ハイスクールDevil×Ex-aid   作:不知火新夜

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69話_Dangerousなヤベー奴!

「くっ!ですがリアス、私も諦めません!あの子達が諦めなかった様に!我が水芸、とくとご覧なさい!」

 

ゾンビゲーマー・レベルXと化したゲンムの姿に恐怖を隠しきれないソーナ、それでも己が夢を叶える為にも、自らの夢について来てくれる眷属達の為にも負ける訳にはいかないと自分を奮い立たせ、魔力によって膨大な量の水を集め、それを猛禽や大蛇、ライオンに狼、そしてドラゴン等、様々な姿をした大量の尖兵に変化させ、ゲンムへと突撃させた。

此処までの尖兵を用意できたのも、このゲームフィールドがデパートを模した物であった為に貯蓄していた水を確保出来たのと、ソーナ自身が有する技量の高さがあった為であろう。

だが、

 

「ふっはっ」

 

ゲンムは余裕綽々な様子で自らに突っ込んで来る尖兵達を、腕の一振りや足払いで消し飛ばしていた。

攻撃と言えるかどうか疑問を覚えざるを得ない程ゆったりとした動作での行動にも関わらず尖兵達を消し飛ばす力、それを為せるのも滅びの魔力を封入したデンジャラスゾンビの恩恵故か。

だが相手は大量の水で作り上げた尖兵の大軍を従えるソーナ、そんなゆったりした動作では何れ押し切られてしまう、現にその隙を突いて一体の猛禽型の尖兵がゲンムの背後を捉え、体当たりを仕掛けた。

 

「…え?」

 

が、その体当たりがゲンムに直撃し、少なくないダメージと衝撃がゲンムを襲うかと思われたその時、信じられない事態が起きた。

猛禽型の尖兵がゲンムに触れるかどうかの位置まで突っ込んだその瞬間、身体の先端部分から消失していってしまったのだ。

 

「言った筈よ、ソーナ。デンジャラスゾンビガシャットには、データ化された滅びの魔力が封入されている、と。そして、それを用いて変身した私が、今どんな状態になっているか…

聡明な貴方なら分かる筈よ」

「まさか、滅びの魔力を全身に纏っていると言うのですか!?」

 

この状況を分かっているかの様に(実際そうだろうが)、余裕を崩す事無くソーナに問いかけるゲンム、その問いにソーナは今の事態を引き起こした原因に思い当たり、そのまま答えた。

だがゲンムはその答えに、違うと言うかの様に首を横に振った。

 

「惜しいわね、ソーナ。今の私は滅びの魔力を纏っている訳じゃない、

 

 

 

滅びの魔力その物と化したわ!そう、超越者と称されるお兄様が本気となられた時の姿、その域に私は至った、デンジャラスゾンビガシャットが導いたのよ!」

「ほ、滅びの魔力その物!?」

 

滅びの魔力を纏っているのではなくその物と化したゲンム、その事実にソーナは絶望感を露わにした。

ゲンムの変身者であるリアスの兄こと魔王サーゼクス・ルシファーは、同じく魔王であるディオドラの兄アジュカ・ベルゼブブと共に『超越者』と称されている。

超越者とは、正に次元が違うと言われる程の強大な能力を有しているが為に悪魔なのか疑わしいとされるイレギュラーな存在を指す。

その一角であるサーゼクスは、普段の状態でも旧魔王ルシファーを凌駕する魔力量を有している(が、本人自体はテクニックタイプである)ものの、その本気の姿である、人型に浮かび上がる滅びの魔力を解放すると、魔力量が旧魔王ルシファーとは桁違いの量と化し、放つ魔力球体一つ一つがドラゴンを簡単に消失させる程の威力を有し、何かに接触するだけでもそれを消失させる正に悪魔を越えた存在となる。

が、滅びの魔力その物と化したサーゼクスは、己の意思に関わらず周囲の物体を消滅させてしまう、それは己が立っている大地も例外ではない為、被害をまき散らさない為に浮遊しながら戦うそうだ。

では何故滅びの魔力その物と化した筈のゲンムは、デパート屋上の床に何事も無く立っていられるのかと言うと、それはゲンムの両足に装着された『リビングデッドシューズ』と呼ばれる靴が、滅びの魔力の制御を担っているからである。

これにより必要時以外に滅びの魔力が周囲へまき散らされるのを抑え込んでいる為に大地が滅ぶ事は無く、よってゲンムは地に立っていられるのだ。

また同様の制御能力を有する手袋『リビングデッドグローブ』が両手に装着されている為、ゲンムが持とうと思えば武器を持って戦う事も可能である。

そういったデメリット(と言うべきか分からないが)を解消し、更にデータとしての滅びの魔力を内包しているデンジャラスゾンビガシャットから無限に供給され続ける事で少なくとも防御面では凌駕した(攻撃面はゲンム自身の技術面からまだまだと言えるが)姿に、超越者と並び立てる域に至ったゲンムに、今のソーナが勝つ術はあるのか、いや無い。

 

「さて、そろそろ幕引きと行こうかしらねェェェェ!」

「ヒィッ!?」

 

そんなソーナにトドメを刺すべく、再びゆったりとした動作で前進を開始したゲンム、その姿がまるで己の命を狩るべく付け狙う怪物の様に見えたのか怯えを隠そうともしないソーナは、もうなりふり構っていられないと言わんばかりに尖兵を一斉に突撃させるが、結果は先程の猛禽型尖兵と変わらなかった。

ゲンムも無駄な抵抗だと捉え、先程みたいに尖兵達を追い払う動作すらしなくなり、ただソーナへと歩みを進め、

 

『ソーナ・シトリー様の投了を確認。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です!』

 

彼女の目前まで辿り着き、平手打ちの構えを見せた所で遂に心が折れたのか、それが直撃する事無くソーナはこの場から転送された。

 

「…ちょ、ちょっとやり過ぎたわね。

イッセーからプレゼントを貰ったのが嬉しくて、気持ちが昂り過ぎたわ、何だか恥ずかしい…」

 

自分達が勝利した事を知らせるアナウンスが流れたのを受けて変身を解除したゲンム――リアスだが、テンションが上がり過ぎてタガが外れていた状態での言動だった為か、先程まで自分が言っていた事を思い出して恥ずかしくなり、真っ赤に染まった顔を両手で覆っていた。


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