「皆、集まったわね。今日は今後のレーティング・ゲームに向けて、夏休みに行われた若手同士のゲーム記録をチェックするわ」
『はい』
翌日の放課後、旧校舎にあるオカルト研究部の部室、其処に部員(リアスの眷属の他、レイヴェルも昨日付けで入部している)及び顧問である黒歌、昨日付けで副顧問に就任したアーサー、そして表向き所属している訳ではないが関係者である美猴とルフェイが集まったのを受け、部長であるリアスがそう、この日の予定を伝えた。
「既に知っているだろうが、今期の若手悪魔同士によるリーグ形式でレーティング・ゲームが行われる事になっている。その第一戦として夏休み中にお前達グレモリー家とシトリー家、大王バアル家とグラシャラボラス家、大公アガレス家とアスタロト家、この組み合わせで試合が行われた。今回の映像はそれを記録したものだ。敵を知り己を知れば百戦危うからずという言葉もある、良く見て置く様に」
リアスが話し終わったのを受け、ヴァーリがモニターの前に立ち、映像が入っているだろう記録メディアを端末に入れながらそう伝える、それにリアスの眷属全員が頷いていたのを見ると、皆が皆、他のチームがどの様な試合運びを見せたのかが気になる様だ。
それも無理はない、自分達の試合こそ仮面ライダーという圧倒的戦力と監視アイテムの設置という事前準備が功を奏して前評判通りの圧勝を収めはしたが、他の試合、特にバアル家とグラシャラボラス家の試合は超ウルトラスーパー、と頭悪い感じに修飾語を付けてもまだ過少評価と言うしかない位の大金星を、グラシャラボラス家次期当主『代理』だったゼファードルが手にしたのだから。
尚、だった、と言ったのは、この試合でゼファードルが見せた神懸かり的な采配、其処から王として、グラシャラボラス家当主として充分過ぎる素質があるとしたグラシャラボラス家、及びその支援者が彼こそ次期当主にすべきと満場一致で決めた為に『代理』の二文字が取れたからだ。
「まずはバアル家とグラシャラボラス家の試合よ」
その想いを汲んだのかは分からないが、最初に再生されたのはその試合だった。
「流石はZと言うべきか。サイラオーグ氏も油断なく采配を振るっていたのは、其々の眷属を送り込んだ地点を、その意図を考えれば明らかだ。だがZはそれを見抜いていたかの様に、的確に潰して行っている。ゲーマーとして幾多のライバルと様々なゲームで鎬を削って来たその経験が、デビュー前でありながらこれ程の采配を振るわせるという事か」
一誠がそう呟いた通り、其処に映っていたのは『武力』を有するサイラオーグ眷属を事も無げにあしらうゼファードル眷属の、王であるゼファードルの『知略』だった。
対ゼファードル眷属戦におけるキーパーソンである女王クイーシャ、騎士ベルーガ、戦車ガンドマを要所に配備し、他の眷属も其々の持ち味を発揮すべく的確な場所へと移動させたサイラオーグだったが、ゼファードルは全てお見通しだと言わんばかりに各個撃破を着実に行い、厄介なクイーシャ達も難なく潰して行った。
「ゲームに本格参戦すれば短期間で上位ランカーとなるのではと言われていた程サイラオーグは、彼の眷属は相当な実力を有していると言われていた。若手の中では頭一つ、いや他の若手は足元にも及ばないと言われていたサイラオーグが、此処まで翻弄されるなんてね…」
「若手同士の対決前に運営委員会が出した強さのランキングでは、一位はバアル、二位がアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、そして最下位がグラシャラボラスでしたわ。ですが今回の試合でそれは大きく崩れたと言っても過言では無いでしょう。巷では運営委員の目は節穴か、と運営の資質を問う論評が渦巻いている様ですわ」
「『グラシャラボラスの若頭』の才能、その片鱗だけでも冥界の民に与えた衝撃がそれ位大きかったと言う事ですわね。現に今一部で、良くも悪くも騒動が尾を引いていますわ」
そして映像は終盤、ゼファードルは誰一人として己の眷属を脱落させる事無くタイムアップ、王であるサイラオーグと兵士であるレグルスを除いて全滅させるという目覚ましい結果で勝利を収めた。
そんな前代未聞の大金星を手繰り寄せた采配は目撃した者全員を感嘆させるには十分、サイラオーグのいとこで、その強さを良く知るリアスもそれ故に、ゼファードルの知略には舌を巻き、そのインパクトの程を朱乃とレイヴェルが引き継ぐ形で評した。
因みにレイヴェルが言っていた『騒動』だが、まずこのゲームでの敗戦が切っ掛けとなりバアル家の、というよりサイラオーグを次期当主とすべきと言っていた支援者は悉く手を引いた。
一度はその才能の無さ故にバアル家を追われながらも並々ならぬ努力で実力を身に着けた末、父親であるバアル家当主や腹違いの弟でバアル家特有の『滅びの魔力』を受け継いだ『元』次期当主のマグダラン、その眷属やバアル家の親族達を叩きのめして次期当主の座に就いたサイラオーグだったが、腕っぷしだけが取り柄の野蛮で阿呆な粗忽者など大王家当主に相応しくない、やはり当主には『滅びの魔力』を有する者こそが就くべき、という声が圧倒的となり、その立場は風前の灯火となっていた。
逆に勝者となったゼファードルは正式にグラシャラボラス家次期当主となったばかりか、逆境を跳ねのけての大金星というヒロイックな活躍、天才ゲーマーZとして数多くのゲーム大会で結果を残して来た経歴、そして言動は荒いながらも男気溢れるその兄貴分な気質から、たちまち『グラシャラボラスの若頭』として冥界での人気が急上昇、試合終了間際にサイラオーグへ言い放った言葉から、葉巻を咥えながらライオンにバックブリーカーを掛けるゼファードルという構図をデフォルメ化した『獅子狩りヤッ君』なるマスコットキャラクターが作られ、そのぬいぐるみが発売早々に売り切れたとか。
その人気にあやかって彼を主役としたゲームバラエティ番組『
「気を付けて置け。今リアス部長が言っていた様に若手の中でも飛びぬけていると評されていたサイラオーグ・バアルも、蓋を開けてみればゼファードル・グラシャラボラスに良い様にあしらわれた。仮面ライダーの力を有したお前達も、魔王に匹敵する存在がゴロゴロといるリアス・グレモリー眷属も、油断していたら足元を掬われるという事だ」
戦力では確かに若手の中で最下位だったにも関わらず、己が知略で冥界に災害級の衝撃を与えたゼファードル、高を括っていたら次は自分達がやられる番だと、ヴァーリは釘を差した。
無論、此処にいる全員はそれを承知していた。
「一先ず、今は目先の試合を考えましょう。次の対戦相手はアスタロト家次期当主、ディオドラとついさっき連絡が来たわ。その研究の為に、次の映像を見ましょう」
「そうですね、何しろアガレス家次期当主シーグヴァイラ氏を相手に逆転勝利を収めたのですから。ゼファードル氏程では無いにしても、注意せざるを得ませんね」
とはいえそのゼファードルとの対戦予定はまだ無い、今は次なる対戦相手であるディオドラの映像を見る事にした、が、
「その事だが、不可解な点が見受けられる。今アーサーが言った通りアスタロトがアガレスを破った。これだけならグラシャラボラスがバアルに勝利した先例があるが…」
それはヴァーリが言った通り、何とも不可解な展開だと言うしか無かった。