「え、その、それはつまり」
「女である私に言わせる気なの?ほら『思い立ったが吉日ならその日以降は全て凶日』なんて何処かの美食屋が言っていた格言もあるでしょう、早く着ている物を脱いで」
自分の処女を貰って欲しい、そんな寝耳に水とはこういう事だと言わんばかりのリアスの発言に固まったままの一誠を他所に服を脱ぎだすリアス。
が、
「落ち着いて下さい、部長!」
このまま、されるがままではきっと取り返しのつかない事態になってしまう、そんな考えが頭を過ぎり、リアスの両肩を掴んで動きを止めた。
「部長の身に今、何が起こっているのか、それは漠然としか分かりません。それこそ俺達眷属には手に負えない事態かも知れない。だからと言って自棄を起こしてはいけません!」
「わ、私は自棄なんて」
「如何にも思い詰めた表情の何処が自棄を起こしていないと言うんですか!?」
「っ!」
急に動きを止められて思わず怯んだリアス、そんな彼女に一誠は必死と言いたげな様子で説得を行った。
事実、リアスの表情からは一誠の言う通り思い詰めた様子がにじみ出ていた。
彼女の身に降りかかっている事態が、余程の物だという事の表れだろう。
「ご、御免なさいイッセー、私…」
そんな一誠の姿で我に返り、己がやろうとしていた事の重大さを認識し、巻き込んでしまった一誠に謝罪しようとするリアス。
其処へ、
『エマージェンシー!エマージェンシー!部屋内を到着点とした未確認存在による転移反応を確認、遮断しました!安全の確保をお願いします!エマージェンシー!エマージェンシー!部屋内を到着点とした未確認存在による転移反応を確認、遮断しました!安全の確保をお願いします!』
「何、侵入者か!?」
「転移反応ですって?まさか…!」
先程一誠が連絡を取ったばかりのポッピーの声による、家の住人達への警報音声が流れた。
内容からして侵入者と思しき物、それに直ぐ様臨戦態勢に入る一誠に対して、その侵入者に心当たりがあると言いたげな反応を見せたリアス。
そんな彼女の反応を、一誠は見逃さなかった。
「その反応からして、部長の知り合いが来た、という事ですね。もしや部長の悩み事は、その知り合いも関わっている、という事ですか?」
「へ?え、ええ」
「後でどういう訳なのか、聞かせて頂きますよ。まずはその知り合いの方と話を付けましょう」
一誠の指摘が図星だったのか、思わず肯定したリアス。
彼女に事の真相を後で話す様に求めつつも、今は知り合いらしき侵入者への対処が必要、そう思い立ち一誠は家を出る。
其処では、
「さ、サーゼクス様!?何故この様な所に!?」
「ん?サーゼクス?ああ、どうやらこのイケメン君は貴女の知り合いの様だね」
「ラヴリカか、随分と早い到着だな」
「おお、お父様。偶々この近辺を通りかかった所で警報を受信しまして、直ぐに駆けつけた次第です。その直後に目前のご婦人が、魔法陣らしき物から現れましてね。どうやら彼女が警報で感知した存在の様ですが、如何いたしましょう?」
銀髪でメイド服の、某弾幕シューティングゲームの自機を経験した事のあるキャラそっくりな女性――グレイフィアと、赤髪で黒いスーツを纏う、リアスと何処か似た顔立ちの男性が対峙していた。
「ラヴリカ。どうやら其処の女性、部長とは知り合いの様だ。そうですよね、部長?」
「グレイフィア!そ、それにお兄様!?」
「おや、これはこれはお父様の主殿。このイケメン君は主殿の兄上殿でもありましたか。誤解を招いてはお父様の立場に関わるか。ならば、培養!」
其処にリアスも到着、対峙していた両者ともにリアスの関係者(の姿)だった事もあって驚愕していた。
その姿を見て大いに驚いた2人の姿を見た男性は、父と慕う存在の主の兄(の姿)である自分という存在が誤解を生みかねないと判断し、
「ふむ、偶にはバグスターとしての姿も悪くない」
「さ、サーゼクス様!?そのお姿は!?」
