それから時は経ち、レーティング・ゲーム当日の夜11時半。
オカルト研究部の部室に集結したメンバー達は、今回のレーティング・ゲームの審判役を務める事となったグレイフィアの呼び出しを待っている間、其々の行動をとっていた。
「そうだ木場祐斗、その剣だ。良い剣さばきじゃないか」
「まだまだ行くよ!」
祐斗はグラファイトとの剣による打ち合いを、
「そうよ、白音ちゃん。相手の行動を読み取り、最も有効な行動を返す。戦いの基本よ」
「はい、ギリルさん!」
白音はギリルと組手を行なっていた。
2人共に前線に立って戦う存在故か、最後まで鍛錬を怠らない。
一方、
「…」
「アーシア?先程から震えている様だが、大丈夫か?」
メンバーの中で唯一シスター服を着用しているアーシアは、先程から持っていたアミュレットを握ったまま震えている、そんな彼女が心配になったのか、一誠は声を掛けた。
「イッセーさん。はい、その、今更ながら怖くなって来てしまって…」
そんな一誠に、震える訳を話すアーシア。
無理もない、レーティング・ゲームは、死ぬ可能性が殆ど無いとは言えど、それ以外は戦争と変わりないのだ、唯でさえその様な場に直面した事が無い上に、心優しい彼女の事だ、その事実に今更ながら恐怖と不安を覚えるのは是非も無い。
「気にする事は無い、アーシア。俺も、いや俺達もレーティング・ゲームは初めてだ。何時ものはぐれ悪魔の駆除とは勝手が違う、その点に関して不安はある。
だが大丈夫だ。俺が、木場が、白音ちゃんが、黒歌先生が、朱乃さんが、そして部長がいる。もし俺達と分断されたとしても、ラヴリカが、ポッピーが君の盾となる。それでも不安な気持ちが晴れないなら、皆と一緒にその不安と向き合うと良い。大丈夫、君は1人では無いのだから」
「1人じゃない…!
は、はい、イッセーさん!ありがとうございます!」
そんなアーシアの気持ちを察し、彼女が1人では無い事を告げる一誠、それは初めての戦場へ赴く不安が晴れなかった彼女には、過去聖女として祭り上げられてから最近までずっと1人だったと言っても過言では無かった彼女には、これまでにない程の激励だった。
「あらあら、何だかアーシアさんが羨ましいですわ。思わぬライバルの登場、といった所でしょうか。ね、白音ちゃん?」
「あ、朱乃先輩!?何で其処で私に振るんですか!?」
「なーに今更照れちゃってんのにゃ、白音?アンタ、イッセーにお熱なんでしょ?」
「ね、姉様まで!?い、いや、それは、その…」
「おや、黒歌さんはそうではない、と?」
「まあ、どうかにゃ?そりゃあ頭脳明晰で、身も心もイケメンで、それでいて子供心を忘れない男と来れば、白音が熱を上げるのも分かるけどね」
「イッセーにお熱、か…」
そんな2人の様子を、リアス、朱乃、白音、黒歌、そしてバグスターとしての姿となっているラヴリカが微笑ましい様子で見守っていて、その後彼女達の恋に関する話題で盛り上がっていた。
いや一部はそうでは無かった、此処にいるメンバーの主人であるリアスは、一誠を見つめながらも、何処か心ここに在らずといった様子である。
其処へ、
「皆様、準備は宜しいでしょうか?開始10分前になりました」
「ええ、グレイフィア。準備はOKよ」
「開始時刻になりましたら、こちらの魔法陣から戦闘用のフィールドへと転送されます。異空間に作られた使い捨ての世界ですので、思う存分戦って頂いて構いません」
審判役であるグレイフィアが転移され、事前連絡を伝えて来た。
「今回のレーティング・ゲームはグレモリー家とフェニックス家の皆様の他、魔王サーゼクス・ルシファー様を始めとした上層部の方々も、他の場所より中継で拝見されます。お忘れなき様」
「お兄様達が…!
