アクセル・ワールド~地平線を超えて   作:真ん丸太った骸骨男

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どうも、真ん丸骸骨です。

もう三日前でしょうか?その日に投稿するつもりだったのですが、風邪でダウン、今まで寝込んでおりました。
今回でようやく原作に深く絡ませられそうです。


第九話

『あたしね、ハルやタッ君たちと一緒にゲームをやる事にしたんだ』

『ゲーム?得意じゃないんじゃないの?それに部活もあるでしょ』

 

部活の事を言えばタッ君もそうだろう。

頑張れば夜遅くまで続けられるだろうが、彼女の場合、真剣に取り組む理由でもない限りそこまでモチベーションを持たせられないだろう。

 

『うん、何か時間を気にしないで良いらしいの。まだ詳しい話聞いてないんだけど、二人して深刻ぶっちゃってるから、あたしが楽しませてやるんだ!』

 

彼女は明るい。

今までのように作った笑いではなく、初めて会った時のような純粋な笑顔を見せてくれた。

これも3人の中が元に戻ったおかげである。

数日前まで不機嫌だったチユリちゃんは原因などを教えてくれなかったが、ハル君とタッ君が元の仲に戻って一緒にチユリちゃんの下に来たそうだ。その時、チユリちゃんのご機嫌を損ねるような事を言ったらしいが、タッ君に至っては進学校から梅郷中に転入してくるほど罪の意識を感じているほど大きな出来事だったらしい。

 

『ゲームはゲーム!楽しむ物だってあたしが教えてやるの』

『そうか、三人一緒なのは久しぶりなんだから頑張ってね。どんなゲーム?面白そうだし、僕も探してみるよ』

 

時間を気にしないで出来ると言うと、短時間で出来るような物だろう。

だから、暇な時間にも出来るだろうとあまり気にしないで言葉にしていた。

 

『う~~ん、何かこのゲーム人から人にしか渡せないみたいなのよね。ゲームの名前も人に話すなって言うし……』

『えっ……』

 

頭の中で危険信号が点灯していた。

これ以上は聞いてはいけない単語を耳にしてしまうような錯覚、いや確信があった。

 

『わ、解った、諦めるから、それ以上は――――』

『何だっけ?ハルたちはネガ何たらに入ったって……』

 

(やってしまった……)

 

彼女はまだ詳しく話を聞いていないのだろう。

加速能力、リアル割れの危険、このゲームの現実を。

信頼関係を築けていた自信はある。友達よりも強く、先輩の様な、兄のようなそんな関係をうまく築けていたと思う。だから口を軽くしてしまった。責任の一端は僕にもあるのだろう。

だがそれはもう遅い、もう、色々と繋がってしまった。

ネガ・ネビュラス、黒雪姫と直結したハル君、その翌日に現れたシルバー・クロウ。

口論しながら戦い、そしてドローとなったシアン・パイル。ロータスのリアルを元にしたアバターと黒雪姫の聞いていた容姿と特徴が一致する。

 

(如何しようか…… これから……)

 

リアル割り、それも一方的な。

僕の今までの行動から、この情報を公開するなんて馬鹿な事するはずないし、ロータスの行動は尊敬できる。

クロウはこれからこの世界を引っ掻き回してくれる事を期待しているし、パイルも言わずもがなである。

 

『ちょっと!聞いてる?大丈夫?』

『あ、あぁ、大丈夫だよ。ごめん考え事してた……』

 

深刻であり、深刻でない微妙な問題が僕の中で思考を重くする。

その後も、僕は話を聞いていない事が多く、チユリちゃんにその度に怒られる事になってしまった。

 

(如何しよう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「散れッ!ゴキブリがあぁぁ――――!!」

「ゴキブリは酷いと思うんだけどっ!?」

「うるせぇっ、ちょろちょろ動き回りやがって!アタシから見たらゴキブリに見えんだよッ!」

 

ばら撒かれるミサイルの嵐、砲弾の雨。

地面を埋め尽くさんばかりの爆炎、爆風が直ぐ近くでその猛威を振るっていた。

それを全力で回避しながら、僕を攻撃する要塞を見上げる。

 

