30話_Pastの闇
ある日の放課後、この日はオカルト研究部の部室がある旧校舎にて清掃があるとの事から、一誠の自宅にて活動を行う事となった。
その事をリアスから告げられたメンバーは兵藤家のリビングに集合、したは良いのだが、
「幼い頃のイッセー先輩…ハァハァ…」
「し、白音ちゃん何だか変態さんみたいですよ!?でも本当に素敵です、イッセーさん…」
「子供の頃から格好いいですわイッセー君、凛々しくもあどけなさのある笑顔で…」
「そうね、朱乃。それでいて年相応の可愛らしさもある、何か心が踊って来たわ」
其処に、今日は仕事が休みだった事から家にいた一誠の母である兵藤
いや、彼女達だけではなかった。
「これは家族写真みたいね。前列にいるのはイッセーに両親の二人、ポッピーにパラドに、その脇固めている二人の男は確かクロトにマサムネだったかにゃ?後はギリルにドラル、ロボルにラヴリカ…
事情を知らないと一体どんな家族構成だ、なんてツッコミが殺到しそうね、これ。というか何でまたバグスター達も揃ったのが撮られてんのにゃ?」
「他にもありますよ、黒歌先生。これはガシャットかゲームか、何か完成した記念で撮られた物でしょうか、イッセー君と其々のバグスターとのツーショット写真だらけですね、何だか微笑ましいです」
一誠や、この場にいないギャスパーを除けば唯一の男である祐斗も、女性陣ではただ一人、一誠とは恋仲になっていない黒歌もまた、一誠の過去には興味があった様で、別のアルバムを見始めていた。
そして、過去を暴かれる側である当の一誠だが、
「やれやれ、仕方ないか。それにしても母さん、随分と撮った物だな。幾らバグスターの皆を撮った物も含まれていると言っても、十数冊って普通ではないぞ…」
「事ある毎に撮っていたら、いつのまにかここまで積み重なっちゃってね。まあイッセー達への愛の大きさって事で、ね」
「幾ら何でも大き過ぎるぞ、というか重さの間違いではないのか?」
己の過去を暴かれて恥ずかしいやら、それを食い入る様に見る彼女達の姿が微笑ましいやらと、複雑な様子ながら止めようとする素振りすら無かった一方、自分自身の他にバグスター達を撮影していたにしても多過ぎるアルバムの冊数を巡って、母である誠奈に突っ込まざるを得なかった。
そんな中、
「ん?一誠君、これ…」
「どうした、木場?」
とあるアルバムに収められていた1枚の写真、それを見た祐斗の様子が変化した。
先程までの微笑ましい感じは微塵も感じられぬまま、その写真を見せながら一誠に何事かを尋ねた。
「これに見覚えあるかい?」
「この、写真に映っている剣の事か?」
それは5歳位の一誠と、彼と同年らしいボーイッシュを通り越して男子にしか見えない女の子のツーショット写真、その背後に映っている剣の様な物を、祐斗は指差していた。
「それについては良くは分からない。だが、その俺と一緒に映っている幼馴染の女の子、名前はイリナというんだが、その子の父親である
そんな祐斗の質問に素直に答えた一誠、その時一誠は祐斗の様子が何となくおかしい事に気づいた。
「まさかこんな事があるなんてね。よもや、こんな思いもよらない場所で見つけるなんて…」
(憎悪?まさかコイツと教会関係者との間に、何か深い因縁でもあるという事か?)
仄かながら祐斗の表情から滲み出る憎悪、それを一誠は感じ取った。
――――――――――――
「ふっ!」
「ぐはぁ!?な、何なんだよテメ」
「謀反者に語る言の葉などない」
「あぐっ!?」
「安心するが良い、峰打ちだ」
その晩とある路地で、虚無僧の様な出で立ちに2振りの刀を持った男と、聖職者の様な出で立ちに光輝く剣を其々の手に持った少年が斬り合いを繰り広げるという、現代日本ではまず見られない、というか見られた瞬間に通報されそうな光景が繰り広げられた。
いや、斬り合いと言うのは正しくない、何故なら虚無僧姿の男が聖職者姿の少年を圧倒した末に、峰打ちで気絶させていたのだから。
「ふむ、聖職者が愛用する剣の様だが、珍妙な気を纏っておるな。人の身でありながら物の怪の如き立ち回りを見せられたのもこの得物が成せる技という事か…
かような謀反者が持つべき得物ではない。このカイデンが貰い受けようぞ」
圧倒的な実力で少年を無力化した、自らをカイデンと名乗る男は、少年が持っていた剣を奪い取りながら、そう呟く。
カイデンの脳裏には、今から数十秒前に繰り広げられた、今の状況に至る前の光景が過っていた。
倒れ伏した少年からは人の域を超えた様な気配を感じ取れなかった、そんな常人である筈の少年が繰り広げた、攻撃の瞬間まで姿を見せず、地上最速の生物として名高いチーターをも凌駕する素早さでの奇襲。
並外れた五感と素早さでそれを難なく受け止めたカイデンはその後、今の様に捩じ伏せた訳だが、その時の光景には、それを成し遂げたあの光輝く剣に、彼は少しばかりの興味を持っていた。
「人智を超えし力を齎す得物、か…
かような物を手にして闇討ちとは、穏やかではない。またもこの街に禍が齎されるという事か…
これは直ぐ様、父上に報告せねばな」
「おっと、そうは行くか」
同時にその剣が、街にとって新たな騒動の火種になるだろうと危機感を抱いたカイデンは、自らが父と慕う存在に急いで伝えねばと踵を返すが、それに待ったをかけるかの様に背後から男の声と、カイデンを狙って何かを放った様な風切り音が響き渡った。
「な!?すり抜けただと!?」
「貴様、其処の謀反者の仲間か?其奴は眠っている、連れ帰るなら早うすると良い。安心すると良い、峰打ちで気絶させただけだ」
が、その何かはカイデンの腹に『空いた』空洞をすり抜けるだけに終わった。
その声と、自らの腹に空いた空洞を通った何かから、少年の仲間だと判断したカイデンはそう告げながら、空間に溶けて行くかの様に消えていった…