「あれ、此処は…」
翌朝、目が覚めた一誠は、目前の光景に己が眼を疑った。
「俺は昨日、引っ越したばかりのあの洋館、其処の俺の部屋で寝ていた筈だが…
まさか、夢か?いや…」
それも無理はない、今言った通り昨日一誠は、新居となった洋館の自分に割り当てられた部屋で眠っていた筈なのだが、今自分がいる所は、何処かの研究室らしき場所だったのだから。
「そうだ、ガシャットは…
あれ、マイティブラザーズXXガシャットが無い!ゲキトツロボッツガシャットも…!
あるのはマイティアクションXガシャットと、ブランクのガシャットが1つ、これは何時の間に…」
まさか己が身に関わる大事が起こっているのではないか、そう即座に判断した一誠は、自分の戦う術であるガシャットの有無を確認するが、懐に入れていた筈のマイティブラザーズXXガシャットは勿論、ホルダーに差し込んでいた筈のゲキトツロボッツガシャットも無かった。
持っていたのは、何時も変身の際に用いるピンク色のガシャットの他、トリコローレカラー(イタリア国旗を基とした、緑・白・赤の3色を並べたカラーリング)の、ラベリングがされていないガシャットだけであった。
「う、うぅ…」
「ん?人の呻き声!?おい、一体どうした!?」
今の自分にとって最も頼りになると言って良いマイティブラザーズXXガシャットも、圧倒的パワーを有するゲキトツロボッツガシャットも無い状況に危機感を募らせる一方、何時の間にか装填されていたトリコローレカラーのガシャットに疑問を抱く一誠だったが、考えている暇は無かった。
研究室の何処かから呻き声がするのを耳にした一誠、その声がした方へ足を進めると其処には、一誠と同じ年位の青年が、何処かを抑えている様な素振りを見せながら蹲っていた。
よく見るとその抑えている箇所らしき所から血が流れ出している、其処から青年が尋常な状況では無いと思った一誠は如何にか救えないかと周囲を見回しながら考えを巡らせる。
「おい、お前。ソイツを引き渡して貰おうか」
そんな一誠の行動を阻むかの様に、何処ぞの救急戦隊のサブリーダーらしき人の声がした。
一誠が振り向くと其処には、仮面ライダーと言えなくもない異形が立っていた。
ピラニアを思わせる赤を基調とした頭部、同じくピラニアをイメージしたと思しき胸から下腹部までを覆った装甲、赤いライダースーツはどれも傷だらけで、頭部とライダースーツからはライムグリーンの傷跡が痛々しく刻まれていた。
生物的なその部分とは対照的に、両腕・両脚を覆う黒い装甲、其処から生えたヒレと思しき刃、そして腰に巻かれたメタリックの、眼と同じく緑色の光を発するベルトは何処か機械的な印象を覚える。
サイボーグと言っても良いその赤い異形はどうやら、蹲っている青年を狙っているらしい。
「お断りだ。コイツを引き渡してどうする積りかは分からないが、コイツにとって都合が悪い事だという事は分かる。今にも死にそうなコイツを、お前に明け渡すなど後味が悪いからな」
「ソイツがお前を、お前にとって大事な存在を殺すかもしれない奴でもか?」
「何?」
「お前、仮面ライダーだとか言う奴に変身して、故郷をずっと守り続けていたんだってな、街に入り込んだ化物をぶっ殺す形で。なら何故その化物を殺さない?何故街の脅威になりえる奴を排除しない?」
その赤い異形から青年を庇うべく立ちながら拒否の意思を示す一誠、そんな彼に対し、赤い異形は青年が危険な、一誠にとって脅威となりえる存在である事を告げ、問いただした。
「止む無くお前の街に逃げ込まざるを、連中を殺そうとせざるを得なかった化物は殺す癖して、お前の街に逃げ込むかも、連中を殺すかも知れないその化物は殺さない。自分の都合で守るモンと守らないモンを選り好みしてやがる。正義漢ぶっているが、俺から言わせれば、お前の方がそんな化物だ」
街に侵入したはぐれ悪魔は例外なく駆除して来た一誠、にも関わらず脅威になりえるだろう青年を野放しにするのはどういう事かと指摘する赤い異形、そしてそんな一誠を、はぐれ悪魔と同じであると断じた。
「正義?随分と下らない事を口にする」
「何?」
「
家族と、恋人達と過ごして来た街は、俺にとってかけがえのない故郷だ。それを、俺にとって大事な物を守る為に、極端に言えば俺の為に刃を振るっているに過ぎない。街に侵入したはぐれ悪魔を駆除するのは、ソイツ自身の悪事は勿論、ソイツを付け狙う奴によって街の平穏が脅かされるから。一方でコイツは確かにお前の言う化物かも知れない、実際、常人とは思えない強大な気配を感じる。だが、街に入り込んだ訳でも無ければ、悪事を仕出かそうとしている様子もない。だから殺さない。誰かの為だとか、正義の名の下にだとか言う積りは無い。化物呼ばわり大いに結構、事実として俺は悪魔だからな」