「あ、赤の王、僕は戦わないと言ってるじゃないですか!?」

「うるせぇ、タァコ!それに従う謂れはアタシにはねぇんだよっ!!」

 

いきなりの加速で通常対戦が開始したのだが、その相手が赤の王と言う事で思わず目を点にさせてしまった。

今僕に常識外れの火力放射を試みる赤いアバターは、赤の王スカーレッド・レイン。

彼女の通常の姿はおそらく全アバターから数えても下から数えた方が早い方の小型アバターである。だが、彼女はレベルアップボーナスで与えられる全てを火力武装に注ぎ込み、その姿を一つの要塞兵器へ姿を変える。

その大きさは先程とは逆に恐らくトップクラスの巨大さを誇る。その巨体に積み込まれた武装は敵を寄せ付けないほどの圧倒的な火力を実現し、その火力こそが、彼女が赤のレギオンの王に押し上げた。

その結果得た彼女の射程は対戦フィールド全域である。そんな超長距離火力の彼女から距離を開ける事は愚の骨頂。

せめて彼女の砲門が見える位置取りをし、回避に専念しなければならない。

 

「何で対戦を申し込んできたんです?あなたにはメリット無いでしょう」

「うちのレパードが昔随分世話になったみてぇじゃねぇかッ!キッチリ礼をさせてもらおうと思ってなッ!!」

「あぁ、なるほど……」

 

避ける事に集中しながらの会話は反応が少なくなってしまうが、気になってしまったのだからしょうがない。

だがそれにしても、昔と言うと二年ほど前になるだろう。

あの当時お互いまだレベルが低かったとは言え、ほぼ完封と言える試合運びをした事を聞いたのだろう。

それで興味を持たれてしまったらしい。

 

(まぁ、最初の口振りからしたら元から僕に用がある感じじゃなかったけども……)

 

おそらく他の用事ついでに僕を発見してしまい、勝負を吹っ掛けて来たと言う感じだと思われる。

場所が場所だけにその用事と言うのが気になる。

現在地は杉並第3戦区。赤い要塞が現れたのは梅郷中周辺付近である。

黒の王が住まう戦区に王が単身乗り込んで、加速を行う、宣戦布告と取られても可笑しくは無い。

しかもさらに拍車をかけて、梅郷中と言うのは黒の王が通う学校なのだ。

何もない、と言うのは有り得ない。

 

「ととッ!?」

「へっ!貰ったぜッ!空中なら避けらんねぇだろうが!!」

 

爆炎などによって行き場を失った僕はその逃げ場を空中に求めた。

流石は赤の王と言われるだけあり、それを計算でやってのけているのだから驚きだ。

飛び上がる僕に真っ赤な砲門が向けられる。

 

(久しぶりだな…… これ使うの)

 

真っ赤な砲門から爆発と同時に閃光が放たれる。要塞の主砲攻撃、防御能力の無い僕が受ければ軽くて八割、下手をすれば一撃で消滅しかねない威力を誇っていた。

だから避ける。

過去格闘ゲームと言う概念を念頭に置いて戦っていた頃、身に付けた格闘ゲームらしい能力で。

 

「なっ!?何だそりゃッ!!」

「空中ジャンプですよ。格ゲーなんですからこれくらいあるでしょ?」

「チッ!」

 

空を蹴る。

空を駆ける事は叶わなかったが、空を跳ぶ事が出来るようになった。

飛行型アバターも居なければ、同じアビリティを持っている人間も居なかったので使う機会が出来ず、今まで宝の持ち腐れ状態であったが、赤の王の火力の前に空を跳ぶ事を強いられた、これが初公開となる。

 

未だ空を跳んでいる僕に、赤の王は次弾を放つ。

それを今度は、上ではなく地面に向けて空を蹴り回避する。

 

「格ゲーって言っておきながら二段ジャンプじゃねぇじゃねぇかよッ!!」

「いやまぁ、それは正直済みません」

 

動きの激しい格闘ゲームの定番二段ジャンプと空中ダッシュ。

それを僕はゲージがある限り続ける事が出来る。これも一種の疑似飛行能力だが、そのゲージ消費が途轍もなく多い、空中には破壊可能オブジェクトなどは存在する訳も無く、連続使用すれば三十秒も持たないだろう。