分かったわ、グレイフィア」
その際にリアスの兄であり、魔王でもあるサーゼクスがこのゲームを見ていると聞き、俄然気迫が漲って来たリアス達。
「さあ私の可愛い眷属達、準備は良い?いよいよ不死身で知られるフェニックス家においても将来有望な才児ライザー・フェニックスとのレーティング・ゲームが始まるわ。言うまでもなく私達にとって初めてのゲームよ。だけど朱乃、祐斗、黒歌、白音、アーシア、そしてイッセー…
貴方達がこの10日間で得た力は、仮面ライダーの力は確かに身になっている筈よ。貴方達がそれを信じて立ち向かえば、私達眷属とバグスター達の力を合わせて立ち向かえば、敵わない敵じゃないわ。全力で勝ちにいきましょう!」
『はい!』
円陣を組んで決起の言葉を述べたリアスの口調からも、それが分かる。
それを受けて気合十分となったメンバー達は、開始時刻になると共に魔法陣へと乗り、部室を後にした。
――――――――――――
と思いきや、
「…部室?」
一誠達の目に入って来た光景は、先程と変わらぬオカルト研究部の部室その物であった。
先程と何ら変わらない光景に、転移に失敗したのではないかと訝しむ一誠だった、が、
「っ!名状しがたい色合いの空…
成る程、駒王学園を模した異世界という訳か」
その謎は、窓に映る『何時もとは違う』光景を見た事で解けた。
そう、一誠達が転移された空間、今回のレーティング・ゲームの舞台となったのは、駒王学園の敷地を模した異世界だったのだ。
(俺達も舐められた物だ。大方、俺達が勝てる可能性など無いと踏んで、ならば言い訳させない様、仕方ないと諦める様、ホームアドバンテージ等の優位な環境を敢えて与えようという魂胆か。良いだろう。なら、そのふざけた幻想を
『皆様。この度グレモリー家とフェニックス家の試合において
この場所が舞台となったその真意を見抜き、戦意を高める一誠、其処にグレイフィアのアナウンスが聞こえて来た。
『両陣営が転送された、現在いる地点が其々の本陣でございます。リアス様が旧校舎の、オカルト研究部の部室。ライザー様が本校舎にあります、生徒会室となっております。両陣営の
此処で言う昇格とは、悪魔の駒のベースとなったチェス同様、兵士が他の駒の力を得られるシステムであり、騎士に昇格すれば圧倒的な素早さを、戦車であれば驚異的なパワーを、僧侶であれば膨大な魔力を得られ、女王に昇格するとなるとそれら全てを得られると言う訳である。
リアスの眷属で兵士は一誠のみ、一方でライザーの眷属はフルメンバー、つまり8人もの兵士にその可能性があると言う訳だ。
「皆、これを着けて。これで通信が可能になるわ」
『はい』
そんな説明がされている最中リアスが眷属達に、通信機の機能を有しているらしい光の球を配布した。
戦争において情報手段の確保は必要、それはレーティング・ゲームでも変わらない。
『チャイムが鳴り次第、開始となります。制限時間は人間界の夜明け、午前5時までとなっております』
そしてグレイフィアが説明を終えた直後、駒王学園でいつも聞くチャイムの音色が、ゲーム開始の合図が、鳴り響いた…!
「始まったわね。さてイッセー、貴方が思い描く作戦を聞かせて貰っても良いかしら?」
「お、俺ですか?」
「ええ、貴方よ。ゴリ押しが一切効かない硬派なストラテジー『ハコニワウォーズ』に、臨機応変さも求められるタワーディフェンス『ホームガーディアン』…
こんなやり応えのある名作シミュレーションゲームの数々を作り上げた貴方の考えを聞かせて欲しいわ」
レーティング・ゲームが開始され、作戦会議を始めたリアス、その場で彼女は、一誠の考えを尋ねた。
彼女が挙げたゲームもまた一誠が開発し、IS名義で世に送り出された名作ゲーム、それを作り上げた彼の戦略眼に期待したのだろうか。
「分かりました。ではまず、今回の戦いにおいて厄介なのが、中央に配置されている体育館ですね。此処は学園全体を満遍なく見渡せ、其々の地点へ素早く進撃出来る、拠点としては最適な場所です。故に相手は最優先で此処を確保しようと動く筈、取られてしまっては此方は動きにくくなります。とは言え仮に此方が確保に成功したとしても、それを維持出来る程人員に余裕はありません。此方の人員は7人、焼き鳥野郎の眷属の半数弱です。
ならば、いっその事潰しましょう。此処を焼き鳥野郎側の何人かが占拠した所を叩く、これで行くべきかと思います」
彼女からの指名を受けて、己が考えていた作戦を披露する一誠。
「次にその近辺にある、この森林地帯です。此処は鬱蒼としていて視界が悪い、故に敵に気付かれずに本拠へと襲撃する事も不可能ではありません。だが逆に言えば、気付かれる事なく襲撃する事も可能です。其処で此処には罠を仕掛けて、此処から近づいて来るであろう者達を嵌め、一網打尽にしましょう。
それとあの焼き鳥野郎、公式戦では主に、兵士等を囮として前線に送り、相手が疲弊したり油断したりした所を女王等のエースメンバーで潰すサクリファイス戦法を用いている様です。となると、こういった要所の近辺に向かわせる筈、其処を突けば相手の戦略は崩れる筈です。
そうなれば相手は戦略の立て直しの為に暫く動きを止めるでしょう。だがそれこそ俺達が望むシチュエーション、その間に俺達は強化を終えられ、万全の体制で総攻撃を仕掛けられます」
「良いわね、イッセー!分かったわ、その作戦で行きましょう!」
説明が終わった一誠の作戦、それはリアスの絶賛を受けるには十分な物、直ぐに採用された。
「そしたら一誠と白音は体育館に向かって。囮とするにしても、何も手を付けないのでは相手も怪しむでしょう。故に2人には、体育館を確保する『振り』をして貰うわ」
「了解です、部長」
「分かりました!」
「祐斗と黒歌は森の方を頼むわ」
「はい、部長!」
「了解にゃ、リアス」
「朱乃はエースメンバーの狙撃と、体育館の破壊をお願い」
「分かりましたわ、リアス。この『バンバンシューティング』で、狙い撃ちますわ!」
「アーシアは此処で私と待機していて」
「分かりました、部長さん!」
その作戦をベースとして各メンバーに指示を送るリアス、それを受けて各員は其々の行動を開始した。