ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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35話_Berserkerの悲しみ

「待ちなさい、祐斗!」

 

ゼノヴィアが去った後の旧校舎前広場、其処で先程彼女との試合に敗れて倒れ伏していた祐斗が起き上がったかと思ったら、何も声を掛ける事無く広場を、メンバーの元を離れようとした為、リアスが彼を制止すべく声を掛ける。

 

「私の元から離れるなんて許さないわ。貴方は私の大切な『騎士』なのよ!はぐれになんてさせないわ!」

「…部長、僕を拾って頂いた事、僕の命を救って頂いた事はとても感謝しています。だけど、僕は同志達のお陰であそこから逃げ出せた。同志達がいたからこそ、部長とも巡り合えたんです。だからこそ、僕は彼らの恨みを晴らさないといけないんです…!」

「祐斗!」

 

祐斗が憎悪の矛先を向けているエクスカリバーを破壊すべく動こうとしている事、その為に今しがた教会側と不干渉の約束を交わしたばかりなリアスの元を離れはぐれ悪魔になろうとしている事を察知したリアスは説得を試みるが、祐斗はそれを聞き入れず、彼を掴もうとした彼女の腕も空を切ってしまった。

 

「祐斗…」

「カイデン。話は聞いていたな」

「はっ、事情は大方察知しておりまする」

「ならば、お前に新たな任務を言い渡す。木場を逐一監視し、アイツを守り抜け」

「承知!」

 

その様子を見ていた一誠は、同じく見ていたカイデンを呼び、祐斗を守る様に命じた。

 

「木場に関しては、カイデンが付いてさえいれば命の危険は免れられる筈。結果的に今回の件に干渉する事になって、教会側が何か言って来ようと、眷属の身辺警護をしていたら巻き込まれただけと言って置けば問題ない。首を突っ込むなとは言われたが、堕天使側が仕掛けてきた時に迎撃するなとは言われていないからな。後はアイツ自身があの憎悪とどう向き合うかの問題だが、其処は本人次第か…

それよりも今は、イリナか。全くゼノヴィアと言ったか、不満を募らせるのは理解できるが、だからと言って同じ使命を受けた同士を悪魔の本拠地に置いていくとはな。尤も、今のイリナを連れていく訳にも行かないか…」

 

任を受けて広場を後にするカイデンを見送りつつ、そう言いながら肩を貸している存在に目を向ける一誠、其処では涙を流し、うわ言の様に「ごめんなさい…」と繰り返し口にしながら今も尚鎮魂の祈りを止めないイリナの姿があった。

 

------------

 

「落ち着いたか、イリナ?」

「うん、ありがとうねイッセー君。本当に御免ね、迷惑掛けっ放しで…」

 

あの後イリナへの対応の為に、一緒に帰宅した一誠、事情を察知したバガモンからホットミルクを受け取った彼は、一先ずリビングで彼女を休ませつつ、受け取ったホットミルクを差し出す等して、何とか落ち着かせた。

 

「涙にくれる女の子を助けるのに、理由はいらないさ。しかも今回は事が事だ。イリナにとっては、相当ショッキングな物だっただろう?」

「う、うん…」

 

だがあの憎悪を目の当たりにしたショックから立ち直ったかと言えばそうでもない、先程までの快活さも何処へやらと言った様子で一誠に返事をするイリナ、やがて自分が抱く今の想いを口にした。

 

「あの日、あの変態に襲われそうになった時にイッセー君が助けてくれた事、今でも鮮明に覚えてる。それ以来、イッセー君の背中を預かれる存在になる為に、この出会いを設けて頂いた神様の恩に報いる為に強くなりたいと思うようになって、パパの伝手もあって教会にエクソシストとして加入して、厳しい訓練に励んでいったの。訓練が辛い時もあった、教会の在り方に不信感を抱いた事もあった、教会が起こした過去の出来事に対してあれこれ口にした事も一度や二度じゃない。それでも私を守ってくれたイッセー君の為にも、運命を繋げて頂いた神様の為にも強くなりたい、そう思って耐えて来た。

 

でも、今日あの人が見せた憎悪の根深さを目の当たりにして、私の、私達エクソシストの強さは、そういった人達の屍の上に、憎悪っていう名の土壌の上に成り立っているって思い知った。そしたら、どうしたら良かったのか、これからどうすれば良いのか、もう何も分かんなくなっちゃって…」

 

全ては一誠の、信仰する神の為、その為にエクソシストになって強さを磨いて来たイリナ、だが身に着けた強さの土壌を知り、その土壌にされた祐斗達の根深い憎悪を知り、進むべき道を見失ってしまった。

そんなイリナの想いを静かに聞く一誠、

 

「イリナ、1つだけ言って置く。

 

俺の為だとか、神様の為だとか、一先ずそれは後回しにしろ」

「…え?」

 

やがて、自らの考えを口にした。

 

「何もかも分からない中で、自分ではない誰かを念頭に置いては駄目だろう。まずは自分だ、自分に向き合ってみる事だ。自分がどの様な想いを抱いているのか、本当は何をしたいのか。徹底的に自問自答を繰り返せ、己と言う存在に目を凝らせ。

 

そうした果てにどうすれば良いかが分かった時、改めてお前の想いを聞こう」

「うん、分かった、やってみる。本当にありがとうねイッセー君、少し、元気が出たよ」

「そうか、少しでも元気が出てくれて何よりだ。俺は元気なイリナの方が好きだからな」

「す、す…!」

 

どう進めばいいか分からないなら、まず自分がどう進みたいか徹底的に向き合え、そんな一誠の言葉に、少しではあるが笑顔を、元気を取り戻したイリナ。

そのお礼の言葉に対する返事にイリナが狼狽した様子を見せるのを尻目に、一誠はリビングを出た。

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