 

三次元全てを駆使して、避ける事に集中する。

それはまるで神獣級の時と同じような緊張感を持って僕にプレッシャーをかけて来る。

ここまで必死に避けなくても自分よりも高レベルなのだから消費ポイントは少なくて済むのだが、それは負けた気がするのでしたくない。

対戦しないくせに、負けたくないとは自分の事ながらなんと強欲な事か。

 

「クソッ!時間いっぱい逃げ切られたぁぁ――――!もう一回だッ!」

「いや、もう……勘弁してください……」

 

逃げ切られた事に地団駄踏んでいる赤の王とは対照的に、僕はもう一歩も動きたくない。

 

「はぁ、こうも何度も逃げ切られると自信無くすぜ……。まぁいいや、おいソニックッ!」

「な、んですか……?」

「少し話がある。この後また直ぐに加速すっから、杉並から出んじゃねぇぞ?」

 

あまり良い予感がしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインとの対戦が終わった後、僕は彼女の目的を聞き、それに手を貸す事を約束し、赤の王こと上月由仁子のリンカーを通して、ネガ・ネビュラスの本拠地で助成してもらう予定の黒の王たちとの話を聞いていた。

それは加速世界最大の脅威とも呼べる『災禍の鎧』の復活である。

災禍の鎧とは、もとはただの強化外装であったそうだ。しかし、僕ら上級者と呼ばれるリンカーが使う心意、これと同じ現象がその装備にも起こった。

つまり、初代の装備者の意思が宿る、と言う事だ。それも最悪な形で。災禍、と呼ばれるだけあり、存在そのものが破壊をまき散らし決して看過できる存在ではない。故に多少脅しもあったが、僕は彼女に協力する事にした。

あっさりと僕にリアルを晒した彼女には驚かされたが、その話を聞いて納得をしてしまった。『災禍の鎧』は直ぐにでも破壊しなければならない。

 

そして、鎧を破壊するための必須条件が由仁子ちゃんがネガ・ネビュラスに助けを求める理由に繋がる。今回の鎧の装着者は空を自由に動けるらしい。その為、飛行スキルを持つ人物の助勢が必要であること。

その点で言えば、僕も彼女の目的のスキル、空を自由に動けるのだが、敵が敵だけに僕と彼女だけでは手が足りない恐れがある。だから当初の目的、シルバー・クロウとその所属勢力の助けを求める事になった。

その方法は強引極まりなかったが、そうするだけの価値はあるだろう。

 

「ッと、ここまで話したが、もう一人協力者を確保してんだ」

「協力者?おい、赤いの、この問題は私たち四人で解決するんじゃなかったのか?」

「初めはそのつもりだったんだが、保険みたいなもんだ。元々中立の奴だし、話したら簡単に協力してくれるってよ。まってな、今そいつと連絡とっから」

「待ってくださいッ!リアルの状態で話すつもりですか!?これ以上僕たちのリアルが割れるのは避けたい!」

 

まったく出鱈目である。

まず、僕は簡単にではなく半ば強要されたと言っておく。断れば毎回対戦を吹っ掛けてやる、と王自ら言われれば元から手助けするつもりであっても、嫌でも頷かずにはいられないだろう。

 

「気にすんな。って言うか、そいつアンタたちのリアルもう知ってるみたいだったぜ?」

「え、え?えっ!?ちょ、ちょちょちょっとユニコちゃん!?それどういう事っ!?」

「うるっせーなぁ。本人に聞けよ。あたしは知らない」

 

由仁子ちゃんから通話を全員に聞こえるようにしたと言う旨を言われ僕は口を開く。

 

『こんにちわ、ネガ・ネビュラスのみなさん』

「ぶっ!?」

「ど、如何したタク!」

「い、いやなんでも……」

 

何故か僕のウサギアバターが表示された途端にタッ君が噴出したが、気にせず話を進める。

 

『僕はホリゾン・ソニック。ロータスとは何度か会ってるね』

「ほう、君か。確かに君ならほぼ中立、今までの君の功績から考えて今回の事件は看過できないと言う事か」

『まぁ、関わったのはほぼ偶然ですが……』

「せ、先輩、お知り合いですか?」

「ん、そうか、君は知らないか。タクム君、君は知っていると思うが?」

 