「お、お兄様がバグスターに!?」
「お二人共、落ち着いて下さい。ラヴリカが変身していた、あの男性の姿を解除しただけです」
掛け声と共に両手を広げるポーズを取る、するとその身からピンク色の泡が湧き上がり、薔薇の花束型のオーラが放たれると共にその姿は右肩から花束を『生やし』た、白とピンクを基調とした服装に身を包んだ異形――ラヴリカへと変貌した。
「お初にお目にかかります、レディ達。私の名はラヴリカ。以後、お見知りおきを」
「え、ええ。宜しくね、ラヴリカ」
「あ、はい…
おっと、本題を忘れる所でした。まさかこの様な場所にまで来て破談に追い込むつもりですか、お嬢様?」
「こうでもしないと話し合いにすら応じないでしょう?尤も、一誠のお蔭で頭の滾りも収まったわ」
突如として変貌したラヴリカの姿に戸惑いつつも、彼の自己紹介に応える2人、そんな挨拶を早々に済ませて、グレイフィアは本題を切り出した。
「貴方がお嬢様を止めて下さったのですね。私はグレモリー家にお仕えする、グレイフィアと申します。此度はお嬢様がご迷惑をお掛けしました」
「いえ、眷属として当然の事をしたまでです」
どうやらリアスの暴走を、行きついた先を素早く察知していた様で、それを止める為に転移魔法によって一誠の部屋へと行こうとしたらしいグレイフィア、兵藤家に張り巡らされたセキュリティ網の前に阻まれはしたが、結果的に一誠が止めて事なきを得た。
その事にお礼を言うグレイフィアに対し、一誠は礼には及ばないと返した。
「お嬢様、それでは」
「ええ。一度根城に戻りましょう、話は其処で聞くわ。朱乃も同伴で良いかしら?」
「『雷光の巫女』ですね?構いませんわ。王たる者、女王を傍に置くのは常ですから」
一誠の説得によって冷静になり、一方のグレイフィア(というよりグレモリー家全体)もリアスを追い詰めていた事を思い知ったのか、どうやら話し合いの場が設けられた様で、その場に移るべく転移していく2人。
「イッセー」
その別れ際リアスは、
「今日は本当にありがとうね。明日、部室で全て話すわ」
「は、はい」
一誠の頬にキスをし、そう彼に告げた。
「ふむ。お父様の神の如き魅力に惹かれし女性がまた1人、といった所か」
突然のキスに固まる一誠の姿にラヴリカは、微笑ましそうな様子でそう呟いていた。
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「では、私はパトロールに戻ります。お休み下さい、お父様」
「あ、ああ。お休み、ラヴリカ」
2人が転移したのを見送ってから暫くして、一誠とラヴリカも別れる事にし、ラヴリカはパトロールに、一誠は就寝の為に部屋へ戻って行った。
「部長は悪魔勢力のトップである魔王様の妹、となれば悪魔社会における立場も相当な物だろう。今回の件も、その立場故に生ずる政治的な物かも知れない。ラヴリカが駆け付けてくれたのは逆効果だったかも知れないな、悪魔勢力のお偉い方にバグスターの存在が知られかねない事を鑑みると」
部屋に戻り、リアスからのキスというサプライズによる動揺も収まり、今後起こりうるであろう事態を見据える一誠。
「そろそろ新たなるライダーが、新たなる『切り札』が必要になったか。現時点で未完成のライダーガシャットも少なくない、開発作業のペースも上げなくてはな」
そう呟きながらクローゼットの扉を開けた一誠、其処には彼が何時も装着しているそれとは別の、10台ものゲーマドライバーに、普段持ち歩いている3つのガシャットとは別の、計18個ものガシャット、更には剣、銃、弓、斧、手裏剣、ゲームパッドの様な形状の計8つのガシャコンウェポンがあった。
その中から、他と比べて大柄な形状の『DOCTOR MIGHTY XX』とラベルに記入された白いガシャットを取り出し、
「パラド。暫くお前には頑張って貰わなくてはならないな」
そう、言葉を向けた。