万能全刀のラスティ・ハート   作:四季式

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第二話。

 林のとこのバス停奥。

 古くて白いお屋敷には、髪の長い女の幽霊がいるよ。

 

 そんな噂を耳にして、やって来ましたその場所へ。

 

「で、なんで同じバスに乗ってたんですか? 病子(ヤマネ)さん、法子(ホウコ)さん」

 

「あ、今聞くんだ」

 

「ここに用があるからに決まってるだろ」

 

 ふむ。

 

「では質問を変えます。こんな辺鄙(へんぴ)な場所に、一体どんな用があるのですか?」

 

「行けば分かるよ、錆くん」

 

「さっさと付いて来い。あ、その荷物持ってこいよ」

 

「あ、はい」

 

 ナチュラルに荷物持ちにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ?」

 

 屋敷の中を迷うことなく進み、とある部屋のドアを法子さんが開けると、彼女はおかしな声を上げた。

 

「……何だ、それ(・・)は」

 

「あ、病院坂さん。この人は……」

 

「ウチの学校の制服」

 

 病子さんの言う通り、部屋の中にいた少年は僕と同じ制服を着ていた。

 そしてその少年と密着している少女は病院坂姉妹とは知り合いのようで、慌てて何かしらの言い訳めいた言葉を呟いていたが、二人は聞き流しているようだ。

 

「えっと、その男の人は?」

 

「私たち二人の彼氏」

 

「……は?」

 

 呆ける少女。

 いきなり知り合いの姉妹が自分たちの共通の恋人を紹介してきたら、まずそいつらの正気を疑うだろう。

 

「生活用品は置いておきました。私たちはこれで」

 

「え、あの、もう少し説明を……」

 

「帰り、ますから」

 

「あ……」

 

 突き放すように言った病子さんに少女は及び腰になり、そのまま下を向いてしまった。

 

「行こう、錆くん」

 

 荷物を置いた僕の手を取り、病子さんは部屋から出て元来た道を戻った。

 法子さんも後ろから付いて来ている。

 屋敷から出て、バス停までの帰路につくと病子さんは『はっ』として手を離した。

 

「ご、ごめんなさい。勝手に手握っちゃって」

 

「いえ、大丈夫です。なんならもっと握っていてもいいですよ」

 

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 病子さんはおずおずと再び手を握ってきた。

 少し冷たくて、柔らかい。

 

「……何も聞かないのか?」

 

 しばらく歩くと、法子さんは聞いてきた。

 

「説明してくださるなら聞きますが、言いたくないなら無理をしなくてもいいですよ」

 

 とは言ったものの、『行ったら分かる』と言われたのに結局分からなかったので説明してほしいのが正直なところ。

 

「あの子は、髪の女王」

 

「とても王族には見えなかったですけど」

 

「知り合いの話では、とある王族の子孫らしい。その証拠が切れない髪(・・・・・)なんだとさ」

 

 切れない、か。

 それは剣士、否、()として興味があるな。

 

「しかし、それはなんともオカルトじみた話ですね。切れない髪、まるで呪いのようだ」

 

「まさしくその通り。あの子の先祖の女王は、自らの子孫と『あるモノ』に呪いをかけたのさ」

 

「あるモノ、とは?」

 

殺害遺品(キリング・グッズ)

 

「キリンググッズ? 初めて聞く単語ですね」

 

「そりゃそうさ。裏の世界ですら噂や伝説の類として扱われてるキワモノだ。殺害遺品(キリング・グッズ)ってのは、実在した『殺人鬼』が使っていた道具のこと。殺された者の怨念なのか殺人鬼の執着なのかは判らないが、ある種の怪異のようになったその道具に、女王は呪いをかけた。所有者、権利者(オーサー)には『殺人衝動』を。道具、殺害遺品(キリング・グッズ)には『特殊能力』を、と」

 

 殺人衝動、という言葉に少し引っかかりを覚えたが、表情には出さない。

 

 ──持つとなぜか人を斬りたくなる──

 

「殺人衝動は言葉の通りだと思いますが、特殊能力というのは?」

 

「まず全てに共通するのは『不壊』つまり壊れない、否、壊すことができない(・・・・・・・・・)。そしてその殺害遺品(キリング・グッズ)特有の、殺人鬼の所業に倣った能力を備えている。例えば毒殺を主とした殺人鬼なら『薬効強化』とかな」

 

 病子さんがピクリと微震した。

 

「なるほど、理解しました。しかしその話が真実なら、あなた方のどちらが(・・・・・・・・・)権利者(オーサー)なんですか(・・・・・)?」

 

 繋いだ手が更に震える。

 

「……よくそこまで思考が行ったな。あたしは精々『誰からそんなことを聞いたのか』問われる程度だと思ってたんだが」

 

「例えが具体的過ぎましたね。その毒殺の殺害遺品(キリング・グッズ)権利者(オーサー)が貴女なんですね、病子さん」

 

「……はい」

 

「その殺人衝動というのは抑えられるんですか?」

 

「……代償行為をすることでいくらか緩和できる。その対象者を代償(インステッド)と言うの」

 

「それが、法子さんですね」

 

「……ああ。病子の殺害遺品(キリング・グッズ)は『昏睡昇天のインジェクション』。ナイティンゲイルが多くの人間を毒で苦しめた注射器だ。病子は代償行為として、毒ではなく生理食塩水をあたしに注射する」

 

 病子さんは顔を赤くして俯く。

 え? そこ恥ずかしがるとこ?

 

「それで、こんな大事なことをカミングアウトしたのは、僕にも代償(インステッド)になってほしいからですか?」

 

「ち、違う!」

 

 病子さんは大声で否定する。

 

「このことを話そうと考えたのはあたしでね、いくら代償行為をしても『殺せない』ストレスは溜まっていく。それを少しでも解消するために病子と恋人として接してあげてほしい」

 

「……おねぃちゃんとも、ね」

 

「や、病子⁉︎」

 

「おねぃちゃんも、幾段か素直になったんだから、甘えるべき」

 

「〜〜〜ッ! そ、そうだよ! あたしにも恋人として接しろよ!」

 

 赤い顔を反らしながら、法子さんはそう言ってきた。

 

「──極めて了解しました。これからよろしくお願いします、病子さん、法子さん」

 

 

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