黒雪姫に言われ、タッ君は驚いた拍子にずれたメガネを戻す仕草をした後、大きく息をしてから僕について知っている事を話し始めた。

 

「ええ、ホリゾン・ソニック。加速世界の中でも最速の称号を冠されるレベル8のバースト・リンカー。何故か通常対戦をタイムアップで逃げ切り、戦わない事でも有名ですが、もっとも有名なのは彼の無制限中立フィールドでの活動『EKハンター』としての側面です」

『改めて自分の事を説明されると何だか可笑しな気分になってきますね。それで正解です』

「なるほど、それほどの人が護衛についてくれれば、王二人もいるし全然楽勝ですね!」

「いや、コイツにも捕まえるのに参加してもらう。クロウとソニックの二人で動きを止める」

 

それを聞いてみんな首を傾げる。

それもそうだろう、今までの話では空を飛べなければ捕まえる事は困難と言う結論に達し、それ故にクロウの力を必要としていたのだから。

 

「あぁ~、なんつうか、コイツもとぶんだよ。それも気持ち悪い方法で」

『いやいや、ゴキブリの次は気持ち悪いって、赤の王、僕に恨みがあります?』

「全弾避けられりゃ、射撃型なら大体恨むわ、気にすんな」

『気にするなって……』

 

釈然としないが此処は納得しておくことにした。

話が前に進まない。

 

「飛ぶ?そんな話し私は聞いた事無いぞ」

「説明するより見せた方が早ぇだろうな。おい、ちょっと対戦して見ろよ」

「ぼ、僕ですかッ!?」

『僕だって対戦はしませんよ。何を言ってるんですかこのお子様は』

「そんな口聞いても良いのかぁ?アタシがずっと対戦挑み続けッぞ」

『よしクロウ。お互い頑張ろうッ!』

「即答ッ!?」

 

当たり前である。

流石にあれをずっと避け続けられるほど僕の神経は図太く出来ていない。

 

「良いじゃないかハルユキ君。彼と戦えるのは今はとても難しい。多くのバースト・リンカーが羨む状況だぞ?経験も積めて一石二鳥と言う物だ」

「で、でも僕なんかじゃすぐ終わっちゃいますよ」

 

ハル君が何とも頼りなさ気に言葉を紡ぐのに対して、黒雪姫はそれに困ったように眉をひそめる。

 

『ハル君、僕は君が一番最初にプレイした対戦から見ている』

「え?」

『2回目のアッシュとの再戦、君は作戦が失敗に終わっても勝つ事を諦めずに思考停止しなかった。僕はそれをとても評価しているんだ』

「あ、あんなのたまたま……」

『このゲームはレベルが全てではないが、圧倒的なアドバンテージでもあるんだ。それを覆すのは並大抵の事ではない。それも偶然勝つなんて言う事等、先ず無いと言っても良い程に』

 

ハル君は困惑したような表情で僕の次の言葉を待つ。

 

『それに君がこれからやらねばならない事はレベル9にも匹敵するモノの動きを封じる事だ。同じセリフをその時口にするつもりかい?』

「僕は……」

 

少し言い方はきつかったかもしれないが、しっかりと認識したうえで事に当たらなくてはならない。

今回の事件は失敗は許されないのだから。

 

『自信を持っていい。空で君以上に強い奴はいない』

「……はい、解りました。僕と、戦って下さいッ!」

 

シルバー・クロウ対ホリゾン・ソニック。

最速を目指す空の雛鳥と、現最速の衝突が実現した。




お疲れ様です。

段々と主人公が可笑しくなり始めている気がします。
やり過ぎかと思いましたが、弱点も設定してますのでご了承ください。

最近0評価を頂きましたが、自分の作品が読む価値無しと言われるほど酷い出来ではないと言う自覚は持っているのでそれ程気にならないのですが、まだどこか拙いと言うのは理解できます。
設定的矛盾も今の所ないと思いますので、文章で何か不味い所があれば感想をいただきたいと思います。それを元に少しでも文章力を向上させていきたいです。

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