万能全刀のラスティ・ハート   作:四季式

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第三話。

灰村(ハイムラ)(キリ)?」

 

「昨日、女王のとこにいた男子。隣のクラスだった」

 

「へぇ。同じ学校なのは分かってましたが、世間は狭いですねぇ」

 

「少し、様子を見る。たぶんまた女王のとこに行くだろうから」

 

「了解です。お供しますよ、病子(ヤマネ)さん」

 

「ん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりまたいた」

 

 放課後。

 法子(ホウコ)さんと合流した後、僕らは再び例の女王の屋敷を訪れた。

 すると予想通り灰村くんが少女とイチャついていた。

 

「あ……、び、病院坂さん」

 

「灰村とやら」

 

 少女の呼びかけを無視して、法子さんは灰村くんに話しかける。

 

「昨日は言い忘れたが、こいつにこれ以上関わるのはよせ」

 

「……なぜだ」

 

 訝しげに、けれど確信しているかのような表情で問いかける灰村くん。

 ああ、これは髪のことを知ってるな。

 

「その様子だと話は聞いているようだな。こいつは呪いの元凶の子孫。一緒にいると不幸になるよ」

 

「……そんなの(イワイ)ちゃんには関係ない。不幸にもならない」

 

「こいつの父親だって、もう死んでる」

 

「おとう、さんは、あなた達が殺したんじゃないの? 殺害遺品(キリング・グッズ)で」

 

 少女、祝ちゃんの言葉に病子さんと法子さんの表情が軋む。

 殺人衝動に苛まれ続ける妹と、それを見てきた姉に、その言葉は禁句(タブー)だ。

 

「あぁそうか、なるほどね。父親の代わりってわけだ、そいつは。変わり身早いねぇ?」

 

「違っ、私はそんなこと──」

 

 法子さんは祝ちゃんに近づくと、その長い髪を掴み、思い切り床に引き倒した。

 

「……つらかったら、自分ひとりで耐えなさい。あんたの重荷を他人にまで背負わせるな。髪の女王!」

 

「お前っ──!」

 

「──そして、灰村切。あなたは何もすべきでない。……何もできない」

 

 法子さんの凶行に激昂しそうな灰村くんに、病子さんが注射器(インジェクション)を向ける。

 

「もし、それでもなお(・・・・・・)というのなら、お前は私達と戦うことになるだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 屋敷をあとにし、昨日と同じくバス停へ向かう途中で、病子さんは唐突に謝ってきた。

 

「えーと、謝られることをされた覚えはないのですが」

 

「……ほんとは灰村を怖がらせて手を引かせるだけのつもりだった。でも髪の女王があんなこと言うから、つい脅してしまった。錆くんも権利者(オーサー)か、少なくともこちら側(・・・・)だと認識されたと思うの。だから、ごめんなさい」

 

「それで僕が不利益を被るなら、謝られることには納得です。しかしあの二人に怖がられたところで、僕にはプラスもマイナスもありません。だから謝ることはないんですよ」

 

 ──それに、その認識はあながち間違いではありませんから。

 

 僕の小さな呟きは、彼女らの耳には届かなかった。

 

「一般人を女王から遠ざけるのもあたしらの役割だからね。灰村には悪いが、これ以上関わるなら──実力行使だ」

 

「あれ、僕は一般人には分類されてないんですか?」

 

「あんたはあたしらの、こ、恋人だろう? 立派な関係者さ」

 

「……おねぃちゃん、教授(プロフェッサ)からの言づてがあった」

 

「あ、やべ、忘れるとこだった。あたしらの後継人、ってか身元引き受け人があんたに会っておきたいって言っててさ。どうする?」

 

 ふむ。

 

「つまり、親御さんに挨拶に行く感じですね!」

 

「違うわっ!」

 

「違うんですか、ちょっと残念。それで、その人はどんな方なんですか?」

 

「……修身大学文学部、犯罪史学講座の教授をしている変態(ロリコン)。またの名を(スメラギ)(カナエ)という」

 

「それはまた、個性的な方ですね。おふたりの成長具合を考えれば、ある意味安全ではありますが」

 

 と言いながら僕はふたりの体つきをチェックする。

 

「ヤラシイ目で眺めるな!」

 

「……えっち」

 

「恋人なんですから、そのくらいは」

 

「TPOを弁えればな」

 

「……雰囲気は大事」

 

 では、その教授(プロフェッサ)とやらに挨拶してから、三人でゆっくりと乳繰り合うことにしましょう。

 

 

 

 

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