ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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34話_Hatredの重さ

旧校舎前に広がる、芝生の広場。

先程のイリナとゼノヴィアの口論から(もっと言うとイリナのツッコミと称したゼノヴィアへの度重なる暴力沙汰から)勃発した仲間割れ、其処に割って入った祐斗の提案から彼とゼノヴィアが試合を行う事となった。

イリナからの度重なる暴力に晒されて鬱憤が溜まっていたのもあって意気揚々と広場へと向かっていたゼノヴィアに対し、イリナは思案する様な素振りを見せたかと思ったら、何かしらの事実に気付いた瞬間に顔は青ざめて足取りが覚束なくなってしまい、此処にいたメンバーの中で一番関わりのある(そしてお互いに相手への好意を秘めている)一誠の肩を借りて何とか辿り着いた。

 

「イリナ、本当に無理せず部室で一休みしたらどうだ。先ほどから顔が青白いし、足も震えている」

「迷惑かけちゃって、御免ねイッセー君。でも見届けないと、我らが神を信仰する同士が起こした『聖剣計画』なんて恥ずべき蛮行、その被害者らしい彼が抱く憎悪の程を…」

 

想いを寄せる一誠に、立場的に敵同士である筈の彼に心配と足労を掛けさせている事を詫びるイリナだったが、彼女に部室で休むという選択肢は、同じ神を信仰する仲間が引き起こした蛮行から目を背けるという選択肢は無かった。

イリナは気づいたのだ、祐斗が『聖剣計画』の被験者で、ただ1人処分を免れた生存者である事、彼らが地獄の様な日々を送った挙句、まるでゴミを処分するかの様な凄惨な方法で殺された事、そしてその『成果』が自分達聖剣使いに活かされている事…

一応教会内でも『聖剣計画』は最大級の禁忌とされており、責任者は異端の烙印を押されて処分されたと彼女は聞いている、だがそれで彼ら被験者の憎悪が晴れるかと言えば、それは違うと考えている。

そもそも禁忌としつつ、聖剣使いを増加させる為に『成果』を取り入れた時点で本当に事の重大さと向き合っているのかと彼女の頭から疑問符が尽きない、まあそれならば『成果』によって聖剣使いになれた自分はどうなのだと突っ込まれそうだが。

故に祐斗が抱く憎悪の程を見届けなければ、受け止めなければならないとイリナは考えている、それこそが己と一誠を結び付けてくれた神から授かった試練なのだと、一誠の背中を預かれる存在になる為の試練なのだと…

 

「では、始めようか」

 

そんなイリナの心情を知ってか知らずか、試合の準備を整えた2人、ゼノヴィアが羽織っていた白いローブを脱ぎ、ボディスーツで覆われた出る所は出ている体躯を露わにし、持っていた破壊の聖剣を構える一方、祐斗はガシャットを手に取りながら何処か不気味な笑みを浮かべていた。

 

「…笑っているのか?」

 

そんな祐斗が気になったゼノヴィアの問いかけに対し、彼は自らに宿りし神器『魔剣創造(ソード・バース)』の能力で周囲に魔剣を創造・展開させながら答えた。

 

「倒したくて、壊したくて仕方なかった物が目の前にあるんだ。つい嬉しくてね」

 

その答えは、大方の想像通りエクスカリバーへの憎悪に満ちた物だった。

 

「魔剣創造…

確か、聖剣計画の被験者で処分を免れた者がいると聞いていたが、もしや君が?」

 

その憎悪の出処に気付いたゼノヴィアが、遅ればせながら祐斗が聖剣計画の生き残りであると気付く。

そんな彼女に、

 

「ははははは…!

