグスター…
どうりで見た目とか喋り方が荒っぽいですわね」
「モータス、小説である事を利用して無理矢理ヤンキー感を出すな…
おっと、パトロール中に呼び出して済まないが、此処まで送ってくれないか?」
「お安い御用だぜ、オトン!俺様のモータスヴァイパーは、F1より速いぜ!」
突如として現れたモータスに驚きつつもその正体を推測したリアス、彼女の言う通りモータスもまた一誠が生み出したバグスターの1体で、これまた一誠が開発したゲームの1つ、爆弾を投げたり銃器を乱射したり、鈍器でぶん殴ったりいっその事体当たりを決めたり、とにかく何でもアリなルールのバイクレースでトップを目指すバクソウバイクのライバルレーサーを模した存在である。
そんなモータスのヤンキー感を無理矢理出した様な言動にメタ発言で突っ込みを入れつつ、呼び出した訳を伝える一誠、それにモータスが快諾したのを受けて後部座席に乗り込んだ。
「改めて行ってきます。部長、朱乃先輩」
「気を付けるのよ、イッセー。モータスも、イッセーの送り迎え頼んだわよ」
「行ってらっしゃいませ、イッセー君。初めての契約、頑張ってくださいね」
「勿論だ!風になるぜェェェェ!」
一誠が後部座席に乗り込み、リアスに出発の挨拶をした事を確認したモータスは、いきなりフルスロットルで校庭を飛び出していった。
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「到着っと!此処だろ、オトン?」
「ああ。流石だなモータス、ほんの数分で到着するとは」
「おうよ!俺様はオトンが生み出した最強最速のバイクレーサーだからな!」
「本当に助かった。それじゃあ、行って来る」
「おう、行ってらっさい」
学園を飛び出してから僅か数分、一誠を自らの愛車であるモータスヴァイパーの後部座席に乗せて出発したモータスは迷う事無く、依頼人が住んでいる家屋へと辿り着いた。
「御免下さい」
『え?ど、どちら様ですか?』
「ご依頼を承りました、リアス・グレモリーの眷属の者です。転送の際にトラブルがあり、玄関よりお伺いする事となりました」
「さて、俺もパトロールに戻るとしま…」
一誠が依頼主らしき声に事情を説明し、家屋の中へと入って行ったのを見届けたモータスは、パトロールに戻ろうとモータスヴァイパーのエンジンを掛けようとした、その時だった。
「んぁ?何だテメェら、こんな真夜中に何うろついてやがんだ?」
モータスの目の前で、聖職者ですと言いたげな恰好をした男女が現れ、彼の方へと近づいて来たのだ。
今朝方ギリルがアーシアと接触し、その帰り道に襲われた件はモータスも周知の通り、そんな状況下で聖職者の恰好をしてうろつく等、余程のバカ或いはその手の存在としか考えられない。
そう思い立ったモータスは、モータスヴァイパーに忍ばせていたバールの様な物を掴みながら、ヤンキー感丸出しの口調で威嚇するが、
「クソ悪魔の番犬には天誅ってねェェェェ!」
「ふ、フリードさん!?」
「うおっ!?」
返って来た反応は余りにも斜め上な物だった。
威嚇するモータスの姿を認識するや否や、2人組の片方である白髪の男――フリードが何処からともなく取り出した光の剣をモータスへと振り下ろしたのだ。
「あっぶねぇなテメェ!いきなり何しやがんだゴルァ!」
辛うじて掴んでいたバールの様な物でのガードに成功したモータスだったが、突然斬りかかられた事に激昂、フリードに反撃を仕掛ける…!