「大切な物を、守る…!」
が、一誠にとってそれは一誠自身の想いに基づいた判断、赤い異形の言葉を大筋で認めつつ、それでも毅然とした態度で赤い異形の要求を突っぱねた。
「ん?『ALPHA OMEGA AMAZON』…
まさか俺の知らないゲームのガシャットが存在していたとはな。よし、物は試しだ!」
『マイティアクションエックス!』
『アルファオメガアマゾン!』
『ガシャット!』
そんな一誠の言葉に反応したのか、トリコローレカラーのガシャットが突如発光、それに気づいた一誠が手にすると、既にそのガシャットはラベリングされ、『ALPHA OMEGA AMAZON』というタイトルと、目前の赤い異形と、それによく似た緑の異形の顔がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。
それを、ピンク色のガシャットと共に起動すると、一誠の背後にマイティアクションXのスクリーンと共に『ALPHA OMEGA AMAZON』のタイトルと、赤い異形と緑の異形が互いに飛び掛かる絵がデカデカと描かれたスクリーンが出現、それを受けて彼は2つのガシャットをゲーマドライバーに装填、すると、
(む!?こ、この身体の奥底から湧き上がる衝動と空腹感は一体…!?
成る程、コイツはいわば、俺の欲望を刺激する形で力を齎す訳か!なら、抑え込むのは厳禁だな!)
「ウォォォォォォォ!アマゾン!」
『ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』
突如として襲い掛かった空腹感と、それに呼応する様に膨れ上がった何らかの衝動に襲われる一誠、これが未知なるガシャットの効果だと気付いた彼は堪える事をせずそれを受け止め、雄叫びを上げながらゲーマドライバーのレバーを開き、何時もの手順でエグゼイドに変身した。
『アガッチャ!デンジャー!デンジャー!野生本能!アルファオメガアマゾン!』
すると、エグゼイドの身体から緑色のオーラらしき物が噴出、それが晴れた後には、胸のディスプレイが胸筋を思わせるアーマーで覆われ、ピンク色のライダースーツと両肩の装甲が緑に、スーツに張り巡らされた黒いラインとオレンジの眼は赤に染まり、両腕・両脚の装甲からはヒレ状の刃を、左手首からグリップの様な物を生やした姿――アマゾンアクションゲーマーレベル7に変化していた。
(凄まじい力だ、ダブルアクションゲーマーレベルXと同等、いやそれ以上…!
これなら!)
「猛獣の如き力、
『ガシャコンブレイカー!ジャ・キーン!』
レベル7でありながらダブルアクションゲーマーレベルX以上の力を己が身から感じたエグゼイドは、いけると言わんばかりにガシャコンブレイカーを装備、そのまま赤い異形に飛び掛かった。
「せいっ!おらぁっ!」
「くっ!はぁっ!」
一誠を飲み込まんと膨れ上がる衝動に促されるまま苛烈に、然し普段と変わらず冷静にガシャコンブレイカーを振るい、或いはパンチやキック等の体術で赤い異形に攻撃を仕掛けるエグゼイド。
対する赤い異形も見た目とは裏腹に理性的な立ち回りでエグゼイドの猛攻に対応してはいるが、パワー等の純粋な戦闘能力は勿論、技量でも上回っているエグゼイドの攻撃を捌ききれず、次第に有効打を食らっていく。
『ガシャット!キメワザ!アルファオメガ・クリティカル・ストライク!』
「オォォォラァァァ!」
「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」
そしてエグゼイドはいつも通りの手順でトリコローレカラーのガシャットを左腰のスロットに装填しその力を解放、と共に巨大化した両腕・両脚の刃を振るった。
手を横に凪ぎ、或いは振り下ろし、かと思えば足払いをするかの様に投げ出したかと思えば、上段回し蹴りの要領で振り上げ…
まるで何かしらの舞の如く踊りながら、赤い異形を切り刻み、トドメを刺した。
「ふぅ、やったか。お前、大丈夫か?」
「は、はい。貴方は…?」
「俺は兵藤一誠。お前は?」
「
あの、一誠さん、助けて頂いて、ありがとうございました」
「気にするな、悠。偶々通り掛かっただけの事、一期一会の縁という物だ」