ああ、そうさ!あの地獄の日々を、そして仲間達が惨たらしく殺されたあの時を、僕は生き残った!全ては、全てはこの時の為!エクスカリバーを狩る為に!」

 

彼は狂気に満ちた笑い声を上げながら答え、

 

「そして、そして遂に手に入れたんだ、聖剣をも破壊する力を!あはははははは!」

 

持っていたガシャットを掲げながら起動、

 

 

 

出来なかった。

 

「あ、あれ?」

 

突然の事態に先程までの狂気も吹き飛び、戸惑いを隠せない祐斗、掲げていたガシャットを確認しながらもう一度起動スイッチを押すも、

 

「何故動かない!?」

 

結果は同じだった。

突如としてうんともすんとも言わなくなってしまったガシャットに対して苛立った様子を隠そうともせず、それから何度も起動スイッチを押しても状況は変わらない。

 

「何ともどす黒い狂気だな、木場。見ろ、アランブラが嫌がって出て来ないではないか」

「い、イッセー君!?」

 

そんな彼を見かねた一誠が止めに入り、

 

「今のお前に、仮面ライダーになる資格は無い。ガシャットは暫く預かって置く」

「な!?返せ、そのガシャットは僕の」

「元々俺の、いや、媒体としているバグスター本体の物だ。リアスの、この街を守る為の戦力の足しになればとお前達に貸しているに過ぎない。返せなどと、見当違いな事を口にするな!」

「なっ!?くっ…!」

 

祐斗が持っていたガシャットを2つとも取り上げた。

ガシャットは一誠からプレゼントされた物だと思っていた祐斗は一誠の行動に抗議の声を上げるも、初めて手にした際のハプニングもあってリアスが所有する事となったマイティアクションXのオリジンガシャットとは違い、その他のガシャットは戦力強化の為にと一誠が仲間達に貸している、媒体としているバグスターがその身を委ねているに過ぎない。

そう指摘する一誠の大喝に祐斗も一瞬たじろぐ、が、

 

「ガシャットが無くたって、僕には同志の無念の思いが作ったこの力がある!仮面ライダーになんてなれずとも、僕はこの力でエクスカリバーを破壊する!」

 

それで憎悪を引っ込める祐斗では無かった、寧ろ憎悪の根深さ故にたった今言った事について直ぐ手のひらを返したと突っ込まれそうな自分の言動にも気づくことなく、2振りの魔剣を手に取ってゼノヴィアへと切りかかる。

 

「憎悪の余り己の支離滅裂さも気付かないか…

君の魔剣など、我がエクスカリバーの相手ではない!」

「くっ!?」

 

そんな祐斗の斬撃など効かないと言わんばかりにゼノヴィアは冷静に対応、たった1回振るっただけで祐斗の魔剣を打ち砕くという、破壊の聖剣の名に恥じぬ威力を見せつけた。

 

「パチモンが7つに分かれて尚この威力か、だけど!」

 

その威力を見せつけられて尚も果敢に切りかかる祐斗だったが結果は同じ、そして、

 

「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力!どちらが上か勝負だ!」

 

それなりの質量をもった魔剣を数多く作るのがダメなら強大な1振りを、とでも言わんばかりに祐斗は、巨大で尚且つ禍々しいオーラを放つ魔剣を手元に創造し、またもゼノヴィアへと切りかかった。

だが、

 

「ふん」

「ガハッ!?」

「残念だよ。君の売りは多彩な魔剣とスピードだ。巨大な剣を持てばそれが君の長所を封じる枷となる。そんな事も忘れる程か、君の憎悪の程は」

 

それは祐斗にとって逆効果だった。

ゼノヴィアの言う通り、巨大な見た目相応の重量を有する魔剣を手にした事で持ち味であるスピーディーさなど無くなってしまった祐斗の斬撃は彼女に届くわけなく、魔剣は破壊され、腹部に聖剣の柄が突き出されて昏倒した。

 

「さて、色々と騒がせた挙げ句、眷属の者との手合わせまでさせて済まなかった、リアス・グレモリー。ともかく、先の件、よろしく頼む」

「え、ええ。分かっているわ」

 

祐斗が倒れ伏したのを確認したゼノヴィアは、イリナとのいざこざに関してリアスに詫びつつ、要求を守るよう釘を差し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

祐斗が抱く憎悪の根深さを目の当たりにして泣きじゃくりながら、聖剣計画によって犠牲になった人達へ鎮魂の祈りを捧げるイリナに気付くことなく…

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