万能全刀のラスティ・ハート   作:四季式

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説明多し。


第五話。

 四季崎(しきざき)記紀(きき)

 戦国時代にいた刀鍛冶の名だ。

 記録では、彼は千の刀を日本各地で打ったとされている。

 そして奇異なことに、彼が打った刀の所有数がその国の力と比例していたという記録がある。

 時代はずれるが『刀語』と呼ばれる物語調の歴史書には、天下を取った尾張幕府がその千本のうち九百八十八本を集めた後、奇策士という役職の者──ちなみにこの歴史書の著者──が日本最強の剣士を引き連れて残りの十二本を集めきったと記されている。

 

 しかし、現存する四季崎記紀の打った刀は、無い。

 

 そして尾張幕府が滅亡してからは、四季崎記紀に関する記述は歴史書に一切出てこなかった。

 現在の歴史研究家の間では、四季崎記紀なんて刀鍛冶は存在しなかったとするのが定説とされている。

 『四季崎記紀の打った刀には特殊能力がある』なんていう眉唾物の記録さえある。もはやファンタジーの域だ。

 そんな、現代では否定されている刀鍛冶が(こしら)えた刀は確かに無い。

 だが、彼が鍛えた血統、否、『血刀』は存在する。

 千本の習作を経て、完了したとされる血刀──虚刀『(ヤスリ)

 その存在を知る者は僅かだがいる。

 けれどもその裏に、抹消されたもう一つの血刀がいたこと、そしてその血刀が現代まで生き延びていることを知る者はその一族のみである。

 

 

 

 

 

◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

 

 

 

 

 

「僕は人であるよりも先に刀なんだ。人を斬るために鍛錬され、人を斬ることが存在意義であり、人を斬るのを躊躇わない」

 

「ふぅん。鑢ではなく錆、か。てっきり僕は君がかの無名(・・)虚刀流(きょとうりゅう)なのかと思ったけど、それとは似て非なる存在だったようだね」

 

「僕の流派は全刀流(ぜんとうりゅう)。そして我が身は全刀『錆』ーーーその特性は全ての刀を十全に使いこなせる(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「──あぁ、なるほど、思い出したよ。とある歴史書の敵役として登場した、当時日本最強だった剣士がいたね。その名は錆白兵(はくへい)。つまり君はその子孫というわけだ」

 

「先祖には、確かに白兵という人がいました。彼は一時は最強の剣士ではありましたが、しかし最強の刀ではなかったのです」

 

 僕は続ける。

 

「そもそも錆という血刀は、製作者である四季崎記紀によって闇に葬られたロストナンバーなんです。四季崎曰く『失敗作、いや駄作もいいところ』らしいですよ。けれど、はいそうですかと納得しなかった錆家の者がいた。その直系の子孫が僕です。錆の本筋の家系はさっきの白兵で途絶えましたが、分家の者は錆の血が途絶えないよう、歴史の表舞台から姿を消しひっそりと、しかし脈々と技と才覚を受け継いできました」

 

「失敗作に駄作か。四季崎記紀も酷なことをしたもんだ。そう思うならいっそのこと折ってしまえばよかったのに。──ん? そうだ、四季崎の刀は国をも傾ける力を持っていたとされている。それはその刀の完成度が高いがゆえ。だったらなぜ錆の血刀は残っていた(・・・・・・・・・・・・)? 失敗作と明言しているくせに、それを残した意味はなんだ……?」

 

「それには二つの答えがあります。一つは完成を超えた完了、虚刀『鑢』の試金石とするため。これはかの白兵がやってくれました。そしてもう一つは、完成を超え、しかし完了とは異なる可能性を見出すため。僕の先祖はそう考えていたようです。虚刀『鑢』の主題(テーマ)は『人であると同時に刀である』というものです。全刀『錆』も元々は同じ主題で作られた刀ですが、錆家(ぼくら)はそれを改造(・・)したんです。人らしさを極限まで捨て、刀であることに特化しました」

 

「だから君は権利者(オーサー)であるよりも先に殺害遺品(キリング・グッズ)であり、殺人衝動に駆られることはない。そして道具であるがゆえに殺人に忌避感を感じることもない、と」

 

「はい」

 

「……ちょっと待てよ」

 

「なんでしょうか、法子(ホウコ)さん?」

 

「人らしさを極限まで捨てたのがお前なんだとしたら、あたし達を好きだと(・・・・・・・・・)言ったのはなんなんだ(・・・・・・・・・・)?」

 

「そう、僕は人らしさを極限まで捨てた一族の末裔です。しかし、貴女たち姉妹だけにはなぜか惹かれてしまった。その不可解を、矛盾を紐解いた先に、完了ではない可能性があるのではないかと思ったから僕は貴女たちを選んだんですよ」

 

「……錆くん」

 

「なんでしょうか、病子(ヤマネ)さん?」

 

「……正直、私は話の半分も理解してないけど、錆くんにとって私たちは特別ってこと?」

 

「はい、そうです」

 

 

 

 

 

 

 

「あは、あはは。あははははははっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり! 錆くんは私たちの王子様! ずっと、ずっとずっとずっと一緒だよ?」

 

「ええ、ずっと一緒ですよ」

 

 

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