2X歳公務員、漫画家になります   作:冬木あい

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漫画の内容については突っ込まないで欲しいです


3話 どこかでみんな見たことあるような・・・

パンパンパン

 

昼間のマンションの一角で日常にそぐわない渇いた音がする。聞く人が聞けば気がつくだろう

その音は火薬の弾ける音。間違っても休日のマンションから聞こえてくるような音では無い

空に高々と響くのではなくどこか反響したその音はどこかの一室の中から響いたのだろう

世が世なら警察が出動し捜査が行われてもおかしくない。

悲鳴が聞こえないのは被害者がいないからか、それとも声が出せないような状態だからか

 

それでも人々はそのようなただの音に頓着しない。過ぎ去った現在は瞬く間に過去へとその名を変え忘却の渦に巻き込まれる

 

彼らの反応は間違ったものではないのだろう

 

なにせ――

 

 

「というわけでおかげさまで無事、読み切りで大好評を頂きましたー!」

「やりましたね!」

 

事件でもなんでもないのだから

 

マンションの一室。柊あいの城の中にいるのは部屋の主と主に招かれた客人の板場弓美。そして彼らの手には破裂したクラッカー。音の原因であり部屋に少しだけ立ちこめる火薬の匂いの元凶でもある

 

「これも弓美ちゃんが手伝ってくれたおかげだよ~!」

「いやいや、柊さん絵めっちゃ上手じゃないですか!それが理由ですって!」

 

先日、月刊少女漫画雑誌ミューンに掲載された『解決!歌ずきん』だったが読者アンケートで二位を大きく突き放して一位を獲得したのである

 

政府の暗躍とそれを解決する歌魔法。まったく別物のジャンルを組み合わせた結果、今まで見たことのない斬新さから興味を引き、うたずきんが主人公である健一のために懸命に頑張る姿とそこに恋心を抱く甘酸っぱさ

最期に涙を見せぬよう精一杯の笑顔で別れを告げるうたずきんを無理矢理引き留める健一の男らしさが少女達の心を鷲掴んだらしく、特にラストの「男が泣いた女をそのまま帰せるかよ!」という台詞に胸を打たれたというファンレターが何通も届いていると雑誌社の方から連絡があったほどだ

 

「いやー、一時はどうなるかと思ったもんだけど案外なんとかなるものね」

「私もアニメとか漫画は好きだけど実際はこんな大変だとは思ってませんでしたよ!」

 

机の上のジュースや軽いスナックをつまみつつ苦労話に花を咲かせる二人。といっても柊の方から二課について話せる訳でもなく付き合いが長いわけでもないため話題は次第と二人にとってきっかけとなったうたずきんになる

 

「それにしても柊さん、健一のパパもう少しどうにかなりません?」

「あー・・・、確かに少しやり過ぎだったかもね」

 

健一のパパとはつまり物語の根幹である着手金横領の罪を被せられた人物である。最初はめげずに戦う意思を示していたものの罪をなすりつけられたことで周囲から浴びせられた罵詈雑言に耐えきることが出来ず一時は家を出ようとしてしまうのである(うたずきんの歌に元気を貰い出て行かずにすんではいたが)

 

「コメントとかでも『こんな格好悪い父親はどうなの?』とか『よくこの父親から健一くんみたいな良い子が生まれたなと思いました』とか大体評価よくないですよ」

「う~ん、本当ならしばらく経って健一が挫けそうなときに帰ってきて励ましてくれる。っていう予定だったんだけど流石にツラいかな?」

「う~ん、それだと確かに良いかもしれませんけどそういうキャラ付けだとすぐにフェードアウトして出てこなくなりそうで・・・」

「あー、確かにそうかも。アニメだとシーズンの終わりに出て次のクールには出てこないキャラっぽいね」

 

なお、読み切りを読んだ響の顔が複雑そうに歪んでいたのは完全な蛇足である

 

「それだと父親をもう少し変えた方が良いかな?」

「やっぱりおしどり夫婦が一番いいんじゃないですか?両親がものすごくラブラブとか最近の漫画でよくあるですし」

「うーん・・・それは一理あるね」

「同じ部屋で寝てて、買い出しは一緒に行ってそれでそのまま食べさせあいとかするぐらいの方が話に絡ませやすそうですし」

「そうね。ちょっと考えてみるわ」

 

その後連載が始まってから未来は柊や弓美によく観察されているような視線を感じることになるが気のせいでなかったりする

 

「そういえばライバルキャラはいないんですかって話がありましたね」

「今のところはうたずきんに対抗してうたゆきひめってキャラを考えてるんだけど少し足りない気もするんだよね」

「・・・見た目はクール系だけど中身がかなりズボラで空回りも多いキャラでしたっけ?・・・言っちゃ悪いですけどうたずきんと似てるとこありますもんねー」

「どうしようか」

 

ちなみに、うたゆきひめの髪色はサファイアブルーであり、長髪であることからこの漫画を読んだ翼が(緒川の一言で気づき)抗議の電話をかけてくる未来が待ち構えているが今の彼女には関係のないことである

 

「そうするとうたずきんをもうちょっと変えた方が良いかもしれないですね」

「いやいや、そんなに変えられるとこないよー」

「・・・いやでもツンデレ、低身長、おっちょこちょい、世間知らずで漢字書けないって中々に詰め込んでると思いますよ?」

「・・・確かに」

「せめて低身長とかツンデレは抜いてもいいと思います」

「そうするべきかなぁ・・・」

 

後日、この漫画を読んでいたクリスが「漢字も読めないなんて中々にアホだな!」と笑っておりそれに驚いた柊が軽くテストしたところ彼女の学力は高校生としては高いものでありイメージと実物は違うと言うことをハッキリ見せつけられることとなる

 

 

 

 

 

 

 

「───、って!こんな時間!空真っ暗だよ!?」

「ええーっ!?このままだとママに怒られる!?」

 

楽しい漫画談義に熱中していると気がついた時には空は暗く夕日の姿も見えなくなっていた

 

「とりあえず送っていくから車乗って!」

「あ、ありがとうございます!」

 

大慌てで荷物を持ちマンションを出る二人。幸い、弓美の両親を柊が説得したおかげで怒られることは回避したようで胸をなで下ろしながら帰宅する

 

「さってと、あとはもうのんびり過ごすかな」

 

帰りに買ってきたお弁当にサラダ、缶チューハイを片手にテレビをつけたあいの眼に飛び込んできたのはQueen’s of Music明日、開催!の文字

 

「ああ、そういえば翼ちゃんが参加するんだよね」

 

確か弓美ちゃんも現地に行くって言ってたなーと考え、そこで気づく

 

「・・・もしかして私、もう少し二課に顔出さないと忘れられるんじゃ・・・?」

 

思い返せばここ1ヶ月、買い物や用事で外に出ることはあったが二課本部に行った記憶がない。データは全部PCに送られてくるし新しい本部が潜水艦であるために東京から行ける範囲にいないこともしばしば

 

「・・・これは不味い」

 

気持ちを切り替えた彼女が翌日は必ず顔を出そうと決意を新たにしたもののその結果、岩国基地で発生したノイズを皮切りにライブ会場で発生したノイズへの対応に駆り出されるのは仕方のないことである

 

 

 

「・・・なるほど、キレイ系で高飛車な女の子か・・・」

 




モデルになった人の補足
歌ずきん:雪音クリス
健一(主人公):風鳴弦十郎
健一パパ:立花洸→立花響
健一ママ:?→小日向未来
歌雪姫:風鳴翼
歌デレラ:登場した頃のマリア

あくまでモチーフ
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