ある日の夜、普段なら悪魔としての活動もひと段落して後は眠りにつくのみと言っても良い深夜頃、この日は悪魔関係において非番だった一誠はリアスから呼び出しを受けた。
何でも大事な用事があるらしく、来る際には予備のゲーマドライバーと、ドクターマイティXXガシャットも持って来る様にと、持ち物の指定まであった。
指定された持ち込み品からして、もしや新たなる眷属を迎えたのか、その眷属をもライダーにしたいとリアスは考えているのだろうかと、一誠は考えを巡らせたが、会えばわかるかと結論づけ、彼女が待っているであろう旧校舎前へと駆けつけた。
「お待たせ、リアス」
「ごめんねイッセー。こんな夜分に呼び出しちゃって」
案の定そこではリアスが待っており、急な呼び出しをした事に対して済まなそうにしていた。
尚、一誠が年上であり、学校の先輩であり、主人であるリアスに対して何故呼び捨てにした挙句、タメ口で接しているのかと言うと「恋人同士になったのに、他人行儀みたいな接し方はやめて欲しいわ」とリアスから要望された為で、一誠もあっさりと応じたからだ。
「それでリアス、大事な用とは何だ?予備のゲーマドライバーとドクターマイティXXガシャットを持って来いと言っていたが…」
「目的の場所に向かいながら話すわね。こっちよ」
到着した一誠が、指定した物を持っていたのを確認したリアスは、用件を尋ねる一誠を案内しつつ、話し始めた。
「隠していた様でごめんね。一誠とアーシアには説明していなかったけど、実を言うと私には、アーシアの他にもう1人の僧侶がいるの」
「他にもう1人!?白音ちゃんも朱乃も言っていなかったぞ…
バグスター達もその様な情報を掴んでいなかった筈だが…」
「まあ、流石のバグスター達も把握出来ないのは無理もないわね。その子、とある理由から私には扱いきれないだろうと考えたお兄様の指示で、とある部屋で厳重に封印されていたの。その封印は人も気配も遮断してみせる強力な物、インターネットを通じた侵入をも力づくで排除する代物だものね…」
其処で一誠は、自分達の他にもう1人の眷属がいる事を初めて知らされた。
その事実に、こういった情報収集においては右に出るものはないと思っていたバグスター達をもってしても入手出来なかった情報がかなり身近にあった事実に驚きを隠せない一誠、その眷属に掛けられた封印はそれだけ強固な物であったのだろう。
「尤もその封印は夜遅くになれば部分的とはいえ解放されるの。だからその子は、今の時間であれば旧校舎限定とはいえ部屋の外に出られるのよ。尤も本人が出たがらないんだけどね…
逆に言えば、この夜遅くであれば私達が直に接触する事も出来ると言う事。其処でイッセーに、その子の件をお願い出来ないか、と考えたの」
「成る程、つまりその眷属が厳重に封印される原因――リアスの話からして強大過ぎて自分自身ですらコントロール出来ない程の力か、それをバグスターウィルスの効力で制御出来ないか、と言う訳か」
「ええ、そうよ。本当にごめんねイッセー、貴方にばかり負担を押し付けて…」
「構わないさ、リアス。俺と君との仲だろう。それに俺にとってはそいつも家族同然、ならばそいつの為に出来る事をするのは当然だろう?」
「イッセー…///
着いたわ、此処よ」
そんな強固な封印をしなければならない程の力を持ち、自らでは対処出来ないであろう眷属への対処、リアスからの用件をそう察知した一誠。
そんな厄介事を一誠に押し付ける事に心底申し訳なさそうに謝るリアスだったが、一誠は全く気にしていない、寧ろ、同じ眷属として出来る事をやらねばという決意に満ちていた。
そんな彼氏の頼もしい姿に今一度見惚れていたリアス、そうこうしている内に目的地に到着した様だ。
「なんと言えば良いか…
如何にも何かヤバい物が中に居ます、と言いたげな厳重さだ」
「あ、あはは…」
縦横無尽に張り巡らされた『Keep out!』の文字が書かれているテープ、何かしらの封印の術を刻んだのであろう無数の術式…
其処は一誠がポツリと呟いた通り、明らかに「何かヤバそう」な状態だった。
尤も今は、テープは全て切られ、術式もその効力を失っている様だが…
「此処に、件の眷属が居る訳か」
「ちょっと待って、イッセー」
「リアス?」
「部屋に入る前に、変身して」
『マイティアクションエックス!』
そんな部屋に閉じ込められている存在とは一体誰か、好奇心をくすぐられた一誠が扉を開けようとしたが其処で、何時の間にかガシャットを起動させたリアスからの待ったが掛かった。
「イッセー。貴方の推察通り、この中にいる私の僧侶は、自分でもコントロール出来ない程の強力な力を有している。そしてそれが暴走したが最後、エグゼイドに変身しているなら兎も角、生身の貴方では対処の仕様がなくなってしまうわ。私でも生身では対処出来ない危険性があるもの。だから予め変身してから部屋に入るわ。良いわね?」
「それ程までか。分かった、リアス」
『マイティアクションエックス!』
呼び止めた訳を聞き、納得した一誠、彼もまたガシャットを起動させ、
「大変身!」
「グレード2、変身!」
『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』
『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』
「行くわよ、イッセー」
「ああ、リアス」
2人揃って変身、ゲンムの合図で2人揃って部屋へと突入した。
其処に、
「ひ、ヒィ!?何事ですかぁぁぁぁぁ!?」
女子と思われる甲高い悲鳴が響き渡った。
「ギャスパー。見た目が変わり過ぎているけど、私よ。リアスよ」
「り、リアスお姉様ですかぁぁぁぁぁ!?」
流石に見知らぬ2人が部屋に押し入ったとなれば普通は悲鳴をあげる物である、ゲンムもそれを理解して自らが、ギャスパーと呼んだ声の主、その主人であると釈明していた。
「イッセー。
「ん?彼って、今…」
何とか声の主を落ち着かせたゲンムは、後から入ってきたエグゼイドにその存在を紹介した。
部屋に封印されていた存在は、金髪のおかっぱ頭、赤い瞳に尖った耳と何処か人外っぽさを持った端正な顔立ち、白音よりちょっと大きい程度の細身な体躯は駒王学園の『女子が着る制服』で覆われている。
可愛らしい装飾で飾られた部屋の中も相まって、何処からどう見てもその存在は『女子』にしか見えなかった、が、
「ええ。ギャスパーはこれでも、男の子なの」
「…そうか、男の娘か」
「…イッセー、気持ちは分かるけど、小説じゃないと分からない様な読み間違えしないで」
男だった。