2X歳公務員、漫画家になります 作:冬木あい
「・・・どうしよう」
一人、与えられた作業室で机に突っ伏し頭から煙を上げているのが私、柊あいです。どうしてこうなったかというと
事の起こりは私が漫画の原作を頼まれたことから始まります。原稿あり、給金保証ということで飛びついたこの仕事。思えば最初から嫌な予感はあったけどそれは蓋をして考えないようにしていたんだろう
――5時間前、作業室
「柊くん、これが君に描いて貰いたい漫画の原稿だ」
「ありがとうございます!」
この場所で司令から原稿を受け取った私は早速目を通し始めた
内容は現代社会にて着手金横領に巻き込まれた家族が悪徳代議士に罪をなすりつけられたものの、子供の機転や友人、メディアの力を借りて事件解決を図るという下手なドラマよりも面白い傑作と言うべきものであった
なるほど、コレを漫画にすると。まあ正直これだけの傑作であれば自分の拙い絵でもそれなりの作品になるだろう
そう考え、筆を取り、いざ書き始めようとして気づいた
・・・・・・この作品載せるのって少女漫画雑誌じゃなかったっけ?
私はすぐに司令に確認を取った。案の定、答えはYES。載せる雑誌は少女漫画雑誌であると言われた
問題はそれだけでは無い。歌の要素が一切ないのだ
なに?事件解決大団円のタイミングで歌でも歌うの?いやいや、急に歌うのなんてフィクションか装者の子達だけで十分だろう。そもそも装者の歌を都市伝説と同じ扱いにするのが目的なのになぜ作品の中に一瞬たりとも少女のしょの字も出てこないのか
このままではいけないと司令に話をしたもののどうやらこの原稿を自分なりにアレンジし、歌や少女の要素を加えた上で少女漫画雑誌に載っていておかしくないものに仕上げるのが自分の仕事らしい。・・・それなんてムリゲ?
こうして、頭を捻りながら唸り続けること数時間。完全な丸投げを喰らった私は机に突っ伏し頭から白煙を上げているという訳である
「・・・水もらってこよ」
ついでにあおいや藤堯辺りに愚痴ってこよう。というか私がこうなった原因の一端は藤堯だしアイツも巻き込もうと心に決めるとノソリ、と重い身体を持ち上げコップ片手に扉を潜る
「あ、柊さ~ん!・・・ウヒイッ!?」
「もう、響った・・・ら・・・」
すると背後からかけられる元気満タンな声。思わずそちらを向くとお化けでも見たような声を上げて後ろに飛び退く響ちゃん。その後ろには民間協力者となった未来ちゃんの姿も
「・・・ああ、響ちゃんに未来ちゃん。どうしたの?」
「ひ、柊さんこそどうしたんですか!?」
「顔が真っ青・・・大丈夫ですか?」
「なに、大丈夫だよ少し考えすぎで疲れただけだから・・・」
フヘヘ、と安心させるように軽く笑いながら言うとヒソヒソと喋った後、「何かあったら言ってください。私たちに出来ることなら協力しますから」と言ってくれた
思わず泣きそうになりながら機密扱いだし断ろうとした私の脳裏にピキーン、と電流が走った(気がした)
「二人はさ、少女漫画とかって読む?」
私の思いついたアイディアは華の女子高生である彼女たちに手伝って貰うというもの。これなら彼女たちにリサーチを手伝って貰えば読者の生の声も聞けるし一石二鳥じゃない!?
「え?あー、いやぁ私は本読んでると眠くなっちゃうんであんまり。読んでも未来がオススメしてきたやつぐらいしか・・・」
「私も、響よりは読みますけどあんまり・・・」
「そっか、そうだよね・・・」
良いアイディアだと思ったけどよく考えれば響ちゃんは学生の他に装者としてのお仕事。未来ちゃんは響ちゃんのフォローがあるんだしあんまり無理はさせられないかー
「えっと、何かあったんですか?」
「それなんだけど・・・」
機密情報の塊みたいな状態の彼女たちにこれ以上話して良いのかとも思ったけど藁にも縋りたかった私は包み隠さず全部を話した。正直、話してる途中から響ちゃんにウワァって目を向けられて泣きそうになりながら話した。というか最期は半分泣いてた気もする
「えっと、つまり貰った原稿が少女漫画の内容に見えないしアレンジしなきゃいけないけどどう手を加えれば良いのかわからない。ってことですか」
「そうなの。だから聞いちゃったんだけどゴメンね変なこと言って。話聞いてもらえただけでもスッキリしたからもう少し頑張るよ」
幾分先程よりもスッキリした頭でそう告げて私が行こうとすると
「あっ!」
響ちゃんが思い出したかのようにポンと手を打つ
「どうしたの響?」
「未来!弓美だったら!」
「そっか!」
「・・・えっと、響ちゃん?未来ちゃん?」
何か合点がいったように話す二人。ええっと、どういうこと?
「柊さん!漫画に詳しい友達がいるんですけど・・・!」
後日、二人の紹介で会った板場弓美ちゃんとの話し合いで原作の設定やストーリーをどうにか軌道修正に成功したものの肝心のキャラクターがどこか見覚えのある人がモチーフになっていたのは完全な余談である